「夢の兵士」「誘惑者」「家」「使者」「透視図法」「賭」「なわ」「無関係な死」「人魚伝」「時の崖」の計10作からなる短編集。
「無関係な死」:Mアパートの7号室に住むAが、ある日自宅に帰ると、そこには死体が一人
横たわっていた。しかし、それは全く見たことのない男の死体だった。自分にはやましいことはないのに、自分が疑われると思い死体発見を通報できずにいた。
そして、この状況をどうするかを考えるうち時が過ぎ、次第に彼は動かぬ死体に追いつめられていく。
竹本健治『匣の中の失楽』の中で安部公房に関する記述がちょっとだけあり、読んでみようと思い至った。
サラリーマンの1ヶ月の給料が3万7千円であったり、オート三輪が普通に走っていたりと、時代の古さは当然感じるものの、
ストーリーは全く古さを感じさせない。また、ジャンルも推理小説的なものから、SFやホラーの要素を含むものまで様々である。
お気に入りの作家を極めるのもよいが、古典や名前は知ってるけど読んだことないという作家の小説を、たまには読んでみるのも良いと思う。 |