重松 清
『リビング』 重松 清(中央公論社)
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笑い1.0点 涙2.0点 恐怖0点 総合3.5点 |
「となりの花園―春・夏・秋・冬」:ニュータウンで繰り広げられる、隣接する2組のご近所さんの四季。
「ミナナミナナヤミ」:突然ワケもわからず離婚を言い渡された夫。その時彼は、苦労ばかりしていた
亡母がよく呟いていた言葉『ミナナミナナヤミ』を思い出した。
「一泊ふつつか」:10年ぶりの同窓会。久しぶりに旧姓で呼ばれ、久しぶりに子供と夫から解放される
一泊二日の小旅行。
「分家レボリューション」:分家の兄弟に嫁いだ2人の女性が、本家の態度にたまりかねておこした
クーデターの顛末。
「息子白書」:ある母親からの依頼で、彼女の息子の素行調査をはじめた新人探偵の複雑な思い。
「モッちん最後の一日」:両親の離婚で、苗字が変わるから明日から「モッちん」じゃなくなる。そんな
少年の「モッちん」としての最後の一日。
以上のほか「いらかの波」「千代に八千代に」「YAZAWA」の計12編からなる短編集。
実際に、同じような境遇の夫婦や家族いるだろうな、と思ってしまうほど様々な種類の人間ドラマを描いた短編集。
どれも短すぎる気もしたが、ジーンとくるちょっといい話的なものが多く、まあまあよかった。
短くて読みやすいから、「重松清の本ちょっと読んでみたいんだけど・・」という人には結構いいかもしれない。
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『ビタミンF』 重松 清(新潮社)
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笑い1.0点 涙3.5点 恐怖0点 総合4.5点 |
「ゲンコツ」「はずれくじ」「パンドラ」「セッちゃん」「なぎさホテルにて」「かさぶたまぶた」「母帰る」の
計7篇からなる短編集。
「ゲンコツ」:マンション前にたむろしている若者たちに眉をひそめながらも、雅夫は
オヤジ狩りを恐れ声をかけることなく帰宅する日々が続いていた。そんなある日、雅夫は彼らの行動を見るに見かねて、
ゲンコツを握りしめる。
「はずれくじ」:妻が入院し、修一はしばらく息子と2人で暮らすことになった。
ある日、帰宅の遅い息子を心配していると、警察から一本の電話がかかってきた。
「なぎさホテルにて」:37歳の誕生日、達也は離婚の危機にある妻と幼い子供2人を連れて、
なぎさホテルに来ている。17年前のこの日、妻と知り合う前の達也は、別の恋人と泊まっていた。17年の時を経て、
その時の恋人から一通の手紙が届いた。
「母帰る」:拓己が結婚した年、母は父に一方的に離婚を告げて家を出ていった。
10年後、母が一人で暮らしていると人づてに聞いた父は、もう一度一緒に暮らせないか、という驚くべき提案をした。
第124回直木賞受賞作。この本で僕は重松清という作家を知った。
Family、Fatherなど「F」で始まる言葉をキーワードにした「読むビタミン」。
どの短編も一応ハッピーエンドなのだが、マイナスからスタートしたのが最終的にゼロに戻っただけ、という印象が強い。
そのマイナスというのが、いじめだったり離婚だったり非行だったり、どの家族にも起こりうる現実的な問題ばかりなので、
家庭を築くことに夢が持てなくなってしまう。ただそのマイナスを乗り越えることで、家族の絆が強まったり、より良い家庭に
なっていったりするのかもしれない。でも、いくら理想を追っても、30を過ぎ40歳に近くなればやっぱり現実を
思い知るんだなぁ、というのが正直な感想だ。
「元気をはこぶストーリー」と帯にあるが、父親世代が読めば元気が出るかもしれないが、これから父親になろうという
若者が読んで元気が出るかどうか・・・。でも、「お話」として読むならば、とても感動的で心に染みるいい短編ばかりである。
特に、「ゲンコツ」「セッちゃん」「母帰る」はよかった。
重松さんの小説を読んだことない人はこの本から読んでみてはいかがでしょうか。
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『流星ワゴン』 重松 清(講談社)
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笑い1.0点 涙4.0点 恐怖0点 総合4.5点 |
中学受験に失敗し部屋にひきこもるようになった息子、浮気をしている妻、そして僕はといえば三十代にしてリストラされた。
サイテーの現実に疲れた僕は、「死んじゃってもいいかなあ」と、ふと思った。そんな時、ワイン色のワゴンに乗った
橋本さん親子に出会う。5年前に事故死したという橋本さん親子の車に乗り、僕は不思議な旅に出た。そこで僕は、同い年の父親に出会う。
黒いシンプルな装丁が印象的な一冊。
家族小説が多い重松さんだが、本書は「家族」からさらに焦点を絞って「親父と息子」を中心においていた。5年前に事故死した
橋本さん父子、リストラされた主人公とその息子、主人公とガンを患い余命いくばくもないその父親。という三組の父子が登場する。
どの親子も泣かせてくれるのだ。特に主人公の前に同い年となって現れる父―チュウさんの言葉は胸に響く。今は友達のように
接する親子が増えていると聞いたことがあるが、そんな家族設定だったらこの感動はなかっただろう。普段は憎み、胸のうちを
素直に吐露できない親子だからこそ、この感動があったような気がする。
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