一般小説
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『天国の本屋』松久淳+田中渉(新潮文庫) |
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笑い1.0点 涙2.5点 恐怖0点 総合3.5点 |
秋も終わろうというのにいまだに就職先の決まらないさとしは、ある夜、コンビニで一人の初老の男性に声を掛けられる。
派手なアロハシャツを着たその不思議なジイさんに、半ば強制的に連れてこられた先は、天国の本屋だった。
さとしは、そのジイさんに誘われ、天国の本屋の店長代理としてアルバイトすることになった。そこでさとしは、
売り物である本の朗読サービスを受け持つことになったのだが、これがたちまち大評判になっていく。しかし、
同じ店で働いていて、さとしがひそかに恋心を抱くユイだけは、決して彼の朗読を聞こうとはしなかった・・・。
2004年6月5日ロードショーなんていうデカデカとした帯に引かれたわけじゃなく、アラスジが面白そうだった
のと、パラパラとめくった時にまるで絵本のような読みやすい雰囲気を感じたので購入してみた。
本書での天国の扱いはなかなか面白い。普通は、一面花畑みたいな世界としてイメージされるのに、
本書の天国では、現世と同じ生活が営まれ、そこで百歳まで生きたら再び現世に転生していくのだ。さらに、
さとしのような生きている人でも、ある目的のために天国を訪れることが出来るのだ。
本の朗読というサービスをしている設定だから、作中、何冊かの絵本や小説が登場する。その中で、
『泣いた赤おに』という絵本が出てくるのだが、僕は内容も知ってるし、読んだ記憶もあるのに
なぜか涙腺が緩んでしまった。子供の頃は、泣いた記憶はないんだけどなぁ。ずいぶん涙もろくなった
のだろうか。
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『世界の中心で、愛をさけぶ』片山恭一(小学館) |
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笑い0点 涙2.0点 恐怖0点 総合3.5点 |
中二の時、同じクラスの学級委員に任命されたことで、朔太郎とアキは親しくなっていった。
高校に入って、二人の仲はますます深まり、幸せな日常を送っていた。しかし、その時、アキの体は、
着実に病魔に冒されつつあった・・・。
日本の作家の小説としては、過去最高の300万部以上というとんでもない大ベストセラーとなった本書。
ベストセラーを読むのは、抵抗があったのだけど、妹がちょうど持っていたということと、過去に同じく大ベストセラーと
なった『ノルウェイの森』を読まずに最近後悔したということもあって、読んでみる事にした。
売れたといっても、帯の柴咲コウのコメントとか映画の宣伝効果とか、内容以外の要素も多少は売り上げを伸ばす要因になった
と思う。でも、内容がよくなければ、さすがにここまで売れはしなかっただろう。とはいえ、僕にとっては、
『ノルウェイの森』よりも数段劣るなという感じがした。官能小説と間違えそうなくらいの『ノルウェイの森』に
比べて、中高生の恋愛を描いた本書はとても純愛だった。青春時代の一途でキレイな恋愛という感じで、読者に「あの頃に戻りたい」
とか「こんな恋愛してみたい」という思いは抱かせるものの、小説としては少々物足りない。でも、現実の世界で、
「誰と誰が不倫してる」なんていう話題が密かに飛び交っている職場にいる僕としては、一服の清涼剤的な小説だった。
最愛の人との死別という泣けないわけがない設定なので、たしかにグッと込み上げて来るものはあります。
普段あまり本を読まない人で感動に飢えている人や、ドロドロした恋愛をしている人(?)などにオススメ。まあ、300万部だから、
いまさら薦めるまでもないけど。
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『蛇にピアス』金原ひとみ(集英社) |
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笑い0点 涙1.0点 恐怖2.5点 総合3.5点 |
蛇のように先が分かれた舌・スプリットタンを持つアマに出会ったルイは、数日後、アマと一緒に、スプリットタンへの
第一歩である舌ピアスの穴を開けに行った。友達のマキに舌ピアスを見せ、アマと3人で楽しく飲んだ帰り道、
ルイにからんできた男を、アマは殴り殺してしまう。
第130回芥川賞受賞作。
肉体的にも精神的にも苦痛を感じながら読んだ。短めの小説だったからいいが、もっと長い小説だったら
とても読破できなかっただろう。僕にとっては、それほど嫌悪感と不快感を抱かされた作品だった。
耳のピアスすら開けたことない僕には、舌ピアス、口ピアス、眉ピアス、刺青、スプリットタンなどなど、
その痛みは想像しがたい。まるで自分がいる世界とは違う世界がもう一つあるような感覚に陥るほど、
裏の世界を描いた小説だと思った。しかし、近頃は、若者の間で、タトゥーが流行っているらしく、
僕の周りにも2人ほど、タトゥーを入れている子がいる。僕は、古い人間なのか、おしゃれ感覚で
タトゥーを入れる人の気持ちが分からない。タトゥーシールというものだってあるし、タトゥーの代わりに
アクセサリーで着飾ればいいじゃないかと思ってしまう。皮膚にスミを入れたら、一生消えないし、
銭湯だって入れない。この本を読んで影響を受けた若者が、軽い気持ちで、身体改造をしないことを
願いたい。
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