私はある日、不幸な事故により左眼を失った。そして、その日までの記憶もなくし、明るくて優秀だった以前と違い、
両親が落胆するほど暗く愚鈍になってしまった。祖父のはからいで眼球移植を受けた私は、その日から、激しい痛みと共に
見知らぬ映像が頭をよぎるようになった。そして私は、その映像の源を求め単身、家を出た。
”ホラー界の俊英”とか”ホラー小説界の最注目株”などの肩書きで宣伝され、様々な書評サイトでもよく目にしていたので
気になっていたのがこの「乙一」という作家だ。そもそもたった二画で書けてしまうこの名前がよく目立つ。
あとがきによると、本書が初の長編小説らしい。それと、別の出版社では、「せつなさの達人」と
紹介されるほどちょっといい話を書く人と
扱われているという。本書を読んだ限りでは、かなりグロテスクで、たしかに涙を誘う部分もあるが、せつなさが「売り」だとは
感じなかった。やはり他の小説も読んでみないとわからないようだ。
終始一貫してたんたんとストーリーが進んでいるという印象があった。ただ、書かれている内容は現実にはありえない
ようなグロテスクなのもなのだ。それをまるで何ということのない普通のことのようにたんたんと書いているから、
逆に恐怖を感じてしまう。
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