黒岩 研
『真闇まやみの園』黒岩 研(幻冬社) |
笑い0点 涙2.0点 恐怖3.5点 総合4.5点 |
マンション販売の営業一筋11年。30代半ばになって日頃の不満がうっせきしていたある日、遠藤晋は17年ぶりに
昔憧れていた同級生の葉山紗月と出会う。写真家である紗月が、ある仕事のため沖縄に行くと聞き、現実から逃れるように
遠藤は彼女に同行する。
リゾート地化されたとある孤島に着いた遠藤は、人を襲うはずのないイルカが、調教師に食らいつくのを目の当たりにする。
そして、不気味な水神伝説が語り継がれるこの島での恐怖の日々が始まった。
幻冬社の著者紹介を読むと、黒岩氏は「モダンホラー・エンタテインメントの超新星」とのこと。
どうやらこういう小説は「モダンホラー・エンタテインメント」と呼ぶらしい。
第一部は、細かい章立てで話がぶつ切りになっているという印象だった。早く続きが読みたいのに、
たびたび別のホラーエピソードが割り込んできて、もどかしく、じれったい思いを味わった。そして第二部に
なってからの急展開には驚いた。これが「モダンホラー」と呼ばれる理由なのかなと思う。
ラストもなかなか良かった。こういうオチをつけたかぁと感心しきりだ。ただ、少し冗長だったという気がする。
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『ジャッカー』黒岩 研(光文社) |
笑い0点 涙1.5点 恐怖3.0点 総合4.5点 |
東邦新聞社社会部記者の木場優二は、沢口みゆきという投書マニアに会いに行くことになった。彼女が突然、奇妙な
投書を送ってきたからだ。そこには、先日起きた風俗嬢殺人事件の犯人しか知り得ない事実が書かれていた。しかし、
その犯人は、現場ですぐに射殺されていたのだ。
だが木場が彼女の家に着いたのは、彼女がドアに「トメルノダ」と口紅で書き残し、失踪したあとだった。
黒岩研のデビュー作。
前回読んだ『真闇の園』より、エンタテイメント性もスピード感もこちらのほうが上だ。とくにスピード感は素晴らしい。
最初から最後まで主人公の木場と共に走り続けさせられてしまった。
「死とは何か」「死ぬとどうなるのか」というような問いが底流にある気もするが、そんなことは考えずひたすら
楽しみ怖がるべき娯楽小説だ。これがデビュー作というからほんとに驚いてしまう。もっと他の作品も読んでみたくなる。
解説の風間氏は「和製ディーン・R・クーンツ」と評している。僕はクーンツを読んだことがないので、この評が適切かどうか
わからないが、クーンツが好きな人は是非一読してみてください。
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『聖土』黒岩 研(光文社) |
笑い0点 涙1.5点 恐怖3.0点 総合4.0点 |
地割れを起こし、硫化水素を含んだ溶岩を吐き出す恐山。多くの死者を出しているその恐山に取り残されたイタコのミツと僧侶。
彼ら2人を助けるため、学芸員の新井は決死の覚悟で恐山に登った。しかし、そこにいたのは、くりぬいた僧侶の目を、
自らの眼窩にはめ込み、毒ガスの充満するなか笑いながら立っているミツだった。
バリ島での謎の儀式、恐山での惨劇、東京での猟奇殺人事件とペットロス症候群。冒頭から目まぐるしくストーリーが転換し、
一体これらをどうやってつなげるのだろう?という思いを抱きながら、みるみる黒岩研の世界に引き込まれていった。
終盤に行くにつれて、どんどんスケールが大きくなり、荒唐無稽ぶりにも拍車がかかっていく。スピード感も、緊張感もあり、
退屈することなくラストまで一気に読まされた。
作中で重要なポイントとなるペットロス症候群について、犬を飼っている僕としては他人事と思えない感じだった。
まあ、本書に出てくる飼い主ほどではないにしろ、もし愛犬が死んだらしばらく悲しみにくれるのは間違いないだろうなぁ。
ペットの葬式や墓まである時代だから、ペットを飼う人は皆、ペットロス症候群の予備軍なのかもしれない。
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