ホラー
『リメンバーミー 私を殺したのは誰?』 クリストファー・パイク(集英社文庫) |
笑い★★☆☆☆ 涙★★☆☆☆ 恐怖★★☆☆☆ 総合★★★★☆ |
ふとしたことから友人の誕生パーティで、降霊術の霊媒の役をやらされることになったシャーリー。しばらくして彼女は、催眠状態に入り、突然全く別人の声で話し出した。しかし次の瞬間、彼女は
飛び起き、一人バルコニーへと出ていった。そして、いつの間にか、彼女はバルコニーから落下していて、死亡してしまった。ところが、彼女は、幽霊となって”生きて”いた。自分の死に疑問を抱いた彼女は、
先輩幽霊とともに、自分の死の真相について調査しはじめるのだった。
この本の著者、パイクは、「若者たちのスティーブン・キング」と称され、その著書も売れまくっているらしい。中でも、この作品は、パイクの全著作の中で1,2を争う売れ行きなんだそうだ。僕は、偶然
新聞でこの本の書評を読み、面白そうだなと思って探していたところ、古本屋で偶然見つけたのだ。ちなみに、この「リメンバーミー」は、全3作のシリーズ物で、古本屋でその3冊一気に買ってしまった。
内容はというと、幽霊が登場するという意味では、ホラーでもあり、幽霊となって自分の死の真相を調査するという意味では、探偵小説でもあり、先輩幽霊にいろいろと、幽霊生活についてレクチャー受ける
という意味では、コメディーでもあり、死後の世界はあるのか?死後の世界をどう生きるか、という意味では、宗教的哲学的物語でもある。というかなり複雑なものなのです。 |
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『NIGHT HEAD 1』 飯田譲治(角川書店) |
笑い0点 涙2.0点 恐怖4.0点 総合4.0点 |
群馬県の山奥にひっそりたたずむ、ある研究所から、2人の兄弟が脱走した。脱走した兄弟の兄・霧原直人は、
サイコキネシスを、弟・直也は、人の心を読むリーディング能力をそれぞれ持った超能力者だった。彼らが脱走したのを同じ頃、
双海翔子という一人の女子高生が、忽然と姿を消したのだった。
フジTVで深夜にやっていた同名のドラマの原作小説だ。僕は、そのドラマを実際見たことはない。
だからよけいな知識や先入観にとらわれることなく、素直に読めた。
超能力をバンバン使い、ド派手な展開が続くのかと思いきや、全く違っていた。2人の兄弟は、超能力を持って生まれたために、
両親と別れ、長い間研究所に閉じこめられてしまう。そんな彼らは、普通の生活にあこがれ、研究所を脱走したものの
行く先々でマイナスの力を引き寄せてしまい、苦悩する。という、かなり暗く重いストーリーなのだ。 |
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『NIGHT HEAD 2』 飯田譲治(角川書店) |
笑い0点 涙3.5点 恐怖4.0点 総合3.5点 |
感情が高ぶると周りのものが壊れてしまう兄・直人。他人の心が読めてしまうために、人間と接触するのを拒み
家に閉じこもりがちになった直也。彼らは、望んでもいないのに授かってしまったその能力を嫌っていた。
そんなある日、彼らの父のもとに、金を騙し取ろうとする詐欺師が
訪ねてくる。父を救うため2人の兄弟は、自らの意志で超能力を使ってしまった。その日以来、2人の能力は覚醒し、
ますます強くなってしまうのだった。 |
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『NIGHT HEAD 3』 飯田譲治(角川書店) |
笑い0点 涙2.0点 恐怖4.0点 総合4.0点 |
神谷司という予知能力者が、人類滅亡を予知した。そして、その滅亡には、霧原兄弟の存在が関わっているという。
それを聞いた神谷の信者は、霧原兄弟を抹殺しようとする。一方、神谷の存在を知り、同じ人類滅亡の予知を感じた
兄弟は、神谷と直接対決することにした。 |
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『NIGHT HEAD 4』 飯田譲治(角川書店) |
笑い0点 涙3.5点 恐怖3.5点 総合4.0点 |
直也は、長年、御厨に隔離されていた研究所が炎上する夢を見た。その後、御厨が、霧原兄弟に助けを求めてきた。
心配になった彼らは、研究所へと向かう。するとそこには、霧原兄弟を殺そうとする超能力者たちが待ちかまえていた。
何ともさっぱりとしない読後感だった。多くの謎を残しすぎだと思う。
とりあえずすべて読み終えたので、すぐにレンタルビデオで「NIGHT HEAD」のTVシリーズvol.1〜6を借りてきて、見てみた。
霧原直人役に豊川悦司、直也役に武田真治が起用されていた。2人とも演技が上手く見応えはあった。
だが、やはり超能力の表現や特殊効果がちょっと物足りなかった。それと、脇役の人たちの演技が、
今ひとつだったのも不満だった。また、ビデオでは、時間に限りがあるから、説明が不十分で、小説を読んでなければ、理解不能なところが結構あった。
だから、これから見ようと思っている人は、是非とも、原作を読んでから見た方がよいと思う。 |
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『NIGHT HEAD THE TRIAL』 飯田譲治(角川書店) |
笑い0点 涙3.5点 恐怖3.5点 総合3.5点 |
強い予知能力を持った奥原という老女を社長とする「ARK」という会社の社員であった双海芳紀は
「ミサキデマツ」という謎のメッセージを残し、電脳世界に消えてしまった。一方、それぞれが強い超能力を持っている霧原兄弟は、
ARKから逃れ、どこかで自分たちに助けを求めている1人の男の存在を感じていた。助けるべきか、それともそれは罠なのか。
決断をしかねている彼らのもとに、双海が再びコンタクトを取ってきた。そして、兄弟は、双海によって「ミサキ」を見せられるのだった。
『NIGHT HEAD 4』がとても中途半端な幕切れだったので、あの続きはないのかと思っていたら、本作を見つけた。この本を読んでようやく
謎と不満は解消された。本作は、『NIGHT HEAD』の1〜4を読んでいない人でもある程度楽しめるように書かれてはいるが、
この独特の世界は、やはり1〜4を読んでいないと十分堪能できないと僕は思う。
また、この本は、映画化されていて、読み終わった後すぐレンタルショップで借りてきた。NIGHT HEAD』の1〜4と同じく、
初めて見る人や、この本を読んでいない人にとっては、ちょっと説明不足・理解不能じゃないのかなと思うところがあったが、
直人と三雲の対決シーンなどは、結構迫力があった。それでも、やはり僕は映画より原作の方が断然面白かった。
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『仄暗い水の底から』 鈴木光司(角川ホラー文庫) |
笑い0点 涙1.5点 恐怖3.0点 総合3.5点 |
「浮遊する水」「孤島」「穴ぐら」「夢の島クルーズ」「漂流船」「ウォーター・カラー」「海に浮かぶ森」の
計7作からなる短編集。
「孤島」:東京湾に浮かぶ無人の人工島・第六台場は、通称”幽霊島”と
呼ばれていた。その島は、普段立入禁止なのだが、末広謙介を含む3人は、区の要請により実地調査をすることになった。
何十年も無人の島であったはずのその島には、なぜか野菜畑があり、不気味なことに卒塔婆が立っていた。
東京湾周辺を舞台に、水と恐怖を題材にした短編集。
読後に残る何ともイヤな怖さも見所だが、それぞれの短編の登場人物が実にリアルで、人間らしくてよい。
子供を虐待する父親、女たらしの医学生、執拗にマルチまがい商法に勧誘する夫婦など、様々な人物がスパイスとなって
恐怖を際だたせている。 |
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『ぼっけえ、きょうてえ』 岩井志麻子(角川書店) |
笑い0点 涙1.0点 恐怖3.0点 総合4.0点 |
「ぼっけえ、きょうてえ」「密告函」「あまぞわい」「依って件の如し」の計四篇からなる短編集。
「ぼっけえ、きょうてえ」:岡山県のある村に、間引き専門の産婆の子として生を受けた女は、
年頃になり女郎として売られた。その女が一人の客に語る恐ろしい話。
「密告函」:コレラが蔓延し病死者が続出している岡山県のある村落。そこの村役
場は、コレラ感染の疑いがある近隣の人を密告するタメの箱を設置した。その密告函にまつわる恐ろしい話。
「ぼっけえ、きょうてえ」とは、岡山地方の方言で、「とても、怖い」の意味だそうだ。
タイトルにもなっている短編『ぼっけえ、きょうてえ』は、第6回日本ホラー小説大賞を受賞した作品である。
ホラーといっても、「リング」「パラサイト・イヴ」をはじめとする近年のホラーとは異なり、純和風なホラー、
地方に伝わる怪談、という雰囲気を持っている。そして、もののけの怖さと、人間を平気で牛馬同然に扱ったりした時代と
村人の怖さ、目を背けたくなるようなグロテスクな描写などが調和し、恐怖感をさらに高めている。
実は、冗談ではなく僕は本書を読んだ日、悪夢にうなされ目を覚ました。 |
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『八月の博物館』 瀬名秀明(角川書店) |
笑い1.0点 涙2.0点 恐怖1.0点 総合4.5点 |
小学生通しての最後の夏休みが始まるその日、亨はいつもとは違う道を通って下校しようとした。そして、その途中、「THE MUSEUM」
と書かれた不思議な洋館を見つける。そこで一人の少女と一匹の黒猫に出会い、19世紀のエジプトにつながる大冒険が始まった。
本書は、なかなか複雑な構造をしている。
小説を書くことに行き詰まり、物語に感動できなくなった理系出身作家と、彼が書く世界に生きる亨と、実在した人物であり彼が書く世界の
登場人物でもあるオーギュスト・マリエット。この三人の物語が相互に関係しあってできている小説なのだ。
作中、著者自身をモデルにしたと思われる「理系作家」の視点が、たびたび出てくる。そのせいで、ワクワクするような少年の冒険談や
夢あふれるマリエットの発掘談から、一気に現実に引き戻され冷静にさせられてしまう。その作家の視点があることで、本書が、普通の
SF小説や、今までの瀬名作品と一線を画する出来になっているのかもしれないが、僕にはそれが物語を楽しむブレーキになっているように思えた。
ストーリー自体は面白くて5点満点なのだけど、その作家の視点になじめなかったのでマイナスにした。しかし、『パラサイト・イヴ』から
始まる流れとは全く違う小説になっていて、これからが楽しみな作家の一人になったことは確かだと思う。
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