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ホラー



『キャリー』 スティーブン・キング(新潮文庫)
笑い☆☆☆☆☆ 涙★☆☆☆☆ 恐怖★★★★★ 総合★★★★☆
 狂信的なキリスト信者の母親に育てられた16歳の娘・キャリー。 彼女は、学校ではクラスメートから悪意に満ちたイジメにあっていた。 そして、家に帰ると母親の狂信的信仰の被害にあっていた。さらに彼女 には、女性特有の身体の変化が現れ、精神的にも肉体的にも極限状態に まで追いつめられていた。そんなとき、身体の変化にともない彼女には TK(サイキック)能力が開花し始めていた。  最初のうちは、気持ちが高ぶると勝手に発動してしまっていたが、 そのうちその能力をコントロールできるようになっていった。しかし、 そのことが、彼女が住むチェンバレンの街に史上最悪な大事件を引き 起こすことになるのだった。

 この『キャリー』は、ホラー界の巨匠・スティーブン・キングの デビュー作なのだそうだ。デビュー作にしてこれほどの怖さ。僕は、 キングの作品を読むのはこれが初めてだが、何となく今後キングに ハマッてしまいそうである。最初は、本文の間に、新聞記事、書籍、 調査委員会の記録などが挿入されている独特の構成にとまどった。 しかし、読み進めていくうちにそんなこと気にならないくらいドップリ とハマッてしまっていた。総合評価も★5つにするか4つにするか 迷ったのだ。一応4つにしたが、限りなく5つに近い4つである。 また、『キャリー』は、映画化もされているそうだ。  ぜひこの世界を映像で見てみたいものだ。


『グリーン・マイル1−ふたりの少女の死−』 スティーブン・キング(新潮文庫)
笑い☆☆☆☆☆ 涙★☆☆☆☆ 恐怖★☆☆☆☆ 総合★★★☆☆
 時は1932年、アメリカ南部のコールド・マウンテン刑務所の死刑囚舎房を舞台に繰り広げられる全6巻からなる恐怖小説の第1巻。
 コールド・マウンテン刑務所で、死刑囚が電気椅子にたどり着くまでに歩く通路は、床が緑色のリノリウムであることから<グリーン・マイル>と呼ばれている。そしてこの刑務所に、9歳の双子の少女を強姦して 殺害した罪により死刑宣告を受けた、ジョン・コーフィという黒人の死刑囚がおくられてくる。そして、ここから恐怖の物語の幕が開ける。

 『グリーン・マイル』は、1冊150ページ前後くらいであっという間に読み終わってしまう。さらに本書は、全6巻のうちの第1巻であるため、登場人物の人柄や彼らに関するエピソードなどを 紹介しているだけであるため、これ1冊だけを見ると大して面白くないのだ。しかし、それが逆に、これから2巻3巻と読むにしたがって意味のある1冊となっていくのだろう。とにかく、全巻読み終わってみなければなんとも 言えない気がするので、ここでは多くは語らず、早く続きを読もうと思う。


『グリーン・マイル2−死刑囚と鼠−』 スティーブン・キング(新潮文庫)
笑い★☆☆☆☆ 涙☆☆☆☆☆ 恐怖★★☆☆☆ 総合★★★☆☆
 ある日、コールド・マウンテン刑務所に不思議な鼠が現れた。食べ物を与えると、人間のように座って食べ、糸巻きを与えると、それを使ってサーカスさながらの芸当を見せる という驚くほど知的な鼠なのだ。どこからともなくやって来て、またどこかに消えてしまう鼠であったが、半ダースもの人間を生きながらに焼き殺した囚人・ドラクロアが 入所してきたとき、その鼠は、ドラクロアの飼い鼠となった。そして彼は、その鼠を<ミスター・ジングルズ>と名付けた。

 殺伐とした刑務所に、1匹の鼠がやってきたことで、一気に雰囲気が和らいだ。およそホラーとか恐怖という言葉とは、かけ離れてしまったように思える。また、この鼠の処遇を 決めるのに、看守達が議論したりするのは滑稽に見えた。でも、今のところそれほど面白さは感じない。


『グリーン・マイル3−コーフィの手−』 スティーブン・キング(新潮文庫)
笑い★☆☆☆☆ 涙★☆☆☆☆ 恐怖★★★☆☆ 総合★★★★☆
 コールド・マウンテン刑務所に、凶悪な囚人がやってきた。<ワイルド・ビル>と呼ばれるその男は、牢獄に入る直前暴れ出し、危うく看守の一人を殺しかけた。 騒然とする死刑囚舎房。そんな時、いつもはおとなしい囚人の一人・コーフィが、看守主任を務めるポールを呼んだ。コーフィは懇願するようにポールを自分の独居房に呼び入れようとした。 死刑囚の独居房に一人で入ることの危険を省みず、ポールはコーフィの独居房に入ってしまった。

 いよいよ面白くなってきた。不思議な鼠と、不思議な力を持つコーフィの登場により、徐々に現実離れしてきた。さらに、問題児看守のパーシーと、フランス系の囚人・ドラクロアとの 確執などがあって、いったい次はどんな展開になるのだろうという楽しみが出てきた。さっさと次を読もうっと。


『グリーン・マイル4−ドラクロアの悲惨な死−』 スティーブン・キング(新潮文庫)
笑い☆☆☆☆☆ 涙★★☆☆☆ 恐怖★★★★★ 総合★★★★☆
 雷鳴の轟く夜、不思議な鼠<ミスター・ジングルズ>の飼い主であるドラクロアの処刑が行われようとしていた。その処刑の陣頭指揮に当たったのは、ドラクロアを憎み嫌っていた、 残忍な問題児看守・パーシーだった。彼は、ドラクロアの電気椅子処刑にあたり、絶対に省いてはいけないある重要な手順を、わざと省いてしまった。そのことにより、ドラクロアの処刑は、 悲惨きわまりないものとなってしまった。

 電気椅子による処刑というのは、いまだにアメリカの一部の州では採用されているそうだ。電気椅子は、囚人に苦痛を与えることない方法だといわれているみたいだが、たった一つの手順を抜いただけで これほど凄惨な結末になるとは。それにしても、処刑シーンの描写があまりにもリアルで、不覚にも気持ち悪くなってしまった。まるで自分もその場に居合わせたかのような気分になった。


『グリーン・マイル5−夜の果てへの旅−』 スティーブン・キング(新潮文庫)
笑い☆☆☆☆☆ 涙★★☆☆☆ 恐怖★★★☆☆ 総合★★★★☆
 死刑囚・コーフィには、不思議な力があった。それは、癒やしの力だった。そのことを確信した看守主任のポールは、あることを計画する。それは、脳腫瘍をわずらい余命幾ばくもない 刑務所長の妻を、コーフィに治療させようという計画だった。しかし、それを実行するためには、死刑囚であるコーフィを刑務所から連れ出さなければならず、もし連れ出したことが発覚したら ポールを始めとする看守は、職を失い路頭に迷うこととなってしまうのだ。

 ここまで読んできて、ようやく気がついた。「これはホラー小説じゃないな」と。ホラー小説の定義にもよると思うが、僕の考える定義によればホラー小説ではない。ふと考えてみると、 スティーブン・キングは『キャリー』や『ペット・セマタリー』などのホラー小説も書いている一方で、映画の『スタンド・バイ・ミー』や『ショーシャンクの空に』などの原作も書いているのだ。 だから、必ずしも純ホラーばかりだとは限らないのだ。この『グリーン・マイル』も確かに怖いが、叫びたくなるような恐怖ではない。それどころか、感動が味わえるのだ。だからこれから読もうと思っている人は、「恐怖」だけを 望んでこのシリーズに手を出さない方がいいと思う。


『グリーン・マイル6−闇の彼方へ−』 スティーブン・キング(新潮文庫)
笑い☆☆☆☆☆ 涙★★★★★ 恐怖★★☆☆☆ 総合★★★★★
 もしかしたらコーフィは、殺人犯ではないかもしれない。そう確信し始めたポールであったが、無情にもコーフィの死刑執行の日はやってきてしまった。それでもポールは、真犯人探しに奔走し、 その結果恐るべき真相を突き止める。はたして真犯人は誰なのか?そして、コーフィの運命は?

 なんかいかにも焦らしたあらすじの書き方をしてしまった。焦らすことで、少しでも多くの人が、『グリーン・マイル』を読んでみようかなという気になってくれれば、という一心で書いてしまった。 とにかく読んで欲しい。久々に感動した小説だ。気持ちいい涙というより、神を呪うような涙とでもいえばいいか。とにかく読んだ後、いたたまれない気分になる。 「雨の日の駒鳥みたいに、ひとりぽっちで街道を歩くのにも疲れた。」う〜ん、泣けるセリフだなぁ。


『黒魔術白魔術』桐生操(角川ホラー文庫)
興奮★★★☆☆ 笑い☆☆☆☆☆ 涙★☆☆☆☆ 熱中★★★☆☆ 総合★★★☆☆
 この本は、角川ホラー文庫からでているが、同じところから出版されている『リング』『らせん』などの小説とはひと味違う。 ストーリーのある小説ではなく、オカルトの知識書のような本だ。オカルトと言っても、UFOや超常現象というような わりと一般的なものではなく、タイトルにあるような「黒魔術」の他「錬金術」「秘密結社」「魔女狩り」など、 かなりダークで、一歩間違えば危険な知識が満載なのだ。

 そもそもこの本の著者がとてもアヤシイ。巻頭にある著者の説明によれば、桐生操とは、女性2人の共同ペンネームなのだそうだ。 女性がこれほどダークな本を書いているというだけでも驚きだが、他の代表的な著書のタイトルが『美しき拷問の本』『美しき殺人鬼の本』 などタイトルからしてダークなのだ。
 しかし、内容は、とても興味深くて面白い。特に錬金術についての話は面白かった。あのゲーテの戯曲で有名な魔術師ファウストが 15世紀〜16世紀のドイツに実在していたというのは意外だった。また、後半には、極めつけの危険知識「呪殺法」まで載っているのだ。 まあ、どの呪殺法も、「胎児の死体が必要」とか「処刑囚の肉片が必要」などと書いてあって、ちょっとやそっとでは実行できないが・・・。 しかし、世界のどこかには、実際にこんな事を実行している人がいるのかと思うと、オソロシイ。


『 鍵 』筒井康隆(角川ホラー文庫)
興奮★★★☆☆ 笑い★★★☆☆ 涙★☆☆☆☆ 熱中★★★★☆ 総合★★★★☆
 筒井康隆氏の過去の作品で、ホラー色の強いものを16話集めた短編小説集。しかし、ホラーなんだけど、なんとなくおかしいのだ、笑えるのだ。解説に書いてあったが、恐怖と笑いは本来同じものなのだが、 ライトを当てる方向が違うだけなのだそうだ。この本はまさに、そう感じさせる。ボーっと読んでいると、笑える話なのだけど、じっくり読むと 背筋がゾッとする話になるのだ。

 16話のうちでも「母子像」「くさり」「池猫」などは、かなり恐いのではないだろうか。
「母子像」:ある日一人の男が、生まれたばかりの我が子のために、玩具屋でシンバルをたたく猿の玩具を買っていく。その猿は、なんの間違いか白い布地で作られた 白いアルビノの猿だった。その玩具を買ってからしばらくして、妻と赤ん坊の姿が見あたらなくなる。しかし、泣き声は聞こえるのだ。そして、「かしゃん。かしゃん」とシンバルをたたく音も どこからともなく聞こえてくる・・・。
「くさり」:あるお屋敷に住む少女は、今まで何匹もの猫を飼っていた。しかし、1週間たつと決まって猫はいなくなっていた。いなくなる度に父親は代わりの猫を見つけてきた。そして、そんな時は、 いつも、父のいる地下の研究室から鎖を引きずる音が聞こえてくるのだった。そして、ある時猫の消失を疑問に思った少女は、父のいる書斎へ入った。すると、そこには・・・。


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