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山岡荘八


『柳生石舟斎』
山岡荘八(山岡荘八歴史文庫)
笑い2.0点 涙1.5点 恐怖0.5点 総合4.5点
 神陰流の流祖・上泉伊勢守秀綱は、故郷の上州を離れ、剣の道を追及するため漂泊の旅に出た。その道中で、柳生の評判を 耳にした秀綱は柳生の里を目指すことにした。
 秀綱が来ると知った柳生宗厳(のちの石舟斎)は、慢心、過信、未熟さゆえ、無謀にも秀綱に手合わせを願った。 秀綱の前に手も足も出なかった宗厳は、即刻秀綱に入門する。そして、秀綱が理想とする「無刀取り」の境地に 到達することを誓う。

 『柳生石舟斎』というタイトルだが、内容は、序盤―上泉伊勢守、中盤―柳生石舟斎、終盤―柳生但馬守宗矩にそれぞれ スポットが当たっている。
 現在放送しているNHK大河ドラマ「武蔵」は、かなり視聴率は悪いようだが、僕はほぼ毎週見ている。その「武蔵」の 中に柳生石舟斎が出てきたのだ。藤田まことが演じた石舟斎は武蔵相手に「無刀取り」を見せる。その奇妙な構えの無刀取りや、 石舟斎という人物に興味を持ったので本書を読んでみた。
 真田幸村、坂本竜馬と同じくらい柳生一族にはまりそうだ。それほどに面白かった。真田幸村の本を読んでいたときは、 憎くて仕方なかった徳川家康だが、本書を読んで家康観が変わったというか、家康もなかなか面白いやつ、と思うようになってしまった。 全く僕は影響されやすくて困る。


『柳生宗矩 (1〜4)』
山岡荘八(山岡荘八歴史文庫)
笑い2.5点 涙3.5点 恐怖0点 総合5.0点
 「無刀取り」という不殺の兵法で、戦乱のない世を目指す柳生石舟斎に、天下泰平を目指す徳川家康が弟子入りしたその日、 宗矩は、家康に出会った。石舟斎の代わりに、家康のもとに残ることになった宗矩は、関ヶ原の戦いや大阪の陣などを経て、 一人前の男に成長していく。そして、家康亡き後は、秀忠、家光の師範として、二人を名君に育てるべく奮闘を続けた。

 柳生一族と言うと、剣豪というイメージが強かったが、それは柳生一族のほんの一面でしかなかった。 宗矩は、徳川三代の師範となり、「無刀取り」を兵法だけでなく、政治や教育そして人生そのものの要として、 家康・秀忠・家光に伝え、泰平の江戸時代の基礎を作った。著者である山岡氏の脚色や、誇張や創作はあるにせよ、 宗矩は徳川家にはなくてはならない存在だったようだ。あれほど長く平和な江戸時代が続いたのも、宗矩のおかげといっても 過言ではない、かな。 だが、それほどの人物なのに、歴史の教科書で習った覚えがないのは不思議だ。
 全4巻となかなかの長編だが、関ヶ原や大阪の陣や島原の乱といった有名な戦乱は、非常にあっさり書かれている。 戦闘自体は数ページで終わってしまい、僕の好きな真田幸村の登場シーンも極わずか。そのかわりに、戦に至るまでの 過程や、戦後処理などが詳しい。
 捕らえられた石田三成をめぐるエピソードや、宗矩の友人である坂崎が千姫に恋するあまりに叛乱を企てた坂崎事件、 母の死を受け入れようとしない息子・十兵衛に、宗矩が父として、生死について教えるエピソードなど、 印象的で感動的な場面が多い。それと、竹千代(のちの家光)を、名将軍に育てるまでの物語はとても面白かった。
 おすすめの4冊。


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