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司馬遼太郎


『新選組血風録』 司馬遼太郎(角川文庫)
笑い0点 涙1.5点 恐怖0点 総合4.5点
 「油小路の決闘」:新選組を脱退し、「御陵衛士」という浪士団を作ろうとした伊東甲子太郎らと 新選組が決闘するに至った経緯。
 「芹沢鴨の暗殺」:町なかで大きな篝火をたいたり、民家に大砲を打ち込んだり、路上で 力士らを切り捨てたり、数々の騒ぎを起こし、隊の規律を乱した芹沢鴨の暗殺。
 「虎徹」:近藤勇が格安で手に入れた虎徹は全くの偽物だった。しかし、大変よく斬れたため、 近藤勇の虎徹は洛中に知れ渡っていった。
 「沖田総司の恋」:病が悪化し始めたため、総司は、医者に通い始めた。そして、 その医者の娘に恋心を抱いたものの、総司は、自分が京では評判の悪い「新選組」の隊士であることを打ち明けられずにいた。
以上のほか「長州の間者」「池田屋異聞」「槍は宝蔵院流」「海仙寺党異聞」「鴨川銭取橋」「前髪の惣次郎」「胡沙笛を吹く武士」 「三条磧乱刃」「弥兵衛奮迅」「四斤山砲」「菊一文字」の計15編からなる短編集。

 現在放送中のNHK大河ドラマ「新選組!」は、かなり視聴率が悪いようだが、僕は毎週見ている。近頃の大河ドラマは まるで民放のドラマのような若手人気俳優重用のキャスティングで、若い視聴者を獲得しようとしているようだが、 その分、昔からの大河ファンが離れ視聴率は下がる一方。皮肉な結果だ。
 そんなわけで、久々に新選組に興味を持ったので、長らく積読してあった本書を読んだ。
 文庫で550ページと、なかなかの厚みがあるが、読み始めるとその厚さは全く気にならず、 むしろもっと読みたいと思ってしまうほど面白かった。僕が知らなかっただけかもしれないが、 新選組にはそんな人物もいたのか、というようなマイナーな隊士にスポットをあてている。そして彼らが どんな背景をもち、どんないきさつで新選組に入り、新選組のなかでどんな結末を迎えていくのかというような 各隊士のドラマに重点をおいた短編集になっている。だから、新選組全体として、幕末でどんな 活動をして、どんな事件を起こしたかというようなことはほとんど書かれていない。
 それにしても僕からしてみれば、全く無名の人がほとんどなのに司馬さんの手にかかると、これほど面白く なるのかと驚いてしまう。どの短編も良かったが僕は、新選組の会計方・長坂小十郎を主人公にした「海仙寺党異聞」が 面白かった。こういう能ある鷹は爪を隠す的な人物は結構好きだ。


『燃えよ剣(上・下)』 司馬遼太郎(新潮文庫)
笑い1.0点 涙2.0点 恐怖1.0点 総合4.5点
 武州多摩の百姓の子”バラガキ(乱暴者)のトシ”は、生来の喧嘩好きと組織作りの天性によって、 浪人や百姓上がりの寄せ集め集団に過ぎなかった新選組を、京の志士たちを震え上がらせる最強の剣客集団へと 作り上げていった。しかし、時代は倒幕開国へと向かい、佐幕を貫く新選組は、幕府と運命をともにしていく。

 かなり昔に一度読んだのだが、大河ドラマで新選組をやっているこの機会に、再読することにした。
 初めて読んだときは、時代小説もほとんど読んでなかったし、新選組にそれほど興味もなかった。 それでも、とても読みやすかったし、土方歳三という男の魅力が十分に伝わってきた。再読した今回も、 しっかりとした己の信念を持った土方歳三という男はやっぱりかっこいいと思った。逆に、近藤勇は、途中から 政治家じみてきて、新選組局長らしくなくなっていき、ガッカリさせられた。
 僕は、真田幸村も好きなのだが、真田幸村も土方歳三も、旧体制(豊臣家、徳川幕府)を守るという信念を貫き、 そして滅びていったという共通点がある。両者とも、自分が守ろうとしているもののほうが不利という時代の流れを 感じていたと思う。それでも、寝返ったり裏切ったり、自分の信念を曲げたりせず、華々しく散っていったというのが 侍であり、男だなと思う。もちろん、どちらも勇敢で強くて知恵もある、と様々な魅力がある。
 土方歳三の生涯を描いた本書は、新選組好き、幕末好きな人には必読の一冊でしょう。


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