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笹沢佐保


『猿飛佐助諸国漫遊〜真田十勇士 巻の一〜』 笹沢佐保(双葉文庫)
笑い1点 涙0点 恐怖1.0点 総合4.5点
 徳川家康により、紀州九度山に半ば幽閉されている真田幸村。幸村は、来るべき家康と豊臣の決戦のために、全国各地の勇士を集めよう と思いたつ。そこで、家来の猿飛佐助に、勇士を探す旅をするよう命じたのだった。命令を受け、旅立った佐助に、出発早々、 甲賀の追っ手が現れる。

 本作は、笹沢氏の「真田十勇士」シリーズの1作目だ。
 真田家を題材にした池波正太郎の『真田太平記』とはひと味違う。まず、実在した確証がない十勇士を主役にしている。 さらに、佐助と才蔵の忍術合戦があったり、佐助が旅する道中で、天狗や妖怪騒ぎがあったりと、エンタテインメント性に富んでいる。 また、十勇士が次々と集まっていくのは、『里見八犬伝』に似た面白さがあり、今後の展開が楽しみである。


『大暴れ三好晴海入道〜真田十勇士 巻の二〜』 笹沢佐保(双葉文庫)
笑い1点 涙1.0点 恐怖1.0点 総合4.5点
 忍術使いの猿飛佐助・霧隠才蔵、槍術の達人・由利鎌之助、弓の名手・穴山小助の4人は、上京中の徳川家康を暗殺する計画を立てる。 家康の一行を目の前にし、誰もが家康暗殺成功を確信したその時、思わぬ事態が発生する。

 「真田十勇士」シリーズの2作目。このシリーズは、歴史・時代小説にありがちな、堅苦しさ、取っつきにくさのようなものが全くない。 逆に、展開が早く、とても読みやすい。また、表現が豊かで、その情景が鮮明に浮かび、登場人物の興奮・緊張感が強烈に伝わってくる感じがする。


『才蔵宮本武蔵を破る〜真田十勇士 巻の三〜』 笹沢佐保(双葉文庫)
笑い1点 涙0点 恐怖1.0点 総合4.5点
 真田幸村のもとに、佐助をはじめ、9人の勇士がそろった。幸村は、ゲリラ作戦を行うことを決意する。その作戦とは、霧隠才蔵 は、呪術により家康の命を縮め、猿飛佐助と海野六郎は、新築の上野城を破壊し、穴山小助と筧十蔵は、江戸近辺の徳川方大名 の家臣を暗殺するというものだった。

 「真田十勇士」シリーズの3作目。本作で、ついに十勇士がそろった。それぞれ、忍術使いであったり棒術・弓術・槍術の達人だったり 吹き矢や鉄砲の名手であったりと、それぞれに個性があって、とても面白い。また、笹沢氏は、定説がない歴史上の出来事などについて、 自分流の推理と想像力で書いているようで、それがまた、よい。


『真田幸村大阪城入城〜真田十勇士 巻の四〜』 笹沢佐保(双葉文庫)
笑い0.5点 涙2.0点 恐怖0.5点 総合4.0点
 真田十勇士の一人として活躍していた根津甚八は、実は偽物だった。その正体は、徳川方のスパイの忍者・小野川天馬でった。 この事実を本物の根津甚八から聞かされた佐助と海野は驚愕した。しかし、時すでに遅く、危険を感じた偽物の根津はすでに九度山を 去っていたのだった。その頃、家康は、豊臣との戦いの準備を着々と進めていた。その一つとして、豊臣方の大名・片桐且元を、裏切り者に仕立て、 徳川方に寝返らせたのであった。

 この四巻でいよいよ、大阪夏の陣が始まる。大阪の陣は、何度読んでも無念さを感じてしまう。歴史に「if」はないが、もし、淀君や 大野治長らが、幸村の意見をもっと取り入れ、籠城策やめ、積極的に攻めていったら、どうなっていただろうか。もしかしたら、幸村の奇襲が成功し、 家康の首も討ち取れたのではないだろうか。それとも、運の強い家康は、討てないだろうか。


『戦場に散った勇士たち〜真田十勇士 巻の五〜』 笹沢佐保(双葉文庫)
笑い0点 涙4.0点 恐怖1.0点 総合4.5点
 家康の巧妙な手段によって、総ての堀を埋められてしまった大阪城は、もはや裸城となってしまった。そのため真田幸村・後藤又兵衛・木村重成ら豊臣軍 の通称・七本柱を中心として、徳川の大軍と野戦を強いられることになった。幸村は、野戦に備え、旗を始めとする自軍の総て装備を真紅に統一した。 幸村の率いる一団は、「真田の赤備え」と恐れられた。

 本作は、『真田十勇士』の完結編にあたる。題名の通り、本作で多くの武将そして十勇士が戦場に散ってしまう。しかし、誰もが華やかな 討ち死にであり、そのどれもが美しく男らしい最期だった。やはり、戦国時代の武士には、病死や自害より、戦場での華やかな討ち死にがよく似合う。
 真田家−特に幸村−に関する小説を結構読んできた。なぜここまで真田ものにこだわるのか。真田幸村の魅力とは何だろうか。自分なりにちょっと考えてみた。
 まず幸村は、知力や統率力が高い。次に、ほとんどの武将や大名が長いものには巻かれろとばかりに、家康の支配下に入り、保身に走り、戦いを避けている中で、 幸村は、保身よりも、自らの武名を世に知らしめ、武士の美学と自分の生き方を貫くことを選んだ。そして、家康の大軍を少数で翻弄し、 打ち倒すという爽快さ。以上のような様々な要素が幸村の魅力となって、これほど真田ものにはまってしまっているのだろうと思う。


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