「真田軍記」「篝火」「高嶺の花」「犬坊狂乱」「森蘭丸」の計5作からなる短編集。
「真田軍記」:この短編(中編?)は4つの短編からなっていて、それぞれ真田一族に関わったいわば脇役的な
人物の物語が収められている。中でも「真田影武者」は、大阪夏の陣で討ち死にしたはずの幸村と
その子幸綱が、実は生き延びているという話である。
「森蘭丸」:織田信長の近習であった蘭丸は、18歳になっても初陣を果たせないでいた。
そんな頃、織田軍に武田討伐の気運が高まりつつあった。一方蘭丸は、偶然であった一人の娘に恋をしてしまっていた。
全編を通して、有名無名を問わず戦国の時代に生きた人々の戦い、生き様、死に様そして儚い恋いが書かれている。
どれもこれも、ごく少ない資料と史実をもとにして短編にまで仕上げられている。資料が少ないのもそのはずで、
”どこそこ村の某”というような普通時代小説の主人公にはなり得ないような人物を主人公にしているのだ。しかし、
戦いの大多数を占めたそういう一兵士の視点から、大阪の陣をはじめとする様々な戦いを見ることが出来て、大変面白い。
とくに森蘭丸の話は、長編で読んでみたい。それくらい魅力的なストーリーだった。 |