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宮部みゆき(初読感想)


『かまいたち』宮部みゆき(新潮文庫)
興奮★★★★☆ 笑い★☆☆☆☆ 涙★★★☆☆ 総合★★★★★
 ジャンルとしては、時代小説短編集になるようなのだが、舞台背景や人物が江戸時代なだけで、あとは、いい意味で新しい小説だ。とにかく、あまりの面白さに 時間を忘れ、一気に読んでしまった。さらに、この小説は、宮部さんの非常に初期の作品だということを知り、すぐにでも、他の作品を読みたくなってしまった。 初期でこれほどのものを書いているのだから、今はもっとすばらしい作品を書かれていることでしょう。

 内容は「かまいたち」「師走の客」「迷い鳩」「騒ぐ刀」の4編からなっている。
 「かまいたち」:夜になると風のように現れ、人を斬殺していく正体不明の辻斬り、通称「かまいたち」。ある夜、町娘の1人が その「かまいたち」を目撃してしまう。その後しばらくしてその娘の家の前に、新しい住人が引っ越してくる。そしてその人こそ、あの夜見た 「かまいたち」その人だったのだ・・・。
 「迷い鳩」「騒ぐ刀」この2作は、同じ登場人物による連作で、超能力を扱った時代小説だ。
 「騒ぐ刀」:ある時から不思議な能力が身に付いた町娘「お初」の父親が1本の脇差しを預かってくる。 その脇差しは、夜になると「おおおおおおおう・・・」とうなり声をあげるのだ。しかし、お初だけは うなり声ではなく、しっかりとした声を聞く。その声は「この声を聞き届けたなら、坂内の小太郎に、虎が暴れていると伝えてくれ」 としきりに訴えているのだ。そして、そんなとき、江戸の町で、一家惨殺事件が発生する・・・。


『本所深川ふしぎ草紙』宮部みゆき(新潮文庫)
興奮★★☆☆☆ 笑い☆☆☆☆☆ 涙★★★★★ 総合★★★★☆
 「片葉の芦」「置いてけ堀」など深川七不思議を題材にした短編時代小説。どれもが下町で起こった事件と、それを取り巻く人間の愛憎、あさましさなどを扱い、その中に、深川の七不思議を織り交ぜていくという形を取っている。
それにしても、宮部さんはすごい。現代に生きる超能力者の苦悩を書いたと思えば、こんな下町人情あるれる感動的な物語を書いてしまうとは。
 まあ、読んで損なし。


『震える岩−霊験お初捕物控−』宮部みゆき(講談社文庫)
興奮★★★☆☆ 笑い★☆☆☆☆ 涙★★★☆☆ 総合★★★★☆
 江戸の深川に住む男・吉次は、ある朝心臓発作で死んだ。しかし、その葬儀中、死人憑きに憑かれ蘇る。その後吉次は、何事もなかったように 仕事に戻る。常人には見えないものが見える霊力の持ち主・お初は、その深川の「死人憑き騒ぎ」を調べはじめる。そんな中、江戸の町では 幼い子供を殺し、遺棄する事件が連続して発生する。そして、調べていくうちに死人憑きと、幼い子供殺人事件とさらには、100年前に起こったあの赤穂浪士 の討ち入りの意外な関係が浮かび上がってくる。

 宮部みゆき、時代小説短編集『かまいたち』で、初登場した「お初」が 今度は長編小説として登場した。お初は、江戸に住む女の子で、人には見えないものが見え、人には聞こえないものが聞こえるという不思議な能力の持ち主だ。 そしてその能力は、江戸に起こる不思議な事件をたびたび解決する。やはり宮部みゆきの超能力モノは、面白い。現代小説ではなく、設定を江戸時代にしたというのも 新鮮で面白い。捜査技術が発達していない江戸時代だから、お初の超能力が光るのだと思う。


『幻色江戸ごよみ』宮部みゆき(新潮文庫)
興奮★★★☆☆ 笑い☆☆☆☆☆ 涙★★★☆☆ 総合★★★☆☆
 各話のタイトル。第1話「鬼子母火」。第2話「紅の玉」。第3話「春花秋燈」。第4話「器量のぞみ」。第5話「庄助の夜着」。第6話「まひごのしるべ」。第7話「だるま猫」。 第8話「小袖の手」。第9話「首吊り御本尊」。第10話「神無月」。第11話「侘助の花」。第12話「紙吹雪」。最後の2話がおすすめ。

 宮部みゆきの短編時代小説集。第1話から第12話まであり、それがタイトルにあるように暦(こよみ)となっているようだ。つまり第1話だったら1月頃の話で、第10話なら 10月頃の話、というように。
 江戸下町の人情と怪異を題材にしているところは、いつもと同じなのだが、今回は、怪異さよりも人情の方に重点が寄っているような感じがする。だから、いつもとは違ってちょっと大人しい印象を受けた。


『初ものがたり』 宮部みゆき(PHP文庫)
興奮★★☆☆☆ 笑い☆☆☆☆☆ 涙★★☆☆☆ 総合★★★☆☆
 「お勢殺し」「白魚の目」「鰹千両」「太郎柿次郎柿」「凍る月」「遺恨の桜」の全6作からなる短編集。本所深川の岡っ引き・茂七親分が、江戸の下町で起こる摩訶不思議な事件に立ち向かう。 茂七親分は、事件に行き詰まったり悩みがあったりすると、必ず深川富岡橋のたもとにある稲荷寿司屋の屋台で、1杯飲む。その屋台の親父が、出す料理や、何気ない一言が事件解決の糸口になったりするのだ。

 超能力を持っていると評判の拝み屋の少年・日道さまや、正体不明の稲荷寿司屋の親父、その屋台の親父にはなぜか手を出さないやくざ者の勝蔵など、個性的な人物はたくさん出てくるのだが、 面白さは今一つだった。ストーリーも、季節感と人情味にあふれる捕り物小説で申し分はないが、どこか物足りなさを感じてしまった。



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