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宮部みゆき


『あやし −怪−』 宮部みゆき(角川書店)
笑い0点 涙2.0点 恐怖2.0点 総合4.5点
 「居眠り心中」「影牢」「布団部屋」「梅の雨降る」「安達家の鬼」「女の首」「時雨鬼」「灰神楽」「蜆塚」の 計9編からなる短編集。
「布団部屋」:どんな暴れ者でも十日ほどでしっかりした奉公人になるという酒屋・兼子屋に 奉公することになったおゆうが、布団部屋で体験した怪異と兼子屋の秘密とは。
「梅の雨降る」:決まりかけていた結婚が破談になってしまったおえんは、しばらくして縁日に行った。 そこで「大凶」を引いてしまったおえんは、ある言葉を呟きながら大凶のおみくじを梅の枝に結んだ。すると数日後、おえんに代わって 結婚した娘が、疱瘡にかかり死亡したのだ。
「女の首」:10年前生まれて間もない赤子を誘拐されて失った、という過去のある葵屋に奉公することに なった太郎は、物心ついてから一言もしゃべったことがなかった。そんな太郎は葵屋の一室で、女の首が描かれた唐紙を見つける。しかし、 その絵は太郎にしか見えないのだった。

 江戸の町を舞台にした奇談小説。
 心臓がバクバクするような激しい恐怖ではなく、後からジワジワくるような静かな恐怖を味わえる短編が多い。そして、 どの短編も幼くして奉公に上がったような子が主人公で、江戸時代では珍しいことではないとはいえ、どこかもの悲しい空気が漂っている。
 また、現代小説にはない、時代物ならではの言葉遣いや表現が、とても味わい深かった。


『あかんべえ』 宮部みゆき(PHP研究所)
笑い2.5点 涙3.0点 恐怖2.0点 総合5.0点
 深川の料理屋「ふね屋」を始めたばかりの太一郎と多恵だったが、最初の客が入る前に一人娘のおりんが高熱で倒れてしまった。 死の淵をさまよっていたおりんは、病床でどこからともなく現れた一人の少女と出会う。彼女は、おりんに「あかんべえ」をすると どこかに行ってしまった。
 なんとか一命を取りとめたおりんだが、このとき以来、「ふね屋」に住む5人の”お化けさん”が見えるようになる。 そして「ふね屋」に初めてのお客が来たその日、「おどろ髪」と呼ばれている”お化けさん”が暴れ出してしまう。 あっという間に、「ふね屋にはお化けが出る」という噂が広まり、「ふね屋」の客足は遠のくばかりだったのだが……。

 「最高の時代サスペンス・ファンタジー」との帯に偽りなし。時代小説で、サスペンス(ホラー)で、ファンタジーと一度に 3つのジャンルが楽しめる贅沢なエンタテインメント。
 「ジブリのアニメにぴったり」との評判を結構聞いていたが、ほんとうにその通りだ。主人公の少女・同年代の少年・ 多彩なキャラクター・ファンタジックなストーリーなど。ジブリの絵がすぐに思い浮かんでくるような小説だ。
 それにしてもよくこれほどの大人数を操って、様々な事件やエピソードを盛り込み、キチッと完結できるなぁと 改めて感心してしまう。たとえ僕に同じ設定といくつかのエピソードが思い浮かんだとしても、 絶対に100%こんな面白い作品は書けない。どこから書き始めたら良いのか、どうやってここのエピソードをつなげるのか 見当がつかない。やはり小説は「読む」のに限る。
 宮部さんの時代はまだまだ続く。


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