「居眠り心中」「影牢」「布団部屋」「梅の雨降る」「安達家の鬼」「女の首」「時雨鬼」「灰神楽」「蜆塚」の
計9編からなる短編集。
「布団部屋」:どんな暴れ者でも十日ほどでしっかりした奉公人になるという酒屋・兼子屋に
奉公することになったおゆうが、布団部屋で体験した怪異と兼子屋の秘密とは。
「梅の雨降る」:決まりかけていた結婚が破談になってしまったおえんは、しばらくして縁日に行った。
そこで「大凶」を引いてしまったおえんは、ある言葉を呟きながら大凶のおみくじを梅の枝に結んだ。すると数日後、おえんに代わって
結婚した娘が、疱瘡にかかり死亡したのだ。
「女の首」:10年前生まれて間もない赤子を誘拐されて失った、という過去のある葵屋に奉公することに
なった太郎は、物心ついてから一言もしゃべったことがなかった。そんな太郎は葵屋の一室で、女の首が描かれた唐紙を見つける。しかし、
その絵は太郎にしか見えないのだった。
江戸の町を舞台にした奇談小説。
心臓がバクバクするような激しい恐怖ではなく、後からジワジワくるような静かな恐怖を味わえる短編が多い。そして、
どの短編も幼くして奉公に上がったような子が主人公で、江戸時代では珍しいことではないとはいえ、どこかもの悲しい空気が漂っている。
また、現代小説にはない、時代物ならではの言葉遣いや表現が、とても味わい深かった。
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