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海音寺潮五郎


『真田幸村(上)』 海音寺潮五郎(角川文庫)
笑い3.0点 涙0.5点 恐怖点 総合4.0
 信玄の死後、急速に衰退し始めた武田家は、織田信長・徳川家康・北条氏政らの強敵に囲まれ、滅亡の危機に瀕していた。 武田家の外様・真田昌幸は、武田家に見切りをつけつつも、武田勝頼に秘策を申し出た。
 一方、幸村は、清く散ってこそ武士であるとの信念を持ち、武田家に見切りをつけてまで生き延びようとしている父・昌幸に反感を覚えた。

 まだ信長が存命の時代に生きる若き真田幸村に焦点をあてた小説である。上巻は、武田家滅亡から、本能寺の変までというごく短い期間の 幸村の様子を描いている。
 【笑い】に3点の評価がついているが、これは、上巻の中盤あたりから登場する”赤吉”という子供が、とても愛くるしくて、 その言動には思わず笑ってしまうからなのだ。この赤吉は、猿飛佐助のような存在なのだが、山で偶然幸村に出会い、幸村になついてしまったため、 幸村が家来にしたのだ。しかし、言葉遣いも、礼儀も知らず、あどけないのだが忍者としての技術は一級品だったのだ。


『真田幸村(下)』 海音寺潮五郎(角川文庫)
笑い1.5点 涙点 恐怖点 総合4.0
 天目山で武田勝頼が自刃し、武田家は滅亡した。しかし、ただ一人、武田家の血筋を引く姫君・信証尼が 生き残った。信証尼にひそかに思いを寄せる幸村であったが、信証尼の行方はわからなかった。そこで赤吉は、幸村のために 彼女の行方を探し出すことにした。その道中、赤吉は三好清海という大入道と、その弟・伊三丸という小太りの坊主に出会う。

 下巻は、甲州をめぐっての徳川勢と北条勢の争いに、真田家が巻き込まれていく所までが書かれている。つまり、 大阪の陣はおろか、関ヶ原の戦いすらも触れられていないのだ。幸村を主人公にしている小説で、大阪の陣を取り上げていないのは、 面白味が半減してしまう。でも、若き幸村が昌幸の側について、戦術や武将の生き方などを学び成長していく様子を中心にとらえるのは、 逆に新鮮だったと思う。また、本書では、幸村と信証尼の恋も重要なポイントになっている。
 今までの幸村についての小説とは、少し趣は違うが、一読の価値はある。


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