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池波正太郎


『真田太平記』(一)天魔の夏 池波正太郎(新潮文庫)
興奮★★★★★ 笑い★☆☆☆☆ 涙★☆☆☆☆ 総合★★★★☆
 織田・徳川連合軍によって武田軍団が滅ぼされ、仕える人がいなくなった真田昌幸は、孤立する。滅ぼされた武田軍団の長柄足軽をしていた向井左平次は、死の淵を彷徨っているところを 真田忍び(草の者)の、お江に救われる。第一巻では、この左平次の行方と、真田家の行方が並行的に語られている。

 ついに、読み始めてしまった。全12巻もある「真田太平記」。今回は、第一巻だが、もう、すっかりはまってしまったようだ。早く第二巻が読みたくなっている。 とあるサイトで、忍者物でお薦めの本はないかと聞いたところ「真田太平記」がよい、ということだったので、読み始めてみた。確かに、面白い。真田昌幸は 忍者(真田昌幸は草の者、草と呼んでいる)を、大変重宝し、接し方も他の武将とは全く違ったものなのだ。そのためか、これに登場する忍者たちは、人間的で、 暖かみがあるのだが、それでいて、仕事は一流なのだ。
 笑いに一つ★がついているが、それは真田源二郎(後の幸村)と、向井左平次のコンビがとてもいい味を出していて、ちょっと笑えるのだ。笑えると言っても爆笑 ではなく、ほのぼのとした笑い、といったらよいだろうか。とにかく、読み始めたら止まらなくなりそうな本である。


『真田太平記』(二)秘密 池波正太郎(新潮文庫)
興奮★★★★★ 笑い☆☆☆☆☆ 涙★☆☆☆☆ 総合★★★★☆
 織田信長が本能寺で討たれたため、再び群雄割拠の時代となる。沼田・岩櫃・砥石城を有することで、上州・信州に割拠する真田昌幸は、関東の北条氏、東海の徳川、 越後の上杉の動向を探りつつ、上田に城を築くことを決心する。そんな激動の時に、昌幸の側室ではない「お徳」が昌幸の子を身籠もってしまう。 身分の卑しい「お徳」が身籠もったことを受けて、真田源二郎は、向井左平次にある重大な秘密を明かす。
 池波氏は、ちょっと変わった「」の使い方をするようだ。ふつう「」は会話に使われるが、時に、強調したい部分や、人物の気持ちを表すのにも使っているように思われる。 だから、最初ちょっと読みにくく感じたが、もう慣れた。

真田太平記は読んでいて、他人事とは思われないと言うか、何となく親近感が湧く。なぜならば、僕が、群馬県沼田市に生まれた男だからだ。沼田城跡があるすぐ近くに 父方の実家があるのだ。最近まで、真田家と沼田市の関係など全く知らなかった。でも、沼田城が、真田家にとって、けっこう重要な位置を占めていたということを知って ちょっと驚いた。それまでは、何の取り柄もない生まれ故郷だなと思ってたけど、少し誇りが持てた気がする。


『真田太平記』(三)上田攻め 池波正太郎(新潮文庫)
興奮★★★★★ 笑い☆☆☆☆☆ 涙★★☆☆☆ 総合★★★★☆
 上州・沼田城の帰属をめぐり緊張関係にあった真田家と北条家。そんな緊張の中、ついに徳川家が動き出す。出来たばかりの上田城に徳川軍が、沼田城に北条軍が攻め込む。しかし、源三郎の命を懸けた 戦いなどにより、真田家は、5倍の兵力を持った徳川・北条連合軍を退ける。しかし、上田城を守ったのもつかの間、今度は、真田忍びのお江に、「名胡桃城が危ない」と知らされる。名胡桃城には、 真田昌幸の親友・鈴木主水親子がいるのだ。果たして、主水の運命は。

 今回の見所はやはり、上田攻めにおける真田軍の活躍と小田原城をめぐる豊臣秀吉の謀略だろう。天下統一直前の大戦といった雰囲気があって、非常に面白い。また、プライドが邪魔して、なかなか 秀吉に頭を下げられない北条家が、とても愚かで、滅びるべくして滅んだのだということがよく分かる。


『真田太平記』(四)甲賀問答 池波正太郎(新潮文庫)
興奮★★★★★ 笑い☆☆☆☆☆ 涙★★☆☆☆ 総合★★★★☆
 天下統一をなした豊臣秀吉だったが、その後、魔物に憑かれたかのように、あきらかに無謀な朝鮮出兵を実行する。そこに豊臣政権の終焉を見た甲賀忍びの山中俊房は、 豊臣に仕える山中長俊を徳川方に加担させようと画策する。これを耳にした「お江」を始めとする真田の草の者は、密かに山中長俊を尾行する。しかし、このことにより、 甲賀忍びと真田の草の者との超人的な戦いが幕を開ける。

 今回はまさに「忍者」が主役。佐助も出てくるし、もう大満足。さらに、忍び同士の壮絶な裏の読み合いと、戦いぶりはまさに手に汗握る。また、真田家の内部も昔とは違って 幾分ギクシャクし始めていて、今後の展開がホントに楽しみだ。


『真田太平記』(五)秀頼誕生 池波正太郎(新潮文庫)
興奮★★★★★ 笑い☆☆☆☆☆ 涙☆☆☆☆☆ 総合★★★★☆
 朝鮮出兵もうまくゆかず日に日に衰えを見せる豊臣秀吉。諸国の武将は、秀吉の没後に向け動き始めていた。しかし、思いがけず拾丸(秀頼)が誕生してしまう。 このことにより、天下の情勢はまた微妙に動き始める。

 徐々に、佐助の出番が多くなってきた。今回は、樋口角兵衛の悪行を陰ながら阻止したり、いよいよ一人前の草の者として活躍するようになるのだ。しかし、その一方で 向井左平次とか、真田左右衛門佐幸村など、今まで出番の多かった人物があまり登場しなかった。まだ五巻だし、半分も読み終わってないからこれからに期待しよう。


『真田太平記』(六)家康東下 池波正太郎(新潮文庫)
興奮★★★★☆ 笑い☆☆☆☆☆ 涙☆☆☆☆☆ 総合★★★★☆
 豊臣秀吉の死後、家康は朝鮮出兵における豊臣政権内部の文治派と武断派の対立を巧みに利用し、五大老筆頭として独裁的な権力を振るうようになってきた。 そんな折り、文治派の石田三成と通じ不穏な動きを見せていた上杉景勝を討つべく、家康が東下した。まさに東西決戦が起ころうとしているこのとき、 真田父子3人は、犬伏の陣において、今後の去就について語り合う。

 今回は、家康率いる東軍と三成率いる西軍が、関ヶ原の決戦に至るまでに行った「仲間集め」を始めとする根回しが主となっていてちょっと退屈した。さらに、新しい人名が 次々と出てきて、じっくり読まないと、誰がどちらの味方なのか分からなくなってしまうのだ。


『真田太平記』(七)関ヶ原 池波正太郎(新潮文庫)
興奮★★★★★ 笑い☆☆☆☆☆ 涙★★★☆☆ 総合★★★★☆
 真田分家と本家が、それぞれ東軍、西軍に分かれて戦うことになってしまった関ヶ原の戦い。真田本家の昌幸と幸村は、秀忠の軍を、決戦に間に合わないようにするため、信州上田城にて 東軍・徳川秀忠の約3万もの軍を相手に策を弄する。そして、秀忠の軍の先鋒をつとめる信幸の軍は、砥石城で弟・幸村と対峙することになる。一方、真田の草の者たちは、家康の首を狙うべく 関ヶ原に向かった。

 いよいよ誰もがよく知っている関ヶ原の戦いだ。中学や高校の歴史の授業では、それほど詳しく教えてもらえなかったけど、これを読んで改めて、石田三成は負けるべくして負けたんだな と思った。三成率いる西軍は、東軍の約3万もの兵を真田本家が、足止めしていたにもかかわらず惨敗した。確かに小早川秀秋の内応があったとはいえ、それがなくとも、長引けば西軍は負けていただろう。 なんといっても三成の高すぎるプライドと決断力のなさが致命的だった気がする。家康の謀略にいち早く気づき家康討伐に立ち上がったはいいけど、西軍の大将としては、全く相応しくなかった。 もし真田昌幸が西軍の大将とまではいかなくても、関ヶ原に出張っていたら、絶対家康は負けていたと思う。もし家康が負けていたら、歴史はどう変わっていたのだろう。歴史にifはナイというけれど 非常に興味をそそられる。また、今回は、草の者の活躍が目を引く。しかし、その最中、草の者のあの人が死んでしまうのがちょっと悲しかった。


『真田太平記』(八)紀州九度山 池波正太郎(新潮文庫)
興奮★★★★★ 笑い☆☆☆☆☆ 涙☆☆☆☆☆ 総合★★★★☆
 関ヶ原の合戦において、徳川秀忠の軍を上田に足止めし、合戦に間に合わせなくした真田本家の昌幸と幸村は、当然切腹を命ぜられると思っていた。ところが、本多忠勝の必死の助命嘆願 により、家康はしぶしぶ切腹させることをあきらめる。そのかわりに、真田本家の父子は、紀州九度山に、蟄居させられることになる。上田城を開城し、少数の家来のみを連れ、俗世と離れて暮らすことになった 昌幸と幸村は、戦いの日々が再びやってくることを、思いつつ孤独に暮らすことになった。

 九度山に閉じこめられたため、全く真田昌幸・幸村の活躍がなくなってしまった。とても残念だ。そのかわり今回は、草の者の登場が多い。猫田与助とお江のニアミスがあったり、佐助が甲賀の忍者に 尾行されたりと、ドキドキの展開が続く。それにしても、八巻くらいになると、昔活躍していた豪傑たちは、みんな年老いてしまっているか、死んでしまっている。お気に入りの人物の死は、やはり残念だ。 次巻では、いよいよ『真田太平記』の主役とも言えるあの人が、ついに死んでしまうようだ。


『真田太平記』(九)二条城 池波正太郎(新潮文庫)
興奮★★★★☆ 笑い☆☆☆☆☆ 涙★★☆☆☆ 総合★★★★☆
 徳川家康から何度も上洛を迫られていながら、淀君の一存によって大阪城から一歩も外に出されることのなかった豊臣秀頼。しかし、事態を重く見た加藤清正らの忍びを使ってまでの説得により ついに、京都・二条城において、秀頼と家康の対面が実現した。ところが、思いの外、立派に成長した秀頼を見た家康は改めて、豊臣家潰しの決意を固めることになる。

 ついに、真田昌幸が死んでしまった。真田太平記の主役とも言うべき人物の最期は、思いのほかあっさりしていた。また、今回は、草の者の中でも死者が出る。毎日命を懸けて 任務を遂行しているとはいえ、忍者の最期もあっけなく、むなしいものだ。『真田太平記』もいよいよ残すところあと3巻だ。これからは、昌幸の息子・幸村と信之が、主となるはずだ。 上田の「真田太平記記念館」に行くためにも、早く残りを読まねば。


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