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マイクル・Z・リューイン


『A型の女』マイクル・Z・リューイン/石田善彦訳(ハヤカワ文庫)
笑い0.5点 涙1.5点 恐怖0.5点 総合4.5点
 ここ数日、狭いオフィスで本を読み暇をつぶしていた私立探偵アルバート・サムスンのもとに、一人の少女が訪ねてきた。 「わたしの生物学上の父を探して」。そう懇願するその少女は、大富豪クリスタル家の一人娘だった。彼女は、血液型から 自分は実の子ではあり得ない、と涙ながらに訴えるのだ。ほとんど手がかりの無い状態で調査をはじめたサムスンだったが…。

 とある対談で宮部みゆきさんがアルバート・サムスンのような探偵さんを主人公にした小説を書いてみたいと言っていたのを見て、 本書を読んでみた。
 サムスンは、酒よりもコーヒーとオレンジ・ジュースを好み、暴力は好まず銃も持ち歩かない。そして離婚した妻と娘のことを いつも心配している。こんなハードボイルドらしからぬ主人公なのだ。一日の調査の区切りがついたらちゃんと睡眠をとって、 朝食は何を食べて、何時にどこへ行って、とかなり細かく書かれている。だから、調査が着々と進行している様子がよく わかって、とても面白い。
 ただタイトルにいまひとつひねりがないな、と思う。内容はまさに「A型の女」なのだが、もうすこし洒落たタイトルだったら 個人的にはよかった気がする。
 ハードボイルドファンだけでなく、ミステリーファンも楽しめる一冊。


『死の演出者』マイクル・Z・リューイン/石田善彦訳(ハヤカワ文庫)
笑い1.5点 涙0.5点 恐怖0.5点 総合4.0点
 暇を持てあます私立探偵アルバート・サムスンに、久しぶりに依頼が舞い込んだ。殺人罪に問われた娘婿を助けてほしいという。 母親の横柄な態度にはうんざりしたが、彼女の娘が夫の無実を信じているひたむきな姿に心を打たれ、 サムスンは調査をはじめることにした。しかし事件は思った以上に奥が深く、背後には黒い陰謀が渦巻いていた。

 私立探偵アルバート・サムスンシリーズ第2弾。
 暴力を好まずマイペースで自然体な心優しき探偵サムスンの物語は、読むとこちらも優しい気持ちになる。事件自体は、 優しさとは程遠いものなので、サムスンがいることで読んでいて不快にならないようバランスがとれている気がする。
 その事件の真相は、途中で推理しうる程度のものなので、ミステリファンには物足りないかもしれない。でも、サムスンがその 真相に至る過程や随所に見られるシャレた発言などを読むだけでも面白さは充分に堪能できる。
 翻訳ならではの読みにくさもなく、とても読みやすい一冊である。


『内なる敵』マイクル・Z・リューイン/島田三蔵訳(ハヤカワ文庫)
笑い1.5点 涙0.5点 恐怖0.5点 総合4.0点
 偏執的な夫から逃れ、昔の恋人マーチンと暮らしているメラニー。だが、彼女の夫は私立探偵を雇い執拗に彼女を追ってくる。 そこでマーチンはメラニーの夫が雇った探偵を追い払い、彼女の追跡を諦めさせるようにうまく取り計らってくれ、とサムスンに依頼した。
 依頼を受けたサムスンが調べるうちに、次々とメラニーとマーチンの嘘や隠し事が明らかになり、ついにはメラニーに殺人容疑が かかっていることまで判明する。

 銃も酒も暴力も好まず、読書が好きという普通の男――だがハードボイルドの主人公としては珍しい私立探偵アルバート・サムスン。 そのシリーズ第3弾。
 依頼人はウソをつくものとよく言われるが、これほど依頼人からの情報があいまいだと探偵としてはさぞかし大変だろうなぁ。 だけどサムスンは苦労しながらもコツコツと依頼をこなしていくのだ。そしてそのサムスンの行動がまるで報告書のように細かく 書かれている。だから結構な長編なのに、実際はクリスマス前後の数日間の話なのだ。
 作中、メラニーの夫が雇った探偵バーソロミューとサムスンの関係がとても面白い。ひょっとして今後もバーソロミューは 登場するかもしれない。


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