大沢在昌
『新宿鮫』 大沢在昌(光文社ノベルス) |
笑い0.5点 涙2.0点 恐怖1.5点 総合4.5点 |
新宿で警官射殺事件が発生した。新宿署中が犯人逮捕に奔走しているとき、ひとり銃密造の犯人を追っている刑事がいた。
犯罪者たちに”新宿鮫”と恐れられている彼は、キャリア組として将来が約束されていた。しかし、自分の信念に
もとづき行動する彼は、ある事件をきっかけにキャリア組から落ちこぼれ、独り悪と闘う刑事となった。
多くの人が本書を絶賛し、本書で大沢在昌は変わったと書いているのを見た。大沢氏の小説を読むのは始めてなので、
これまでの著作とどう違うのかはわからないが、たしかに面白いハードボイルド小説だった。実際もこうなのだろうなあ、
と思わせるリアルな警察内部の様子や、独り悪に立ち向かう鮫島刑事と彼のわきを固める女性ロッカーや桃井課長などの
魅力的な登場人物そして、舞台の新宿のようすなど、
とてもよく書かれていて一気に引き込まれた。シリーズ化されているようなので、それらも読んでみようと思う。
それにしても「新宿鮫」、「不夜城」、「テロリストのパラソル」など、ハードボイルドで使われる新宿は、ホントに
怪しく怖い。夜の新宿など行ったことのない田舎人の僕としては、絶対に近づけない、近づかない方がいい土地として
インプットされてしまった。
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『エンパラ 旬な作家15人の素顔に迫るトーク・バトル』 大沢在昌(光文社文庫) |
笑い2.5点 涙0点 恐怖0点 総合4.0点 |
本書は、1995年6月〜1996年8月まで「小説宝石」に連載されていた「エンタテインメント・パラダイス」という対談をまとめて文庫にしたものだ。
作家・大沢在昌氏がホストとなって毎回、旬な作家と対談するのだが、対談というよりおしゃべりに近い雰囲気がある。
ホストの大沢氏が、そういう雰囲気を出しているからか、ゲストは皆、饒舌で様々な面を見せてくれている。
ゲストは、船戸与一、京極夏彦、瀬名秀明、宮部みゆき、綾辻行人、真保裕一、浅田次郎の他計15人の作家たちである。
中には僕がまだ読んだことのない作家もいたが、対談を読んでみて「そんなに面白いなら読んでみよう」という気になった。
「ワープロ派?」とか「一日何枚書く?」とか「何時に起きる?」などといったミーハーな質問が多い対談自体も面白かったが、
京極さんが黒手袋してない普通の姿の写真とか、その京極さんの対談にいちファンとして乱入した宮部さんの様子とか、
対談と関係ないような所でも楽しめた。お薦めの対談集である。
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『毒猿 新宿鮫U』 大沢在昌(カッパノベルス) |
笑い0点 涙3.0点 恐怖1.5点 総合5.0点 |
台湾人相手の常設賭場を監視していた新宿署の鮫島は、「ただものではない」雰囲気を持った男を目にする。急襲してきた刺客を、
一瞬にして病院送りにするほどの力を持つその男は、日本にある人物を追ってきたのだという。その人物は、鍛えぬかれた身体と
様々な殺人技術に長けた職業的殺し屋――通称”毒猿”という男だった。
こういう小説を「人間が書けている小説」というのではないだろうか。とにかく、主人公も脇役も悪人も善人も個性があって、
生き生きしている。だからこそ、興奮しグッとくるのだと思う。さらに今回は、アクションシーンも豊富で、個人的には
前作よりも面白かったと思う。ただ、結構殺人とか拷問とか、過激なシーンが出てくるので、嫌悪感を抱く人もいるかもしれないが、
是非ともラストまで読み通してほしいと思う。
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『未来形J』大沢在昌(角川文庫) |
笑い1.5点 涙0点 恐怖0点 総合3.5点 |
小説家志望のフリーター・菊川真、大学院で地球物理学を専攻する茂木太郎、卜占術師・赤道目子、
女子中学生・立花やよい、そして高校三年でスポーツ青年の山野透。何の共通点もない彼らは、ある日突然、Jと名乗る見えない
存在の意思によって集められた。Jは言う。「あなたの助けが必要です。」Jとは何者なのか?Jとの対話を
続けながら意外な真実に近づいていく。Jが握っている未来、それは――。(本書あらすじ引用)
インパクのJ-PHONE SKY Pavilionを通して配信、連載されていた小説の文庫版。さらに終章は、ネット上で
一般公募した原稿の中から大沢氏が選んだ最優秀作品が掲載されている。
前半はとても謎めいていて、何だかスケールの大きな展開になっていくのかな、と興味津々で読んでいた。
しかし次第にスケールがしぼんでいき、なんだか中途半端なSFファンタジーになってしまった気がする。それと、
終章を公募するくらいだから、どうにでも方向転換できそうなストーリーになっているなと感じた。実際、大沢氏が
選んだ最優秀の終章では、一気にスケールが大きくなっていて、正直ちょっと戸惑った。
終章公募という試みは面白い。欲を言えば、大沢氏オリジナルの終章も読んでみたかった。
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