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エッセイ


『笑いのモツ煮こみ』東海林さだお(文春文庫)
興奮★★☆☆☆ 笑い★★★★☆ 涙☆☆☆☆☆ 総合★★★☆☆
 この本の著者は、毎日新聞の4コマ漫画「アサッテ君」でおなじみの東海林さだおさんです。この人は、漫画以外にもエッセイというか、おもしろおかし話を多数出版しています。 文体が、ちょっと椎名さんに近いものがあります。しかも、改行がやたら多いので読みやすいです。もちろん挿し絵は、東海林さん自身が描いています。

 内容は、全く統一感がありません。共通することといったらすべての話の根底には、「笑い」があるということですね。中でも興味を引かれたのは、「男の化粧」(これは、 東海林さんが、3万円の美顔エステにいった話。僕は体験できないので興味深かった。)、「頭の銷夏法」(東海林さんが体験した「頭の良くなる椅子」「100万ボルトの電気椅子」 「心霊パワー」の話。)その他にも、誰でも一度は思うことをまとめた「人生のダイゴミ」「やりたくないこと」「捨てられないもの」など。
 なかなか面白い本でした。


『転校生』沢野ひとし(角川文庫)
興奮★★☆☆☆ 笑い★★☆☆☆ 涙★★★☆☆ 総合★★★☆☆
 この本の著者「沢野ひとし」とは、椎名誠専属のイラストレーターではないけれど、そういっても過言ではないほど、椎名さんの本はことごとくこの人が 挿し絵を描いています。素人でも描けそうで描けない不思議な絵で、独特な雰囲気を持っています。

 この本の原題は『太田トクヤ傳』といい、沢野氏の友達で、普通の一般人である「太田トクヤ」さんの半生を綴ったいわば伝記のようなものです。 有名人・偉人の半生を綴ったものなら数知れず出版されているけれでも、ただの一般人の伝記ってあまりないのではないのでしょうか?まあ、そんな全く 知られていない人の伝記を読んだって普通面白くないのですが、これは違います。そこそこ面白いです。
「太田トクヤ傳」の他に、著者・沢野氏の青春時代の恋愛、友人などを通し、少年から大人へと成長していくようすが書かれています。全体的にほのぼのとしていて 優しい気持ちになれる1冊です。


『こちら救命センター』浜辺祐一(集英社文庫)
興奮★★☆☆☆ 笑い★★☆☆☆ 涙★★☆☆☆ 総合★★★☆☆
 この本も古本屋で100円だったので衝動的に買ってしまったものだ。この本は、看護婦さん向けの月刊誌『ナースコール』 という雑誌に連載されていた「Dr.HAMABEの病棟こぼれ話」という記事を文庫本にしたものなのだそうだ。 当然僕は、看護婦さん向けの月刊誌など読んだことないし、そんな存在も知らなかったのだが、なんとなく面白そうだから読んでみた。

 看護婦さん向けの雑誌に連載されていただけあって、所々に、看護婦さんに対するメッセージのような話も入っている。でも、全体的には、 看護婦さんでなくても楽しめる内容だと思う。タイトルにあるように、著者は、救命救急センターで働く医者である。救命救急センターは、1次から 3次まで、レベルがあって、著者の働く3次救命救急センターは、心筋梗塞、重傷外傷、重傷熱傷などまさに瀕死の患者がかつぎ込まれる医療機関で その勤務はとてもハードだそうだ。しかも、外傷だけでなく、自殺未遂の患者や、瀕死の息子を心配する母親、植物状態の患者を持つ親などの、心のケアや そういった患者を受け持つ看護婦のお悩み相談などもこなしているようだ。医療とはほど遠い生活を送っている僕には、新鮮で、興味深い内容だった。 が、当事者にとっては、それどころではないのは当然である。せいぜい僕も当事者にはならないようにしよう。


『いちずに一本道いちずに一ツ事』 相田みつを(角川文庫)
笑い☆☆☆☆☆ 涙★★★★★ 恐怖☆☆☆☆☆ 総合★★★★☆
 書家であり、詩人である相田みつをのエッセイ集。そして、そのエッセイの合間に、彼の作品が紹介されている。
 戦時中、旧制中学の教官から、イジメを受けた話や、戦死した兄の話、書家になる前の辛い時期の話など、涙なしには読めない話が多い。 そんな話の合間に、『つまずいたっていいじゃないか にんげんだもの』などといった書による詩が、収められている。 短く、素朴な言葉だけど、エッセイによりその言葉が生まれた背景を知ると、よりそれらの言葉は心にズシンと響く。 生きるエネルギーが湧いてくるというか、心にゆとりと勇気が宿るというような気になる。  今、悩んでいる人、壁にブチ当たっている人、生きるエネルギーが欲しい人など、多くの人にお勧めできる一冊だ。


『古本屋四十年』 青木正美(福武文庫)
笑い1.0点  涙1.0点  恐怖0点  総合3.5点
 昭和28年、古本屋を始めようと思った著者は、下町・葛飾区堀切に「一間堂」を開店した。 本書は、その著者が現在に至るまでにたどった苦難の道を、自身の日記を引用しつつ書き記した自叙伝である。 しかし、そこには、一般客には分からない古書店の裏側が、事細かに書かれている。たとえば、古本市場の様子、 古本の仕入れ方、古本の相場の変動について、デパート等で開かれる古書店の舞台裏など、一度でも古書店に 行ったことのある人には、興味の尽きない本である。さらに巻末には、一般客にはあまり馴染みのない 古書業界独特の用語集も記載されていて、至れり尽くせりである。
 ただし古書に興味のない人にとっては、面白くはないと思う。


『本の運命』 井上ひさし(文春文庫)
笑い3.0点 涙0点 恐怖0点 総合4.0点
 小説家を夢見る父と文学少女だった母を持つ著者の、野球と映画と本に明け暮れた少年時代から、いかにして井上ひさしが蔵書 13万冊を収集し、故郷に図書館をつくったか、という生い立ちと、井上流の読書法そして子供を本好きにするには?という本に関するエッセイのようなモノ。

 床が抜けるほどツンドクしたり、月に本代が50万円もかかったり、蔵書13万冊を利用して図書館をつくったり、 本を愛してやまない様子がよくわかる。ここまでの本好きにならないまでも、今の若い人たちもちょっとは本を読むようになってほしい とおもう。井上氏が提案している子供を本好きにする方法は、読書感想文を廃止し、図書館を子供の遊び場し、そして何よりも、 大人が夢中になって本を読むことが大切だという。
 エッセイとしても面白いし、本についていろいろ考えるのにもいい本だと思う。


『I KNOW YOU 脳』 養老孟司(かまくら春秋社)
笑い1.5点 涙0点 恐怖0点 総合3.5点
 養老さんは幼い頃から動物や昆虫が好きだったため、動物学の道を進もうと思っていた。しかし女手一つで育ててくれた 母親から、医学部に行ってくれと懇願され、東京大学医学部に入学した。卒業後は東大教授にもなった人物である。
 普通の人にとって、東大医学部なんて親に頼まれても目指す気すら起こらないような所だ。そこで教鞭をとっていたというから もう凡人には到底理解できないことを書くんだろう、と思いきや、本書はとても軽くて読みやすいエッセイだった。
 「死と同居する」「男と女の脳」「脳と感情」「脳と年齢」「脳と人生」「記憶のなかの自然」「人体の秘密」の 7章にわけて、それぞれいくつかのエッセイ、コラムを書いている。脳と関連した話が多いが、なかには幽霊や 子供の頃の思い出、子育てについてなどの話もある。
 面白くなかったというわけではないが、全体的に印象の薄い本だった。


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