ゴッホと花―”ひまわり”をめぐって
損保ジャパン東郷青児美術館
2003.9.20-12.14
 僕の中で美術館というと、緑に囲まれ、喧騒から離れ、ひっそり建っているというイメージがある。 だが、今日行った「損保ジャパン東郷青児美術館」は、新宿西口のビル群の中に建つ「損保ジャパン本社ビル」の 42階(!)にあったのだ。
 チケットを買って中に入ると、エレベーターに誘導され一気に42階まで上がる。山に登ったときのように、 途中で耳がおかしくなってしまい、耳抜きをしなければならなかったほど上空にある美術館だ。エレベーターを 降りるといよいよ美術館だが、その前に42階から見る東京の眺めに圧倒されてしまい、しばらく美術館に入らず にその景色を眺めていた。

 今回の企画展のウリは「ゴッホが夢見た”三幅対”を日本で初めて公開する」ということらしい。三幅対とは、中央に メインとなる絵、その両脇に翼と呼ばれる絵を配置する礼拝用の祭壇画スタイルのことのようで、今回は 中央に≪ルーラン婦人≫、両脇に≪ひまわり≫というゴッホが夢見た配置で展示してあった。
 ホントに祭壇のようにバランスがいい並べ方だとは思うが、2枚の≪ひまわり≫のうち、左側の一枚の額だけがゴテゴテ していて、他二枚の額がシンプルだっただけにちょっとバランスが悪かった。そのバランスを崩していた左側の≪ひまわり≫が、 損保ジャパンが所有する≪ひまわり≫で、バブル期に損保ジャパンの前身である安田火災が53億円で落札したという あの≪ひまわり≫のようだ。3枚とも、予想以上に大きく(30号というサイズ)、迫力十分だったけど、53億は高い だろうと思う。しかし、上には上がいるもので、ここを見たら ≪ひまわり≫の落札価格(53億円)は14位だった。でも、ゴッホは売るためではなく、アトリエに飾るために ≪ひまわり≫を描いたようだ。それが死後に53億で売れるとは思ってもいなかっただろうなぁ。 まあ本当は値段で絵を見てはいけないのだろうけど、53億円ということばかりが頭をよぎってしまった。

 ≪ひまわり≫以外にも様々な画家が描いた、様々な花の絵があったが、どれも背景が暗くて、あまりきれいとは 思えなかった。しかし、≪ひまわり≫は黄色メインでとにかく明るく、見ていて元気が出る感じがした。考えてみれば、 花瓶に16本ものひまわりを挿す豪快な人はなかなかいないと思う。そもそもひまわりって花瓶に挿して鑑賞するというより、 太陽の下で見る花っていうイメージがある。
 42階からの東京の眺めと、53億の≪ひまわり≫を含む三幅対の絵で、入場料は1000円。妥当な値段なのかな。


大英博物館の至宝展
東京都美術館
2003.10.18-12.14
 東京都美術館は、いつも行列ができているというイメージがあるので、行列ができる前に早めに行こうと思っていた。 気合を入れて早起きをしたおかげで、9:30には美術館に着いていた。しかし、開館後30分しか経ってないのに、すでに 入場制限がかかっていて、10分待ちと案内板に書かれていた。
 しばらくして入場してみると、「狭ッ!」と思わず言わずにはいられなかった。美術館自体が、とにかく狭く感じたのだ。 そんなところにわずか10分の入場制限で入ったものだから、もう中は息苦しいほどに混んでいた。いったい何のための 入場制限なんだよと愚痴りたくなった。

 今回の展覧会は大英博物館創立250周年、主催者である朝日新聞創刊125周年、テレビ朝日開局45周年の記念のイベントで、 大英博物館のアジア部門、エジプト部門など計8つの収蔵部門がすべて参加する画期的な内容となっているらしい。 だが、すべての部門を参加させたためか、全体的に広く薄く集まっているな、という印象で、よく言えば 「一度に世界中の歴史や民族に触れられてよかった」、悪く言えば「非常に中途半端だったな」といった感じ。 それにしても、よく3つも「記念年」が重なったもんだなぁ。
 僕が一番楽しみにしていたのは、何といってもエジプト関係。古代エジプトは、映画や漫画などのモチーフとしてよく 使われているし、とにかく絵も文字も神秘的でデザイン的にも面白い。そのエジプトコーナーには、タイタニックを沈めたと 噂されている呪われたミイラボードや、布でぐるぐる巻きにされた女性のミイラ、金色とブルーの色合いがキレイな ミイラマスク、ミイラの臓器を入れたというカノポス壷、パピルスに書かれた「死者の書」などいろいろあった。
 ハリー・ポッターで、ハリーたちが遊ぶチェス駒のモデルとして使われ、一躍有名(?)になり、たぶんこの展覧会でも 目玉にしようとしていると思われる「ルイス島のチェス駒」も見てきた。そのチェス駒を海洋堂がフィギア化して、 5個セット1300円で売っていたのだが、これが相当な人気らしく、お一人様2個までとされていた。 まったく何でもかんでも海洋堂だな、とぼやきつつも、しっかり1個買ってしまった…。
 東京展が終わってから、神戸、福岡、新潟と、各地を回るそうだ。大英博物館まで、なかなかいけない人はこの機会に 行ってみてはいかが。ちなみに、土曜日午後3時の時点で40分待ちだったそうだ。


円山応挙展
江戸東京博物館
2004.2.3-3.21
 江戸東京博物館に行くのは、2度目なのだが、相変わらず”無駄にデカイな”と思う。となりにある 日本武道館が小さく見えてしまうくらいだ。そんなデカイ博物館に10時ちょっと前に着いたのだが、 チケット売り場の前には人っ子一人いない。それどころか、見渡す限り、観覧客らしき人が見当たらない。 ”ひょっとして休館日か?”と思ったほどだ。それでも、入館してみたら、意外と混んでいた。

 円山応挙というと、”なんでも鑑定団”でよく聞く名前だなということと、「初めて足のない幽霊を描いた人」 というイメージしかない。だから、知らない画ばかりでとても新鮮だった。
 「写生画」を創造し、日本の絵画史上、重要な転機をもたらしたのが応挙なのだという。たしかに、展示されていた 孔雀の画は、まるで孔雀の羽を貼り付けたかのようにリアルだったし、正面を向いた鶴や鶏などもとてもリアルだった。 そして、狗子(子犬)の画は、リアルなだけでなく、思わず笑みがこぼれてしまうほどのかわいらしさだった。 「狗子図」は、犬好きの僕にとってはたまらない画だった。
 リアルな画やかわいらしい画も素晴らしかったけど、僕には迫力のある画のほうが印象的だった。滝が流れる様子を 表すためにわざと下の方を床につけて、L字に展示した掛け軸「大瀑布図」。どんな場所に飾ったんだというくらい 長大で大迫力の屏風「保津川図」。そして、なんといっても、大乗寺の襖をそのままの形で展示した「松に孔雀図」は 素晴らしかった。金色の襖に、墨で孔雀と松が描いてあるのだが、目の前に樹齢何十年、何百年という高い 松が実際にあるかのように錯覚させられるし、とても心が落ち着くような広大な空間に入り込んだ感じがした。 大乗寺の人は、ガラスケースに入ってない生のあの襖に囲まれて過ごせるのだから、うらやましい。それにしても、 襖を持っていかれてしまった大乗寺はいったいどんな状態になっているのだろうか。襖無しで過ごしているわけも ないだろうから、まあ当然、代わりの襖は入っているのだろうけど。


真田宝物館
 新車を買ってから高速道路を使った遠乗りをまだしてなかったので、前々から行ってみたかった 長野県の松代にある「真田宝物館」に行ってみた。
 僕は、『真田太平記』を読んでから、真田幸村ファンになったで、ここに行けば、幸村の 所蔵の何かがあるに違いないと思って行ってみた。が、幸村のものは全く無し。 松代藩初代藩主が真田信幸だから、おもに信幸以降の真田家ゆかりの品々ばかり。
 武田信玄・豊臣秀吉・石田三成・徳川家康といったからの武将の古文書も展示してあったのだが、 どれもみなレプリカ。横の説明書きには、本物は当館に所蔵してあります、なんて書いてあった。 おそらく本物を展示するといたむから、レプリカを展示しているのだろうが、高速乗ってまで 来たのにレプリカかよ、と正直思った。

 そんなわけで、結構ガッカリしていた。だが、入館料は500円だし、その500円のチケットで、 近くにある「真田邸」「松代藩文武学校」にも入れるので、まずは「真田邸」にいってみた。 真田邸は、9代藩主・幸教が母のために建てた御殿なのだそうだが、入ってみればただの立派な御屋敷 だった。しかし、そこで偶然、何かのドラマの撮影をしている現場に遭遇したのだ。 監督らしき人がいたり、あちこち動き回っているADがいたり、見たこともない役者が演技をしている 様子なども見られた。ちらっと台本を見たら、「〜殺人事件」というタイトルが見えたから、 おそらく2時間サスペンスなんだろうなと思う。ただ、全く見たことない役者だったから、 全国放送するドラマなのかは不明だ。
 その後、8代幸貫、9代幸教が設立した文武学校に行ってみた。ここはよかった。弓術所、槍術所、 文学所、柔術所などなどがあり、実際、中に入れるのだ。廃藩後は、小学校の校舎に使われたそうだし、 当時からどのくらい改築されたかは知らないが、江戸時代の藩士たちが、この床を踏み、 日々鍛錬していたのかと思うと、とても感慨深い。
 建物の中に入って思ったのだが、どの部屋も鴨居が低かった。戦闘が起こった場合、日本刀を振り下ろせない ように当時の建物は鴨居が低くなっていると聞いたことがある。確かに、この低さで刀を振り回すのは 困難だが、日々の暮らしもちょっと窮屈だったんじゃないかなと思ってしまう。ちょっと背が高い人は 確実に頭をぶつけたと思う。
 最後に訪れた文武学校が一番良かったな。
 これから行こうと思っている人は、『真田騒動 恩田木工』(池波正太郎)を読んでおくといいかもしれない。


象山記念館
 松代に行ったついでに、大河ドラマ「新選組!」で紹介された「象山記念館」に行ってみた。
 松代は、佐久間象山生誕の地だそうで、生誕の地には「象山神社」が建っている。 古くからの神様ではなく、江戸時代に生きていた人が祀られているのだから結構面白い。 「高校に合格しますように」などと書かれた絵馬がたくさんあり学業の神様として重宝されているようだ。
 ちなみに地元では「しょうざん」ではなく「ぞうざん」と呼ばれているらしい。

 「象山記念館」の入館料は、「真田宝物館」よりさらに安く、何と250円!まあ、その入館料が 示すように展示はとても少なく、外観も公民館といった感じの小さな白い建物だった。
 展示品は、象山の写真や象山が作ったエレキテルのような電気治療器、墨書の数々など、少ないながらも 結構充実していたと思う。象山の写真や肖像画は何点かあったが、どれも面長のひげ面で、ちょっと 悪役レスラーみたいな顔だったのが印象深かった。「新選組!」では、石坂浩二が演じているのだが、 あまり似ていない。そういえば土方歳三を演じている山本耕史は、写真で見る土方にどこどなく 似ているなと思った。
 松代に来たついでに訪れるにはいいところだと思う。


ポートレートの現代―聖徳太子からモンローまで
うらわ美術館
2004.4.27-6.27
 日曜日なのに雨で、しかもちょっと早起きしてしまったので、こんな日は美術館にでも行くかということで、 当日の朝、Museum-Cafeで調べて、この企画展が面白そうだったので行って来た。

 ポートレートといっても単なる肖像画ではなかった。古今東西の画家たちが、それぞれ得意とする手法で、様々な人物を描いている 個性豊かな芸術性に溢れる肖像画の数々だった。パブロ・ピカソ、サルバドール・ダリ、アンディ・ウォーホル、片岡球子、 山本容子というような僕でも聞いたことある有名な画家たちをはじめとして、国内外計12名の作家の作品約250点が展示されている。
 版画やシルクスクリーンの作品が多い中、とても印象に残ったのが、福田繁雄さんと薮内佐斗司さんだ。福田さんは、 よく学校の美術室にあった真っ白なヴィーナスの頭像をキャンバスにして、聖徳太子やピカソやシェークスピアやモナリザなどの 肖像画を描いている。つまり、凹凸はヴィーナスなんだけど、見た目は聖徳太子だったりするのだ。薮内さんは、 桃太郎や金太郎、孫悟空、牛若丸、児雷也といった物語の登場人物を木彫で創っている。そのどれもが丸々とした子どもの 姿をしていて、表情やポーズはかわいいし、何より木の温もりたっぷりで「癒しの彫刻」という感じがした。
 浦和駅近くにある浦和センチュリーシティという建物の3階にある美術館で、ミュージアムショップもないような、 それほど大きくない美術館ながらも、「欲しい!」という作品がたくさんあった、かなり僕好みの企画展だった。
 お近くの方は、是非一度足を運んでみてはいかがでしょうか?たぶんお子さんが見ても退屈しないかも。



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