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海外文学


『武器よさらば』ヘミングウェイ/高村勝治訳(講談社文庫)
3.5点 恋愛4.0点 難解1.0点 総合4.0点
 アメリカ人のフレデリック・ヘンリーは、第1次大戦でイタリア戦線に志願した。中尉として傷病兵運搬車を指揮していた ヘンリーは、戦地で看護婦のキャサリンと出会う。しばらくしてヘンリーはひどい戦傷を受ける。そして、これがキッカケと なり、ヘンリーはキャサリンと真剣な恋愛をはじめる。だが、治療を終えたヘンリーは再び戦地へと戻っていく。そして…。

 アメリカの作家・ヘミングウェイの代表作の一つであり、僕にとっては題名は聞いたことがあるが、内容はわからない名作の 一つ。
 戦争と恋愛という組み合わせが新鮮だった。また、僕のとっては初めて読む本格的な恋愛小説だった。
 翻訳ものの宿命なのかわからないが、会話が時々とても不自然なのが、少々読みにくい原因となっていた。とくに ヘンリーとキャサリンのラブラブ(死語?)な会話ではやたらと「きみ」とか「あなた」が出てくる。読んでいてここまで 日本語に訳さなくてもいいんじゃないのかなと、正直思った。
 感情を直接描くような一切の形容詞を排した短い文章いわゆる「ハードボイルド・スタイル」という文体を用いている、 と巻末の解説にあった。なるほど確かにハードボイルドだ。ひょっとするとこれが元祖ハードボイルドなのだろうか。
 敷居が高くて読みにくそうと敬遠している人もぜひ一度読んでみてほしい。意外なほどに読みやすい。


『若きウェルテルの悩み』ゲーテ/高橋義孝訳(新潮文庫)
2.0点 恋愛4.0点 難解2.0点 総合4.0点
 ウェルテルは日常のいざこざから離れるように、自然に囲まれた小さな町に移り住んでいた。そんな生活の中で、彼はまるで天使の ような女性・ロッテに出会う。だが、ロッテにはフィアンセがいるため、それは遂げられぬ恋であることを知る。それでもロッテ に対する恋心は増すばかりで、ウェルテルは苦悩の果てについに自殺を決意する。

 文学史で題名と著者名を覚えただけで内容についてはよく知らない小説。
 この小説が社会に及ぼした影響は大きかったらしい。巻末の解説によると、この作品によって自殺が流行したそうだ。
 現代は性のモラルが著しく低下し、出会い系サイトで知り合って不倫なんていうのもある。また、一途な恋が暴走して ストーカーと化すなんていうのもよく耳にする。でも、こんな時代でも、ウェルテルのような男性も多いはずだ。 果たしてウェルテルが現代に生きていたら、どうなっただろうか。ロッテのストーカーになったりして、それとも ロッテと不倫するだろうか。いや、やっぱり同じ結末をたどるだろうなぁ。
 本書は、ウェルテルが友人のウィルヘルムにあてて送った手紙をまとめた、という形式になっている。一通一通、日付も入っていて その間隔の長さがウェルテルの心情を表している感じがして面白い。それにしても、当時としては相当画期的な小説だっただろう。


『異邦人』カミュ/窪田啓作訳(新潮文庫)
1.5点 恋愛2.5点 難解1.0点 総合4.5点
 母の死の翌日、ムルソーは海水浴に行き、マリイと関係をもち、喜劇映画を見た。数日後、ムルソーは友人であるレエモンの 女性トラブルに巻き込まれ、一人のアラビア人を射殺してしまう。
 裁判で検事は、母の死に涙しなかったことなどを指摘し、殺人の動機について「太陽のせい」と答えたムルソーに対し 死刑を求刑した。

 「きょう、ママンが死んだ。」という有名な冒頭と、殺人の動機を「太陽のせい」にしたということしか知らなかった作品。
 カミュというと”不条理”の代名詞のようなイメージがある(あと、今ではセイン・カミュの遠縁の人として有名)。ただ、 読んでみると不条理というより、「理不尽」という感じがした。それは、「なぜムルソーは死刑を求刑されるのか。」という 点に関してだ。いまこんな判決が出たら、マスコミが黙ってないだろうなぁ。検事や裁判官は相当非難されるだろう。
 ムルソーの隣人の老人と飼い主のエピソードや、検事と弁護士が法廷で繰り広げる論争、囚人となったムルソーと面会に来た 司祭との会話など読み応えがあって面白いところがたくさんある。また、海、太陽、砂浜といった夏の描写がキレイで、そこで おこる殺人シーンさえもキレイだと感じてしまった。
 ”名作だ”という先入観がなくても面白いと感じたと思う一作だ。


『変身』カフカ/高橋義孝訳(新潮文庫)
1.0点 愛情1.0点 難解0.5点 総合4.5点
 ある朝、グレゴール・ザムザが目を覚ますと、自分が巨大な毒虫に変身しているのに気づく。早く支度しないと 汽車に乗り遅れてしまう。そうしたら店主にこっぴどく怒られる。外交販売員の仕事はつらいけど、 今くびになったら両親と妹を養えなくなってしまう。しかし、こんな姿ではどうすることもできない・・・。

 いわずと知れたカフカの代表作のひとつ。
 導入部は知っていたが、こういうストーリーでラストはこんな風に終わるとは知らなかった。 このラストではあまりにも、グレゴールがかわいそうだ。
 それにしてもこの毒虫の姿を想像すると恐ろしい。鎧のような背中、横に筋が入った褐色の腹、 触覚とたくさんの足、そして巨大(たぶん1メートル以上)。いくらグレゴールの部屋から出てきたとはいえ、 家族はよくこんな毒虫がグレゴールだと認めたものだ。妹にいたっては、食事の世話や部屋の掃除まで してくれるのだ。なんとも不思議な家族である。
 作中で、グレゴールがなぜ毒虫になったのか、毒虫は何を象徴しているのか、については何も語られない。 僕は、これは現代社会でいうと「”醜形恐怖症をともなう出社拒否から引きこもりになった息子”を持つ 家族の話」みたいだと思った。ただ、そうするとこのラストでは少々不幸すぎる。
 あっという間に読める薄い本なので、未読の人は読んでみてください。


『ハムレット』シェイクスピア/福田恒在訳(新潮文庫)
2.5点 愛情2.0点 難解1.0点 総合4.0点
 ハムレットは、城に現れた父王の亡霊から、父王は殺されたという事実を告げられる。それも、父王の弟で現在のデンマーク王 であるクローディアスとハムレットの母であり現王の妃であるガートルードの計略により殺されたという。それを知ったハムレットは 父王に復讐を誓う。その日から彼は狂気を装いつつ復讐の機会を待つ。だが、一方で現王クローディアスもハムレット殺害の計画を 立てていた。

 シェイクスピアの四大悲劇のひとつだとは知っていたが、これほどまでの悲劇だとは。シェイクスピア論とか難しいことは全く わからないが、これを書いていたころのシェイクスピアの私生活に何かあったんじゃないかと勘ぐってしまう。とはいえ、 あまりにもラストは悲劇の度合いが強過ぎて逆に喜劇に思えてくる。
 実は僕は、こういう状況説明以外はひたすら会話だけの”戯作”というのは面白くないものだという根拠のない偏見を持っていた。 演劇やミュージカルなどの舞台も一度も見たことがないし、見ようと思ったこともない。だけど本書を読んでみて、一度 ハムレットの舞台を見てみたいなぁと思った。これをどう演出するのか、役者はどう演技するのか、どんな人が演じるのか など気になる。でも、見たら見たで不自然な会話とかハムレットを日本語で見る違和感とか感じてしまうかもしれないなぁ。


『審判』カフカ(新潮文庫)
0.5点 愛情1.5点 難解3.5点 総合4.0点
 平凡な銀行員ヨーゼフ・Kは何も悪いことをしないのに、ある朝突然逮捕される。その理由をつきとめようと懸命に努力するが、 不明のまま”犬のように”殺されてしまう。外界の秩序の不可解ないかがわしさを十分わきまえながら、同様に不可解な従順さで 秩序の中に入れられることを切望している男を寓意的に描き、ナチス登場に象徴される次代の精神状況を予見したと いわれる長編。(本書あらすじ引用)

 はっきり言ってワケがわからない小説。ヨーゼフ・Kがワケもわからず逮捕されるシーンで始まり、ワケもわからず殺されて 終わる。だが、実はそれで終わりではなく、そこから「断章」が始まり、再びヨーゼフ・Kが登場するのだ。
 巻末の解説を読むと、カフカ文献学なるものがあり、そこでこの『審判』の章立ての順序について様々な説が展開されている そうなのだ。というのも『審判』は未完断片の作品であり、カフカも出版するつもりはなく「読まずに焼却せよ」との 遺言まで残していたとか。
 僕には非常に難解だった本書だが、面白くなかったわけではない。全体を通して理解しようとすると難解なのだが、 個々の章は面白い。弁護士・裁判官・画家・銀行頭取・工場主・商人・僧侶など様々な職のクセの強い濃いキャラクターが 数多く登場する。まあ、彼ら以上に主人公のヨーゼフはさらに濃いキャラクターだけど。


『ガリヴァー旅行記』スウィフト(岩波文庫)
0.5点 愛情0.5点 難解2.0点 総合3.5点
 船医として何度目かの航海に出ていたレミュエル・ガリヴァーは、東インドに向かう途中暴風雨に遭う。必死の思いでたどり着いたのは、 身長が6インチにもみたないリリパットと呼ばれる小人の住む国だった。
 この後ガリヴァーは、巨人の住むブロブディンナグ国、空に浮かぶ島ラピュータ、ラピュータが支配する陸地バルニバービ、 魔法使いの島グラブダブドリップ、不死人間がいる島ラグナグ、日本、喋る馬の住む島フウイヌム国を次々と旅する。

 子供の頃に読んだことのある『ガリバー旅行記』は、ごく一部でしかなかったのだ。原作はイギリスの政治や社会に対する 風刺そして人間そのものに対する批判にあふれている。では、ファンタジックな旅行記として読めないのかというとそんなことはない。 むしろ風刺に関しては、注釈がなければ(僕の場合は注釈があっても)いったい何を風刺しているのかわからないくらいだ。 風刺はその当時に読むから風刺としての意味があるのだと思う。今その風刺を理解するのは、学者たちにまかせればいいのであって 一般の読者は無理して風刺小説として読む必要はないんじゃないかと思う。ただ、人間そのものに対してはあからさまに批判しているので、 僕でもわかる。何といっても、ガリヴァーが最後に訪れた国では、喋る馬が人間(ヤフーと呼ばれている)を家畜として飼っているのだ。
 ガリヴァーが日本を訪れていたというのは有名な話だが、作中ではほんのちょこっと立ち寄った程度で、ページ数にして わずか5ページしか記述がない。まあ、たとえ5ページでも架空の国にまぎれて登場しているのだからすごいことなのかもしれないけど、 他国に比べるとあまりにも記述が少ないので正直がっかりした。


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