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群馬県利根郡川場村にある、水芭蕉醸造元『永井酒造』は、超近代的な醸造機器を効率的に用いて、より低廉な価格で高品位の酒を醸しています。
周囲は主に農林業主体の環境にあり、『永井酒造』では地元農家との契約栽培による酒米確保にも精力的です。
同社のシンボルマーク「酒林(さかばやし)」は、直径1.5mほどの超特大サイズ! 据え付けにはクレーン車が出動します。

永井彰一氏は35歳で同蔵社長となり、今年で3年目を迎えます。 とてもユニークで柔軟な発想の持ち主で、しかも思いやりある人柄は、周囲から“彰ちゃん”と親しみを込めて呼ばれている事からも忍ばれましょう。
同蔵工場長・永井則恵氏。 社長の実弟であり、建築学を志して勉学に勤しんでいました。
今では建築学で培われた設計思想を、酒造りの場に遺憾なく発揮しています。
同蔵の杜氏、越後流・杉浦正夫氏。 永井酒造の先代・先々代から蔵を任されてきた、辣腕の名匠。
古典的な製法から超近代的酒造技術まで広く熟達し、新しい日本酒の未来を切り開いています。

蔵内は酒造工程を徹底的に解析し、一部の無駄もなくスムーズに事が運ぶように設計されています。
ここは酒米を洗って吸水させるプラントですが、吟醸酒以上の酒米は、全て手作業で行われます。
これは酒米を蒸し上げる蒸米機です。 平型が主流の中、この縦型は最新鋭のタイプです。
外硬内軟が要求される酒米の蒸しには、大変理想的なシステムで、酒造りの要と言うべき原料処理に、大きな力を発揮します。
これはその蒸米機の最上部。 洗米・浸漬を経た酒米が投入され、圧縮加圧されて100℃を越えた、しかも乾いた蒸気でプラント下部より蒸されてゆきます。

これだけ見ても何がなんだか判りませんよネ。 あまりにも大きなプラントで、残念ながら一枚の写真に納めることが出来ませんでした。
これは製麹機(せいぎくき)と言って、麹を造るプラントです。 コンピューター制御作動しますが、手作業で麹を造る作業を知る者にとって、画期的な発明です。 同蔵では出品用の大吟醸も全てこれを用います。

こちらは酒のスターターとなる「酒母(しゅぼ)」です。 醸造機器でも直接酒が触れる部位は、全てステンレスが用いられています。
大変衛生的で、雑菌汚染とは無縁といった印象です。
大吟醸に用いられる発酵タンクです。 密閉型でモロミの温度管理をコンピューターで監視・調整が可能な「フルサーマル・タンク」が、全てに用いられています。
本醸造から吟醸酒までは、仕込み総量6トンの大型を使用しますが、流石に大吟醸には、専用の600Kgサイズが用意されています。
こちらが6トンの「フルサーマル・タンク」の上部です。
作業が安全かつスピーディーに進むよう、足場は完全にフラットになっています。

タンクを上部の窓から覗いたところ。 モロミが素晴らしい面(つら)を見せていました。
匕首のように見えるのは、モロミを撹拌する為のウイングです。 これは櫂入れ作業を機械的に行うシステムです。
毎年11月に催される「酒林作成会」へは、必ず馳せ参じます。 杉の間伐材を用いて、自分の手で造ります。
お昼には毎年一番先に仕上がった酒が振る舞われ、秋豊饒の一日を堪能して参ります。
平成6年に新蔵が稼働し始めましたが、隣にある旧蔵は今も昔の風情をそのままに止めています。

旧蔵を改装して造られた『古新館』は、同蔵の酒は勿論、地元川場村の産品が揃えられたショップ兼飲食施設となっています。
週末には大型観光バスが何台もやって来て、多くの方々に酒屋風情を楽しませています。

『狩り場料理』と称される、いろり炭火焼きはダイナミック! フード・コーディネーターには、あの道場六三郎さんと同格以上と言われる、和食界の重鎮が関わっています。
出来たての酒を酌みながら、野趣味溢れる料理を楽しめる、酒好きには堪らないプレジャーを提供しています。