トップへ戻る 蔵元訪問記インデックス

新潟県栃尾市の『諸橋酒造』は、『越乃景虎』のブランドで人気を集める越後の逸品です。
20年までは豪雪地帯で知られ、冬場は“陸の孤島”となっていました。
六代目当主・諸橋乕夫(とらお)氏。「一冬に6mくらいは当たり前に積もるんですよ。」と、事も無げに語られた。 写真を趣味にしておられる。
H10には、「新中野」の最新鋭精米機を二台追加導入した。

麹室では天幕式の製麹が行われていた。 勿論、大吟クラスには箱麹が用いられる。
ずらりと並ぶ「出麹」。
仕込み蔵

仕込み蔵では、タンクから湧き出た、清々しい酒の香りが、凛と冷えた蔵内を満たす。
発酵中のタンクは同社の中核商品「本醸造・雅」。 とても本醸造とは思えない、素晴らしい果実香が沸いていた。
たまたま訪問の日時に、大吟醸のモロミが上槽されていた。

大吟醸クラスは全て酒槽(さかふね)による手搾りを行う。
タンクから汲まれたモロミは、丁寧に酒袋に取り分けられる。
一部は「首吊り」と言われる、酒袋を酒槽に渡した棒に吊して、自重で滴り落ちる「しづく酒」として斗瓶に取り分けられていた。

大部分は、酒槽の中に丁寧に積み込まれて、ゆっくりと搾り上げる「投げ込み」と呼ばれる手法で搾られる。
諸橋酒造さんで、このような大吟醸の上槽行程を、順を追って捉えることが出来たのは、非常に珍しい事です。
大吟醸の上槽予定日には、本来訪問をお断りするのが普通です。
ちょっとモロミが気を利かせてくれて、四回目の訪問の際立ち会う事が出来た、「幸運」です。

お酒を貯蔵するキャパシティーは、年間生産量を考えれば十二分に確保されていました。
この貯酒能力如何では、熟成が不十分なままでお酒を市場に出さざるを得ない事態も発生しかねない重要な蔵の機能です。
最新鋭の品温管理が出来るサーマルタンクも毎年増設されています。
越乃景虎の酒造りを全幅の信頼で任される、越後流・高橋孝一杜氏。
越乃寒梅の副杜氏を経て、越乃景虎の杜氏となる。
以来、そのひたむきな酒造りの姿勢と努力により、越後流杜氏の中でも抜群の実力派として広く認知される。

越乃景虎「名水仕込」シリーズは、その名の通り名水百選「杜々(とど)の森伏流水」を汲んで仕込まれます。
ドイツ硬度0.53という、全国に希な“超軟水”より、越乃景虎は生まれます。

蔵の前を走る道路の向かい側の山には、蔵所有の「洞窟」があります。
この洞窟内に酒を囲い、蔵内熟成とはひと味違った上品な練れ味の「洞窟貯蔵酒」が極少量造られています。
訪問時は残念ながら、これから酒を囲うところだったので、洞窟内に酒はありませんでした。
五月に囲い、十月下旬に取り出されるまで、洞窟の入り口は厳封され、一年を通じて13℃ほどで推移します。