外伝2:シーブック編「俺の名前を言ってみろ」





「シーブック、あなた・・・・影薄いわよ。」
「え・・・?」
唐突に恋人であるセシリー・フェアチャイルドから聞かされた言葉は、シーブックの心に突き刺さるモノだった。
なぜならば「影が薄い」その事は最近シーブック自身が大変気にしているからだ。
このままではセシリーの腰巾着というか、付属品扱いに周りから見られてしまうのではないか?
それでなくてもセシリーはよく目立つのだ。
バランスが取れていないカップルなのではないか?との考えが頭をよぎる回数が増えている。
勿論、幸せではあるのだが、それがゆえの不安というか悩みと言ったところだろう。
以前その事を仲の良い先輩であるビルギット・ピリヨに話したら、絞め殺されそうになったので、それ以来その悩みは誰にも言わず胸の奥にしまいこんである。
ちなみにビルギット先輩は万年彼女募集中だ。
そんな人間からすればのろけ話にしか聞こえないような悩みを持ちかける方がどうかしている。
それはさておき、内心では気にしてることを冷たく言い放たれれば誰だって傷つく。
「え?じゃないわよ。影が薄いって言ったの。」
少し冷たい視線が、なおもえぐられた心の傷に突き刺さる。
シーブックの胸の内に気付いているのかいないのか。セシリーはなおも続けた。
「この間の花見の時なんて何処にいたの?って感じだったし・・・。」
そんなことは言われなくても解ってる。確かにあの時周りの雰囲気に押されたのも手伝って、
何一つセシリーの役に立たなかったし、また存在感らしいモノは何一つ示せなかった。
しかし、あんなアクの強い連中と比べる方がどうかしてる。と、言うよりも一緒にされたく無いというのが正直なところか。
「このままじゃあなた・・・・私のおまけとか、金魚のフンとか言われてしまうわよ?」
決定的な一言だ。自分でも最近気にしていることだけにキツイ。
真正面から、しかもよりにもよってセシリーに言われてしまうというのが、シーブックの衝撃をより大きなモノにしていた。
図星を突かれたような気恥ずかしさも手伝って思わず
「そう言うところも納得して付き合っていたのではなかったのか!?」
と、叫びそうになったが、何とか自制し喉まででかかった言葉をかろうじて飲み込み視線を逸らせるにとどめておく。
だが、心に育っていくモヤモヤとした感覚を振り払うことはできなかった。そしてそれはシーブックの中である決意に育っていく。
無論セシリーだって、シーブックが憎くて言ってる訳ではない。
先日の一件が面白くなく、シーブックに八つ当たりしているだけなのだ。
いつの頃からか、こう言うときはシーブックは困った表情を浮かべつつも
セシリーの機嫌をなだめるのがお決まりのパターンになっていた。
シーブックにはそれがセシリーなりの甘え方であることを解っていた。
だからこそそれを受け止めるつもりで今まではそうしてきたのである。
シンジとアスカのパターンに似ている気もするが、主にアスカの怒りへの恐怖から来る行動であるシンジとは、行動原理が違っている。
だが、今回のシーブックはいつもと少し違っていた。セシリーはそれに気付かないでいる。
「何も言うことはない訳?あなたそれでも・・・。」
「・・・・・・ってろ・・・・。」
視線を逸らしたまま小さく聞き取りにくい声。しかし、決意のこもった声だと言うのは解る。セシリーはなんとなく不安になって聞き返していた。
「え・・・・?今なんて言ったの?」
今度は顔を上げ、セシリーを見据えたままハッキリと言った。
「1ヶ月待ってろ!さっきの言葉、撤回させてやる!」
言い捨てるとシーブックは、くるりと背を向け走り去ってしまった。
セシリーでさえ滅多に見ない・・・いや、初めて見るシーブックの激しい一面。
戸惑いを隠せないセシリーは走り去るシーブックを無言で見送ることしかできなかった。




あれからもう四日目の朝を迎えていた。シーブックはあれ以来学校には行っていない。
セシリーと顔を合わすのが、なんとなくためらわれたのが一番の原因だ。
1ヶ月待ってろ。そう宣言したのは良かったが、何をどうする宛てがあった訳でもない。
どうしたものかと、思案はしているのだが、どう行動を起こしていいかの具体案が浮かばないのだ。
『このまま1ヶ月過ぎてしまったらどうしよう?』
不安な気持ちを抱えているせいか眠りが浅く、普段では考えられないような時間に目を覚ましてしまった。
「今日こそ、いい方法を見つけないとな・・・。」
独り言を呟くとシーブックは、重い気分を引きずりながら朝刊を取りに行った。
特に新聞が読みたかったわけではない。ただなんでもいいからヒントになるような記事でもないか?そう考えただけだった。
リビングのソファに座り、折り込み広告をまとめてテーブルの上にバサリと置く。
「何で新聞ってのは、こんなに広告が挟んであるんだ?邪魔だったらないよな。」
文句を言いながら新聞を広げたとき、偶然に新聞の間に残ってたのであろう一枚のチラシが落ちてきた。
そのチラシを、他の広告と同じにテーブルに置こうとしたその時、書かれてる内容がたまたまシーブックの目に飛び込んできた。
シーブックの手は止まり、チラシを凝視し始める。その表情はいたって真剣だ。
これだと思った。生まれ変わるにはこれしかない。心からそう思った。
一時間後、シーブックは身支度を整え、まだ起きてこない家族に気付かれないように、そっと家を出た。
決意を固めた表情が朝日に照り返されている。シーブックはもう一度チラシに目をやり、それを丁寧に折り畳むとポケットにしまい込んだ。
そのしまい込んだチラシには、お世辞にもキレイとは言えない字でこう書かれていた。
<貴方にもできるゲルマン忍術。門下生大募集中>・・・と。




そしてそれから数時間の後、いまだシーブックは山道を歩いていた。
朝からずっと歩きづめだ。少し疲れてきている。
シーブックは腰をかけることのできる岩を見つけるとそこで休憩を取ることにした。
水筒の水を喉に流し込みながら、ポケットから折り畳んであったチラシを取り出し、
シーブックは大きく息をつきつつ、呟いた。
「ふぅ・・・・だいぶ奥まで来たけど・・・本当にこっちでいいのか?」
チラシを眺めるウチにちょっとした不安に駆られて来た。何しろ目印などがないのだ。
ギアナ山の何処から入山するか。そしてそこからのおおよその距離と方向。
手に持ったチラシに書かれているのはそれのみである。
地図と言うにはあまりにお粗末な物だ。描いた人間はさぞいい加減に違いない。
と、言うかこれを書いたのが本人であれば、いい加減なところは間違いなくある。
花見の時に見たシュバルツ・ブルーダーを思い出しながらシーブックは大きくため息をついた。
「もし、このままたどり着けなかったらどうしようかな・・・・。
あんな大見得切っちまった以上、おめおめ帰ったら何言われるかなんて解ったモンじゃないし。」
不安を振り切り、先に進もうと立ち上がった。
「ん・・・?」
水筒をリュックにしまってと立ち上がり、数歩歩いたところで、靴紐がほどけていることに気付く。
「おっと・・・。いつの間に・・・。」
結び直そうとその場に身をかがめようとしたその瞬間だ。
一瞬前まで頭のあった場所を何がが通り過ぎていった。
切れた髪の先がハラリと地面に落ちる。
「え・・・・・?」
状況がよく把握できない。ただ、全くの偶然によって自分が命拾いをしたことはよく解る。
一瞬の後、自分に何者かが、何かを・・・それも、危険な物を投げつけてきたと言うことも理解した。
冷や汗が頬を伝って流れ落ちた。
「だ・・・誰だ!危ないじゃないか!」
シーブックは、猛然と抗議しようとした。逃げた方がいいという考えは浮かばなかったらしい。
落ち着いて考えれば、おそらく狙って投げたのだから危ないじゃないかという抗議は、
大変間の抜けた物になってしまうと言うことに気が付くのだろうが、驚きのためにいまいち頭が回らなくなっているようだ。
案の定返答の代わりに、またもや何かが飛んでくる。狙いは頭だ。当たれば大怪我・・・下手をするとそれでは済まない。
「なんとぉー!」
何とか横っ飛びでかわすことが出来たが、代わりに体勢は大きく崩れてしまった。
『やられる・・・・!』
この体勢では、次に攻撃されたらまずかわすのは無理だ。
なんでこんなトコで命を狙われなきゃいけないんだろう?
なんでこんなトコに来てしまったんだろう?
大体誰がこんなコトを?
あぁ・・・短い一生だったなぁ。
様々なことが頭に浮かぶ。もちろんセシリーのことも。
『このまま死んだらセシリーはきっと逃げたとか思うんだろうなぁ。
・・・・って言うか、何でオレがこんなトコで死なないといけないんだ!?理不尽じゃないか!』
理不尽さを嘆いても、もはやどうしようもない。次の攻撃でシーブックは確実に殺られるだろう。
『ゴメンよ、セシリー。もう会えないみたいだ。影が薄いとか言われた俺だけど、忘れないでいてくれると嬉しいなぁ・・・。』
心の中で謝罪とちょっぴり情けない願いとともにセシリーに別れを告げた。が、いつまでたっても次の攻撃が来ない。
「あれ・・・・?」
急に止んだ攻撃をいぶかしく思うシーブックに、木の影から声がかけられた。
「君は部外者だね?それならそうと早く言ってくれないと困るなぁ。」
赤を基調に黒いライン。胸の辺りには鳥のような模様が入ったジャンプスーツのような物を着た男が声がした方向から現れた。
「おや・・・?僕と同じ学校の生徒か。参ったなぁ、怪我はないかい?」
仮面を被ってるせいで顔は解らないが、どうやら彼はシーブックのことを知っているらしい。
「ウチの学校って・・・・。あんた一体・・・。」
仮面・・・と言うよりはヘルメットに近いそれを外しながら、男は名乗った。
「3−Cの宇門大介だ。確か君はシーブック君だね?」
宇門大介。ロンド・ベル学園の三年生で、特技は乗馬。確かどこかの乗馬大会で優勝したとかしないとか言う話を聞いたことがあった。
父親は科学者なのだが、本人はそっち関係ではなく牧場の仕事をしたいらしい。
「あ・・・はい。でも・・・どうしてオレの名前を?それに、何だっていきなり攻撃なんてしたんですか?」
助け起こされながら好意的とは言えない口調で大介に尋ねる。
「昨年のミスロンド・ベルの彼氏と言えば、学園じゃ知らない者の方が少ないだろう?」
ここでもまずセシリーありき、だ。いい気分はしなかった。
だが、自分は変わる。変わりたいのだ。そのためにわざわざこんな山奥まで来たのだから。
「それから・・・君を攻撃したのは全くの勘違いだ。済まなかった。修行中だったもので・・・ついね。」
「勘違いって・・・そんなので殺されちゃたまりませんよ。」
今ひとつ納得はしていないようだ。と言うよりも、納得できる方がおかしいだろう。
だが大介の言う修行という言葉の方が気になった。もしかしたら彼も・・・。
「今、修行中って言いましたよね?」
「ん・・・?あぁ、実は僕は・・・。」
大介の説明を最後まで聞くことは出来なかった。大介がいきなりシーブックを抱えて跳躍したからだ。
「せ・・先輩?」
「舌を噛む。黙っていたまえ。」
茂みの中に飛び込むと、大介は慎重に辺りをうかがう。
先ほどまで2人がいた場所には手裏剣が突き刺さっていた。
「ど・・どういうことなんですか?」
「しっ!静かにしてくれ。」
事情はよく解らないが、取りあえず危険と言うことだけはハッキリと解る。
状況ぐらいは把握しておきたいと思い、混乱した頭に浮かんだ疑問をぶつけてみる。
「あの手裏剣、誰が投げてるんですか?それに、修行って一体?」
「話は後だ。・・・・・来るッ!」
シーブックを制止し、大介は懐からツルハシ状の武器を二つ取りだした。
柄の部分を合わせ一本にすると、バーベルを上げる様な形で、真上に差し上げる。
ガシィッ!
大介の武器は、振り下ろされた忍者刀をしっかりと受け止めていた。
忍者刀を振り下ろしたのは、癖のある髪を後ろで束ねてポニーテールにしている少女。
黄色が基調になったミニのワンピースに、膝上まであるブーツを履いている。
ワンピースの胸には何故か胸にはVの文字が刻まれていた。
「・・・うあぁ・・。」
シーブックは不覚にも腰を抜かしてしまった。もし大介の反応が遅れていたら、血の雨が降っていたのは明らかだからだ。
この人達はおかしい。何で平然とこんな事をやっているのだ?修行と言ってはいたが、生死をかけるような修行だなんて物騒にも程がある。
「ふぅ・・・。これぐらいにしておこうか。部外者を巻き込んで怪我でもさせてしまっては申し訳がないからね。」
大介が微笑みながら、武器を納めた。少女も頷くとそれにならい、忍者刀を背中に納める。
「驚かせてゴメンサイね。つい、夢中になって。」
少女は微笑みながら、シーブックに謝罪する。
「は・・・はぁ。」
間の抜けた返事を返してしまうが、状況がよく飲み込めてないのだから仕方がない。
「彼女は岡めぐみ。僕たちと同じ、ロンド・ベル学園の生徒だよ。」
「1−Dの岡めぐみよ。えぇと・・。」
「あ・・・2−Bのシーブック・アノーです。」
後輩相手なのだが、何故か恐縮したような物言いになってしまっているのは、いまだ先ほどの恐怖感が抜けきっていないからであろう。
「さっきの質問にまだ答えてなかったね。実は、僕たちはここで忍術の修行をしているんだ。」
やはり思ったとおりだ。おそらく彼らはシュバルツの元で修行をしているのだ。
ようやく頭の整理もできてきた。それにしても、この少女・・・めぐみと自分を勘違いというのはどう言うことだ?全然似ていないではないか。
「でも・・・さっき勘違いって言ってましたよね?どうやったら、僕と彼女を間違えるんです?」
怒りを込めて、シーブックは詰め寄った。何しろ二度も死にそうになったのだ。
「いやぁ・・・僕もほんの少しおかしいとは思ったんだが、変装してるのかも知れないから取りあえずと思ってね。」
悪びれずもせずにさわやかな笑顔でそう言ってのける。
「まぁ、怪我もないことだし、ここは水に流してくれたまえ。」
悪びれずと言うよりも、本当に悪いとは思っていないのだろう。それぐらい曇りのない笑顔だ。
めぐみもその隣で「失敗、失敗☆」とでも言いたげに、ぺろりと舌を出している。
人を殺しかけておいて、二人のこの態度。一瞬シーブックは更に文句を言ってやろうかと思ったが諦めた。
これ以上責めても無駄だろう。ちっとも悪いと思っていなさそうだからだ。
逆に考えれば、自分もこれぐらい図太くなれれば、望みも果たせるだろう。そう思ったというのもある。
シーブックは本来の目的を果たすことにした。
無言で持ってきていたチラシを差し出す。
「ん?これは・・・。すると、君は弟子入り志願者?」
大介の言葉にゆっくりと、しかし力を込めてシーブックは頷くのであった。




ここは先ほどの場所から更に奥まで入ったところ。木々に覆われカモフラージュされるようにその忍者屋敷は建っていた。
このような形で隠れていたのでは、あんな地図を頼りに見つけることなどできなかったであろう。
命の危険にさらされたとはいえ、大介やめぐみに会えたのは、ある意味運が良かったとも言える。
本当に運が良かったかのかどうかは又別の問題だが。
屋敷は一見すると少し古びた空手や柔道の道場と言った印象だ。
いかにもと言った雰囲気がある建物とシーブックには思えた。
入り口の看板には太く力強いタッチの筆書で
ゲルマン忍術道場
と、思い切り日本語で書かれている。力強いが字は下手である。看板の端っこの方に、君も忍者になれる!だの、来たれ若人!だのの文字と手裏剣の絵が書かれている辺りが真剣味を損なっている。
茶目っ気のつもりか、真剣に考えてこうなったのか。シュバルツであれば後者の可能性の方が高そうだな、などと内心思ってしまう。
「か・・・看板はともかく、建物は案外普通なんですね。」
もっと派手な外観の物を想像していたらしい。
服装の趣味とは違い、建物の趣味は案外普通というか、渋めが好みなのかも知れない。
渋めが好みの人間が看板にああいう余計なことを書いておくのかという疑問はこの際置いておく。
「ハハハ、一体どんなのを想像してたんだい?」
「あ・・・いや・・・シュバルツさんが、あぁだからもっと派手なのかと。」
シーブックは少し期待はずれだとも思っていた。
存在感を増すための手段として、ゲルマン忍術を学びに来たのにこれでは話が違う。
普通の忍者は隠密活動を常とする。もし普通の忍者にされてしまったら目立たないではないか。
しかし、シーブックは傍らの大介達に目をやり、おそらくそれは杞憂だろうとも思った。
彼らの忍者服(?)は、忍者と言うには目立ちすぎる。
『大丈夫。ここでならきっとオレも目立てるようになる。』
シーブックは自分の考えの正しさを再確認した。
よくよく考えてみれば、存在感を増すために、存在感を消してなんぼの忍者になろうというのは妙な話だが、
あくまで目指すはシュバルツの路線、ゲルマン忍者だ。
この極意を身につければイヤでも目立つに違いない。
常識的に考えれば別にそう言う意味での存在感をセシリーは求めてるわけではないのであろうが、
今のシーブックにはそれに気付く心のゆとりというモノがない。
「これは廃屋を利用しただけなんですよ。シュバルツ先生は趣味に合わないから立て替えたいって言ってるんですけど、
なにぶんそのための資金が無くて。」
めぐみが苦笑しつつ説明してくれた。
これで納得。やはりシュバルツはシュバルツ。シーブックの期待通りだ。
シーブックは自分の判断の正しさに満足していた。
繰り返すが、根本的なところで間違っていることには彼は気付いてはいない。
「まぁ、詳しい話は中で先生に聞きたまえ。デューク・フリードと、岡めぐみ。ただいま戻りました。」
言いながら、大介は無造作に扉を開けた。
「デューク・・?」
シーブックが眉をひそめる。確かこの人は宇門大介と名乗ったはずだったが。
「僕の別名だよ。ゲルマン忍者名とでも言うのかな?」
「そ・・・そうですか。」
あまり深く言及しないでおこうと、シーブックは考える。
しかし、それでも一つ気になったことがあるので、聞いてみることにした。
「あれ?じゃあ、岡めぐみって名前も忍者名なんですか?普通の名前っぽく聞こえますけど。」
「あ・・私は正式にはゲルマン忍術の人間ではないんです。こう見えても甲賀の跡取りなんですよ。
だからここにいるのは・・・そうですね・・・留学生って所かしら?」
この現代社会に置いて、忍者の跡取りと言う物が存在することもある種の驚きではある。
「え・・・?伊賀とか甲賀とか・・そういうのってまだ残ってるんですか?」
「もちろん。忍者って言うのは、要はスパイですもの。そう言う物の需要はいつの時代にもありますからね。」
なるほどそう言う物かと納得してしまう。
「あれ・・・?先生はいないみたいだな。」
中に入っては見たもののシュバルツはいないし、何処からか出てくる様子もない。
「私はここだぁ!」
「「「うわぁっ!」」」
気配すら感じさせずに後ろからシュバルツの大きな声が飛んできた。
ふいに大声で脅かしてくると言う趣味の悪い行動はともかく
シーブックはもちろん大介やめぐみにまで気配を覚らせない辺りは流石だ。
「背後を簡単に取らせるとは、まだまだ未熟だぞ、お前達。」
静かに言うと、シュバルツは先に中の方へ進んで行こうとする。
すれ違いざまにシーブックを見とがめ、振り返りながら訊ねてきた。
「で・・・その少年は?」
シーブックは一歩前に出ると、シュバルツに頭を下げた。
「覚えていませんか?花見の時にお会いした者でシーブック・アノーと言います。
シュバルツさん、オレに・・・オレにゲルマン忍術を教えて下さい!」



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実はこれかなり前にできてたのにアップし忘れてました。(滅
んで、書き終わった時点から二ヶ月後、それに気付いて、アップしようと決めました。
で、その時についでに、改めて文章チェックしたら穴だらけでアレ過ぎる有様でした。
そのため大幅な加筆・修正を必要としたんで、アップ忘れも結果オーライだったかと。(藁
ッツーか、こんな話にしてしまってムッシュが怒りませんやうに。(゚人゚;)(謎滅