アーバンクラブのアーバン句会「昼寝の会」には2004年1月から参加している。
句会は毎月催され、2009年1月で79回になるから、かれこれ6年半続いていることになる。
常連メンバー(俳号)は、香月、土竜、井蛙、加代、昇豕、餘花、加代、流香、歩人、蓼風、不律、西遊(小生)
会場の帝国ホテル特別会議室を提供してくれているのは土竜さん。
兼題は通常2題、その他自分で好きなのを使って5句提出する。
当日はお互いに誰が詠んだか分からないようにして選句するのだが、自分の句に対する出席者の鋭い指摘が大いに参考になる。
リーダーの香月さんが我々を上手く導きながら、時折手を加えてくれ、次第に磨きがかかる。
俳句は短くて深い。単純にして複雑である。
自然を始めとする周囲の変化と自らの変化の対応でもある。
澄み切った目で見て、研ぎ澄まされた心で詠う。
俳句は小さくて弱くて目立たないものを正面から素直に詠む。川柳のことはよくわからないが、これと反対なのではないだろうか?
さて、日頃から身の回りの情景に関心を持っておればいいのだが、そうはいかない。
兼題があると、その言葉に関する情景に関心を持って見ている。そうすると、きっかけが早くつかめる。
私のレベルだと、初めはざっとしたイメージしかおきない。何を訴えたいか、何に強い関心を持ったかが最初である。
すばやく自分の心象をメモしておく。できるだけ手短に、しかも多種に。風景・状況を客観的に掴み、自分自身の心理状態を深く掘り下げることになる。言葉よりも心が重要なのだ。それが後で役に立つ。
五七五はすぐには出てこない。でも大体の言葉は埋まる。字足らずや字余りになるのが普通。気に入ったインパクトのある言葉がさっと出ればしめたもの。だが、それもその言葉に捕らわれていると収まりきれなかったり、全体的に収まりのいい句にならないことがあるから要注意。
時折矛盾を感じる。素直に詠むと出席者の受けが良くない。技巧を凝らすと受ける。受けない句のほうが愛着がある。率直に上手く詠めればいいのだろうが、なかなかそういうわけにいかない。でも受けが悪くても素直に詠むことはやめられない。
以下、拙句・・・
2004.1
初筑波ビルの間に目の高さ
菜の花に紅葉彩る安房の山
陽に風に雲に白富士去年今年
雪花をまつげに乗せて初走り
寒いなと言うても富士は知らんぷり
2004.2
畦道を行く老婆の背春めきて
背戸の猫鳴き声どこか春めきて
寒雀飛行戦隊有頂天
たんかんを開く手に立つ奄美の気
春一番ウキウキジョギングハイペース
2004.3
春暁に カラス鳴く声淋しけり
裏に咲く花よ朝日の刺し入りて
風呂上りぬるみてもよし深層水
かくれんぼ顔出せ土筆の三兄弟
味噌砂糖酢ありて苦しフキノトウ
2004.4
花散りて目もくれぬ葉も嬉しけり
ひとひらの花舞い落ちて闇の中
廃屋や燃ゆるがごとき赤芽かな
花かがり背中おぼろにうごめいて
番犬もいや喜びて青き踏む
2004.5
ゆるやかに喉もと過ぎる新茶かな
老木に垂れて愛しや藤の花
陽の出ずる前に一汗薄暑かな
2004.6
二匹とも衣更えして腕の中
蚊の野郎よくぞここまで十二階
唇の緑雨や旨し朝走り
あな惜しや蚊の一鳴きが夢を絶つ
らっきょ漬け広がるにほひ玄関まで
2004.7
サングラス外した顔のしまりなさ
琵琶の実を食い散らかして鳥発ちぬ
日盛に背広行き交うビジネス街
蝉時雨社を抜けて家路かな
突風に舞い上がる蝉ビルの窓
2004.8
新涼の湖に残りしボートかな
幼な子の舐める氷菓やしたたりて
夏痩よいや着痩だろと笑み返し
盆のふち蜻蛉静かに止まりけり
昼寝あと氷菓のしみて虫歯知る
2004.9
誰ぞ見るか細き竜胆岩陰に
野分あと富士の湧き水なお旨し
事も無げ野分のあとの林檎かな
拭くや惜しフロントガラスの露模様
仰向けの空の高さや深呼吸
2004.10
長き夜や窓に映りし妻の顔
雨風に踊り狂ひて秋桜
稲雀わがもの顔の棚田かな
新米を送りし義姉の声弾み
枯れてなほ垣鮮やかに烏瓜
2004.11
老犬や衣着せられ日向ぼこ
すそわけの栗飯半時待ちきれず
紅葉に負けじと岩松凛と立ち
落つる葉に見やりし窓の影模様
小春日や丸の内にも猫在りて
2004.12
欠礼の添え文哀し友の妻
木枯も古都の色なす切通し
師走の陽川の路にも爺跳ねて
枯葉踏むジョギングの足温かし
被災地の姉お歳暮に声弾み
2005.2
冴え返る嬉し淋しを背に負い
咳すれど風暖かし猫柳
バレンタイン過ぎて気になる人目かな
蕗の薹鉢に移して水を差し
音もなく広がりおりぬ野焼かな
2005.3
しゃぼん玉吹く吾子の顔今遠し
まっ青の中あざやかに蝶の舞い
雨の道衣とりどりの弥生尽
春眠や女房の声も闇の底
菜の花にはしゃぐおばさんのあどけなさ
2005.4
うららかや子らが地べたに転がりて
尾を揺らし子牛草食む春田かな
山椒の芽を摘まむ手に棘やわし
行春や友の記憶も遠のきて
春暁やゆるりと走り頬の風
2005.5
摘み取りしこごみの足をそっと撫で
羽根のごと揺れど確かな余花なりき
波打ちに跳ねる子犬や夏に入る
花蜜柑船上までも漂ひて
葉桜に心静めて朝走り
2005.6
ベランダの青虫そっと野に放ち
うたた寝に夏鶯谷のこだまして
夜もすがら伴侶求めて時鳥
幼子の夏帽子だけ歩きをり
トマト食む顎に滴る地の香り
2005.7
妻娘出かけてクーラー独り占め
留守なれば大蜘蛛でんと構えけり
紫陽花の乾いてもなほ咲いてをり
天井に昼寝するぞと語りかけ
旋回の風を巻き込むヨットかな
2005.8
ひぐらしや滝の音さえ風に乗せ
屋上風呂入道雲立つ天高し
手拭ひを拾ふ老婆や草いきれ
母想うなま温かき瓜食みて
炎天下走る友みな歩を合わせ
2005.9
嬉しくて葡萄丸ごとかみつぶし
無器量な八朔なほふるさとの味
秋刀魚食う娘の箸の頼りなさ
台風の過ぎし安堵の離陸なリ
カフェの前溢れる川の水澄めり−ルツェルンの湖のロイス川沿いのカフェに洪水
で溢れた水が足元まで押し寄せてきていた。それでも水は湖で濾過されたのか澄
んでいた。
2005.10
鈴虫の鳴き渡る夕友偲ぶ
葬儀終え我が家の菊の暖かさ
ベランダの風に負けじと赤とんぼ
鰯雲はやクールビズ街に無し
運動会ブランコに乗る子一人をり
2005.11
木枯しの歩道老犬のしのしと
小春日や妻の伴走ママチャリで
剥き皮の残るを選りて吊し柿
大根の芽アスファルトを突き破り
ワイシャツを纏ひて案山子哀れなリ
2005.12
十二月老婆引く犬いそいそと
冬の星ロンドンにいる子も見るや
何憂ふこの欅の葉落ちずして
北風に子らの笑み顔あらまほし
迷ひつつ慣れ親しみし日記買ふ
2006.1
去年今年ベランダの花咲きしまま
寒鴉走り寄れども逃げもせず
高層のサッシを引いて隙間風
亡き父母と離れし子らに雑煮添え
年玉に喜ぶ妻の皺増せり
2006.2
あさつきに大小ありて選び採り
箸の先蜆戯る賑やかさ
顔いっぱい笑う娘よ春隣
キッチンの隅にて主役野水仙
一家ごと呑み込む力よ春の雪
2006.3
春眠と言ふて飯抜き許し合ひ
無理せぬと言いつつ無理する春の風邪
山椒の芽小さきを避けて摘み採り
忍ばせり旅行カバンに蕗味噌を
窓越しに小雨のラナイ長閑なり
2006.4(佐倉吟行)
枝先にこすられてなほ若葉生く
写生会柳の糸のそれぞれに
春うらら絣華やぐ老船頭
2006.5
こいのぼりわが子は今やブラジルに
この十年やっとミカンの花咲けり
むくむくと若葉ふくらむ山となり
建て替えに植え替え終えて春の風
苔に立つ翁の墓に若葉風
2006.6
職退きて余花は青さにきわだてり
時鳥声轟かせ空渡る
蕗味噌は登山帰りの子の土産
目地に棲む黴の命の逞しや
父の日にネットで届くグリーティング
2006.7
冷房のきかぬ部屋なり老夫婦
かたわらのわが子の日焼眺む母
一山の瓜目の前に母想う
拭きもせず花ごとかじる胡瓜かな
完走し汗の流るるまましばし
2006.8
幾世代墓地を守るや花木槿
歳重ねラジオ体操ていねいに
クーラーを入れぬ女房の自慢顔
稲妻に向かいて走る有天頂
はちきれんほど膨らむが花火なり
2006.9
その顔の怖くも可笑しき蝗かな
思い出をもろとも流す秋出水
秋の灯に束の間の我取り戻す
携帯のメール打つ手にとんぼかな
幸せは小骨交じりの生鰯
2006.10
神無月お参りの子等騒ぎをり
新蕎麦を腹一杯食うたるみ顔
新米や並のおかずの余りけり
残り稲架幼な児たちの逆上がり
かしましや小雀落穂に埋もれをり
2006.11
若者と激論交わし帰路夜寒
風流を求めて柚子を窓に置く
たまたまのボジョーレヌーボーただ嬉し
久々にわが子と走る天高し
金柑にくちばしのあと2つ3つ
2006.12
丸ごとの白菜子らも健康体
幾たびか妻との清算歳の内
のっぺ汁妻の口元義母に似て
コンビニのおでん掬う手ぎごちなし
訳ありて子が居候冬霞
2007.1
寒の水生きる力を手に受くる
夫婦して七種粥を食べ分ける
千両にツガイ戯れ夕陽散る
水仙や野ざらしの球根なるも咲き
大寒に走る友あり我もまた
2007.2
受験子の車窓凝視に傍ピリリ
優しくも東風が背押すジョッギング
団塊の張り切りすぎて春の風邪
畦を焼くにおい遥かに届きけり
待たされてじらされてなほ初音かな
2007.3
手シャベルの指間にこぼるる春の土
野蒜採り匂ひに酔ひて時忘る
畑打ちの一人茶の木に見え隠れ
子等笑い天に声散る雲雀かな
春昼や乗客の顔皆うつろ
2007.4
迷ひこむ花びら顔にジョッギング
久々の留守家に蜂の迷惑そう
若緑雲をちぎりて天を刺す
長閑なり朝寝の顔に風ひとつ
投票日候補者燃やす赤芽かな
2007.5
久々の友の口振り窓は初夏
店先に並ぶ鈴蘭独りぼち
新緑に生まるる黄あり死ぬ茶あり
葉桜のすがしさを誰そ気に留めむ
更衣十年前の吾ぞ在り
2007.6
雨蛙手摺の陰で何狙う
青梅を摘まむ指先光差す
「バクシュウ」とガイド指差すアナトリア
花蜜柑ほど良き加減の雨上がり
ゼラニウム子の出て久しバルコニー
2007.7
野良の手を休めて一服夕立かな
素麺を揉む手に弾む力なり
さくらんぼ一粒ごとの甘さかな
朝走り汗一拭きの軽さかな
妻娘ショッピングにて昼寝かな
2007.8
昼寝して今日も子供の頃の夢
迂闊にも蝉の幼虫掘り起こす
太古より生き物泉に戯れり
昼飯に出て猛暑の意味を知る
見る人の思いそれぞれ花火散る
2007.9
騒音の切れ間にこおろぎ響きをり
秋出水去りて子一人遊びをり
ひぐらしや幼な子墓地に走りをり
雨の月妻と向かひて書に浸る
秋めきて街行く人のゆるゆると
2007.10
金木犀風に溶けても居残れり
ななかまど葉に先んじる実の紅さ
土埃流して清し野菊かな
深秋に色づかぬ葉や健気なり
銀漢や雲引き裂きて月照らす
2007.11(川越吟行)
小春日や子等おにぎりをかぶりつく
大根を切り取る匠手のやさし
秋空を切り取る小江戸の黒瓦
2007.12
子につられ親の小走る冬野かな
不意に眼を遣れば花枇杷庭の隅
ぬくもりと笑顔伝える障子越し
朝起きのつい声弾む師走妻
隙間風遥か故郷運び来る
2008.1
初旅や一服入りて旅装解く
切れば来る切らずば来ずの賀状かな
薄明や冬芽に学び背筋伸ぶ
初詣親子に見えぬ願いあり
不揃いの丸餅ありて雑煮かな
2008.2
寒明けて背筋に伝ふ光かな
午の刻走る鼻先春浅し
浅漬けの指に滴る水菜かな
ひとくちの芽かぶ太古のエネルギー
蹴っ飛ばす石ころの跡下萌ゆる
2008.3
読み止しの書も忘るほど春の雨
剪定や指示の妻に枝落とす
連れ添いて語る道行山笑ふ
稲穂垂る脇に水張るバリの春
揺れる葉の畝に小雀見え隠れ
2008.4
菜の花に揺れてほころぶ妻の顔
地を拓き気を吹き込みて耕せる
春の海宵のしじまに雲溶けり
馬刀得むと塩ふり興ず子の愛し
風柔く淡き青春リラの花
2008.5
汐干刈歳ゆくほどに邪気増せり
両手にて新茶含むは縁のふち
母の日に戯むる子らや母想ふ
撫でるごと筍揺する小学生
制服の馴染みかけたる聖五月
2008.6
梔子の少女のごとき今朝の香よ
書に耽けて夕餉を満たす梅雨鰯
明易やラジオの音も弾みけり
紫陽花の雨を待つうち走り抜け
一枚の紫蘇摘み母の背映る
2008.7
品書きの鱧を指差さすしたり顔
サーファーを乗せて弾ける土用波
海開きすでにさまざま焦げ具合
噴く汗を拭わずしばし幼き日
梅雨明けは今さら告げるまでもなし
2008.8
返しても返しても仰向けの蝉
鳴るを待つ風鈴窓をわずか開け
色黒の息子の帰国茗荷汁
初秋や粋がる妻の登山靴
キズ桃や固さのなかに甘さあり
2008.9
ひと仕事終えて三日月笑み返す
敬老日気になる歳を聞きそびれ
爽やかや嫌な奴とのケリつけて
稲妻をわが子口開け眺めをり
秋の蚊に手を打つわれにとまどへり
2008.10
秋の暮夫婦なれども不可侵に
野ざらしのなんきんありて道の駅
雑魚釣りて妻はしゃぎたつ秋日和
あなうるさ眠り妨ぐ虫の宿
パソコンを打つ手休めて秋高し
2008.11
節くれの指温かき牡蠣割女
還暦のおそるおそると冬に入る
席譲る目尻微笑む白マスク
時雨道四十二キロの月桂冠
廃屋の柿たわわにて鐘遠し
2008.12
悪友の欠礼手にし年惜しむ
幼女引く馴染みの犬の着ぶくれて
振り向くは幼な子のよなくさめかな
落葉掃く人ぞうらめし土露わ
足元に野鳩分け行く日短
2009.1
無沙汰詫ぶ友の賀状の一つ減り
寒林や地に生きものの気配あり
春着きる娘のテンションの高さかな
雑巾を手に束の間の日向ぼこ
ぐずぐずとせし初日出て速きこと