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いままでメールマガジンや映画祭ページに載せたものから、よその掲示板に書き込んだものまで、文といえないような文をここにつっこんでみました。書いた時期(掲載時期)は書いておきますが、ちょっとネタ古くってすみません。新しいものもたまに増えるかもしれないです。

※ちなみに、“プレビュー”とあるのは、公開前にまだ観ていない人を読者として想定して書いたものです(つまりネタバレ少なし)。


 

●女装コレクション(フランス編)その1(98年7月、おんたけさんのほ〜むぺ〜じのポストに書き込んだオバカなネタ)

●『天使が見た夢』プレビュー(於フランス映画祭横浜98)(98年6月)

●『アルテミシア』プレビュー(98年2月)

●『クリスマスに雪はふるの?』プレビュー(97年12月、メールマガジンAB・CINEMAに掲載)

●『いちばん美しい年令(とし)』プレビュー(97年12月、メールマガジンAB・CINEMAに掲載)

●『ラスト・ファンタジー』GAWIN 作品(ビデオ)紹介(97年某月、おんたけさんのほ〜むぺ〜じのポストに書き込んだ作品紹介を一部改変)

 

98年7月

女装コレクション(フランス編)その1

 

女装、もともと好きでやってしまうアクターもいるかもしれませんが、出演をOKする際に、女装シーンがあるかどうかもちゃんと条件にはいっているんでしょうね。なかには脚本をもらって女装シーンをみつけるやいなや、後込みしちゃう人もいるんでしょうね。

ほんとはヤなんだけど、それがその映画に必要であると思えばOKしちゃう、そんな経過もあるかもしれませんね。ゆえに、女装も芸術だ!と言えるのではないでしょうか?(キレイでも、キモチ悪くても、ね)女装シーンの有無は、ネタばれ要素も含んでいるので、それが嫌な人は読まないほうがいいかも。

 

●ジェラール・ドパルデュー&ミシェル・ブラン

「タキシード」(ベルトラン・ブリエ監督)

好きでそうなったのか、しかたなくそうしてるのか、微妙な表情の情けない感じが笑えた2ショット。

あのガタイのよい(天賦のボディ!)ドパルデューの女装は、似合うとかどうとかを超えて、有無をいわせないインパクトのある壮麗な眺めです。けっこう色白なので、安手の娼婦ファッションでもけっこう上品なマダム風にみえてしまったりします。

一方のブランは、小柄なのを生かした装い。彼の場合は、やはりカツラがポイントでしょう。若い頃から(「ジュ・テーム・モワ・ノン・プリュ」参照)あの頭なので、カツラの冒険はひととおり楽しんでいるハズ(?)

いっしょにミュウ=ミュウもいるのですが、意外とすんなりトリオでなじんでいるので、この人はやはり小妖怪かもしれません(笑)。

 

●ミシェル・ピコリ

「ピンク泥棒」(ジロー監督)

ヘンタイピコリおじさん(キャー、ごめん)の本領発揮の女装が楽しめるこの「ピンク泥棒」は日本ではビデオのみ発売。(しかもとっくの昔に廃版)

でもジェラール・ドパルデュー、元祖「エマニエル夫人」シルビア・クリステルが共演で、細かいギャグをコテコテに盛り込んだコメディです。

ナチスの強制労働から逃亡するためにしかたなく・・・の女装ですが、珍品の類に入るでしょう。

 

●ジャン=ユーグ・アングラード

「ベティ・ブルー」

ラストの彼の行動には、なんでやねん。とゲラゲラ笑ってつっこんだ人、これこそ、愛なんだわ!と感動にむせび泣いた人、いろいろいると思います。が、華奢で端正だから女装が似合うというものでもないんですね。

逆のよい例(太めのガタイのいいオッサンが、楚々とした妖艶な美女になってしまう)が、日本には、いらっしゃいますよね。いや〜、不思議の国ジャポン、おそるべし。

 

●ヴァンサン・ペレーズ

「ラヴィアン・ローズ」(P・ルンギン監督)※ビデオタイトル「ロシアン・ゴッドファーザー」

本来ロマンティックな二枚目だったヴァンサン・ペレーズをとことん情けない三枚目にしてモテアソんでしまったロシア人監督ルンギン。(容貌にコンプレックスでもあるのでしょうか?)これが痛快でもあったりします。

ディズニーキャラ付の女物ピチTシャツに加えて、やはり逃亡するのにしかたなく女装させられます。ものすごくイヤそうな顔が、ぎゃくに嗜虐心を刺激します。

これに懲りず、ヴァンサンは日本でも公開予定のパトリス・シェローの新作、CEUX QUI M'AIMENT PRENDRONT LE TRAINではニューハーフ、ヴィヴィアーヌに扮しています。写真でみるかぎりは結構イケていますよ。

 

●ステファーヌ・メッツゲール

「ドーベルマン」

この映画のキーパーソン、ドラッグ・クイーンのソニア。かなりイケてる七変化を見せてくれた、将来を嘱望されるアクターの地の顔はけっこうヒゲ生えスピードの速そうな、男っぷり。やっぱり、メイクも手間をかけてキッチリやってくれると、それは映画の評価ポイントにもなりますね。今年のフランス映画祭で上映された「ねじれた愛」ではヒロインの弟の、隠れホモ青年。これからもイロイロやってほしいですね。(笑)

その2に続く。(‥‥予定)

予定登場作品「ペダル・ドゥース」「ぼくのバラ色の人生」「大いなる幻影」「フランスの友だち」「肉体の学校」「3人の逃亡者」「男と女 嘘つきな関係」他


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(98年6月・フランス映画祭横浜)

「天使が見た夢(LA VIE REVEE DES ANGES)」

エリック・ゾンカ監督

出演:エロディ・ブーシェ、ナターシャ・レニエ、グレゴワール・コラン、ジョー・プレスティア

撮影:アニエス・ゴダール

脚本:エリック・ゾンカ、ロジェ・ボーボ

録音:ジャン=リュック・オーディ

制作:フランソワ・マルキ

 

さまざまな雑誌をいろどる、本年度の第51回カンヌ国際映画祭の受賞セレモニーの写真の数々。そのなかに屈託のない、歯をむき出しにしたあどけない顔で笑いあう少女たちの写真がある。

エロディ・ブーシェはロリータ・レンピカの赤いレースのミニドレス。そしてナターシャ・レニエは茶色の透ける素材のランヴァンのロングドレス。ともに赤いリボンで巻いた賞状を携え、手をつないで喜びを満面に表わす彼女たちは、まるで卒業式を終えた女学生のようでもあった。

カンヌ映画祭での女優賞を彼女たちは2人ともに受賞した。これはコンペで外国勢に軒並み賞を持っていかれた地元フランスにたいして折り合いをつけた結果かも、と穿った見方も予想されたが、「天使が見た夢」を観終えて、その色メガネ的予想はいっさいふきとんでしまっていた。

演じる少女たちの出来如何に、すべて左右されかねない映画において、彼女たちはまさにベストなパフォーマンスで応えているのだから。

 

旅から旅の生活をバイトしながら続けるイザは、リールの工場で知り合ったマリーの住むアパルトマンに転がり込み、どんどん意気投合してゆく2人。

そろって工場もやめてしまい、将来に不安をいだきながらも、2人の、未来を手探りするような生活が続く。

マリーは、街でいくつもの店を経営する有力者の息子で自らもライブハウスの経営者をしている青年クリスとの愛に、本当は愛されていない感じながらもその関係に溺れるようになり、矛盾に苛立ち、イザにつらくあたるようになってゆく。

一方イザは、事故にあい植物人間状態が続く少女サンドリーヌの日記を読んだことから、奇妙な親近感をおぼえ、彼女を頻繁に見舞うようになる。

お互いの背をつけたまま違う方向を向いているかのように、一方でお互いを思いながら、表面では心が離れてしまったように傷つけあってしまうイザとマリー・・・。

 

エロディ扮するイザベル(イザ)は自由を愛し、常に変化を求め、同時に少女らしい感傷と夢もすてきれていない少女。一方、ナターシャ演じる同じ年令のマリーは、はすっぱで、やや冷めた態度で孤独な自分を隠しながらも、愛を求めている少女。

この少女たちの孤独、そこから生まれる心の動き、痛みを丹念に描いた作品のキャラクターを、この2人の女優は、自身のように自然に演じている。それだけ優れた脚本でもあるのだ。

またアニエス・ゴダールのカメラは彼女たちのアップを多用し、その表情からもかすかな感情の動きまで逃さず写しとろうとしている。

彼女たちが、なにを求めているのか、マリーがなぜ溺れていく自分を止められないのか、意識不明の少女を見舞うことで何から逃れようとしているか、なにが癒されるのか。

それはすべてカメラがとらえている。

 

本作が、長編初監督作になるエリック・ゾンカはカンヌではパルム・ドール、カメラ・ドールをともに逃したものの、幸運なスタートを切ったといってもいいだろう。

ティーンのファッション・リーダーの一人でもあるエロディ・ブーシェ、フランソワ・オゾン監督の新作にも出演が決定し、注目株のナターシャ・レニエ、本作品では好感の持たれない役どころながらソツなくこなし、今年のカンヌでは3本の出演作が披露されたグレゴワール・コランという逸材にめぐまれたという幸運。さらにそれをまとまりのある質の高い作品に仕上げた監督の手腕は、今後間違いなく注目を集めつづけてゆくことだろう。


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「アルテミシア」ARTEMISIA

 

この作品を見た2月初旬の段階では、セザール賞の衣装と撮影の2部門でノミネートされていたので、映像の美しさやバロック絵画に見られる典雅な衣装などは始めからかなり期待していたのです。

が、それよりもまず、主人公アルテミシアに扮したヴァレンティナ・チェルヴィの魅力!ラテン女性の底知れぬ情熱をあまり大げさでない演技のなかにみせてくれました。特に絵を描くことに没頭しているときのひたむきな視線や、初めて悦びをしったときの閃光のような瞳の表情。

プロモーションで来日していた彼女はおしゃべりが大好きな快活な女の子というイメージで、かなり映画よりホッソリしていました。聞くところによると、この映画では“官能”を表現するために食べて食べて、わざとふっくらさせたそうなのです。

十七歳の少女アルテミシアは高名な画家である父親から受け継いだ才能を、まさに開花させようとしていた、が当時は女性にアカデミーへの入学は許されず、男性の裸体を描くことも女性にとってはとんでもないタブー。

だけどそんな封建的な時代への女であることの憤りはほとんど描かれてはいません。フェミニスト映画ではなく、あくまでこれは恋愛映画。

恋のお相手は父の仕事のパートナーにして好敵手のアゴスティーノ。幸か不幸か、女として生きる悦びを彼女は知ってしまったのです。

そんなやわらかい作りが案外気に入ってしまったのですが、もう一つ、この映画の重要なオブジェクトである、彼女がかかわったきわめて初期のレイプ訴訟はそんな少女の、少女にしては熱く情熱的な恋をとことん“悲恋”にしたてています。

この辺りに、あまり史実が明らかにされていないモデルを主題にロマンティックな恋愛モノに仕立てたアニエス・メルレの指向がはっきり出ていると思います。が、逆に恋愛モノでしかない、という点で物足りなさを感じる人もいるかもしれませんね。

たしかに前半見せた、激しすぎるほどの絵画への情熱は恋愛沙汰を通していくぶん薄くなってしまった感もあります。

父親役は名優ミシェル・セロー。彼こそが2人の間を引き裂いただけでなく、アルテミシアの心をもひどく傷つけたレイプ訴訟を起こした張本人なのですが、セローが演じると実に“父性顔”が表にたって、ああ、娘を愛するがためにしてしまったことなのだなあと、納得させてしまうんですよね。

17歳で経験した、激しい恋と悲しい別れ。ここで物語が完結しているのですが、私は女一代記にしてしまうよりもよかったと思うのです。詳しいことは記録にはないけど、その後の彼女はパトロンの庇護も受け、結婚もし、女流画家として数多く作品を残しているのですから案外楽に生きていったのかも。それをクドクドと描かずにアゴスティーノへの想いの残り火を制作へのエネルギーにしていった、位のニュアンスで終わらせたのはかえって余韻が残って良いと私は感じました。

 

オルレアン美術学校からパリ高等映画学院(IDHEC)に進んだという経歴を持つ監督アニエス・メルレがアルテミシアという女流画家の作品にめぐりあい、インスパイアされたのは、実に美術学校時代のこと。以来暖め続けてきた素材であったアルテミシアをストーリーからヒロインのキャスティングまで、練りに練って完成させた作品で、美術に関する知識と探究心、こだわりなどが凝縮された作品であるといえるのではないでしょうか。

とくにフレスコ画を制作する工房の様子はなかなか興味深いです。天使役のモデルの子供が宙に吊られて微笑みをたたえさせられるシーンなど、名画の作られる過程が種明かしされているようで楽しくもあります。美術に多少なりとも関心があるという人にはこの辺もおすすめです。

また「猫が行方不明」「家族の気分」などのクラピッシュ作品を手がけた撮影監督、ブノワ・ドゥロムによる映像、特に海岸のシーンはものすごく奇麗でした。(98年2月)


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 『クリスマスに雪はふるの?』Y-AURA T'IL DE LA NEIGE?

●INTRODUCTION●---------------------

『ポンヌフの恋人』のレオス・カラックス監督に才能を見い出された注目の若手女性監督サンドリーヌ・ヴェイセがみずからの体験をもとに『ポンヌフの恋人』のスタッフたちと作り上げた第1作目。

太陽の恵みあふれる南仏プロヴァンス地方を舞台に、さながらドキュメンタリーのように綴られてゆくお母さんと7人の子供たちの物語。

デビュー作ながら権威あるルイ・デリュック賞とセザール賞を獲得し世界各国の映画祭でも高い評価をえている秀作。出演はドミニク・レイモン(『愛の誕生』)ダニエル・デュヴァル(『夜よ、さようなら』)ほか。 

1996年/フランス/90分/カラー    配給:オンリー・ハーツ

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“ぴあ”のお正月映画特集の観たい気分別マークでなんと“笑いたい”マークがくっついていました。まあ、このマークを参考にして映画を選ぶ人なんていないと思うけど、笑いたい映画ではけっしてありません。

とってもせつない女と大地の映画、そしてみんなが“お母さん”に会える映画なのです。

近ごろ元気なフランス女性監督の一人、サンドリーヌ・ヴェイセ監督は1967年生まれとまだ若い監督。東京国際映画祭の際に舞台挨拶で見たところ、なかなか美人で短く切りそろえた前髪がかわいい感じでした。

そんな彼女がレオス・カラックスの薦めでみずからの南仏で送った幼少期の思い出をもとに書き下ろしたシナリオがこの「クリスマスに雪はふるの?」。主役はおかあさんと7人の子供たち。

ピアノの奏でるクリスマスソングをBGMに、燦然と輝く南仏の太陽のもと、笑いさざめき遊ぶ子供たちで始まる冒頭。ちょっと横暴で人使いの荒いお父さん、とっても働き者のお母さん。このドミニク・レイモン演じるお母さんは7人も産んだ肝っ玉母さんって感じはなく、むしろ芯は強そうだけどちょっとはかなげ、なんか辛いこととかも自分の内にしまいこんでしまいそうな感じ。この夫婦は7人も子供作ってるけど内縁関係で、お父さんには別に正妻がいるのです。それでケチで電気はろくに使わせてくれないし、子供や妻はさんざん農作業にこき使うしすっかり悪役なんですが、それでもお母さんは“女”として愛してしまってる。

この映画のせつないところはお母さんが“女”であるがゆえに傷ついていった過程です。どうしても正妻にとってかわることはできない事実、そしてあろうことかお父さんが実の娘にいいよったショッキングな事実。

真夏から秋へ、そしてクリスマスへと移り行く自然の描写が「収穫」を通じてうまく切り取られているのは農場が舞台である利点だと思うけど、そんな移り行く季節を背景にお母さんの気持ちの移りゆく様子も淡々と描かれていて、自然に感情移入できるし、作者自身の分身と思われる三女の母親を思う目線もデリケートで秀逸。そしてなんといっても母親と子供たちの自然な一体感はときにそれが映画であることを忘れさせ、ドキュメンタリーをみているような感覚にさえなる。

監督が子供たちに撮影にあたって頼んだことは、ある農家に完全に入り込んで、撮影以外でもお互いに役名で呼び合ってほしいということだけだったそう。

最近母親に会ってないなあという人にもお薦めです。

普段は下着にエプロン姿で農作業にいそしむお母さんが街へお買い物に出るときはよそいきのブラウスを着て髪も入念にブラッシングもして出かける。それを子供たちに「お母さんキレ〜イ」とヒヤかされ、「バカね」と恥ずかしそうに笑う。

こんなシーンに代表される数々のエピソードを通してみずからの母親を思いだす人もけっして少なくないはず。母親に若いころの恋のお話のひとつもきいてみたくなったり。それぞれの心の“お母さん”をこの映画のなかにみることができるのでは。

このシナリオを読んで気に入った大御所ジャンヌ・モローの強力な後押しもあって制作された幸せな作品であるが、映画版ゴンクール賞といわれる権威あるルイ・デリュック賞の受賞作の名に恥じない、やわらかく心に残る作品です。

ラストにトートツにみなさんおなじみアダモの「雪が降る」が流れるのですが、これは監督が好きな曲だから、とのことなんだけど個人的にはオープニングみたいに静かなピアノインストゥルメントで幕が下りたほうがいいんじゃないかなと思ってしまいましたが。(でも歌詞はものすごく合ってる‥‥)

ぜひぜひラストまでお母さんと子供たちを見守ってあげてください。


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 1997.12月

『いちばん美しい年令』LE PLUS BEL AGE

●INTRODUCTION●--------------

2時間前に知り合った、知的で美しい上級生クロードの転落死を目撃してしまった名門リセに通うデルフィーヌ。真相を追って彼女は上級生の恋人を探し始める‥‥

思春期独特の虚無感や痛み、残酷さを描きながら、フランス国家の中枢を担う一握りの人材を養成するエリート校の知られざる伝統的体質をあぶりだす。

1995年カンヌ国際映画祭“ある視点”出品作品。出演は「野性の葦」のエロディ・ブシェーズ、「夏物語」のメルヴィル・プポー他。監督は「悲しみの天使」などの俳優として知られるディディエ・オードパン。1994年。1時間25分(ユーロスペース)

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思春期の多感な時期を生きる若者たちの姿を描いた繊細な作品であることは確かなのだけど、日本人にはちょっと説明不足の感ありなのです。フランスの教育制度とか、若干の説明がないと本当には何が言いたいのかハッキリしない部分もあるので。

フランスではリセの後は能力や希望する進路によって様々な修業年数の高等教育に進みます。この映画で描かれているのは高校卒業後に準備過程を得て、グランゼコールと呼ばれる少数精鋭の国家エリート養成校への進学を歩む若者たちなのです。

さらには国家の中枢の要人はあるグランゼコールのOBで占められています。

映画のなかで描かれる寮生達の異様な“伝統”の儀式、ナポレオン信奉、一般市民と同じように感じていては国を動かしていくことはできないと意識の隔絶を迫られ、エリート意識を植え付けていく様子。

これらがどこまでリアリティーのあるものかは分かりませんが、これは取りようによっては時に弱者にシビアな国家中枢の体質を揶揄してるともとれます。

そんなところを丹念にみていくと単なる青春モノ&サスペンスにとどまらずテーマ性に富んだ作品であると感じました。

 

いまやフランスでは若い女の子のファッションリーダー的存在でもある若手女優のエロディ・ブーシェが、悩んだり恋したり傷ついたり、生活につかれた母に代わって弟妹の面倒をみたりでまったく余裕のない女の子デルフィーヌをとてもよく表現している。太い眉、丸い鼻、厚めの唇となかなか愛敬のある顔だちで「スタン・ザ・フラッシャー」のロリータぶりも印象深い彼女なんだけど、本作ではまったく余裕がない表情がほんとうにかわいいし、なんだかケナゲ。

「夏物語」以来日本でもその名が浸透してきているメルヴィル・プポーは、登場するなりカッコつけまくりなので“これが「愛人/ラマン」でいきなりシクシク泣いていた男の子なのか”と思っていたところ、自分の弱さを隠すために必死で虚勢を張っている姿にほかならず、デルフィーヌの前で素顔をつい見せてしまうところなどは本領発揮といったところでしょう。

 

環境が一種独特であるし、背景に複雑なものをたくさん抱え込んだ映画でもあるので共感は持ちにくいかもしれませんが、いろいろ考えながら観てほしい緻密な映画だとおもいます。たぶん評価は分かれると思いますが、私には心に残る1本となりました。


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『ラストファンタジー』1992/仏 GAWIN

制作:ジャラール・ルバン

監督:アルノー・セリニャック

脚本:アレクサンドル・ジャルダン

出演:ジャン=ユーグ・アングラード/ブリュノ/カトリーヌ・サミー/

   ボイチェク・プショニャック/イヴ・アルフォンソ

 

この映画、ビデオでもちゃんと発売されましたが(イメージファクトリー・アイエムより)、邦題のためか、子供向けのコーナーに置かれてしまったり、さっさと店頭からかたずけられてしまったりで、アングラードのファンの方でもみてない人が多いようです。お涙チョウダイストーリーの一言では決してかたずけられたくない、いい映画でした。

フェリックス(ブリュノくん)はまだ小学校にあがったばっかりぐらいの男の子でSFが大好きで、というかもういっぱしのマニアなのですが、なかでも子供向けキャラクターの宇宙人ガーウィンが大好き。彼はふだんは普通の男の子とおなじように元気に遊んでいますが、白血病に冒されていて、父親ニコラ(ジャン=ユーグ・アングラード)に医師から告げられる病状も、例によって残酷なものでした。

最後のクリスマスになるかもしれないと、ニコラは息子に最高のプレゼントをしようと試みます。それは『夢』。彼はフェリックスが大好きなガーウィンのぬいぐるみを着込み、遊園地の友人から本物そっくりの宇宙船を借りて、フェリックスが薬で眠ってるうちにシャモニーに車で行き、宇宙に旅立ったかのようにみせます。お母さんは「バレたら逆に夢をこわすことになる」といって反対しましたが、その心配ももっともで、フェリックスはSFマニアだけあって、その知識は父親のそれをはるかに凌駕していたのです。フェリックスのするどいツッコミにパパはヒヤヒヤドキドキ。

しかし、ついにはフェリックスの病状が悪化してしまい‥‥。(以下略)

 

ジャン=ユーグ・アングラードはどちらかというとエキセントリックな役柄が多いですが、ここでは子供を思う優しいフツーのパパ。この役柄、本人はいたく気に入って印象にのこったのでこの映画の回想録まで執筆したそうです(たぶん邦訳はされてないと思います)。父親以上にフェリックスの良き友人って感じで、ときどきまるで子供のようにスネたりいじけたりもします。(マヌケなぬいぐるみ姿で!)

ブリュノくんも天才子役というフレコミどおり、ものすごく自然にのびのびやってます。

フェリックスが悪い宇宙人と勘違いする謎の老人役のプショニャックはあのコルチャック先生ではありませんか。とうぜんこの映画でもキーパーソンでもあります。

脚本で参加のアレクサンドル・ジャルダンは若手ベストセラー作家ですが、映画とも深いつながりをもち、ティエリー・レルミット主演の「妻への恋文」の原作者、またソフィー・マルソー主演の「恋人たちのアパルトマン」では原作のみならず監督までやってしまいました。情熱的なロマンティシズムがウリです。この作品でもそこまでするぅ?ってとこがちょっと彼らしいですね。

何度か繰り返してみたくなるほど、見終わったあとの後味がいいことは保証します。

ぜひぜひビデオさがしてみてくださいね。(1997年某月)


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