空想科学世界ガリバーボーイ

1995年1月〜12月放映/フジテレビ系/全50話

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「空想科学世界ガリバーボーイ」は、集英社の『Vジャンプ』創刊時の企画の一つ“Gプロジェクト”から生まれた作品だ。
「魔法のプリンセスミンキーモモ」「銀河漂流バイファム」そして「魔神英雄伝ワタル」「魔動王グランゾート」などを手がけた大御所、芦田 豊雄と、同じく「ワタル」やゲームの「天外魔境」シリーズを大ヒットさせていた広井 王子率いるレッドカンパニーが手を組み作り上げた大作
「RPG」である。
そう、もともと「ガリバー」は、PCエンジン用のゲームソフトとしての企画が先行され、その制作中にテレビアニメ化が決定したのだ。(ただ、あの
広井 王子の事だからアニメ化を前提にした企画だったのだろう)

ストーリーは、魔法と科学が同居する世界で、イスパニア王国から逃げ出した「ミスティ」を軸として進む『ジュドー編』と、世界を飲み込もうとする女王と戦う『ハレルヤ編』。そして、番外編(後日談?)として、世界を救ったガリバーか゜、武器であるマインダーのディスクを元の場所に返していく『ニャンニャン先生編』(勝手に名付けた)に別れている。
まず世界観に関しては、コペルニクスやガリレオなどが存在し得ない世界、つまり世界には『果て』があり、海をずっと進むとそこは滝となっている。そんな世界観だ。
地球人が『地動説』以前に実際に信じられていた世界を採用する当たり、なかなか面白い。

本筋の『ジュドー編』は、ジュドーの愛を欲するあまりの苦悩と、愛情を勘違いしたジュドーに対するガリバーの怒りやミスティの複雑な心境などが交錯したりして、日曜の朝に放映するにしてはなかなか濃い内容の作品だった。
筆者は、ゲーム版で既にストーリーはある程度把握済みだったが、人形が「かわいそうなジュドー」と云うあのシーンには鳥肌が立ってしまった。なかなか哲学的なストーリーだった。

『ハレルヤ編』では、ハレルヤのオババ(by月光)が、世界の下で口を開けて少しずつ世界を飲み込んでいくというとんでもない内容だが、アニメとして気軽に楽しめる内容になっている。
月光がハレルヤの呪いにより子供になって、元々のクールな悪役からヤンチャ坊主に変わったり、小さな妖精・フィービーが死んだと思いきや、等身大になり、しかも悪役になって再登場したりと見所のある展開となった。
 しかし一番驚いたのは、ミスティの魔女っ子ばり(美少女戦士?)ばりの変身だろう。

『ニャンニャン先生編』は、完全に敵キャラである二人が、「いなかっぺ大将」のパクリ…面白すぎ。


キャラクター紹介!

ガリバー・トスカーニ(山口 勝平)おおっ!乳のでっかいネェちゃん!!

手から不思議な力を出す少年。最初はコントロールに苦労するものの、マインダー使いとして着実に成長していく。

ミスティ(横山 智佐)ジュドー、離しなさい!!

イスパニア皇帝・ジュドーの妹。ジュドーの屈折した愛情に耐えきれず逃げだしガリバーと出逢う。

エジソン(大谷 郁江)ダメだよ、僕は理系なんだ。ミスティ読める?

自称天才少年。「天才」と呼ばれる事がなによりも幸せ。いくつもの発明でガリバーを助ける。

フィービー(山崎 和加奈)あたしは、ガリバーのこと好き

リー10倍の黒い妖精。元々性別が無く、好きな相手が出来ると、それとは逆の性に進化する。フィービーの場合ガリバーに恋した為、メスになった。

プリポン(丹下 桜)プリポンッ!!!

エジソンが連れている、ゼリーの様なマスコット。丹下 桜の声が可愛い。

ジュドー(塩沢 兼人)私は罪深き男だ。罪は償わなければならない。

両親の愛情がミスティに行ってしまった事による孤独感から、屈折した愛情を注ぐことが自分の確立に繋がると考えている難儀な皇帝。塩沢 兼人の演技は鳥肌が立つほど。まさしくハマリ役!

 


第1話  「いきなり絶体絶命!」

主な出演キャラ/ガリバー、ミスティ、エジソン、チャプター校長、パパ・トスカーニ、ジュドー、ベニス王
ストーリー/ユーゴの魔法学校に幽閉状態の少年・ガリバー・トスカーニは、魔法学校から脱走した。
戻ったベニスで親友の科学使い・エジソンとの再会を喜ぶガリバーだが、そこに、父親のパパ・トスカーニが、イスパニアのジュドーの手に掛かったことを知らされる。

第2話  「撃て!魔拳グローブ」

初出演キャラ/満月男爵、ブドーマッスル、リー10倍博士、フィービー(性別が決まってない状態)
ストーリー/ジュドーの手下、満月男爵とブドーマッスルから辛くも逃げ、乳のでかいネェちゃん(ミスティ)も助けたガリバーは、リー10倍博士の下で魔拳グローブというアイテムの、適性試験を受けるのだった。
魔拳グローブを会得したガリバーは、その後ブドーマッスルと対峙。
お互いの魔拳グローブと波動砲の激突の衝撃で、ベニスの街に大洪水が押し寄せてきた!

第3話  「冒険!獅子の洞窟」

初出演キャラ/フィービー(性別がメスになった状態)、ロレンス
イスパニア軍が津波を避ける為、引き上げていくのを横目に、いつかイスパニアに乗り込み父さんの敵を討つことを誓うガリバー。そんな時、パパ・トスカーニと親しかったというロレンスが海を渡ってやってきた。
古代書をミスティが解読すると、古代の力は「獅子の洞窟」にあるという、心当たりのあるエジソンは、「ライオン岩」にみんなを案内。洞窟内で、ロレンスから預かった鍵を使うと、なんとそこには、古代の力とされている『シーライオン』が、あった。

第4話  「発進!シーライオン」

初出演キャラ/エドッコ、司祭
伝説のシーライオンの主は、なんと流暢な江戸弁を使いこなす『エドッコ』と言う妙な生き物だった。ガリバー、ミスティ、エジソンをそれぞれ「ガーの字」「ミッちゃん」「エテ公」と呼ぶ面白い奴だ。
ミスティの持つ首飾りには、光る石のかけらがある。その石を4つ全て手にすれば、ジュドーを倒す力が得られることを知った一行は、リー10倍の計らいで、博士の弟子・魔法拳闘士のハンマーイーグルに会うためにローマへ向かうのだった。

第5話  「戦慄の三兄弟!」

初出演キャラ/ハンマー・イーグル、非情なるマルチス、鋼鉄のゴルゴス、完全なるエロイカ
三男「マルチス」、次男の「ゴルゴス」そして長男の「エロイカ」からなる三兄弟『トリオ・デ・イスパニア』が、ガリバーが向かっているローマ大帝国を支配していた。勿論ジュドーの片腕である。
ローマにたどり着き、なんとかハンマーイーグルを見つけたガリバーだったが、イーグルにかつての名拳闘士の姿はなく、リング上でガリバーを襲ってくる始末だった。やはりイーグルもイスパニアの手先になっていたのだ。

第6話  「闇の中の決闘!」

第7話  「イーグルマインダー」

第8話  「奇跡の魔神起つ!」

第9話  「シチリアの青い石!」

第10話 「逆襲!満月男爵」

第11話 「復活!砂漠の魔神」

第12話 「俺はギャンブラー」

第13話 「さすらいの狼!月光」

第14話 「ソニックマインダー」

第15話 「ガリバーVS月光」

第16話 「ジュドー空挺部隊」

第17話 「機会仕掛けの恐竜」

第18話 「アックスマインダー」

第19話 「深海のバイオ魚人」

第20話 「リスボンの亡霊」

第21話 「悪霊島の皇帝」

第22話 「ミスティの裏切り」

第23話 「冷血ジュドー!」

第24話 「ガリバーVSジュドー」

第25話 「切り裂かれた魔神!」

第26話 「ジュドー死す!」

第27話 「悪魔ハレルヤ!」

第28話 「さよならフィービー」

第29話 「ハレルヤ誕生の謎」

第30話 「悪魔!地球を食う!」

第31話 「ダークフィービー」

第32話 「変身!ミスティ」

第33話 「月光転生!」

第34話 「プラズママインダー」

第35話 「フィービーと月光!」

第36話 「さらば江戸っ子!」

第37話 「刺客!フィービー」

第38話 「フリーズマインダー」

第39話 「ミスティの愛!」

第40話 「ドラゴンマインダー」

第41話 「ハレルヤの逆襲!」

第42話 「伝説のガリバー!」

第43話 「花の都ジパング!」

第44話 「燃えよ鉄拳!」

第45話 「エジソンの恋!」

第46話 「ガリバーとミスティ」

第47話 「失恋!月光」

第48話 「忍術マルセイユ」

第49話 「ミスティ帝国!?」

第50話 「新たなる船出!」


★おまけ★
ジャンプジェイブックス「空想科学世界ガリバーボーイ」あとがきより。

「愛が欲しいのだ」
 と、ジュドーが言った時、TVシリーズの骨格が決まった。
「このセリフが欲しかったんだ」
 シナリオライターの武上さんが、1ヶ月の便秘から解放されたかのようなホニャラケ顔で叫んだ。
「この男(ジュドー)は、世界中の人間に愛されたいのですよ……ヒヒヒヒヒ」
 作監の芦田さんがまったく意味不明のスケベ笑みを浮かべ、ニヒルにタバコに火をつけた。

 PCエンジン版のゲームシナリオから、TVシリーズを作るために会議を始めて3ヶ月が過ぎていた。
空気が悪い東映動画地下会議室を出ると、夜が白々と明け始めていた。
 夜明けのキーンと冷たい空気を吸い込むと、イガイガした肺が少し痛んだ。
「ゆっくり歩こうかな…そろそろ……」
なんてつぶやきながら、ボクは2年前を思った。
あの狂乱と混乱のVジャンプ創刊をーーー
「モニターに映るものが全てのメディアを制覇する!我々は次の世代の革命児だ!」
Vジャンプ編集長になったマシリトこと鳥嶋さんが吼えた。
「しまいにゃ宇宙制覇ですね」
ボクがまぜっかえす。
「それも考えている。だが、いま広井くんにやってもらうのは、オリジナルゲームを作り、アニメ、マンガ、小説と連動させてもらうことだ。よろしくたのむ!」
 出た!この“たのむ”がクセものだ。
鳥嶋さんの“たのむ”は“絶対成功させろ!”なのである。
「はい、がんばります…あっ、いや、絶対成功させます!」
 ボクは大きな声で言った。
「そーいうわけで、冒険活劇で、タイトルは“ガリバー”ってことで、新しいワタルやりたいんですけど、一緒にやって下さい」
 翌日、芦田さんに電話した。
「ふーん。いいよ」
 軽く引き受けてくれた。
 こんな調子で『G計画』はスタートした。
 2年間。
 ゲームをつくり、アニメを企画し、どーにか小説までこぎつけた。
 は〜ぁ。しんどい。
 少しずつ違うところがあるけれど、それはメディアが違うということで、楽しんで下さい。

 こんなボクに付き合って下さった多くの方々、たいへんありがとうございました。まだまだつづきますので、どーぞ、よろしく。
 それと、読者のみなさん。ありがとうございました。感想などお寄せ下さい。
 最後に、いつも通り、原稿が遅れて、やっぱり「ジャンプノベル」の編集長、根岸さんにご迷惑をかけてしまいました。ごめんなさい。

 とにかく、新しく生み出されたガリバーとその仲間達が、多くのみなさんにかわいがってもらえることを心より願っております。

平成7年2月1日
 『岸和田少年愚連隊』を読みながら−   広井王子