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| 羊を屠って何が悪い!?
イスラムのお祭り、イード・ル・アドハー |
毎年ある時期になるとフランスの片田舎に引っ込んだ往年のセクシー女優が、イスラム圏に向かってヒスを起こす。イスラム歴なのでヒスを起こす時期は少しずつずれるのだが、その原因は「イード・ル・アドハー(犠牲祭)」。そしてその元女優・現動物愛護家の名前はブリジット・バルドーという。今回はイスラムでもっとも賑々しいイードについてお送りします。
+++イード・ル・アドハー(犠牲祭)とは???+++イード・ル・アドハーはクルアーン(日本的にはコーランといいますが、アラビア語のこの発音の方がきれいだし日本人にもしやすい発音と思うので、クルアーンに限らずイスラム関係の言葉は出来るだけアラビア語発音に近い表記にしています)にも出てくる故事にのっとって行なわれます。
ある日、イブラーヒームに神から啓示が下ります。それは自らの子を神の犠牲に捧げよ、と言うものでした。イブラーヒームが神に逆らうわけがなく、自らの子を犠牲に捧げようとした正にその時、神は天使ジブリーエールを遣わし、イブラーヒームの信仰心を称え、犠牲の羊を神に捧げるように指示したのです。だ〜か〜ら〜。
犠牲祭になるとじゃんじゃん羊やら牛やらが犠牲になります(^^;)。そして大量に犠牲になる家畜を守れ!!!とブリジットばーさんが毎年立ちあがるんですね(^^;)。
+++羊、カイロに集結。町は大渋滞だ+++羊はどこから来るのでしょう?それはね〜、カイロ近郊の村から〜。
おかげで犠牲祭が近くなるとカイロ中そこかしこで羊渋滞が起こってしまうんです。
さすがに牛はトラックで「どなどなど〜な〜♪」と運ばれていますが、羊のほとんどは徒歩で移動。高級住宅街だろうが交通の要だろうが、おかまいなし。そしてエジプトの法則、「動物は車よりも強い」(カイロフラフラ滞在記第一号参照のこと)ので、ドライバーの皆様つまりタクシーに乗っている私もいらいらしながらクラクションをばしばし鳴らしながら、羊さん達が進むのを待つしかないわけです。同居人Hねーさんはプロのバイオリニスト。カイロで不出世の天才バイオリニスト=アブド・ダキール先生に指示していました。毎日のサラー(礼拝)を欠かさない先生にとってイスラムの行事はモヘンム・アウィー(とっても重要)。犠牲祭には毎年羊と牛を屠ってそのお肉を喜捨しているそうです。
で、先生。
犠牲祭の数週間前になるとギザの向こうまで羊と牛を買いに行く(ちなみにギザの向こうに買いに行く人は金持ちが多いらしい)。
買われた羊や牛はその場では屠殺されないし、買主が家に連れて帰るわけでもない。イードの数日前まで飼い主の世話を引き続きうけます。羊・牛本体の値段プラス買い手がついた日から引き取り日までの飼育料(餌代)が一頭の値段。買い手は自分が買った羊やら牛やらがきちんと世話を受けて餌をたくさん食べさせてもらっているかどうか、時々出向いて行かないと手を抜かれて、やせっぽちの羊が家にやって来たりするらしい。
そして犠牲祭の何日か前から「羊、死の行進」が始まり、カイロはいつにも増して大渋滞。肉屋の軒先は電灯や垂れ幕でにぎにぎしく飾られ、夜毎爆竹はバンバンなり、気分は盛り上がってくるわけです。
+++そして“ドナドナ”、運命の当日+++
「17日の夜に殺すから、見に来いって言ってるよ〜。」というHおねーさんの誘いを受け、「おお!良いもん見れるぞ〜!。」とばかりに私達がのこのこ出かけていった先はさすが庶民生活エリアコブリ・オッバ。ザマレック、アグーザなんて足元にも及ばない数の羊が街のあちこちに集結していて、肉屋はすでに大騒ぎ、超スプラッター。
「少し遅れていっても大丈夫だよね〜。エジプトだし。」などと言って30分ほど遅れていったおばかな私達は、遺伝子にイスラムが組み込まれていてこう言うときは妙に時間厳守のエジプト人のことをすっかり忘れていたため、せっかくの屠殺場面を見逃してしまいました。う〜悔やまれるう。仕方ないので(?)解体作業を見学することに。
集結している羊たち。なかなか物悲しい風景ではある。
そして↓これがその使用後。
いきなりにぎにぎしくなるところが良いとも言えるか(^^;)。子供のときから毎年見ている風景、慣れっこの大人は誰も解体作業なんて見ようとしない。時々家主が様子を見に来るだけ。それに反して子供達は片時も離れないし、家の子供だけではなく近所の子もバワーブ(門番)の子も混じって食い入るように見ている。それに混ざって私達日本人の大人もズーっと見学。
さすが女の子も興味心身で泣く子なんていやしない。ボリジット・バルドーは毎年この犠牲祭の文句を言うけど、一部(例えば屠殺のやりかたとか)だけを槍玉に挙げて「残酷だ!中止しろ!!!」っていうのは、発想が乏しいんじゃないだろか?と思うのは私だけだろうか。
子供達は全てを見る。
今まで生きていた牛や羊が死ぬ瞬間。
解体作業。
そしてそれがおいしい料理になっていく様子まで。
もしかしたら、その羊はさっきまでその子供自身が可愛がって世話をしていたものかもしれない。
彼らが命の重要性まで考えているとは思わないけど、スーパーのポリケースに入った肉より他は知らないような日本の子供達が知ることのできない、「人がものを食べて生きている」ということを、彼らはこういう時に覚えていくのではないかな、と思う私でありました。
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かなりの肉体労働である解体作業。
あっという間に一頭の牛が解体されて行く。 |
| うれしそ〜に見せてくれたのは、
モッホ「脳みそ」。 1頭から一つしかとれないので (当たり前だが)、貴重品である。 フライにして食べる。 |
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解体された牛。
解体されても牛は笑っているように見えた。 |
+++すごい量の肉、あっという間に胃袋に消える+++
で、解体された肉は小分けにされて袋詰にされ、貧しい人々や近所の人に配られる。当の本人達は「犠牲祭の一日目と三日目はファッタを食べるのよ〜、ラージム(義務)なのよ〜。」と、料理おばさんが腕まくりをして待っていた。
“ファッタ”(この場合はエジプトのファッタです)とはたまねぎとバターと少量のスープで炒めたパン、サムナ(バター油)で炊いたご飯、その上に肉入りスープをかけて食べるもの。作り方を見ている限りえらく簡単そうなのだが、ラマダン中とかイードとかの時など年に何度かしか作らないものだそうだ。ということは、以外と作るのが難しいのかも。
エジプトに限らず中東では、「本当においしいものを食べたかったら一般家庭に行くべし!!」。
このファッタも脂っこくもなく塩味もマスブート(調度よく)、さらさらと口に入っていく。屠りたてのお肉って初めて食べたけど、びっくりするほど柔らかかった!
満足げに台所で休憩中のシャッガーラ(お手伝いさん)一号。ここんちは金回りが良いらしく、シャッガーラはこの日三号まで来ていた。 これがうわさのファッタ。
見かけによらず(失礼!)超うまいっす。ばくばく食べる日本人を満足そうに見ながら、男性陣は意外に小食である。
いつも思うけど、エジプト人男性はそんなに「すごーく」は食べない。日本人の常識の範囲。し・か・し・・・・・。
女性の食欲には本当に!!!驚かされる。以前ケバブ屋で出会った家族、自分のごはんを食べ終わった奥さんがおもむろにだんなのごはんを奪って食べていた。
先生の家に料理を作りに来ていたシャッガーラ(お手伝いさん)たちも自ら率先して食べてたしなあ。
いくらカイロが大都会であると言っても、やっぱり女性の娯楽って少ないし「食べ」に走っちゃうのかもね。それに昔は太った体型はだんなの甲斐性のバロメーターと言われていたしね。バッタ(アヒル)のようによちよち歩く女性がチャーミングってね(^^;)。さすがに今はそうでもなくなったらしいですが・・・。
+++てんやわんやの喜捨現場++++カイロに到着したばかりで、右も左もわからない状態のときにこのイードにぶち当たってしまった私。言うなれば日本に留学して来たばかりの日本語の全然わからない友達もいないような留学学生がいきなり正月休みにぶち当たってしまったようなものだ。はっきり言ってやることない。
そんな朝、あまりに外がにぎやかなので窓からのぞいてみると、アパートの向かいに人垣ができている。どうやら無料配布があるらしい。
富める者は何かにつけて喜捨を行なうのがイスラムの良いところ。
通りはもう押すな押すなの大盛況である。みな一応にガラベーヤ姿で、洋服姿の人は一人もいない。「ちょっと!割り込まないでしょ!!!」
「なにぃ〜、俺は先に並んでたんだ!!」と言ってるかどうかはわからないけど(でも多分言っているんだろうなあ。)、そこここで口ゲンカが始まっている(^^;)。そのにぎやかなことったら、もう〜。
この配給は昼過ぎまで何度か行なわれていました。
飾り立てた馬に乗って、町の中を突っ走っているガラベーヤのおやじもいたり(これがまた、超かっこいいんだな)、一日中爆竹がなっていて、心底ラマダン明けを楽しんでいる様子。確かにあちこちで羊が解体され道には血が溢れ、生皮を積んだトラックが走り、窓やドア、車のボンネットにも血の手形がつけられ、カヨワイ日本人には多少ショックかもしれません。
が、ちっともか弱くない私は、「ステーキくいてえなあ。しかもレア・・・。」などとつぶやいたりします(^^;)。
夜ともなればますますにぎにぎしい街角
+++イード記念、その他にも食べたこんなもの+++
後日、また先生宅にお邪魔した私達はこのイードで屠った牛の腸を使った料理、モンバールを食べる。これは腸詰なんだけど、中身はお肉ではなくお米。
で、これに調子付き、何か変わったエジ食を食べようとやって来たのはハーンハリーリのカワーリアの店。
カワーリアというのは羊のかかとのこと。この料理屋、肉類と2・3の穀類以外のメニューは一切ない。どんな店にも絶対にあるはずの定番商品サラダもタヒーナ(パンにつけるペースト類)もない。トルシー(つけもの)がちょろっと出てくるだけである。
もうとにかく勢のつくものオンパレード!!!と言った感じ。
勢のつくものといったからには、代表的な鳩もあります。
客はと言うと、まあ家族連れもいるにはいるのだが、そんなもの食わなくても元気のよさそうなヤローどもとか、1人でもくもくと食べるおやじとか、なぜ彼らがこの店に来てこれを食べているか、下司の勘ぐりをしてけっこう笑ってしまう私達であった(^^;)。私達は
・トマト味の野菜と煮こんだカワーリア。
・モンバール。
・羊のすね肉(モーザ)。
を注文。
お味のほうだが、全てがゼラチン質のカワーリヤはまずくはなかったが「このまま一生食べる機会がなくてもまあいいや」と言うお味(^^;)。モーザのほうはなかなか味があっておいしかったのでまた食べたいな。
このお店、ハーンハリーリーにあり清潔なお店である。その性質上(?)アラビア語しか通じないし、もちろんメニューもアラビア語のみ。でも興味本位で行っても全然大丈夫だと思います。「マタアム・カワーリア・フェーン?(カワーリアはどこだ〜?)」と叫べば誰かきっと連れていってくれるはず。
私達(女三人に男一人)がこの店から出て来たのを見たエジカップルは意味深に笑ってたけど・・・。
いいじゃーん、食べてみたかったんだもん!!
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