電話の彼女再び


午後9時頃、「プロ野球珍プレー好プレー」を見終わってボケボケしているときに一本の電話がかかった。

「はい、もしもし」

「あ、もしもし、御主人様でいらっしゃいますか?

そもそも、相手の名前を言わずに「御主人様」とか「社長様」とか言う電話にろくな電話があった試しがない。

「ええ、まぁそうですけど」

とりあえず、この13.66m^2の家の世帯主であることには変わりがない。

「あ、御主人様でいらっしゃいますか、実は私ども、*******という港区の芝公園のマンションの販売をやっている者でございます」

「あ、そうなんですかぁ」

「それで、どうでしょうか?マンション?」

どうでしょうかって、あんた、マンションってそんな二つ返事で買うものじゃないだろうよ(^^;)。なんかこのしと展開早すぎ。

「いや、まぁ、興味はあるんですけどね

ちんたもちんたでまったく考えたこともないような嘘を平気で返す。

「失礼ですが、御主人様は今はお住まいは賃貸でいらっしゃいますか?」

「ええ」

「失礼ですがお家賃の方は?」

この質問に応えた後の展開など決まっているのである。ならばそれにのっかってやろう(^^;)

「えーと10万円ですね、月。(嘘。本当は月6万円)」

「10万円、それを賃貸で!御主人様〜それはもったい無いですよぉ」

うるさいよ(^^;)。なんかこのしとやたらに芝居ががった物言いをする人である。

「それで、どうでしょう?」

だから、どうでしょうじゃないだろう(^^;)。

「で、ご興味がおありのようですが、どのような物件をお探しで・・・?」

勝手に物件を探し始めていることになっている(^^;)。

「ああ、今、新しく会社を設立するんで、事務所併用として使える物件がいいですねぇ」

どこをどうすれば、こんなウソが平気で自分の口から出てくるのか自分でも不思議だ(^^;)

「それでしたら、私どもの******はぴったりだと思うのですが、ちなみに自己資金の方はいかほどで?」

「ああ、いっせんごひゃくほどでしょうか・・・(これは本当。財布の中には1500えん)」

1500万円(←勝手に1万倍)・・・。ああ、それは結構ありますね・・・」

ちなみにこの電話の彼女が勧めようとしている物件は連日ポストの中にチラシが放り込まれている物件である。その中のウリ文句の一つに「自己資金10万円からOK」というのがある。それが相手が1500万円も持っていてはセールスポイントにならないのだ。おそらく1500円ではもっとお話にならないだろう(^^;)。

「(話題を変えてくる)それでは芝公園という立地はいかがですか?」

「あ〜、駅から遠い物件はちょっとつらいですよねぇ」

「あ、私どものマンションは3線5駅が利用できまして・・・」

「その5駅、どこも15分以上かかるでしょ?全部遠いじゃない(^^;)」
(悪いがそのマンションは通勤途中にあるので、場所はよくわかってるんだ)

あ、相手が黙ってしまった。話題を変えてあげなくては。

「それで、そのマンションの用途地域は何になってるんですか?」

「え・・あ・・はい、(しばらく書類を調べたりする音、2分後)、あ、ああ、商業地域ですね、これなら事務所を開く方にもよろしいかと・・・」

「ふーん、商業地域ねぇ・・(←なにが「ふーん」なんだか)」

「それで、どうでしょう?」

だから、なにが、どう、どうでしょうなんだよ(^^;)

「それでですね、事務所にお使いになられるということは、やはり建物の見てくれなんかも大事ですよねぇ」

「はぁ、そうですねぇ」

「そこは任せてください、私どもの今回の物件は、デザインを建築家の藤堂先生にお願いしていまして・・・」

ああ、藤堂さん?(←知らない人。だけど知ってるふり、なんたって”さん”付け)藤堂さんマンションのデザインなんかやってるんだ。へぇ〜」

「お知り合いなんですか?」

「お知り合いってほどでもないけど、先日も懇親会で一緒でしたよ(なんじゃこのウソは(^^;))。藤堂さんもねぇ、最近はいまいちですよねぇ(なにをえらそうに(^^;))」

「はぁ・・・」

 絶対電話の向こうでも話しづらいと思ってる彼女。しかし、このご時世に少しでも脈があったりするもんだから切れないでいる(^^;)。彼女押し始める。

「いかがでしょう?一度モデルルームに来てみてはいかがですか?」

「モデルルームねぇ・・・。でも結局は実際に契約する部屋とは微妙に違うじゃないですか。事務所用途だとそういうのが致命的になる場合もあるんであまり意味ないんですよねぇ、あくまでも図面で判断したいですねぇ、図面はチラシにも載っていますけど・・・・」

ちんたもいよいよ気分は社長である。

「しかし、そろそろ会社を設立するとなると、時期的にもこの時期に見ておかないと物件が無くなりますよ」

彼女頑張る。しかし、そもそもちんたは物件など無くなっても良いのである、社長じゃないもん(^^;)

さて、そろそろ、ちんたもいじり飽きたし(おい)、だんだん会話がめんどくさくなってきた。ここは一つ電話を切りにかかろう。携帯を取り出して、F、2,1・・・とリンガーのボリューム調整を無意味に始める。

ピルルルル、ピルルルル・・・・・

「あ、すみませんね、携帯かかって来ちゃったんで、ええ、じゃ、マンションは検討しておきますので、はい、それじゃ、よろしく〜」

かちゃ。

・・・・・・・・・・また、やっちまった(^^;)。ごめんねえ(^^;)。しかし、もうちょっとかける相手選んでもいいんじゃないか?

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