電話の彼女


 あれは・・・珍しく事務所から早い時間に退勤し、自宅に午後9時頃に帰り、ごろごろしていた頃。

 突然、電話が鳴る。  この時間に電話が鳴ることはそれほど珍しいことではないのだけれど。

 『こんばんわ、わたくし**宝飾センターつちやと申します』

 (ほうしょくセンター??宝飾?宝石???)

 『ちんた健太郎さんはいらっしゃいますか?』

 「あ、私ですけれども」

 『ちんたさんですか、どうも、こんばんわ〜(←声のトーンが変わる)

 「どうも・・・」

 

『突然お電話してすみません。今日は私たちの活動についてご説明したいと思いまして、まず、2,3質問させていただいてからお話を進めさせていただいてよろしいですかぁ?』

 「はぁ、いいですけれども」(←こう言うのにはいちおうのっかる奴(^^;))

 『ちんたさんは今、20歳代後半の男性でいらっしゃいますよねぇ?』

 「はぁ、そうですよ」

 『そうすると、ご結婚なんかに関しても興味は大きいのではないですかぁ?』

 (こいつ、いきなり俺の『怒りのボタン』踏むかよ(^^;)) 彼女とか結婚とかゆう話は今は嫌いだ

 「はぁ。まぁ」(「まぁ」どころではないんだけど(^^;))

 『でも、それくらいの年の方というとお仕事も忙しいですよねぇ?』

 「ええ、そうですね」(忙しいもんね、確かに)

 『そうしますと、お仕事でお忙しいとなかなか女性と知り合う機会も少ないですよねぇ?』

 (あまりの心の琴線を逆撫でする質問の連続にちんたの意地悪ボタンが押される)

 「(話を遮って)あの〜・・・・」

 『はい?』

 「2,3の質問って、いくつ続くんですか?」(←やなやつ!)

 『え?』

・・・・・・・・・・・・・・20秒間沈黙。

(おい、これくらいで黙るなセールスレディ(^^;)。助け船出してやらう)

 「で、お話ってなんですか?」

 『え、あ、はい、それでですね、私どもの活動をご紹介しようと思いまして・・・』

 「どんな活動なんですか?」(←この辺りからちんた、声に感情が無くなる)

 『はい、そのお、ちんたさんのお年くらいの男性ですと、今、ちんたさんが仰られたみたいに結婚なんかに興味がある方って多いんですね。それで、そういう方って、結婚指輪なんかも気になる人って多いと思うんですよ』

 「はぁ・・・(まず指輪からかい!?(^^;))」

 『それでですね、今、ダイヤモンドと言いましても質の悪いものもたくさん流通してるじゃないですか、そういう中で、私たちは、ちゃんとした質のダイヤモンドを提供しようと思ってですね、皆さんにショールームに来ていただいていろいろ説明しているんですよ』

 「まず、ダイヤから入るということですね?」(ちんた、こっち側で笑いとまんないモード)

 『え?あ、いや、そういうことだけではなくてですね、ショールームに来ていただいた男性の方に出会いの場女性を紹介したり、女性との上手なおつき合いなんかのレクチャーをしていたりするんですよ』

 「はぁ(なんじゃそりゃ〜!?)」

 『どうですか?』

「はぁ(「どう」ってあんた(^^;))

 『よろしければ、私どもの銀座にあるショールームにですね、来ていただければと・・・』

 「銀座ですかぁ・・・何時頃に?」

 『あ、はい、私たちは、ちんたさんのようにですね、お仕事で忙しい方たちのために平日の7時頃までショールームをやっているんですよ』

 「し、7時ぃ!?(ぼけぇ〜そんな時間は仕事中じゃ〜(^^;))

 『ええ、それくらいですと、来やすい時間じゃないですかぁ?』

 「そんな時間で仕事で忙しい男の人がたくさん来るんですかぁ?」

 『ええ、毎日、たくさんの方たちがいらしてますよ』

 「その人達、まじ、暇なんじゃないですか?

 『いえ、忙しい人達もたくさんいるんですよ』(←がんばる(^^;))

 「ダイヤを見に?」(←さらにいぢわる(^^;))

 『いえ、それだけでなく出会いの情報なんかも・・・』(←少ししおれる(^^;))

 「行きたいんですけどねぇ・・・。仕事が終わってからならいいですよ」(面白いから引き延ばし作戦(^^;))

 『何時くらいならいらしていただけますか?少しくらいなら遅くもできると・・・』(←頑張って再プッシュ)

 「うーん、夜中の1時くらいかな?」

 『・・・・・・・・・・・・』(完全沈黙)

 「どうですかね?」(←俺が押してどうする?(^^;))

 『・・・・・・・・・・・・』

 「じゃあ、もっと暇な人釣って下さい」

 『・・・・・はい』

 かちゃ。

 かちゃって、おい、お前から切るなー!!(^^;)

 

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