今度の電話は男から
電話の彼ら
 時間は夜8時半。悲しいかな、土曜の夜にすることもなくほえ〜っと過ごしていたときのことだった。電話がかかってくるのは決まってこう言うときである。

 今回の電話はなんちゃらクラブとかいう渋谷にある会社の国内&アジアのリゾートホテルがお安く使える会員になりませんか?というところからである。最近、この手の「お安くなります権」の電話はとても多い。今回の電話は女性ではなく男。年の頃から言うと20歳代前半のイケイケな元気のあるお兄ちゃん。

彼:「それで、ちんたさんは旅行とかにはよく行かれるんですかね?」
三:「いや、まったく」
彼:「・・・・・・・・・・・。」

 一事が万事この調子なので(いつものことだけど)お兄ちゃんも話の接ぎ穂が無い。ちんたも鼻くそほじりながら心を込めていい加減に応対。

彼:「海外とか行かれることは多いんですか?」
三:「ああ、まぁそこそこ行きますねぇ(嘘)」
彼:「年何回くらい行かれるんですか?」
三:「7,8回ですかねぇ(嘘)」
彼:「はぁ、そりゃ多いですねぇ。どうですか、リゾートとかも結構行かれるんですか?(商売っ気)」
三:「いえ、まったく」

 アジアのリゾートに行ってくれないと彼としては話が継げないのだ。

彼:「休日とかはどこか旅行とか行かれるんですか?(商売っ気)」
三:「休日無いです」
彼:「・・・・・・・・・・・。」

 お兄ちゃん頑張る。戦法変える。

彼:「そうすると、海外って言うといつもアメリカとかですか。」
三:「ヨーロッパですねぇ(はんなりとあまのじゃく)。」
彼:「実はですね、うちの会員ですと航空券もお安くできまして・・・・(商売っ気)」
三:「エアチケットは貯まったマイルで行くんで、いつも無料なんで。」
彼:「・・・・・・・・・・・。」

 ここまで、話の接ぎ穂が無いと、この手の人達はだいたいある戦法に切り替える。「世間話&誉め殺しコンボ(↓→↓↑)」である。

彼:「いやーっ、でも、すごいなぁ、海外でばりばり仕事ですかぁ、すごいなぁ、外資系ですか?」
三:「いや、そういうわけではありませんけど。」
彼:「でも、すごい大企業かなんかの方なんですか?」
三:「いや、別に。フリーですから一人ですよ(どないやねん、それは)」
彼:「えーっすごいなぁ、どんなお仕事なんですか?」

 どうでもいいが、君の「すごいなぁ」はとても白々しいぞ(^^;)

三:「いや、海外でぶらぶらして買い付けたり売ってきたり(どんな仕事だか・・・)」
彼:「えーっかっこいいなぁ、何を買って来るんですか?」
三:「いや、それは言えないなぁ、やばいんだよ」
彼:「え?クスリかなにかですか?」

 いきなり、クスリかい(^^;)、さすが渋谷系は考えることが違うぜ。ちんた、これに何か対抗して意表をつかなければいけない。

彼:「えーっなんだか面白そうだなぁ、何買ってるんですか?教えて下さいよ。」
三:「う〜ん、まぁ、戦闘機とかミサイルとか・・・。(嘘)」 
彼:「・・・・・・・・・・・。」

 あ、お兄ちゃん黙っちゃった。やばい、いくらなんでも嘘すぎたか(^^;)。
 お兄ちゃん、とにかく商売に戻る。

彼:「それで、一度うちの話を聞いてもらいたくて、一度我が社に来てもらいたいんですよ。(商売っ気)」
三:「うーん・・・・・。」
彼:「お会いしてでないと説明しきれないんですよ、2,3時間でいいですから。」
三:「うーん・・・・・(げ、2時間もかい)」
彼:「どうですかねぇ、いつ頃がお時間ありますか?」
三:「無いですねぇ。」

 ちんた、いつもの〆に向かい始めている。

彼:「お仕事が終わった後とかどうですか?何時頃終わりますか?」
三:「うーん、夜中の1時頃かなぁ」

 ・・・・どう考えても、今、9時頃にこんなにへらへら電話を受けている奴がそんなに忙しいはずがないとは思わないのか?ちんた言ってるそばから焦る(^^;)。

彼:「いやぁ、こちらはまぁ1時でも会ってくれるなら、1時でもいいんですけど」

 うおぅ、今度の兄ちゃんはこれくらいでは引かないのか(焦)。

彼:「どうですか?休日とかにいらしていただけませんか?」
三:「休日ねぇ・・・無いんだよ。」
彼:「土曜日とかダメですかね?」
三:「元旦はお休みかも・・・・・」
彼:「・・・・・・・・・・・。」

 さすがに彼も呆れたのか、あきらめたのか、ギブアップ。「それじゃ、また今度」ということで電話を切ってしまった。

 ところで、今回面白かったのは、電話の向こうの事務所の様子がまる聞こえだったこと。どうやらそばに2,3人の勧誘員がいて、同じような会員権の説明をしているらしい。面白いのは、僕が話していた人を含めて異様にハイテンションなこと。電話の向こうでは成約に動いている人もいるようで、どうやら来社のアポも取れているみたい。誰だかは知らないが、ご愁傷様と言う他は無い(^^;)。

 で、このなんちゃらクラブであるが、ここがうちに電話をかけてくるのは初めてでは無い。以前、別のお兄ちゃんから電話がかかってきたことがあるのだ。このお兄ちゃんも変なお兄ちゃんで、いちいちこちらが話に相づちをうってあげないと納得しないのだ。

彼:「今、ビジネスマンの間では余暇のとり方なんかも重要になっていますよねぇ?」
三:「はい」
彼:「しかし、最近のリゾートは高額なところが多く、若い人にはなかなか使い辛くなっていますねぇ?」
三:「はい」

 一時が万事、こんな感じ。で、ちんたもめんどくさくなって、テレビ見ながら適当に聞いてたら

彼:「・・・・・・すよねぇ?」
三:「・・・・。」
彼:「聞いてますか?」
三:「聞いてますから続けて下さい。」
彼:「ちゃんと聞いてますか?」
三:「ああ、続けて下さい。」

 ちょうど、食わず嫌い王の試食の時間だったのでそっちが気になって仕方ない、というかいちいち相づち打つのがめんどくさいちんたがそう答えると、兄ちゃんいきなりファイヤー。

彼:「あのねぇ、こっちは仕事でやってるんですよ、ちゃんと聞いてくれないと困りますよ!(怒)」

 ああ、そうかい、そんなこと言う奴はこうしてくれる。


 カチャ(受話器戻す)





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