「ねぇ、近いうちに飲みに行かない?」
久しぶりに電話をかけてきた友人(女)はそんな話を持ちかけてきた。
「話したいことがあるの。」
そんなことを電話口でつぶやく。この週は週末の夕方だったらあいてるかもしれない。とりたてて断る理由もなかったちんたは、久しぶりだったこともあって、さくっと週末に飲みに行く約束をした。
そんな電話で始まった週末のお話。
「あ〜、待ったぁ」
10分遅れで待ち合わせ場所に着いた彼女は、遅れてきた人がまず第一声に発するであろうと思われる言葉と共に待ち合わせ場所に現れた。
(10分遅れだから10分待ってるに決まってるじゃん)
そう思いながらも、口に出さなかったのは、待ち合わせ場所に来るまでにCR海物語がパッキーカード1枚目で3連チャンし、多少気分が良かったせいであることは・・・まぁ否めない。
久しぶりに会う彼女は、少し小さくなったような感じ。いや、それよりも・・・痩せた?そんな感じ。もともと小柄だった彼女がさらに小さくなったような印象だった。
そんな小さな彼女と街中を歩くとすぐに人混みに紛れて見えなくなってしまいそうでもあった。
飲みに行こうと誘われたわけで、時間は少し早かったが二人で飲み屋に入った。2日前にオープンしたとかで割引券を店の前でもらってしまい、ついついそれに釣られて入ったお店。
久しぶりだね〜。ジョッキを傾けながらそんな言葉を皮切りにいろいろなコトを話し始めた。お互いの近況からなにから。ふんふん、あ〜あの彼氏とはまだ続いてんのねー、もう1年になるんだっけ?いいねー。こっちは日照り続きだよー。最近、どうよ?再就職先決まったの?あ、もう働いてるんだ、いいねー。給料いいの?
「それがさー、給料も安いんだよねー、バイト扱いだしさ」
ふんふん。景気悪いもんねー、今はねー。
「それで給料月12万でも、毎月の支払いとかいっぱいあって、ぜんぜんお金のこんないんだよー」
あーそー。俺も俺も(^^;)。カードとかってさ、どんくらい毎月請求来る?
「え、あー。カードじゃないんだけどねー。一つは月8万くらい」
な、なに!?は、はちまんえん!?それ、な、なにに?
「え、あー。エステ」
出た。そーくるか。
「太っちゃっててさー、痩せるために、始めたのよ」
あー、確かに痩せたと言えば痩せたかもしれないねぇ。小さくなったような感じするし。何kgぐらい痩せたの?
「・・・・7kg」
うおー、頑張ったねぇ。俺もこないだ自転車レース前には1ヶ月でそれくらい落としたぜー、大変だったっしょー、うんうん。で、それって、8万円、3,4回くらい払うの?大変だよねー、その間は。
「ううん、毎月8万円で、3年間のローンなの」
んな!?さ、三年間!?それって
8万円/月×12ヶ月×3年=288
に、にひゃくはちじゅうまんえん??
(うおー、1kg41万円かよー、松阪霜降りよりたけーよー(^^;))
「なんか最初のうち落ち無くってね〜。それで『落ちにくい体質なようだから』って追加コースとか勧められてそれくらいかかるらしいんだよね」
(うひゃ〜、典型的だ)
(ま、いいか、本人は納得してるふうだから)
「だからさー、けっこう大変なんだよねー、毎月。他にも結構支払いとかあるからさー、もう毎月ほとんど無いのよ」
(うえ、ま、まだあるのかよ〜(^^;))
だんだん言葉少なになるちんた。
それからしばらく、少し話題を逸らしながら、いろいろしゃべる。
そういえばこいつ、何か言いたいことがあるんじゃなかったっけ?
「で、そういえば、話ってなによ?」
「あ、話ねー。それなんだけどさー」
持っていたカバンにごそごそ手をやる彼女。
「こういうの、知ってる?」
カバンの中から取り出したパンフレットを僕に差し出す。どれどれ、、、
ア、ア*ウェイ!!
「あ、知ってた?」
知ってるも何も長野オリンピックのスポンサー様じゃありませんか(^^;)
「スポンサーじゃないわよ、ゴールドスポンサーよ」
あ、そ、そうだよね。これ、君もやってるの?
「もうずっと前からね」
じゃあ、もう、なんちゃらディストリビューターとか言う奴?なの?
「よく知ってるわね、私はまだそんなんじゃないけど。何で知ってるの?」
なんでって、本とかインターネットとかで有名じゃん。すげー有名だよ(^^;)
なんか洗剤とか鍋とか売ってる奴でしょ?
「今はもう鍋や洗剤だけじゃないのよ、こんなにあるのよ」
カタログ登場!(^^;)
うおお、これがあの有名なアム*ェイのカタログかぁ。好奇心ばりばりでむさぼるように読むちんた。おお、鍋や浄水器なんかの定番商品は健在なのね。
「今はね、この掃除機がお奨めなのよ」
そちらを見ると7万円の値段が付いた掃除機の写真が載っている。あほたれ、誰が掃除機などに7万円も・・・。でもちんたも好奇心はむくむく。ちょっとからかいたい(←これがいけない)。
「あー、掃除機ねー、7万円とかって書いてあるけど、ドイツ製とかの掃除機では当たり前の値段なんでしょう?、この掃除機、どこの国製?」
「え、あー、・・・わかんないけど」
(勉強しとけよ(^^;))
ちんた続ける、
「こっちのさー鍋なんかも、いいよねー。一個ちゃんとした鍋があると結構便利なんだよねぇ。こないだもSEBの鍋とか買ったら結構いいんだよね(←嘘、買ったこと無い)。この鍋もSEBなんかと比べるとどう?えーと、一個2万円?だっけ?そんくらいいいのかな?」
「あー、アムウ*イの鍋は値段だけのコトはあるよー」
(だから何がいいんだってばよ?)
ちんたの心の中では、パンフレットが出てきた瞬間から、彼女のカテゴリーは「友人」から「からかう対象」に変化している。いじわるなちんたは止まらない。
「ビタミン剤とかもあるんだー、これもやっぱマツキヨとかで買うより高いよねー」
「あー、そうねー、品がいいから」
「売薬とはなんかちがうの?」
「元気になるよ」
(あ・ほ・か〜(^o^)(腹の中爆笑))
しかし、なおも続ける彼女。
「でもね、このア*ウェイはね、ものを買ったりするだけじゃないのよ、こういったものを売ることでビジネスにもできるのよ」
あー、そうだろね、知ってるよ。
「でね、ちんたさん、私と一緒にビジネスやらない?」
え、え?ビジネスを?
(どあほ〜。誰がおまえみたいなバカとビジネスやるか〜、ぼけ〜(^^;))
(ちょっと聞いてやれ)
「今までどれくらい儲かったの?」
「え、私はまだ利益は上がっていないけど・・・*ムウェイはこれから絶対に伸びるビジネスだからね」
(ほら〜、利益上がってないじゃん〜(^^;))
「もう、これから伸びるのわかってるんだからやらない方がおかしいよ」
(お前は仕事はもうかればええのか?(^^;))
話には聞いていたマニュアル通りの説明を聞きながらちんたも適当に調子を合わせたりするから、相手もさらに押したい。もう一押しもう一押しと押してくる。
「ほら、こうやって成功した人は年収2,300万円とかある人もいるんだよ」
ま、そりゃいるだろうね。仕入れ原価11万の鍋セット15万で販売すればね(営業用あんちょこみたいなのに卸原価が書いてある)。明らかに今流行の100円ショップとは逆の方向を向いたマーケティングである。
ふつーの100円で売っていそうなアメが200円。仕入れ原価は170円。
カタログを見渡してみると、単価の高い(特に10万円以上クラス)の商品の利益設定がべらぼうに高い。一方で単価の安いモノはまぁそれなりといったところ。栄養剤とか下着とか。包丁とか珈琲メーカーなんかが載っている。
「どう?」
どうって、おまえ、アムウェ*じゃなくてもおまえとだけはビジネスなんかやんねぇよ。
「これから、DD(なんちゃらディストリビューター)さんの家でミーティングがあるんだけど、ちんた君も来ない?」
絶対いかねー。そろそろうざくなってきた。「じゃ、俺これから用あるからさ」と腰を上げる。彼女もそのなんちゃらさんのところへ行く頃合いだ。
「悪いけど割り勘ね」
300万近くの借金持ちに割り勘を要求するちんた。
「じゃーね」
うん、じゃーね。もう会うことも無いだろうけど(^^;)。
しかし、お土産にいろんなものもらってしまった。各種パンフレット、会員用内部パンフレット、シャンプーの試供品・・・裏モノ大好きなちんたとしては、なかなかのコレクターズアイテムだ(^^;)。
しかしねぇ。
頑張れSちゃん。君のセールストークでは一生、君の下に子会員は出来なさそうだけど、影ながら応援しているよ(^^;)。