命中精度を考える
このコンテンツは、「ホップと命中精度」の続きともいえる内容です。
弾道安定性などについて、さらに解説しています。
バレルの長さと命中精度
「バレルは長いほうが命中精度は良いか?」
結論から言えば答えは否です。
もちろん、そういいきれるわけではありません、もしかするとバレルが長いほうが良い可能性をもっているかもしれません。
しかし、現時点ではバレルの長さと命中精度は、ほぼ無関係と言って良いでしょう。
雑誌などでよく見かける表現で「ロングバレルで高い命中精度」などは商売的な言い回しです。
例をあげればマルイのグロック26は高い命中精度、弾道安定性を持っていながら、バレルの長さは7cmほどしかありません。
とくに「弾道安定性」という意味では、それでも充分なのです。
「弾道安定性」「近距離命中精度」などは便宜上、私が作った言葉です。これについては「HOPと命中精度」のほうをご覧ください。
パワーと命中精度の関係
命中精度においては、かなり短いバレルでも弾道安定性、近距離命中精度においてはそれなりに良く出来ます。
近距離命中精度を上げるためにはバレルの固定、剛性の確保、それに狙って撃つ物である以上、サイトの固定や正確さも要求されます。
弾道安定性の鍵を握るのは、風、弾、チャンバーの構造です。
バレルそのものより、チャンバーの構造、その周辺が弾道安定性には重要です。
とはいえ、たいていの銃はパワーをあげたほうが必然的に高い命中精度が出せます。
弾道安定性は乱れやすい傾向はありますが、パワーの違う二つの銃で同じ距離のターゲットを撃った場合はパワーがあったほうが有利です。
答えは簡単で、短時間でマトに弾が到達したほうが飛行途中に弾道が曲がることが少なくなるからです。
風の影響を加えればなおさらです。
また、風はゼロにはなりません。ぴったりゼロというのは存在しないと考えて良いでしょう。
人間の感覚で風が吹いていないと感じても、そこにはかならず空気の流れが存在するわけです。
パワーを高くし、弾も重くすれば理論上、命中精度はあがるはずです、といっても、それはお薦めできる方法ではありませんし、サバイバルゲームで使うことを前提とするなら、なおさら非現実的な方法です。
つまり「他の銃と同じパワー、同じ弾で、いかに他より当たる銃にするか」が重要です。
パワーとバレルの長さの関係
バレルの長さと命中精度は、ほとんど関係無いと画きました。
しかしバレルがある程度無いと、弾を充分に加速させることができません。
一般にエアガンの弾は、チャンバーから弾が打ち出され、バレルの中では加速していきます。
バレルを進むにしたがい加速率は下がり、やがて加速しなくなります。ここでエア容量に対しバレルが長すぎると、最後には逆に減速してしまいます。
最適なバレルの長さとは、いちがいには言えません。それを言い出してしまった場合、シリンダー容量を始め、ピストンやエアの漏れる量、やがてはホップのかかりかたや弾の重さも関係してくるからです。
私の経験からは、一般に電動ではMP5、M4用の穴あきシリンダーで25〜40cmのバレル長であれば充分な加速ができると考えます。
ただし、かならずこの数値に当てはまるわけではありません、また、ホップのかけ方と使う弾によってベストは変わってきます。
たとえば「0.2gの弾で最大のパワー効率をだす」か「0.2gから0.25gの弾で、高めの性能を出す」では、最適なバレル長は変わってきます。
もし、エア容量等に詳しいカスタマーがいたとしても、最終的には「どのような性能を目指すのか」でベストなバレルの長さは変わってきます。答えは一つではありません。
バレル長でパワーを稼ぐ理由は何か?今の時代、パワーを出して命中精度をかせぐことはお薦めできないと先に書きました。
ですが、バレル長でパワーを稼ぐ場合は、スプリングでパワーを稼ぐよりも銃に負担をかけないのです。
スプリングで作られたパワーは、そのどれだけを弾に伝えられるかで最終的に弾のパワーが決まります。
これを「パワー伝導率」とするなら、パワー伝導率はより高いほうがスプリングを弱くでき、銃への負担を低くし、パワーをだすことが可能です。
それならかならずしもパワー伝導率が高い銃が優れているのかとなれば、これもそうではありません。
たとえば高速連射の電動ガンをつくる場合などは、スプリングの弱すぎると正常に作動しませんので、スプリングを強くしたうえで、パワーレギュレーションに合わせるためにあえてパワー伝導率を落とす方法があります。
弾の加速の仕方は銃により違う
チャンバーから出た弾は、まず加速を始めます。
ただし、この加速のしかたも銃によって違いがあります。
ガスガンのように高い圧力を短時間でかける銃などは、急加速の傾向がありますし、逆に電動やコッキングガンはスプリングで長い時間エアが押されますから、低い加速となります。
最終的にバレルから弾が出る時点の初速は同じでも、バレル内での加速のしかたは違う銃となります。
加速の仕方は銃の作動方式のほかに、ホップパッキンの抵抗、機密性、ピストンの重さ、スプリングなど、さまざまな要素に影響を受けます。
「最終的な加速が一緒なら、バレル内の加速などに興味はない」と考える方も少なくないかもしれません。
しかし、より多くのことを知っていたほうが、それを生かせる場合があるのかもしれないのは、このことに限ったことではありません。
エア容量とバレル長
エア容量とバレル長について、もう少し詳しく書いて見ましょう。
ここでは、いかにパワー効率をかせぐか、つまり弾へのパワー伝導率をいかに高めるかであり、弾道をいかに安定させるかとは違った話です。
単純にバレル内径の面積×長さ、つまり(バレル内の体積)以上に、シリンダー容量があれば良いというものではありません。
シリンダー容量が大きく、エア容量があまる要素と、シリンダー容量が不足し、エア容量が不足する要素を以下の表にまとめて見ます。
エア容量が余る要素 | エア容量がより多く必要となる要素 |
シリンダー容量を増やす | シリンダー容量を減らす |
気密性をあげる | 気密性がさがる |
バレル内径を小さくする | バレル内径を大きくする |
大きめの弾を使う | 小さめの弾を使う |
バレルを短くする | バレルを長くする |
弾を軽くする | 弾を重くする |
ホップを弱くする | ホップを強くする |
シリンダー容量、気密性、バレルの長さなどは固定ですから問題ないかもしれません。
バレル内径の変化と弾の大きさの変化は、二つで一つの要素を作り出していると考えても良いでしょう。
これは「弾とバレルの隙間から、いかにエアが漏れるか」を表しています。当然、多く漏れたほうがシリンダー容量はさらに多く必要となります(8mmBB弾等、バレル内径、弾直径どちらも大きい場合は、また別問題で多くのシリンダー容量が必要)
弾の重さは、重い弾ほど弾がバレルを抜ける時間が長くなるからです。
0.2gより0.25gのほうが弾がバレルを抜けるのに時間がかかります。つまり多くのエア容量が最適なパワーを出すことにつながります。
さらに一般に弾が重くなればホップも強くしなければなりません。
ホップを強くかければ弾がホップパッキンを抜ける時間も長くなりますから、さらに多くのエア容量が必要となります。
つまり一般に「弾を重くし、適正ホップを重い弾に合わせる」ということは、弾の重さ、ホップの強さ二つの理由で、さらに多いエア容量が必要となります。
0.2gでベストコンディションなシリンダー容量でも、0.25gでは最適ではないということもおきます。
逆に0.25gで合わせてしまった場合は0.2gでエアがあまる傾向があるでしょう。
初速の安定しない銃は当たらない
これは単純なことです。
初速が安定しない銃では、どんなにがんばっても弾は同じ場所に着弾しません。
低い弾速の場合は、普段より下に着弾するはずです。
また、弾速が低い場合は、なんらかの悪い部分があることが多く、単に普段より下に着弾するだけではなく弾道安定性にもかけた弾がでることが多いようです。
また、弾速を安定させるためには、当然ながら銃の性能だけを見てはいけません。
結局、弾を撃ち出すものである以上、全ての弾が同じ形、同じ重要であることが必要で、結果、弾を選ぶこととなります。
バレル内径は細いほうが良いか?
一般的にはバレルは細い方が良いとされています。
ですが、本当にそうでしょうか。確かに内径6.4mmなどのバレルでは命中精度、パワー伝導率等に不満を感じます。
ですが、6.1mm、とくに6.05mmを下回るような精密バレルは、本当に効果があるのでしょうか。
私は非常に疑問を感じます。
正確に測定したわけではありませんが、これも否と考えても良いのではないかと思います。
これにはいくつかの理由が考えられるのですが、あまり自信がないため、その一つだけ説明します。
すべての弾は同じ大きさではない
弾の大きさは一個一個違います。
ミクロン単位でまで誤差がないということはありません、かならず誤差があります。
たとえば極端な話、誤差が大きく、弾が5.95mm〜6.10mmという激しい誤差のある弾を使ったとします。
このたまを撃ち出すのに2本のバレルを用意します。これらは内径が6.08mmと、6.2mmのバレルとしましょう。
どちらが当たるでしょうか?
答えは簡単で内径の大きな6.2mmのほうが当たるはずです。
なぜなら、6.08mmでは一番大きな弾の6.10mmが来た時に弾が詰まって撃ちだせないからです。
今のは極端すぎる例ですので少し例を変えましょう。
内径6.05mmのバレルと6.01mmのバレルを用意したとします。
これらで仮に誤差が5.98mm〜6.00mmの弾を撃ち出したとします。
この場合、どちらが安定するでしょうか。一般的には6.01mmのほうが良いと思われているかもしれません。
私はここに一つの疑問を感じます。それは弾の周辺からもれるエアの量です。
弾とバレル内側との間にはかならず隙間がありますから、そこからエアが漏れていくわけです。
バレル内径6.08mmの場合、内径の面積は、28.7475mm2
バレル内径6.01mmの場合、内径の面積は、28.3686mm2
弾の直径5.98の場合、弾の面積は28.0861mm2
弾の直径6.00の場合、弾の面積は28.2743mm2
エアが漏れる面積を見てみると、
6.08バレルでは、0.6614mm2から、0.4732mm2が漏れます。
6.01バレルでは、0.2825mm2から、0.0943mm2が漏れます。
ここからエアが漏れる面積を計算すると、どちらも0.1882です。
ただし、これを漏れる誤差が何パーセント変動するかにすると変化します。
6.08バレルでは最大値から28%の変動があります。
6.01バレルでは最大値から66%の変動があります。
6.08mmバレルのほうがパーセンテージでの変化は小さくなりました。
もちろん、この数値は弾の誤差が一緒であればバレル内径が大きいほど小さくなりますから、当然の結果です。
だからといえ、バレル内径を大きくすれば良いというわけではありません。
ただし、弾に誤差がある以上、その誤差を緩和してくれる程度のバレル内径は必要なのではないでしょうか。
バレルの内径とパワーの関係
バレル内径が大きすぎると、確かに命中精度は不安定になるようです。
6.1mm以下などのバレルではまったくといっていいほど実感できませんが、これが古い銃のバレル、たとえば6.4mmなどで試した場合に実感できます。
しかし、それよりもバレル内径に左右されるのはパワーです。
一般に内径の大きいバレルでは弾とバレルとの隙間が大きく、そこからエアが弾の横をすり抜けて言ってしまいます。
つまり弾を加速させる効率が悪いということです。
そのため、内径の小さな精密バレルを使うことでわずかにパワーがあがる傾向があります。
とはいえ、それも必ずしもパワーがあがるわけでもありません。また、パワーのあがる量も銃や弾の条件により、違います。
当然、もともとバレル内径の大きな銃では、精密バレルに変えたときにはそれだけパワーのあがりぐあいも大きくなります。
ベストなバレル内径は?
これもいちがいに、どのぐらいが良いとは言えません。
私の考えでは、汎用的に弾を使うのであれば、ある程度余裕を持たせた内径。
弾は精密なものしか使わないのであれば、それにあわせた精密バレルでも良いと思います。
とはいえ、個人的には6.05〜6.1mmで充分な気がします。
バレル内径の細い物がカスタムバレルとして発売されるのは、そのほうが「売れる」からと考えます。
同じ値段で内径6.03mmと6.05mmがあった場合、バレル内径は狭い方が良いと考えている方であれば6.03mmを買うでしょう。
実際に効果は・・・となると分からないですね。
各所の乱数を削る
毎回、弾道が変化してしまうのは、風などの外的要素を無視すれば、どこかに乱数を作り出す要素が含まれているからです。
単純に考え、それを作り出している部分を削って行けば、多かれ少なかれ弾道は安定する傾向にあります。
あまりに当たり前のこととなりますが、どこで、どのように、そのような物が出来ているのかを考え、一つずつつぶしていくのが命中精度向上や初速安定への単純な理屈となります。
サイコロを10個ふれば、サイコロを1個ふる10倍の乱数がでます。