東京マルイ M92Fミリタリー



東京マルイ
12800円
ガスセミオート、ブローバックタイプ
装弾数26+1発

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 1999年の秋にマルイから発売された銃です。

●M92F
 BERETTA M92Fシリーズは、ここ10年程、人気の高い機種です。
 人気の火付けとなったのは1980年代に、アメリカ軍の正式拳銃として採用されたからでしょうか。
 しかし、1980年代、エアガンで人気があったハンドガンはガバメントシリーズだと思われます。エアガンでのM92F人気は、少し経った後に訪れます。
 1990年代に入り、エアガンの世界では各社からM92Fシリーズが発売されるようになりました。
 MGC・固定スライドM92F、デジコン・固定スライドM92F、WA・固定スライドM92Fと、固定スライドのM92Fが発売されます。
 その後、WAがガスブローバックのM92Fを発売し、これがヒットします。これは1993年末か、1994年の初め頃です。
 このWAのM92Fが発売されて以降、ガスハンドガンの主流は、固定スライドからブローバックタイプへと移り変わっていきます。

 固定スライドタイプとブローバックタイプの違い
 固定スライドタイプと、ガスブローバックタイプの違いですが、固定スライドタイプは、スライドが動かない、トリガーのストローク(動く距離)が長い。作動が確実。
 対して、ガスブローバックタイプは、一発ごとに実銃同様にスライドが動くためにリアルで迫力があります。
 トリガーのストロークも短く、撃ちやすい点も良い面です。
 反面、ガスの消費量が固定スライドの倍程度もあり、作動に必要な最低ガス圧力が存在するため、気温の低い冬場などには作動しないこともあります。

 WAのM92Fはヒットしたと先に書きました。しかし、その銃は良い物と断言できるものとも言えませんでした。
 当時のWAのM92Fのマガジンは、非常にガス漏れを起こしやすく、信頼性のかける物でした。以後、WAは何度もマガジンのマイナーチェンジを繰り返しますが、根本的な解決がされたのは、4年ほど経ってからでした。マガジンがRタイプと言われる物に変更され、やっとガス漏れが治まります。
 WAの初期タイプのM92F以降、他メーカーも、ガスブローバック銃の発売を開始します。
 MGCがM92F、CZ75などを発売し、タニオコバもH&K・USPを発売します。
 しかし、この時代のガスブローバックタイプは、WAのガス漏れを初めとして、あまりパッとしないものでした。
 しかし、1995年頃にKSCがガスブローバックを発売、マルイもデザートイーグルを発売するようになると、ガスブローバックに活気が出てきます。
 特にマルイのデザートイーグルは命中精度が良く、弾道が安定した優れた物でした。
 1998年になると、WAはマガジンを変更し、最大の癌だったガス漏れという欠点を改善します。
 1998年からのガスブローバックハンドガンは、安心して使える物が多くなります。
 WAのM92Fも、ガス漏れのマガジンが改善されましたし、1998年の末にはKSCがM9(M92Fの軍用タイプ)を発売します。
 この二つを比べれば、耐久性、作動の安定性ではWAが上、弾道安定性ではKSC。外見は同等でした。
 1999年の秋に発売されたマルイのM92Fは、これらを凌ぐ性能と言えます。
 しかし、全てに置いて優れているわけではありません、やはり、どのメーカーのM92Fも、一長一短があります。

メーカー 長所 短所
WA 可変ホップ ホップ使用時の弾道が非常に不安定
KSC 可変ホップ 寒さに弱い(ハードキックで改善)
ブローバックの勢いが弱い(ハードキックで改善)
一部パーツの耐久性が弱い
グリップのマークが実銃とは違う
マルイ 弾道が非常に安定
他メーカーより低価格
固定ホップ(0.2g)
デコック機能が省略されている
ショートリコイルが実銃とは違う動き
グリップのマークが実銃とは違う

 他社の説明も長くなりましたが、次からは本題であるマルイのM92Fについて触れていきます。

●外観等
 この銃、どこを見ても「BERETTA」の文字は見あたりません。
 これは、アメリカ軍用モデルのM9をモデルアップしたことと、商標権の問題のようです。
 また、グリップが実銃とは違います。
 実銃のグリップには、3本の矢が描かれていますが、マルイのM92Fには、3本の剣が描かれています。
 また、他社メーカーに比べると、プラパーツが多いように感じます。
 リアサイトはスライドとの一体整形、マガジンキャッチはプラ製です。
 12800円という、他メーカーに比べると6000円ほど安い値段ですから、しかたないことでもありますが。

●構造
 次は構造を見ていきます。マガジンを抜いて、テイクダウンレバーを回すだけでスライドが外れます。ここまでは実銃通りですね。
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 フレーム上面は、他社に比べ、非常にシンプルです。
 また、太く頑丈な金属製レールが、フレーム、そしてスライド内にあります。
 このレールが、この銃の高い信頼性の一つの要因です、長年使っても摩耗は少ないですし、破損することも考えづらいものです。

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 リコイルスプリングガイドの後端には、アウターバレル基部とかみ合う突起があり、他社とは少し構造が違います。
 私は実銃のM92Fを分解したことがありませんが、おそらく実銃とも構造は違うでしょう。
 バレルのロッキングパーツの構造も違います。他メーカーと違い、マルイのロッキングパーツは、まさに飾りでしかありません。
 また、プラパーツですので、他社に比べると、スライドを引いた時の金属音が少ないですね。

 次は肝心なシリンダー周辺です。
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 ここの作りにより、ブローバックハンドガンの作動の安定性は大きく変わります。いわば作動の心臓部ですね。
 マルイのM92Fの構造は、スライドとピストンが一緒になったタイプ。
 シリンダーにノズルが付くタイプです。
 ちなみにWAは、スライド側がシリンダー、ピストンがその中に入り、ピストンにノズルがあります。
 KSCは、スライド側がピストン、ノズルはピストン側に付き、シリンダーを突き抜ける形です。
 ブローバックパワー効率的にはWA、マルイが有利に思えます、低温時の給弾不良の少なさはノズルがスライドと一緒に強制的に後退するKSCに分があるかもしれません。

 マルイのM92Fのピストンカップはナイロン製です、これが若干傷つきやすい感じがしますね。

 そしてチャンバー周りを見てみましょう。
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 この銃、弾がチャンバーの装填された時、ラバーチャンバーには装填されません。
 ラバーチャンバーの向こう側、バレルの中に弾が保持されます。
 そして、ホップパッキンで弾が止まる構造です。
 この、バレル内で弾を待機させる方式は、今のところ、弾道が最も安定する方式でしょう。しかし、良いことばかりではありません。
 いくつかの悪条件が重なると、スライド閉鎖時、弾がホップパッキンを通り越し、マズルが弾がこぼれ落ちることがあります。これは、新品のM92Fでは起きないと考えて良いですが、使い込んだ場合は、話が変わってきます。
 おきやすい条件は、スライドを戻す時に銃口が下を向いていた。また、ホップパッキンが摩耗している、弾が小さめだった。などの条件です。
 解消するためには、ホップパッキンの上にセロハンテープなどを貼り付け、ホップパッキンの掛かりを若干強くすることて解消できます。しかし、この方法を行った場合、ホップの掛かりがきつくなりますから、より重い弾を使用することが必要です。
 この銃、ノーマル状態では、0.2g弾が浮き上がりすぎず、まっくすぐと飛んでいくホップですから、下手にバランスを崩さないほうが良いですね。
 ところで、この「弾こぼれ現象」は、WA、KSCの銃では、構造上、発生することが非常に少ないです。少なくともマルイと同じような理由で弾こぼれすることは無いでしょう。

 マガジンはダブルカアラム、ですが、最後はシングルカアラムです。
 この方式はダブルチャージによるじゃミングなども少ないですし、良い構造ですね。
 フォロアーは指で下げれますし、残弾も確認できます。
 しかし、ローダーが付属せず、弾が込めにくいのが欠点です。

●操作等
 デコックが無いのが、実銃との大きな違いです。
 ハンマーを起こした後、セフティをかけることで実銃や他社M92Fは、ハンマーが自動的に落ちます、しかし、マルイのM92Fには、この機能がありません。
 まるでガバメントのように、コック・アンド・ロックの状態となります。
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 M92Fでハンマーが起きたままセフティが掛かってしまうのは、少し変な感じがありますね。
 この妥協も、構造を単純にしようとすれば、仕方なかったのでしょう。この機能を省いたおかげで、マルイのM92Fは内部構造が多少シンプルで、耐久性があります。
 そして、狙いを定めた時に気づくのが、フロントサイト、リアサイトのホワイトドットが無いことですね。
 これは修正ペン、塗料などで塗ってしまって良いでしょう。

●実射性能
 固定ホップながら、性能は非常に高い銃です。
 近距離のグルーピングは取りませんでした、室内3mなら、ほぼ100%、1円玉コインをはじき飛ばせます。
 3m程度なら、BB弾を狙える性能があるでしょう。
 もし当たらない場合、アウターバレルの中でインナーバレルがブレてしまうことが原因なことが多いので、インナーバレル先端にテープを巻くなどしてガタを消してください。
 そして、遠距離での弾道の安定性も非常に高い銃です。
 バレルの掃除などがしっかりとしていれば、若干パワーを落とした電動銃のようにまっすぐ飛びます。  初速は75m/s程度。ガスガンですから、周辺気温より初速が変化してしまいます。
 命中精度が高いのですから、バレルの掃除としっかりと狙って撃つことは大事です。そうでなければ、高い命中精度も発揮できません。

 ガスガンの弱みである、寒さ、連射という「冷え」に対する強さですが、これは強くも無く、弱くも無くですね。
 冷えて、ブローバックの勢いが無くなってきた場合、まず給弾不良がおきます。
 ある程度の対処法としては、ノズルがスムーズに下がるようにするしかありません。ゴミなどが入り込んでいないか確認し、ゴミなどで動きが悪くなっている場合は、掃除をしてシリコンオイルをひと吹きする必要があります。

●耐久性
 耐久性は、かなり高い銃です。
 一番壊れやすいのはトリガースプリングでしょう、金属疲労により、少しばかり折れやすい感じがします。
 また、ピストンカップが多少傷つきやすい感じです。あまりに酷く傷ついて気密性が落ちれば、性能の自体が落ちてしまいますから、交換したほうが良いでしょう。
 スライドもヒビが入るまで撃ちこんで見ました。10000発程度撃ったでしょうか、かなりの弾数を撃っています。

●総評
 サバイバルゲーム用、また、エアガン初心者用としては、かなり安心してお薦めできる銃です。
 余計な調整などいらずに、買ってすぐに撃って楽しめる銃です。
 また、命中精度も高いですから、サバイバルゲームでも有効です。
 逆に、リアルさを求めるユーザーには、あまりお薦めできない銃ですね。
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2006/5/20 追加
●チューニング、カスタム
 マルイM92Fを長く使っていると、やはりトラブルを起こす可能性があります。
 と言っても、この銃のトラブル率は他の銃よりも比較的低く、信頼性、耐久性の高い銃といえます。

・トリガースプリングの破損
 長く使っていると、トリガースプリングが折れて、トリガーが戻らなくなる現象が発生する場合があります。
 折れてしまった場合は、トリガースプリングのみ買い換えるしかありませんが、折れる前にダブルアクションを排除し、シングルアクションオンリーの銃として使用することで、トリガースプリングを折れにくくできます。
 ダブルアクションを残しておいた場合、トリガーの可動範囲が大きいため、トリガースプリングに負担がかかり、金属疲労で折れるためです。
 トリガーをシングルアクションのみにするには、トリガーをあまり前まで戻らなくすることで可能です。
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 この写真では、トリガー上部にエポキシパテで詰め物をし、トリガーをシングルアクション位置よりも前には戻らないように修正してあります。
 実際、この処理をした後に数年使っていますが、、トリガースプリングが折れたことはありません。

・シリンダーの戻り具合のチェック
 シリンダーの可動部分に粘度の高いグリスやゴミが詰まり込み、シリンダーの動きが鈍くなると、低温時に給弾不良が多発します。
 シリンダー可動部分は、常にゴミをチェックし、抵抗無くシリンダーが動くぐらいにしておくのが理想です。
 シリンダーを指で前進させ、話した時に、スプリングの力でパチンと勢いよく後退するぐらいにして置くと良いでしょう。
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・後発機種よりもブローバックが弱い理由とメリット
 M92Fの場合、後発のマルイのハイキャパ等よりもブローバックの勢いが無い銃です。
 だからといって性能的に劣るかといえば、そんなことはありません。
 実際、ハイキャパとM92Fのシリンダーの比較が、この写真です。
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 右側のM92Fのシリンダーの方が、シリンダーの有効長が短くなっています(写真赤線の長さ)
 実際、M92Fはブローバックに使用するガスの量が少ないらしく、そのためシリンダーが短くなっています。
 M92Fの方がブローバックに使うガスが少ないということは、燃費が良いといえます。
 また、連射時の安定性も、もしマガジンのガスタンクの容量が同じであれば、M92Fに分があるでしょう。

2015/11追加
●スライド割れ問題
 M92Fの実銃譲りの問題のデザインの問題もあり、スライドにヒビが入りやすいようです。
ブローバックの衝撃に依存するので、気温が高くガス圧が高いときに大量に撃ちまくると割れやすくなります。
割れやすい箇所は二か所。
まずはスライド前に近い部分、銃を横から見た場合、ロアフレームの最前部に近い部分のスライド側面です。
M92Fはガバメントなどとは違い、スライド前部はやや幅が薄くなっており、そこに縦にヒビが入っていきます。
もう一か所はリアサイトの少し後ろ側。ハンマーよりも前。
こちらもM92Fの実銃ゆずりのデザインの問題となります。
M92Fはスライド側にセフティレバーがあるため、スライド後部付近にはセフティレバーが貫通する大きな穴が左右にあります。
ここからヒビが広がっていきやすいようです。
この二か所のどちらもヒビが入るまで使い込みました(どちらも2つのスライドで破損したため、偶然ではないようです)
といっても、かなりの使用をしているため、大きな問題ではないと思われます。
数千発から数万発ぐらいは持つようです。

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