ホップと命中精度


 今のエアガンの世界では「ホップ」という言葉を耳にします。
 ここでは、このホップがどのようなものか、そして、命中精度の高いホップとはどのようなものかを説明します。

ホップとは?

 簡単に言えば、弾の上向きのスピンを与え、飛距離を伸ばす方法です。
 弾にバックスピンというスピンを与えると、飛行する弾の上に空気の薄い部分が生まれ、そこに弾が引き寄せられる現象が起きます。
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 これは、スポーツの世界で「ボールが曲がる」という物と同じです。
 一般に回転数が同じなら、空気抵抗が大きく、質量の軽いほど大きく曲がります。
 もっとも実感しやすいのはビーチボールでしょう。あえて中心よりずれた場所を叩き飛ばすことで大きく曲がります。

エアガンのホップの歴史

 昔のエアガンにはホップがありませんでした。主流になったのは1993年頃からです。
 この頃は、サバイバルゲーム使われるエアガンがガスフルオートから電動フルオートへ移行した時代です。
 一発ごとにバレルが前後に動くガスフルオートは、バレルの向きが必ず同じではいけないホップバレルに向かなかったのでしょう。電動銃が主流になると共にホップが一般化しました。
 また、これには電動銃がガスガンに比べてパワーが低かったことも一因と思われます。
 電動銃は、初めのうちはホップバレルが標準装備ではありませんでした。
 最初にホップバレルが標準装備になっ電動銃はFA−MAS−SV。それまでのFA−MASノーマルや、M16、XM177E2、MP5A5、MP5A4にはホップ無しのバレルです。
 しかし、これらの機種も後にバージョンアップし、ホップバレルで発売されています。

 電動銃にホップが標準装備される前は、カスタムパーツのホップバレルが一般によく使われていました。
 これは代表的にSCS、LRB、OKホップの三つに分かれます。
 しかし、これらより、今現在マルイが標準装備しているホップのほうが性能が優れます。よってこれらカスタムホップバレルの存在は、マルイがホップを標準装備したことによって消えていきます。

ホップの種類とチャンバー構造

 エアガンの性能で重要視されるのは命中精度でしょう。
 単純に「命中精度」と言っても、それは、私なりの言葉を使って「近距離命中精度」と「弾道安定性」に別れます。

近距離命中精度

 たとえばレーザーのようにまっすぐ弾が飛ぶ銃があったとします、弾道自体は優れていても、バレルがガタついているようであれば、弾の発射の向きが毎回安定せず、撃ちだし角度から曲がってしまいます。
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撃ちだされた時からすでにズレがあるのは近距離での命中精度に大きく影響します。
サイトやバレルのガタ、射手の狙いの甘さなどが、これの原因です。
 ※図では上下を表していますが、左右も同様です。

 また、人間が撃つのですから、サイトを使うのが普通です。
 バレル同様、サイトがしっかりと固定されていない場合でも、やはり弾の撃ちだしは狙った場所から角度がずれてしまいます。
 これは、特に5m以下の近距離でグルーピング測定をした場合は、グルーピングの善し悪しを決める殆どの要素を占めています。
 よって便宜上、「近距離命中精度」と読ぶこととします。
 近距離命中精度は、バレル、サイト(スコープ)などをしっかりと固定することで向上させることができます。
 また、本体の剛性も絡んできます。

弾道安定性

 撃ち出された弾は、少なからずとも曲がります。そして、毎回同じように曲がるのではなく、不規則に曲がります。
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途中から曲がってしまうのは弾道安定性によるもの。
いかに毎回同じ弾道を描くようにするかは、チャンバー部分の構造が大きく影響します。
逆に、チャンバー部分、ホップ構造などが悪い銃では、弾道は毎回変化し、不安定に曲がってしまいます。
 ※図では上下を表していますが、左右も同様です。

 これは、ある程度しかたないことです。たいていの銃には遠距離において弾がバラバラと散っているのが分かるでしょう。
 この、不規則な弾の曲がりをいかに押さえられるか、少なくできるかが「弾道安定性」です。
 ホップが付いているわけですから、上に曲がるのは当然だとして、弾道安定性の優れた銃というのは、ほぼ毎回、一直線に弾が飛ぶということになります。もっとも、そのような銃は、まずあり得ないといっていいでしょう。
 15m、20mを越えるような中距離、遠距離では、この弾道安定性が重要です。とくに40m、50mの遠距離で「いかに狙った場所に弾を落とすか」の場合は、弾道安定性に欠ける銃では、弾は途中で曲がってしまい、目的の場所へと到達しません。
 サバイバルゲームでは中距離、遠距離の射撃が多いですから、この弾道安定性が近距離命中精度よりも有効と考えられます。
 よって、5mや10mでのグルーピングというのは、実際サバイバルゲームでは大した意味がありません。
 その程度の距離なら、多少弾道安定性が低い銃でも、弾が曲がってしまう前に的に到達してしまいます。
 本当にサバイバルゲームでの実用性を考えるなら、グルーピングは、20m、30m、40mの物は必要です。しかし、これらの距離は、屋外では風の影響を大きく受けるため、室内レンジでの測定が望ましくなります。
 そのような場所は、なかなか無いというのが悩みでしょう。

 弾道安定性を向上させるためのは、弾に毎回同じスピンを与えることが大事です。
 さらに言えば、弾を毎回同じ初速で撃ちだすことも大事なのですが、ここではこの説明は省きます。なぜなら、初速を安定させるということは、シリンダー、ピストンなどが絡んでくるからです。
 話を戻し、毎回同じスピンを弾に与えることにおいて、もっとも重要なのがチャンバー部分です。
 そして、ホップパッキン構造、方式なども大きな要素を占めます。
 たとえば一般に命中精度が高いと言われるマルイの電動銃は、正確には弾道安定性が高く、なぜ弾道が安定しているかというのは、チャンバー構造、ホップの掛け方が優れているからです。

射手の関係

 命中精度を決める要素は銃だけではありません。射手にも大きな関わりがあります。
 エアライフル等、高い命中精度を持つ銃での射撃や、レーザーサイトを銃に付けて構えてみれば分かりますが、人間の構えは、かなりブレます。
 たとえばスタンディングで20m先の空き缶にレーザーサイトを照射し続けるのは楽ではありません。
 同じ条件で弾を発射したとしても、当たるわけがありません。
 つまり、それだけ安定した姿勢で正確に弾を撃たなければ高い命中精度は出せません。
 一般に安定させるために良いのは銃の下に何か物を置き、その上に銃を乗せて撃つ方法です。レストシューティングと呼ばれる方法です。

 また、エアガンの弾は非常に遅く、弾を発射し、標的に到達するまでにも銃はブレ続けます。
 これにより、弾を撃ちだしたあと、銃が右にブレたと仮定し、スコープの視界が右にズレると、あたかも弾が左に曲がったように錯覚してしまいます。
 このように、実際、銃にはなんら問題が無くても、射手の技量により、あたかも銃に問題があるように見えることもありますので注意が必要です。

弾道安定性に優れたホップ方式チャンバー構造

 さて、マルイ製電動銃が弾道安定性で優れていると上のほうで書きました。
 マルイ製は電動銃だけに関わらず、ほぼ全てのホップ付きエアガンが弾道安定性に優れます。
 理由はチャンバー構造です、マルイのエアガンはチャンバーパッキンで弾を保持せず、ホップパッキンで直接弾を保持します。
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チャンバー部分の拡大図。
左側から出ているのがノズル。右側がバレル。
黒い部分はチャンバーパッキンとホップパッキン。
 そのため、チャンバーパッキンでの不規則な効果が無く、弾道が安定すると考えられます。
 また、弾がまだ低速のうちのホップパッキンを通過することが弾に安定したスピンが掛かる理由とも考えられます。
 長物では、他メーカーも、同様に弾の「ホップパッキン保持方式」が主流になっています。APS−2SVや、サンプロのボルトアクションライフル。
 しかし、ハンドガン、とくにブローバックハンドガンでは、ホップパッキンではなく「チャンバー保持方式」が多く使われています。
 これは、ブローバックガスガンのように速い速度でノズルが前進してきて弾がチャンバーに押し込まれる方式では、弾がホップパッキンを通過して銃口から落ちてくる場合が可能性としてあり得ることが理由でしょう。
 マルイのM92FやG26は、この現象が起きやすい銃です。新品などで、起きないものは起きないのですが、「起きやすい構造である」ということは変わりません。

 KSC、マルゼン、WA等は、チャンバーパッキンで弾保持を行いますから、弾の保持は確実ですが、弾道安定性はマルイブローバックハンドガンに比べると一歩劣ります。
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ホップパッキンとは別のチャンバーパッキンで弾を保持するタイプ。
弾こぼれがしづらいのでブローバックガスガンに向いている反面、弾道安定性で劣ります。
 WAは、2歩も3歩も劣っていますが、これはバレルの下から弾を持ち上げるという変わったシステムのためです、ゆえにWAのブローバックハンドガンはホップを最弱にして使った方が実用性が上がったりもします。

ノズルの長さ

 ホップパッキン保持方式では、ノズルの長さが重要です。
 ノズルが長すぎると、弾がホップパッキンを越えてしまいます。逆に短すぎると、弾が遊んでしまうので、銃口を上に向けて撃った時と、下を向けて撃った時で弾道が変わってしまいます。
 これの良い例がAPS−2スポーターシリーズです。これは、設計ミスとも思えるほど極端にノズルが短いので、カスタムパーツのロングノズルを使用しないことには、まったく弾道が安定しません。
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APS2スポーターのチャンバーの拡大図。
ノズルの長さが極端に遠いので、弾が図の左側に来ている場合と、右側に来ている場合で、弾道が全く異なります。
このように弾の保持位置が毎回同じにならないチャンバーでは、弾道は安定しません。

ゲームで有効なホップ弾道

 ホップは弾の飛距離を伸ばしてくれます。
 そして、それが最大になるのは、おそらく「弾が落ちる間際にいったん上昇してから落ちる」程度の強めのホップではないでしょうか。
hopup7.jpg 射程距離がもっとも長い「強めホップ」
 たしかに、これなら射程は伸びます、しかし、サバイバルゲームで有効かどうかは疑問です。
 特に狙撃手の場合は低い姿勢から撃つことが多くなります。相手も中級者以上なら低い姿勢を保ち、一発でも攻撃を受ければ即座に伏せます。
 下草のある場所に伏せた敵を倒すには、強めのホップの弾道では草にはじかれやすく、難しいこととなります。
 しかし、弾が落ちる感じの弾道であれば、低い姿勢の敵を倒しやすくなります。
 自分も伏せて低い姿勢から撃つ場合は、弾はストレートに飛ぶより、多少落ちる感じの方がやりやすくなるのです。ただし、弾のクセは知る必要がありますね。
 強めホップで低い姿勢の敵を撃とうとすると、どうしても高い位置から射撃する必要があります。
 狙撃手で、相手に見つからないようにするためには、より低い姿勢、少しでも低い姿勢から射撃したほうが見つかりにくく有効です。
 また、弱めホップのほうが弾道も安定するように思えます。
hopup8.jpg 伏せている敵を撃つことや中距離から確実に狙いやすい「弱めホップ」
これでもノンホップよりは遙かに飛距離があります。
 しかし、遠距離では落差も考え相手の頭上を狙って撃つか、あきらめるしかありません。
 それでも、中距離から一撃必中を狙うなら、ストレートに飛んで落ちる弱めホップが有効です。

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