One shot one kill !!


1998年12月13日

僕は今年最後のゲームに参加していた。
場所はとある河川敷でフィールドは縦が約200m横が約100mの長方形のエリアで中間に濃いブッシュエリアがありその中は草刈機で迷路のようにしてある。
その中で戦闘されてしまうとスナイパーは何の役にも立たないという非常にスナイパー泣かせのフィールドである。

その日の参加人数は最終戦と言う事もあり30人ほどの人が来ていた。
いつものようにグーパーでマーカーを決める。
その日の僕はイエローマーカーだった。
10年苦楽を共にして来た相棒Tさんもその日は僕と一緒のチームだった。

最初の何ゲームかはSIG550(システマさんのフルチューンキットに190%(キットはM150)のバネを組み合わせたもの12V500mAh棒バッテリー使用で0.3gで342fps誤差5fps、もちろんスコープ・チークパット・サイレンサー付き)を使用していた、SIGを選んだ理由は主な戦闘がブッシュ内の接近戦になるであろうという予測と、Tさんがコクサイのセミオート(マシンピストルにサイレンサーを付けてCAR-15のストックを付けたもの内部メカチューニングで3.8気圧にて338fps)を使用するため前衛にまわった場合やはりフルオートが撃てることへの安心感もあった。

ちなみにその日参加しているゲームのレギュレーションは0.3g弾使用で銃口初速350fps(約106m/s)を上限とし(セミ・フル・電動)、ライフル(ボルトアクションでエアーのみ+サイドアームの携帯を義務とし約10m以内でのライフルによる射撃を禁ずる)は0.3gで400fpsを上限としていた。
少し高めのレギュレーションだと思われるかもしれませんが、防護措置の徹底や(フェイスガード・イアーガードの着用の推奨(と言うよりほとんど義務)、及び保険への加入、等)
戦闘時のモラルの徹底などにより事故も無く危険度も少ないと僕は思っていますが・・・(実際今のところ事故もないし)

話がそれました、さてそんなこんな4ゲームほど消化したところフィールド内のある状況に気がつきました。
夏場・秋口とあれだけ生えていたブッシュが今はほとんど枯れてフィールド内にオープンスペースの多い事、これだけひらけているならスナイピングにも良い条件です。

「Tさん、自分次からAPSを使うよ」
そのときすでにSIG550で8人ほどゲットしていましたがスナイピングと呼べるショットは二人のみで後はブッシュ内の接近戦によるフルオート射撃によるものだけでした。
(ちなみに一人は約65mでのボディーショットもう一人は約75mでのボディーショット!)
自称なんでもできるオールマイティープレイヤーの私としては残りのゲーム、ボルトアクションにこだわってみたかったのです。
「いいんじゃない、今日はそれほど中(ブッシュの)から攻めてきてないし」
そう言うとTさんは黙ってメインウエポンをAKスペツナズ(システマさんのオールヘリカルギアに140%ばねを使用0.2gで334fps)にかえ準備し始めた。
「ただし迂回してくる中にスナイパーがいるからそいつだけは外すなよ」
そういってTさんはフィールドのスタート地点へと歩いていった。

「よし!」
気合の入った僕はAPS-2(OKさんのHOPバレルに純正の強化シアー、ピストン・SPガイドをOKさんのとこのものに変更バネはシェリフさんところのもの、MAGにマルイの300連のゼンマイユニットを組み込み約200連MAGに改造 0.3g使用389fps誤差2fps)を準備し始めた・・・

ゲームが始まるとTさんを含むフルオートプレイヤーが10人ほど約50m前方のブッシュ入り口に向かって走っていった。
僕の最初の仕事は彼らが安全にブッシュ内に到達できるようにブッシュ左側通路からくる敵部隊の足止めである。
「いつものシチュエーションだな!」
僕は通りの正面にある木の後ろに隠れスコープを覗き前方を警戒していた。

始まって20秒ぐらいだろうか味方の部隊がブッシュの際に取り付いた。
「よしあそこまで行ければ・・・」
そのとき無線に状況説明を求めるTさんの声が響いた
「通路から敵が来てないか?」
僕はスコープを覗いたまま無線機のボタンを押した・・・
「いるよ、前方から5名縦に並んでご登場だ! 前からG3 タンクを背負ったM16 推定JACのフルオートってとこかな? そしてM16が2名電動だ 最後尾にAK電動、敵はそっちにきずいていない面倒なガスフルオートを狙撃する」

戦況的に見てまだ序盤、左サイド5人は結構な戦力だ、中でもガスフルオートは早めにやっつけておきたかった、ブッシュ内戦闘となれば電動よりガスのほうが貫通力の分有利だし、味方はTさんを除けばあとの人はすべてガスフルオート、となれば彼を倒しておけばかなり有利になってくる。

「よし!とりあえず威嚇射撃だ!」
本来僕のスタイルはスコープで測距した後でゆっくりとねらいをつけ相手の射程外からショットするというものだが、今回はまず敵の足止めをしたかったのでとりあえず撃った。

ピシューンと言う独特の風きり音を残し0.3gの弾はきれいに目標に向かっていったそして
「ヒットー」と言うコールがフィールドに響き渡った・・・

「うそー! 当たっちゃったよ、まじでー」
撃った本人が一番びっくりしていた、なんて言ったって約80mからのショットである。
「偶然にしろ何にしろ、とにかく無線だ・・・敵ガスフルオートゲット!残存兵力4名いずれも電動、なお敵は進行を止めその場にて待機中、前進可能なら左に抜けていけば側面もしくは後方に出る事が出来る、ブッシュ内から道に向けてやや下向きでフルオートをかましてくれ!敵の注意をこちらにひきつける 以上!」

興奮さめやらぬまま僕は次のターゲットに狙いをつけたG3である・・・
「こいつはスコープがついている、銃もいじってありそうだ、残りの奴らは固まっているしさっきの作戦でほぼ全滅させられるだろう、だがこいつは厄介だ位置的に最前列に取り残された形だ下手すると突入隊が撃ちもらす可能性が高い・・・」
「やるしかないか・・・とりあえず報告だ」
僕は無線のボタンを押した
「さっきの件だがG3がやばい位置にいる、こちらから仕掛けるとやつの位置的に非常に危険だ、幸い射程内にいるのでまず奴を狙撃する、その後突入すれば少なくとも撃ちもらしてやられることはないだろう 以上」

序盤戦の山場である、成功すれば損害なしの5人ゲット、16(レッド)対15(イエロー)でやっている為もしそうなれば今後の展開に大きく影響する、見たところ左サイドからの進行は彼らだけのようなので左側からの迂回ルートが確保できる。

「開始から6分かよし!」僕は狙撃準備に入った。
まず測距だタスコのTRスコープは独特のレティクルで水平のラインが2本入っている、対象物の大きさを決め、その2本線の中に入るようにズームリングを調整してやると、ズームリングに刻まれた目盛りによって対象物の距離測定が出来る仕組みだ。
結果はG3まで約75m・・・

「75mかちょっときついなやはり確実に行くならあと5mほしい、さてどうしようか・・・」
当てられない距離ではないのだが向こうも届く可能性のある距離である(G3をチューニングして0.3gで300fpsでていればぎりぎり水平到達距離、つまり射程距離である)あと5mとは相手の射程外から確実に撃っておきたいという意味だ。
「考えていてもはじまんないしとりあえずやってみるか!」
僕はゆっくりとボルトを引きG3へサイティングした。

ピシューン!今日2度目の風きり音を残し弾が相手に吸い込まれていく・・・はずだった、
しかし、河川敷にありがちな突風のため弾は大きくカーブを描きG3の右側のブッシュへと突き刺さっていく、同時にG3のスコープがゆっくりとこちらを向いた・・・

「まじぃー外しちまったよ!」
悔しかったがセカンドチャンスは無い、僕は木の根元に伏せた。
「バラララララ・・・・・・・」
案の定G3の奴が撃ち返してきた、しかし僕がいる場所へは飛んできていない、
そろりと顔を出してみるとG3の弾はHOPがきつくかかっているらしく僕の10mぐらい手前から急上昇している。
「チャンスだ!・・・Tさん敵の最善列の奴は今こっちに向かって射撃中だ今のうちに側面からやっつけちゃってくれ」
答えは無かったが前方ですごい射撃音が始まっていた。

やがて銃声の中から「ヒット!」の声が3つ聞こえた、
「よし撃ちもらしたけど3人はゲットだな!」
僕は銃声のやんだ前方をスコープで確認した、帰っていく人が三名M16、AK、そしてもう一人は・・・
「Tさん味方に損害が・・・」
無線の向こうからはなんの応答も無かった、つまり帰っていくうちの一人最後に歩いているのは・・・Tさんだった。
ガスフルオートと違い電動のAKをチョイスしていたためブッシュが抜けず一人道に飛び出したところG3に後ろから撃たれたと側面にいた人に聞いた・・・

「ちくしょー!俺が外してなけりゃ・・・」
自然現象はしょうがないとはいえ,大きな痛手である多分残ったフルオートプレイヤーでは相手の位置がわからずじまいであろう、無線による通信手段を失ってしまったのだ・・・

「こうなったら残りの2名をやっつけるしかない!」
僕は、賭けに出た、さっきの弾筋からしてこの位置より2〜3mであれば敵の有効弾は飛んではこない、飛距離にこだわるあまりHOPをかけすぎているからだ。
僕は、ゆっくりとAPSについているハリス社製ロングパイポッドを展開した。
「こいつを一番伸ばした状態なら座ったままでの安定した射撃が出来る、立っているとHOP弾道によっては当てられる可能性がある、だからといってプローンにはいってしまっては敵がこちらにきずかない、かなりやばい賭けだがやるしかないな・・・」

わかりずらいかもしれないのでちょっと説明させてもらうと、
さきほど、G3の弾道を見ると僕の10mくらい手前から上昇しはじめ僕の位置をちょうど乗り越えて着弾していると書いた・・・
という事は、相手が適正HOPにしたとしても射程はぎりぎり届かないはず(経験上ノーマルHOPの場合水平に飛ばす限界は弾が浮き上がり始める場所より+15mが最大到達距離となる・・・)
届きそうだと思われるかもしれないがこれはあくまで立射の場合である。
状況から見て敵は正面通路脇のブッシュ内に潜伏していると予測されブッシュの高さは1mほどなのでしゃがんでいる又は伏せていることが想像できる、となるとより地面に近い場所からの射撃となりせいぜい飛んだところで70mがぎりぎり、さっきの位置から5mほど前進し、なおかつHOPを適正位置にあわせなおすのはまず無理と考えられる。
また適正HOPに調整出来たとしても射撃角度をかなり上向きに持ってこなければならないし、もしそれが出来たとしても僕の直上には木の枝が大量にあるため上から降り注いでくる弾の格好のバリケードになってくれるはず・・・
となればこちらにもチャンスはある、敵が撃っている中すばやくポイントして必中弾にかければ・・・当たればよし、当たらなくとも前方に展開しているであろうフルオートプレイヤーが発射音にきずいて倒してくれるかもしれない・・・

「やるしかないけど・・・いややるんだこのままでは状況は好転しない!」
僕は腹をくくり自分の身を隠している木の根元からはいずり出して通路の正面に身をさらした。
パイポッドを利用して正面のブッシュ内の木に狙いをつける、理由は二つ、一つは弾道の修正、もう一つは敵に対してこちらの存在をきずかせて相手に撃たせる事にある。

ピシューン!・・・・・・・カーン!
狙いどうり約80m先のブッシュを貫通してその先にある木に着弾した、と同時にちょうどそこから弾が飛んでくるのが見えた!

「バララララララ・・・・・!」
電動の音である、弾はやはり僕の10mほど手前から上昇して僕を飛び越えて後ろへと飛んでいく、当たらないとわかっていてもかなりスリリングだ・・・
そのときスコープの中できらりと光る物があった、G3についていたスコープの反射光である。

僕はゆっくりとズームリングを6倍に合わせた。
うまく隠れているが、正面は自分が撃つために若干スペースがあいていた・・・
「今度は外さないよ!」(独り言の多い奴だと思いますが・・・)
そうつぶやくと、ゆっくりとトリガーに指をかけた、

ピシューン!
弾は風に左右されることなくまっすぐ相手のに向かって飛んでいった。
「ヒット!」フィールドにヒットコールが響いた・・・
「よし!パーフェクトだ!」
僕は、賭けに勝ったことに素直に喜び自分に酔っていた・・・
「ふふふっ・・・」(我ながら、あぶないヤツー!)
スコープを覗くとそこに彼の姿があった・・・

彼は、G3を持ってブッシュから立ちあがると肩を落としながら帰っていった・・・
ふと、彼の視線が横を向いた彼の位置から3mぐらい後方に視線を落としている。
という事は残ったM16もそこに・・・
あくまで推測でしかないこちらからはまったく見えないのである、
「もうちょっと左に行けば見えるかも・・・」
G3をやっつけたことで油断していたわけでもないが僕はかなり安易に立ちあがり銃をかまえたまま左のほうへ歩いていった。

「いた!」
発見したM16は想像どうりG3の彼が最後に視線を落としたところに隠れていた。
「狙える・・・よし!」
僕は立ったままM16にゆっくりサイティングする距離は約80m・・・いや75mだ!
落ち着いてレティクルの水平ラインをM16の頭部より20cmくらい上のところにあわせる。
風はない、つまりセンター狙い!
彼はこちらにきずいていない周りをきょろきょろしているが、移動する気はないようだ。
「one shot one kill!」
どっかの映画(「山猫は眠らない」原作名SNIPER)の中でトムベレンジャーさんが言ってた言葉をつぶやき僕のテンションは最高潮に達していた(あっ・・あほくさ・・・・)。

ゆっくりとトリガーに指をかけ呼吸を整える・・・
一度味わってしまったら抜けられないそんな魅力がここにあった、そう、「スナイパーの醍醐味」てやつですね・・・
そして僕はゆっくりトリガーにかけた指に力をこめていった。

ピシューン!
風きり音の後、あたりは静まりかえっていた・・・
静寂を破ったのは・・・・僕のヒットコールだった・・・・

「ヒットー!」
右横を向くといつのまにか味方の姿は無く50mくらい先にきらりと光る物があった・・・そう敵スナイパーのスコープの反射光である・・・・
「なっ何でやねん!」
突如として関西方面の言葉になってしまう(ちなみに出身は北海道)
わけもわからずセーフティーゾーンへと帰っていった・・・(トホホ・・・)

ゲームが終わり(結局あの後膠着状態になり約30秒後にタイムアップ・・・)僕を狙撃したスナイパーの人が帰ってきた。
手にしているのはM40A1(サンプロ)である、僕は彼に聞いた、
「いい銃ですね、それにしてもいつから狙ってたんですか?」
すると彼は、
「いやー買ったばかりなんですよ、ほら「山猫は眠らない」って映画があるじゃないですかそれを見てほしくなって、今まではJACの16を使ってたんだけど、これはこれで良いよねなんか味があるし、なんせ、はじめてまだ3回目なんで今日は嬉しくて! 
あっあなたを見つけたのは撃つ1分前くらいです立ちあがって前方に狙いをつけているところだったので、こちらにはきずかないだろうと思い、ゆっくりと狙わせてもらいました!」
げげっ初心者にやられたんかい!と心の中で思いつつも
「そうですよね、やっぱりスナイパーはいいですよー はははははは!」
と先輩ぶったところを見せてはいたが、表情はきっと引きつっていたと思う・・・

「ところでそのM40、チューニングは?」
自分のやられた銃ほど中身が気になるものである、
「えっ?ですから買ったばかりですよ、まったくのノーマルです!」
ガーン!挙句の果てにノーマルの銃かい!(けしてノーマルが悪いといっているわけでは無く、自分がやられた理由にしたかったのが期待はずれとなってしまったからである)
「ははは・・・そ・・そうですかいやー参りました・・・はははははは・・・」

「おい!」
後ろから声がした、Tさんである。
「いやーTさん、ごめんごめんやられちゃったよ!」
その言葉に無反応で彼はボソッとつぶやいた。
「one shot one kill・・・」
えっ!
「だからーそんなこといって自分に酔っているからやられるんだよ、バーカ!」
なっ何で知ってるの・・・・
「おまえ無線のスイッチ入れっぱなしでロックしてたろ!笑えたぜー 帰ってきてからずっと聞いてたんだけど独り言いいまくってんだもん! まったく! ゲーム前に言ったろ、相手のスナイパーを外すなって! 逆にやられちゃってどーすんだよこのバカ!」
げげっ!!全部聞いてたの・・・
「やられる瞬間笑ったぜ! 「one shot one kill・・・」とかいっちゃってその直後「ヒットー!」だもんイヤー笑えた! ほんとーにバカッ!」
それを聞いていたM40の彼が、
「エーそうだったんですか! いやー良いところもらっちゃいましたねー!」
ちっちくしょー!そんなにいわなくてもー!
僕は必死で体裁を繕うため弁解し始めた、
「俺だってちゃんと狙撃したじゃん・・・えーと2人だぞしかも80mレンジでだ!」
しかし・・・
「ふーん・・・ねえ君は何人倒したの?」
Tさんが意地悪そうな顔をしてM40の彼に聞いた
「えっとーたしか6人ですね!始まってからすぐ2人、その後ブッシュの中で3人、そしてあなたをやったので合計6人です!」
彼は得意そうに答えた・・・(たっ立ち直れないかも・・・)

結局その日の残りのゲームもぱっとしたところ無く終わり、僕の1998年は終わった・・・

ps 来年必ずM40の彼をゲットしてやる・・・・(ああ負け犬の遠吠え・・・)
投稿者:JEEK

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