サバゲニッポン昔話
うさぴょん「サバゲニッポン昔話もいよいよ最終回が近づいてきたぴょん」
ネコ田さん「最終回というより打ち切りじゃないのかにゃ〜」
うさぴょん「人気はいっぱいあるぴょん」
ネコ田さん「一部の人たちの間だけでのことにゃ〜」
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ハンドルネーム:レイヴン
あぁ、うさぴょんってなんか癒し系だよなぁ。
マイナスイオン出てるよ。今気づいた。
しかもネコ田さん食われてるし^^;;
ご愁傷様です。安らかに・・・ネコ田さん。
これも食物連鎖ってヤツですかね?
あぁ〜でもパン田君に続いてネコ田さんまで・・。
かなり人数が減っちゃいましたね。
まぁ、どっちも戦力外だかra(以下略
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ネコ田さん「まだ生きてるにゃ〜。それに戦力外でもないにゃ〜」
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ハンドルネーム:きなこMIX
エリー!
そんなもの食べたらあかんて!
腹壊すって!!
てかエリーは肉食ですか...?
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エリー「けっこうおいしいけど、きなこMAXさんも一緒に食べる?」
ネコ田さん「食うなにゃ!」
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ハンドルネーム:kouhei
ま・・・・・負けちまったぁ〜〜w
ましょうがないかw今のケンタッキーよりマックのほうが
売れてるしw(そういう問題じゃねぇw)
トラ吉・・・・クマノフさんたちと対決するまで
負けないで!唯一まともな戦闘するチームだから!w
クマノフ・・・・出番少ないっていってんのに車の中で
おねんねですか!?w パン太食ってるんじゃないのか?w
うさぴょん・・・・ニンジン笑顔で食うあなたに一生
ついていきます!wニンジン100本で弟子にしてくださいw
エリー&ネコ田さん・・・・・食われましたねw
エリーはクマノフを落とせないとわかって目標変更?w
長々とすんませんw
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クマノフ「私たちのほうがマトモな戦闘をしてると思うクマ」
うさぴょん「僕たちのほうが普通の銃使ってるぴょん」
エリー「そうかも」
うさぴょん「この人、ニンジンくれるぴょん?」
ネコ田さん「俺にネコ*っしぐら100個くれたら弟子にしてやるにゃ〜」
エリー「あたしはネコ田さん100匹くれたら弟子にしてあげるわよ」
クマノフ「食用ネコだクマ」
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ハンドルネーム:虚空
なんとなく不定期に間を空けて書き込んでますコンニチハ(謎
雨バーガーでガードしたかドナレド・・。
晴れてればサンダースの勝ちだったかー。残念。
トラ吉も久々の個人でカッコイイ感じの出番でしたね。
サンダースとあの『怪しい日本語』でお馴染のポースさんは友達な。深い・・(何
そしてキ●ガイピエロ。もしかしてこの人は
キ●ガイピエロって書いてクレ●ジース●ットって読んだりしません(笑
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うさぴょん「雨でガードするヒマあったら弾を見てからでも間に合うと思うんだけどにゃ〜」
クマノフ「弾は相手が撃った後にロックオンしないといけないクマ。雨なら相手が撃ってくる一瞬前からロックオンできるクマ。おそらくその違いクマ」
エリー「さすがクマノフ様」
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ハンドルネーム:努羅江門
おいエリー!てめ〜ネコ組みの親分,ネコ田さまにてぇだすとはいいどきおしてんじゃね〜か!
サバゲで勝負だ!かかってこ〜い!
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エリー「あんたたちまとめて全員食べてあげるわよ!」
クマノフ「ついにネコの味を覚えてしまったクマ……」
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ハンドルネーム:ジェイソン
前略、エリー様へ
その後、いかがお過ごしでしょうか?
あなたがサバイバルゲームにはまったと言う話を聞きました。
あの時、あなたは私にこう言いましたね。
「ばっかじゃない?」と。
しかし、忘れられずお手紙を出した次第です。
もう1度言わせてください!あのセリフを!
「何で今日はエリマキがピンク何だい?昨日は緑で…
もしかしてそれってエリマキじゃなくてシャンブゥッ!」
あなたはここまで聞くと私を殴りましたね。
さて、本当の所を教えていただけるとありがたいです。
では。
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ネコ田さん「なんだか意味深だにゃ〜」
エリー「誰よこれっ!」
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ハンドルネーム:夜猫
コタツを喰らうバケネコが出てきたと思ったら、
今度はそのバケネコを喰らう怪獣が現れるとは・・・。
共産主義チーム優勝のためにも、次回からはぜひ
そのモンスター・パワーをサバゲに活かして下さい。
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クマノフ「私たちがモンスターチームにされてるクマ」
うさぴょん「うれしいぴょん」
クマノフ「嬉しいクマ?」
うさぴょん「そうぴょん」
ネコ田さん「うさぴょんの考えは時々理解できないにゃ」
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ハンドルネーム:匿名希望
車の中でクマノフさんとクマ―ニャの行けない・・・・・
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うさぴょん「とってもたのしそうぴょん」
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ハンドルネーム:MP5
グリ夫死んじゃったんですか?
つうかエリーの口でかすぎ!!
どんだけデカイんすか
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ネコ田さんさん「リンゴを丸飲みできるぐらいかにゃ」
うさぴょん「メロンも大丈夫ぴょん」
エリー「あんたたち、生命保険入ってたほうがいいわよ」
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ハンドルネーム:ドコパモ
今回はケ●タッキーオヤジの負けでしたね・・。
すごい実力を持っていてもやっぱりドナレドには勝てなかったか・・・。
そんなことよりネコ田さんがエリーに食べられた事が気になる。
ネコ田さんの無事を祈りますw
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ネコ田さん「サンダースに勝てる奴いるのかにゃ」
クマノフ「主人公である私だけが勝てるクマ」
ネコ田さん「ありえるようにゃ、ありえないようにゃ」
第43話:モスクワ
むかしむかし、モスクワという町でのお話です。
茶色のクマさんがいました。
銃を構えていました。
銀色に輝く拳銃です。
シューティンググラスをしているそのクマさんの表情は無表情です。
彼の目と拳銃は、20メートル先のペーパーターゲットに向けられていました。
そこは射撃場です。レーンがいくつもならんでいますが、そこにクマさん以外、誰もいません。
クマさんは、じわじわと指に力を入れていきました。
ズドン☆
銃口から赤い炎が吹き出しました。反動で銃口が跳ね上がります。
同時にペーパーターゲットの真ん中に穴が開きました。
クマさんは、立て続けにトリガーを引きました。
ズドン☆ズドン☆ズドン☆
拳銃が反動で跳ね上がるたび、ペーパーターゲットに穴が増えていきます。
どの穴もターゲットの中心付近に開いています。一番中心では、いくつかの穴が繋がっている状態です。
全ての弾を撃ち終わると、クマさんは銃を置きいて手元のボタンを押しました。
ぅぃぃぃぃぃぃぃ……。
ペーパーターゲットがクマさんの方に近寄ってきます。モーターで動く、とっても便利なシューティングレンジです。少なくてもいつでもどこでも財政難のこの国ではとっても設備が整っているほうです。
。
弾は全てターゲットペーパーの中心付近に当たっています。
でもクマさんの顔に喜びの表情はありません。
クマさんは無表情のままです。
ふとクマさんは横を見ました。
クマさんのほうに、一人のシロクマさんが歩いてきています。
このシロクマさんの名前はハローシイ大佐といいました。
クマノフの直属のボスです。
「同志クマノフ、指令がある。作戦会議室まで来たまえ」
二人は暗い部屋に移動して来ました。
ちょっとした会議室のような部屋。
広さは10畳程度でしょうか。剥き出しのコンクリートの壁はやや古く、いかにも財政難のこの国らしい雰囲気です。
部屋の一番奥には白く大きなスクリーンがありました。そして部屋の中央にある大きな長方形のテーブルの上には一台の映写機。
クマノフとハローシイ大佐は、それぞれ適当な席につきました。
「今度のターゲットはC共和国派のテロリストに影で武器を提供している人物だ」
ハローシイ大佐が静かに言いました。
「クマ」
クマノフの短い返答の後、ハローシイ大佐がさらに説明を続けます。
「我々は彼に再三に渡り、彼にテロリストへの武器提供をやめるよう警告してきた。しかし彼はその警告をことごとく無視してきている。残念だが消えてもらうしかない……」
「クマ」
「ターゲットの本名、姿は不明のままだ。我々は彼を『テロちゃん御用達の武器屋さん』と呼んでいる」
「クマ」
照明が消され、壁にかけられたスクリーンにモスクワの地図が映し出されました。
「ターゲットは明日この位置を通る。時間は午前10時だ。当然、車の種類とナンバーは分かっている」
「こちらも車で後をつける。人通りがすくないエリア……ここだ……」
ハローシイ大佐が地図の一点を長いスティックで指しました。
そこは周囲には畑と草原しかない、郊外の一本道。
脇道も無いため、車で追跡するには恰好の場所です。
「この位置で横に並んで一発撃ち込む。良いな?」
「クマ」
陽は、かなり西に下がっていました。
やや薄暗くなりかけた町。
モスクワ市内のアパート街。
その中を歩くクマノフの姿があります。
自宅のアパートに帰る途中です。
その途中、自宅アパートのすぐそばで、クマノフは聞き慣れた声を聞きました。
「あ!クマン!」
クマノフを見かけ、嬉しそうな声けかける姿がありました。
歳は20ぐらいでしょうか。まだ若い女のクマさんです。
彼女はクマノフの元に駆け寄ってきました。
「今日はお仕事早かったの?」
「クマ」
クマノフは短く答えました。
「あ、そうだ。これから夕ご飯作るんだけど、クマンも一緒にどう?今日はお父さんも早く帰ってくるから一緒にね」
「クマ?」
「うん、じゃあ決まり。行こ行こ♪」
クマノフの返答を勝手に都合の良い方に受け取るクマーニャでした。
彼女はクマノフの手を取ると、クマノフのアパートの隣にある立派な家に連れて行きました。その表情はとても楽しそうです。
クマーニャがクマノフと会う時は、いつでもこんな楽しそうな表情でした。
「今日は日本風サーモンの納豆煮込みだから。楽しみにしててね」
クマーニャはエプロンを付け、キッチンに立ちました。
クマーニャの住む家の中。この家はモスクワの一般の家庭に比べればリッチな建物です。
このキッチンやリビングも綺麗でした。
クマノフはキッチンに隣接したリビングでソファーに座ったまま、キッチンのクマーニャに声をかけました。
「それっておいしいクマ?食べたことが無いクマ」
「うん、あたしも知らない。今日初めて作るし、食べたこともないから」
クマーニャの声はとても楽しそうです。
「どこでそんな料理知ったクマ?」
「インターネットの掲示板〜」
「また掲示板クマ?この前も同じ事を言ってたクマ」
「あ、あの時はえっと……」
クマーニャは上を見上げるように、ちょっと考え込みました。
……そして、
「甘口抹茶小倉スパゲティと甘口イチゴスパゲティ。おいしかったでしょ?」
「……クマ」
クマノフは、『舌触りや見た目がミミズのようで気持ち悪かった』という言葉を口に出せませんでした。
「ただいま〜」
玄関の開く音と、声が聞こえてきました。
「あ、お父さんが帰ってきたよ」
リビングに中年のクマさんがやってきました。
スーツ姿のエリート商社マンのような雰囲気のクマさんです。
母親を幼くしてなくしたクマーニャは、このお父さんと一緒に二人で暮らしているのです。
「おじゃましてるクマ」
「ああ、こんにちはクマノフくん。来てたのかい」
クマーニャのお父さんは、クマノフを見て笑顔で声をかけました。
「クマクマ」
「いやー、今日は私一人がクマーニャの殺人料理の犠牲者にならなくてすむね」
「お父さん!そんなヒドイこと言わないでよ」
「……クマ〜」
「どうだい仕事のほうは?」
「そこそこクマ」
「お父さん、クマンは仕事の話は好きじゃないんだから」
横からクマーニャが口を挟みました。
「あ、そうだった。すまないすまない」
翌日。
クマノフはともう一人、組織の運転手の乗る車は、町はずれの道路で路肩に停止していました。
郊外の一本道、道の両側には野原だけが広がっています。
「ターゲットはもうすぐやってくるはずだ」
バックミラーを見ながら呟く運転手。
ちょうどその時、一台の車が走り去っていきました。
「あの車だ」
ぶぉぉぉぉぉぉん。
ちょっとオンボロなロシア車が走り出しました。
ロシア者はオンボロが多いと真実を言ってはいけません。
「ターゲットの左側を追い抜く。その時に撃ち込め」
「分かったクマ」
クマノフは後部座席の右側に座っています。
窓をあけた後、ホルスターから銀色に輝く拳銃を取りだし、スライドを引きました。
クマノフたちが乗る車はスピードを上げていきました。
ターゲットの車までの距離が縮まっていきます。
その車に乗っているのは一人だけ。ターゲット自身が運転しているようです。
あと5m……
4m……
3m……
2m……
1m……
二台の車が横一列に並びました。
クマノフが見たターゲットの横顔。
それは……
クマーニャのお父さんです。
相手もクマノフに気づきました。
「クマノフくん!?」
クマーニャのお父さんはクマノフを見て驚きました。
自分に拳銃を向けているクマノフに。
一瞬、トリガーを引く指の力が緩みました。
しかしそれは一瞬だけ。
ほんの僅かなためらいの後、クマノフはトリガーを引ききりました。
ズドンッ☆バリンッ☆
ターゲットの車のガラスが割れました。
狙い違わず、弾はクマーニャのお父さんの頭部を直撃したのです。
彼の車はコントロールを失いました。
そして、道路を外れ、土手の下へと落ちていき……
どかーーーーーーーーーん☆
大爆発を起こしました。
まるで昔の刑事ドラマのように。
「さすがだなクマノフ」
バックミラーに映る大爆発を身ながら、運転手はクールに言いました。
クマノフは何も答えません。
何も言えませんでした……
その日の夜。
暗い部屋の中。
電気もつけていない部屋の中。
アパートの部屋。クマノフの部屋です。
クマノフは一人、ただ何をするでもなく……
その手には銀色の拳銃。今日の昼、クマーニャのお父さんを撃ち殺した拳銃。
「私は……私は何をしてしまったクマ……」
電気をつけていないのは隣の家のクマーニャがやってきたとしても、自分がいないと思わせれるため。
決して電気代の節約ではありません。
もしクマーニャがやってきたとしても、今は絶対に顔をあわせたくなかったのです。
カーテンの隙間から見える夜空。
周囲にも高いビルが建ち並ぶモスクワ市内。
「……クマ……」
ぴんぽ〜ん☆
ふと、玄関の呼び鈴がなりました。
ぴんぽ〜ん☆
すこし間を置き、もう一度なる呼び鈴。
ガンガンガン。
ドアを叩く音。
「クマン……いる?」
クマーニャの声。玄関の扉の向こう側、彼女はいるのでしょう。
一瞬、『いないクマ』と返事をしようとしたクマノフでしたが、すぐにその言葉を飲み込み、沈黙を保ちました。
「……クマン……クマン……いないの?」
玄関の外の悲痛なクマーニャの声。
その声は涙声に変わっていきました。
その日からクマノフの仕事はうまくいかなくなりました。
暗殺任務ではターゲットを撃っては外し、追跡任務では道に迷い……
原因はクマノフ本人の心にあるのでしょう。
このまえの一件、そしてクマーニャのことが気にかかり……どうしても仕事に集中できませんでした。
ある日、クマーニャはボスのハローシイ大佐に呼び出されました。
「ここの所、失敗が続いているな。同志クマノフ」
「……クマ」
「3回連続の失敗……キミらしくない」
「……クマ……」
クマノフはしばしの沈黙の後。
ここ数日、思っていたことを口にしました。
「……大佐……もう私にはこの仕事は出来ないクマ……」
強い決意の後、やっと口に出した言葉。
沈黙が訪れました。
ひと時の間、ハローシイ大佐は考えると……
「よかろう。意志の無い者に任務は遂行できない。だが組織を抜ける以上、君を国内に留まらせておくわけにはいかない。分かってくれたまえ」
「……クマ」
「今日中にモスクワを出たまえ。明日以降ロシア国内で君を見かけることがあれば……消させてもらう」
「……クマ」
打倒な処置だと、クマノフは思いました。
この国の裏側、組織の内情、さまざまな事を知っているクマノフです。
クマノフを国内に留まらせなかったハローシイ大佐の決断、これ大佐や組織のためではなく、クマノフの身の安全を第一に思いやっての事なのだと、そうクマノフは思いました。
もしこの組織を抜けたクマノフがいつまでもモスクワやロシアに留まっているようであれば、いずれその技能や経験、知識を求める物によって、クマノフ自身が危険にさらされることは容易に予想できます。
空が赤く染まっています。
西の山々に太陽が沈みかけていました。
たくさんのお墓が長い影を作っています。
モスクワの町はずれ、少し小高い丘の上にある墓地。
他に誰もいないこの墓地で、クマーニャは一人立ちつくしていました。
涙を流すでもなく、ただクマーニャのお父さんのお墓の前に。
その背中に近づいてくる姿がありました。
クマノフです。
もう一週間ぶりでしょうか。クマーニャのお父さんが亡くなってから、二人は一度も会っていないのです。
「……クマーニャ……」
クマーニャの背後から、クマノフは静かに声をかけました。
「すまなかったクマ。仕事が忙しくて今日まで会えなかったクマ」
少し遅れてクマーニャがクマノフに向き直り、地面を向いたまま口を開きました。
「……クマン……」
震えた声。
「あたし、これからどうすれば……」
クマーニャが顔を上げました。
その目から涙から涙が溢れます。
「私も驚いているクマ……こんなことになるとは思わなかったクマ」
「昨日、政府の人が来たの、家に……」
「なぜクマ?」
「この国は財政難だから……お父さんの財産は全部国に提出するようにって……」
クマノフは返答に困りました……
しかしこのような事は、財政難のこの国では珍しい事ではありませんでした。
「テレビにもソファーにも、家の壁にも……トイレットペーパーにも……『さしおさえ』っていう紙を貼っていったの……」
「……それは、全部差し出さないと行けないクマ?」
「……うん、そう言ってた……差し出さないとシベリア送りだって……」
クマノフの心には罪悪感。
大好きな人をこんな目にあわせたのは、他ならない自分自身。
自分と一緒にクマーニャを外国に連れ出すべきか……
もちろんクマノフはそうしたいのです。
しかしそれはクマノフの望み。一方的な。
自分の都合で、クマーニャにもモスクワを、ロシアを捨てさせるのです。
今のクマーニャは、それでもいいと言うかもしれません。しかしその先、どういう未来が二人を待ち受けるのでしょうか。
安いアパートに住み、電気代も払えず電気を止められるかもしれません。
それだけでなく、ガスも、はたまた水道まで止められてしまうかもしれません。料金未払いによって。
そんな未来があるとすれば……クマノフはクマーニャを連れて行く気にはなれませんでした。
それに、もしこの先いつまでも一緒にいるような事があれば、クマノフは一生、嘘を突き通して生きていかなければなりません。
どうしても知られてはいけない真実。
それでもクマノフは声を振り絞りました。
「クマーニャ……私と一緒に……」
「……私と一緒に……」
あと一言がなかなか言えません。
どうしても……どうしも口に出せない言葉。
それでもクマノフは勇気を出して……言いました。
「ボリショイサーカスを見に行こうクマ」
やはり言えませんでした。
『外国に行こう』という言葉が……どうしても……どうしても……
モスクワのはずれに、ボリショイサーカスのテントがありました。
大きな、大きなサーカス用のテントです。
そのテントの中にはたくさんの人がいて、とても賑わっていました。
「見て見て!クマさんが玉乗りしてるよ!賢いねっ!」
サーカスを見ながら、クマーニャはまるで子供のように喜んでいました。
『私たちもクマだクマ』と言いたかったクマノフですが、口には出しませんでした。
そんなことはどうでも良かったのです。
今のクマーニャの笑顔。クマーニャが一時的とはいえ元気になってくれただけで、クマノフはとても嬉しく、同時に悲しかったのです。
クマーニャの嬉しそうな横顔。
彼女は知らないのです、今日が二人でいられる最後の日だと言うことを。
明日の早朝、クマノフがモスクワを発つことを。
クマーニャは、きっと明日も明後日も、来年も10年後も100年後も……サバニポが不人気のため連載中止になったその後も……永遠に二人、一緒にいられると思っているのでしょう。
クマノフの心にも罪の意識が現れ、消しようがありませんでした。
今まで、バスの料金をごまかしても、道にガムを吐いても、デパートのトイレからトイレットペーパーを丸ごとかっぱらってきても、罪の意識を感じたことをないクマノフの心にも……今回ばかりは違ったのです。
明日からクマーニャはどうなるのか。
クマノフの家に電話をするのでしょうか。誰も受け取らない電話を。
それともアパートの部屋を尋ねて来るのでしょうか。呼び鈴を押しても誰も出てこない部屋を。
その末に、彼女はどう思うのでしょうか。
それでもクマノフにはその道しか無いのです。
最後の最後まで突き通さなければならない嘘。
『お前の親父は間接的に人殺しをしてたクマ。だから私は彼を殺したクマ』
そんなことは、口が裂けても言えないのです。
もし、世界で誰か一人、本当のクマノフを分かってくれる人がいるなら、それは彼女しかいなかったでしょう。
けれど、真実は言えません。
時として、真実は嘘よりも残酷です。
「あ、ピエロピエロ〜」
ステージに赤い髪で黄色い服のピエロが上がりました。
「ふゃーーーーーーーーっひゃっひゃっひゃ!ドナレドマジック!ドナレドマジック!」
ピエロは、ステージ上の物や動物を次々とハンバーガーに変えていきます。
「見て見て!すごいよ!次々とハンバーガーになってく!どんな仕組みなんだろうね!」
クマーニャはクマノフの顔を見ることもせず、夢中にステージを見ています。
その声はとても楽しそうです。
これほどまでの楽しそうな彼女の様子を見るのは、クマノフにとっても初めての経験でした。
サーカスのテントを出たとき。
夜のモスクワの町並みに、白い雪が降っていました。
季節外れの春の雪。
おそらく今年最後の雪になることでしょう。
手を繋いで家に向かうクマノフとクマーニャ。
これが最後に見るモスクワの雪。
長いこと見続けたモスクワの町並みもこれが最後で。
街角でウォッカをあおる酔っぱらいも見納め。
街角でコサックダンスの練習にふけるストリートダンサーたちも。
たくさんの子供を連れて家路につくマトリョーシカも。
全ての風景が最後。
今までさんざん見てきた、とても普通のモスクワの風景。
別れの時になって初めて分かる、モスクワの良さ。
それでも一番別れたくないのは、今、一番近くにいる人。
手を繋ぎ自分の隣を歩く人。
クマーニャの家の前に、二人は帰ってきました。
「クマン、じゃあまた明日ね」
「……クマ」
「あ、ちょっと待ってて」
クマーニャは家の中に駆けていきました。
1分ほどして、クマーニャは一つの袋を持って出てきました。
「これ……パパが昔日本で買ってきたの。東方工房っていう有名な職人さんが作ったんだって」
差し出された箱を、クマノフは受け取りました。
「中、見てみて」
「クマ」
クマノフが箱を開けると、箱はスポンジが内張りされていて、中には拳銃とパイプのような筒状の物が入っていました。
パイプのような筒状の物体はサイレンサーのようです。おそらくこの拳銃に対して脱着ができるのでしょう。
クマノフは、それがおもちゃの銃と一目で気づきました。しかしクマーニャがそう思っているかどうかはわかりません。
「それ、あげるね。あたしが持っててもしかたないから」
「……ありがとうクマ。大事に使うクマ」
「うん。そうして」
「今日はもう帰るクマ。おやすみクマ」
クマノフは踵を返し、クマーニャに背を向けました。
「……クマン!」
その背中に、クマーニャが飛びつきました。
「……明日、明日も会える?」
「……クマ。もちろんクマ……」
白い雪の降る中
二人は抱き合ったまま、長いキスを交わしていました。
長い、長いキスを……
3時間ぐらい。
コンコン。
扉を叩く音。
コンコン。
遠くから聞こえてくるその音は、次第に大きくなってきました。
「クマノフ様、雨が上がったわよ」
エリーの声。
クマノフは上体を起こしました。
深くシートを倒した座席から。
クマノフは自分の車の運転席で仮眠を取っていたのです。
昼食時間の上、雨で試合の進行が一時的に中断になったためです。
クマノフが外を見ると、車の外にはエリーの姿。
その後ろの風景は先ほどの雨が嘘のように晴れ渡っていました。
ただ雨が振り出す前との違いは、地面のあちこちに大きな水溜りができていること。
「通り雨だったみたい」
エリーが笑顔でいいました。
「道路で人を刺したりするクマ?」
「それは通り魔よ。クマノフ様」
エリーが苦笑いで訂正します。
「次はあたしたちの試合だから、早く準備しないと」
「そうだったクマ」
−−−もしかするとさらに続くかもしれない−−−
あまりにあきれたのでメッセージを送ってみる。