サバゲニッポン昔話


第25話:黒い奴ら、再び


「バンパクッ」
 パラララララララララ☆
 バンパクが前方に向けて射撃を開始しました。
「前方30メートルに2人や〜!」
 バンパクの斜め前方10mの位置でチンドンが叫びました。

「了解カニー!」
 ドーラクが低い姿勢を保ったまま……もともと背は低いのですが……前進していきます。



 トラ吉たちのチーム、『食い倒れ』の二回戦。
 相手は全員がネコのチーム。『ねこまっしぐら』です。



 さささっ。

 フィールド右サイドにトラ吉がいました。
 ブッシュの隙間ごしにフィールド中央の戦いの様子を探っています。

「一人は見えたで。チンドンがまとめて場所を言ったってことは敵二人の距離は離れてへんな、二人とも固まっているんか」

 すすすすす。

 トラ吉は静かに前進していきます。



 パラララララララララ☆
 フィールド中央でドーラクが敵に撃ち込みました。
「にゃっ!」
 攻撃を受けた白猫が、フィールド右サイドへと逃げていきます。
 ガサササッ。
 ばすんっ☆
「ヒットにゃ〜!」
 トラ吉が白猫を倒しました。
 倒すやいなや、トラ吉は再びブッシュへと潜ります。

「もう一人、この先にいるはずや」
 ブッシュの隙間から前方を見ています。しかし、それよりも頼りにしているのは耳。

 バラララララララララララララララ☆
 カカカカカカカカ☆
 バンパクの攻撃が木に命中している音が聞こえます。
「これだけたくさん木にあたってるってことは、太い木の影や」
 バンパクのほうに目をやります。
 そしてバンパクがどこに撃っているかを見て、その視線の先にある太い木を探し当てました。
「あの陰やな」

 トラ吉は静かに前進していきました。



 カカカカカカカカカカン☆
 白黒のブチ猫の隠れている木に弾が当たっています。

「これだけ太い木だから安心にゃ〜。もっと弾をムダに使うにゃ〜」

 バララララララララララ☆カカカカカカカカカカン☆
 ばんっ☆
「にゃっ!?撃たれたにゃ!ヒットにゃっ!」
 ブチ猫が左側に目をやると帽子を被った虎。SPAS12を構えています。

 バンパクの射撃も終わり、フィールドが静まりました。

 トラ吉はフィールドのさらに奧の方を向きます。

 その時。

「ネコ川!ネコ林!必殺技にゃ!」
 森の奧から叫び声が聞こえてきました。

 ……どどどどどどどどど……
 何かが近づいてきます。走ってきています。

 トラ吉の前に黒い猫が現れました。
「キャットストリームアターーーーーーーーーーーーーーーーーック!!!」
 バララララララララララ☆
 黒猫はM16A1を連射しながら走り込んできます。

「なんやっ!?特攻かいな!?」

 ばすんっ☆

 トラ吉の攻撃が黒猫を捕らえました。

「ヒットにゃ!」

 しかし、これで終わりません。その後ろにもさらに猫がいたのです。そしてさらに、その猫が分裂したように見えました。

「二人!?いや、ちゃう、三人おったんか!?」

 敵は3人、縦に並んで走り込んできたのです。正面から見ると一人に見えるという奇襲技です。
 今トラ吉は一人倒しましたが、さらに二人が残っています。

 バララララララララララ☆

 敵二人は左右に分かれ、トラ吉を左右から囲む形で走り込んできます。
 XM177E2とM4A1の攻撃がトラ吉を襲いました。

「な、なんなんやっ!?」

 一人だと思って油断したトラ吉は、近くにバリケードをキープしていませんでした。
 とっさに近くのブッシュに転がり込みますが、そのブッシュは本当に下草だけ。バリケードとして役立つものとは思えません。
 黒猫二人はトラ吉に弾を浴びせながら走り去っていきます。トラ吉にヒットしなかったのは幸運と言えるでしょう。

「めちゃヤバかったわ……」
 トラ吉が顔を上げると。
 なんと、走り去ったばかりの黒猫二人がターンしてこちらに向かってくるではありませんか。

「なんて行動が読めへん奴らやっ!」

 トラ吉は横っ飛びで転がりながらコッキングを行いました。
 一瞬前までトラ吉がいた場所を、敵の弾が通過していきます。
 
 転がりおわったトラ吉は、後ろに飛び退きました。
 そして空中で敵に狙いを定めます。

 ばんっ☆

 走りながら攻撃してくる黒猫の一人に向けて発砲しました。

 敵の移動先を計算して撃ったつもりですが、黒猫にはあたりません。弾は黒猫のわずかに後方を流れていきました。

「なんで止まってくれへんのや!」

 着地と同時に、トラ吉はSPASを投げ捨てながら近くの木の影へと隠れました。

「銃を手放したにゃ!今がチャンスにゃ!」
「にゃ!」

 バラララララララララ☆
 黒猫二人は撃ちながらトラ吉が隠れた木に向けて駆け込みました。

 二人がトラ吉を倒せることを確信したその瞬間。木の横にトラ吉の顔が現れました。

 ガガガガガガガガガガガガ☆

「ヒットにゃ!」
「ヒットにゃぁっ!」

 黒猫二人がまとめてアウトになりました。



「あかん、ちとヤバかったわ……」

 トラ吉はM93Rをホルスターに戻すと、SPAS12を拾いました。



 ピーーーーーーーーーーーーーーーー。

 トラ吉たち『くいだおれ』は『ねこまっしぐら』に勝利し、3ポイントを得ました。



 その頃、別フィールドでは、クマノフたちの二回戦が始まろうとしていました。

「次のゲームは、『共産主義』対『ドナレドマジック』ですが……」

 そこには審判以外のプレイヤーは6人しか来ていませんでした。
 二つのチームを合わせて6人です。
 クマノフたち5人と、敵は一人だけ。
 敵チームとしているのは、赤いアフロヘアーと白い顔、そして黄色い服のピエロが一人だけ。

「敵チームのメンバーが少ないクマ」

「ドナレドマジックさんの残りのメンバーはどうしたんですか?」
 審判が相手チームのピエロに尋ねました。

「……くくくっ……」

 ピエロは、静かに笑いだしました。

「ふゃーーーーーーっひゃっひゃっひゃっ!仲間などいらない!いらない!いらないんだよっ!」

 ピエロは甲高い大きな声で叫ぶように話し出しました。

「そうだよっ!私は一人さ!それでいいのさっ!ふゃーーーーーーーーっひゃっひゃっひゃっ!!!」
 ピエロは狂ったように叫んでいます。

「ふゃーーーーーーーーーーーーーーーーっひゃっひゃっひゃっ!!!!!!!」

 澄み渡った青空に、ドナレドの笑い声が響き渡りました。

 たった一人でゲームに挑むこの道化師。
 果たして彼の実力は……






−−−もしかするとさらに続くかもしれない−−−

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