『人狼』版プロテクト・ギア
2002/04/27


 これは2000/12/21のオカノ通信「『人狼』DVD発売記念!」(削除)で3回に渡って掲載した物を、ドールコンテンツ独立に伴い修正した物です。
 写真などは同じです。


 えー、コレは一見簡単そうでありながら、その実は製作に数ヶ月もかかってしまった…という一品です。
 アニメ映画『人狼』に登場する「特殊強化服(プロテクト・ギア)」です。


 あ、その前に「なんでわざわざ『人狼版』と書くのか?」を知らない人のために説明しておきます。

 「プロテクト・ギア」は押井守の作品でたびたび登場しており、拡大するゲリラ勢力に対する強行鎮圧部隊「首都警・特機隊」が使用する甲冑のようなものです。

(「首都警」とは、自治警察・警視庁に必要以上の武力を与えるわけには行かず、かといって自衛隊にそのような“微妙な役割”をやらせるわけにもいかない…と言った政治的思惑の中で作られた組織で、首都圏にのみ活動を認められた警察組織です。その重火器による武装などを考えると“警察”というよりも“警察軍”という側面が大きいですが。)

 この強化服はこれまでに
・『紅い眼鏡』(実写映画 これが初出)
・『ケルベロス』(実写映画)
・『犬狼伝説』(コミック)
・『人狼』(アニメ映画・これは押井は脚本のみ)
 の4作品に登場。
 上記3作品ではアニメデザイナーの出渕裕氏がデザインを行い、それぞれの作品でデザインが異なります。(『紅い眼鏡』と『犬狼伝説』のものはほぼ同じ形で「92式」という名称になっています。)
 『人狼』だけは、監督でもありキャラクターデザインも手がけた沖浦氏によるデザインです。
 これらの作品。現在では「同じ世界・同時代の物語のシリーズ」ってことに(一応)なってますが、初出の『紅い眼鏡』は公開時に「199X年」というように近未来が設定され、強化服も「簡易パワードスーツ」としての機能があることになっていました。(『ケルベロス』でも同様)
 が、コミックの『犬狼伝説』では「架空の第二次大戦後の日本」(「日本が敗戦国であることは変わりないが、戦勝国及び、占領軍による統治は大きく異なっているようだ。)という「昔」が舞台となり、同時代設定の『人狼』ではパワーアシスト機能の設定は無くなり、モデルグラフィックス誌の連載で押井氏が書いていた解説から引用すれば「着用者の屈強な筋力によって支えられている“甲冑”」ということになっているようです。
(重そうだなあ…。オレじゃ着れそうにないな。)

 というように主立った物でも4バージョン。さらに作品によっては劇中に「簡易軽装版」や「自衛隊仕様」なんかも出てくるので「人狼版」と表記しているわけです。


 フル可動『人狼版プロテクト・ギア(強化服)』!!

 ベースにしたのは、海洋堂が映画公開時に「限定500個」で販売した『人狼版プロテクト・ギア』のソフビフィギュア(\7800-)です。
 このフィギュア、元々は映画スタッフのための「作画参考用」に作られたモデルで、そのプロポーションや細かさはかなりなもの。
 もちろん、このキットをそのまま作れば、造形もシャープでナイスな固定ポーズモデルとして製作できたわけですが、ここはあえて(つーか、よせばいいのに)これのフル可動化にチャレンジしました。





※MG42(機関銃)は、キットの物ではなくドラゴンモデルのドイツ兵人形に入っていた物を使用。
 弾帯はイエローサブマリンが発売している「MG34」用の物を流用。


※肩にはマイクロドライプリンタで作った、劇中同様「K・F」(伏一貴)のプレート。
 首左右に伸びている茶色のメッシュチューブは、実は「靴ヒモ」です。(^^)



 いかんせん「限定500個」のキットで、現在ではプレミアついている代物です。(某中古ショップで店員が、やはり「このキットを探している」というお客さんと話しているのを聞いたことあるんですが「手に入ったとしても数万円になると思う」だとか。ひょえー。)
 もう手に入りませんから、失敗は許されず、製作にはいるまでにはかなり慎重でした。

 で、製作をスタートしたんですが、大まかな製作法としては以下。

●使用するボディは12インチの兵隊人形。
●その際に「SWAT装備」の人形を選んで購入し、黒服もゲット。
●「素材とする」フィギュアから、装甲の部分だけを切り出してボディに着せる。
●腕と足に関しては「手袋」「ブーツ」部分も一緒に切り出して、兵隊人形にそのまま被せて固定しちゃう。

 一番シンプルな方法(だと思っていた)に落ち着きました。

 さらに、今回の製作に関して「オレの中」で決めていた“コンセプト”はこんなものです。

★装甲部分はキットから切り出したパーツを使用する。
★後に、メディコムなどから同様の商品が発売された場合でも、それよりも「レベルが高い」と考えられる完成度のモノにする。(02年追記:ホントに出やがった。ただ通販限定品だったのですでに入手不可能。)
★色は“原則的には”塗らない。
★ポーズ変えなどに耐えられるよう、それなりの強度を確保する。
★極力、完成後も「着脱が可能」なモノにする。


 このコンセプトに乗っ取って製作をスタート!
 ボディはタカラが出していた「エリートフォース」シリーズの「SWAT人形」にしました。
 別の言い方すると「SWATの黒服を着ていたからコレにした」わけです。

 で、装甲の切り出し。
 この時に「塗装はしない」ことに決定。
 なんでかというと、このキットは「ソフトビニール製」。
 で、ソフビ(塩化ビニール)って、ソフビ用塗料を使っても塗装後に表面がベトつくことが多いんです。(目には見えないけど、塩化ビニールから染み出る溶剤成分のせい)
 このベトつきが起きると大変!
 ホコリとか全部くっついちゃって、もう取れません。
 この現象、ホントーに厄介なんだ。(過去に作ったフィギュアで何度泣いたことか…)
 で、塗装しなけりゃこの現象も起きないし、元のキットが黒色整形されているから、このままでいいやと。

 ただ、頭部だけは色塗りをしたかったりしたこともあってレジンで複製。

※複製された頭部。

 レジンのムクになった頭部の首のところにリューターで穴を開けて首に固定してあります。



 さてさて。一通り工作も終わり「あとは着せるだけだ!!」と思われたんですが、ここからが大変でした。

 まず足。
 ブーツ部分も含めてキットからパーツを切り出し、明らかに入らないと思われる「足首」を人形から外してそこにハメこもうとしましたが…
 全然はいりゃしねえ…(-_-;;)
 結局、ブーツ&装甲のソフビパーツの「内径」が小さく、ボディの「スネ」が太いことが原因なので、まずはスネを削ることをチャレンジ。
 しっかし、いくら削ってもダメ。入らない。

※ これは当初、素体の足を切り飛ばしてムリヤリはめる…などを試みましたが、後に素体そのものを「ボークス製のNEO-GUY」に変更したときに全く変えてしまったので、初期掲載時の製作文章は省略します。


 腕のパーツ(装甲したのかバー部分)は、東急ハンズで買ってきた安いハギレの薄い革で製作。
 これを「手芸用のフックで留められる」ようにして、腕回りに巻き付けます。
 この上から、切り出した装甲部分をマジックテープで取り付けました。


※腕カバー。赤丸のところは自作した革カバーを留めるために縫いつけた金属フック。


※外すとこんな感じ。
 実際は革カバー部分と装甲部分も外せるようにしてあります。


 なんとかできましたが、でも、手首部分の素肌が見えてしまっていたり、このパーツが全体の中で一番「オリジナルキットのラインを崩しちゃっている」部分ですね。
 かなり気になっています。まだ改良が必要。
 多分そのうちに作り直します。
 下に着ている黒服の「袖口の部分がかなり分厚い」っても原因なんですよ。あれがもう少し薄けりゃなあ…
 しかし…この腕の製作だけで、5日以上かかってしまった…(-_-;;)


 次は腹部装甲だ!

 ここはこのようにしました。


 赤い線のところでカットし、ムリヤリ腹を入れています。
 このさいに…

 内側の切れ目をまたいでいる部分をマジックテープで橋渡しして、装着時に切れ目が広がらないようにしてあります。
 この部分に切れ目を入れても、腹部の■装甲に隠れてしまうので、装着時には外からは見えません。


 そして胸部装甲。
 これは脇の下に切れ目を入れて、グイッと前後に広げてから、頭からスポッと被せるようにしました。
 これは結果的に色を塗らなかったことを正解だと思いました。たぶん色を塗っていたら「グイッ」と広げたときに肩部分の塗料がヒビ割れます。
 ただ、下の服も黒いのでほとんど目立たないんですが、ボディの胸板がかなり厚かったので、切れ目がかなり広がっちゃっているんだよね…


※脇の下。胸部と背後のアーマーの間にかなりの隙間が…


 胸の上部から首の両側に伸びているチューブは「メッシュチューブ」のようなものを想定したんですが、直径5mmのメッシュチューブなんかどこにもなく…
 悩みつつハンズで素材探しをしていて…あ!これだ!と見つけたのは「靴ヒモ」。
 うん、イイ感じ。ちょっと毛羽立っているけど。


 次は胸部装甲と肩アーマーの接合。
 これは、後々ボディを違う物に変更したときに幅変更が出来るように、肩の内側にマジックテープをつけ、それで付けてあります。
 これだけだと実はかなり「外れやすい」んだけど、ボディに着せたときに、ボディと肩装甲に挟まれるので外れにくくなります。


※肩と肩アーマーの接合部。
 赤い部分の内側にマジックテープが仕込まれている。


 腰のベルトと腰装甲もマジックテープで留めてあります。(あ、ベルトは上記腕カバーを製作したときに余った革で製作しました)


※腰アーマー。ちょっとわかりづらいが、ベルトにはマジックテープで付けられている。


 手甲はオリジナルパーツを型取りし、レジン複製した物を整形して「塩ビ用両面テープ」というもので貼り付けてあります。


※この手首も、後に素体そのものをボークスのNEO-GUYに変更したときに変えました。

 …と、このように作ってきたわけですが、いくつかの部分は実は設定画とは変更してあります。
 というのも、作っていて感じたんですが、この『人狼版 強化服』って「コレが実際にあった」と考えた場合に、かなり「合理性に欠ける部分」が多いんですな。
 合理性って言うか「意味不明」な部分が多すぎる。

 例えば、設定では左の腰装甲にはベルトで「マガジンパウチ」が下がっています。(マガジンってのは銃の弾倉のこと。マガジンパウチってのは、これらのマガジンをひとまとめに入れて腰などに下げておくためのホルダーです)
 しかしこのマガジンパウチ、一体「何の銃のマガジン」が入っているのか? がさっぱりわからない。(設定画を見たけど、やっぱわからない)
 劇中に登場する首都警の主装備は「ドイツ軍」の物ですし、他のシーンでMP40やMP44といったドイツのマシンガンやライフルが出てきているのを考えると(あと大きさから考えても)「これらの銃のマガジンパウチ」であると考えるのが妥当なんですが、だけど主装備であるMG42を装備しているときはMP40もMP44も携行していませんから、持ってもいない銃のマガジンだけ腰に付けていても意味がない。

 んで、こう言うことを考えていたので、この装備時にはマガジンパウチは付けていません。(1/6のMP40やMP44も持っているので、これらを持たせた時の物として製作はしてありますが)




※MP44携行時の、同ライフルのマガジンパウチ装備状態。


 主装備であるMG42は、ちょうどコレを作っているときに「MG42を持ったドイツ兵」の人形がドラゴンモデルから発売されたので、ちょうどドラゴンの人形が1つ欲しかったことも手伝い買ってしまいました。(^^;;)
(ドラゴンのMG42は、02年4月現在では単品で売っています。
 1/100のガンプラ、特にジオン系MSに持たせてもカッコイイので、ガンプラユーザーにも売れています。)

 ベルト弾帯はイエローサブマリンから発売されているMG34用の物を使用。(ドラゴンの物より塗装が良かったので。)

 右腰の特機隊のサイドアームであるモーゼル(マウザー)ピストルは、これまた偶然、コレを作っている時にイエローサブマリンから出来のいい1/6が発売されたのでそれを買ってきて使っています。(…と、サラッと書いちゃいましたが、これらの銃器類を揃えるだけで数千円かかります。 T▽T)


※設定とは大幅に変更した腰のモーゼル。
 かなりゴツイ。もちろんホルスターから銃本体が取り出せる。
 ホルスター前部に付いているドライバーのような物は「バレル内の整備用具」。

 設定では普通のホルスターに入っていますが、この製品には普通のホルスターが付属してやがらなかったので、製品そのままの「ウッドストックホルスター」を取り付けてあります。(木の部分に銃が入っていて、さらにこの部分を銃床に付けるとストックになる…というもの。実銃通りの装着が可能)
 ま、コミック版で特機隊員がウッドストック付きモーゼルを使うシーンがあったから、装備されていてもおかしくないだろうってコトで。(^^)


 んで、複製した頭を塗装し、完成!!
 終わった〜!!
 むー、かなりデカイなあ…
 普通の人形と比べてみると…


※普通の27cmドールとの大きさ比較。

 身長はそれほど変わらないですが、肩幅が大きく異なりますね。
 あとやっぱ、胸板のボリュームが桁違いなので、すごく大きく感じられます。



※全装備、このように着脱が可能。
 本当はもうちょっと細かくパーツごとにバラすことができるようになっていますが、めんどくさいので。(^^)


 あ、「塗装はしない」がコンセプトの一つでしたが、部分的に肩アーマーの下のパーツだけはソフビ用カラーを使って色を塗りました。が、「茶」で塗ったはずが、やけに赤いんですよねえ…(-_-;;)
 他は(ヘッド以外は)予定通り未塗装。




 ででででで……これを作ってからしばらくしてですね、ボークスから「NEO-GUY」という12インチ兵隊サイズの素体が発売になりまして。
 ちょっと可動範囲も広く気に入った素体だったので、このプロテクト・ギアも、中の素体をそれに移行。それに合わせて若干の修正をしてみました。




 見た目は以前の物と全然変わっていませんが、素体を変えたんで文字通り中身はまるで別物です。
 前回「赤っぽく」なってしまった肩装甲も「こげ茶」に塗り直しました。
 この素体変更によって一番変わった点の1つが「肩が若干前後スイングするようになったので、作中同様MG42(機関銃)の両手持ちが可能になった」こと。



 わかりづらいかもしれないけど、左手はちゃんと銃のパイポッドを握っています。
 前の素体では肩の可動範囲が狭すぎて出来なかったんですよ。
 手は、NEO-GUY用の「グローブをはめた状態」の手パーツにソフビ用塗料で色を塗り、手甲パーツを貼り付けてあります。

 で、もう1点が、ついでに足周りも大幅に変更したので接地性・安定性が桁違いに向上したこと。
 前回製作時は、元のキットの「ブーツ部分」を切り取って、そこに素体の足を突っ込んで処理していたんですが、コレがなかなかどうして問題が多く…
 で、コレを今回は、ドイツ軍の制服を買ってきて、それに入っていたロングブーツに「足の装甲パーツを切り出して貼り付ける」という方法に変えてみました。



 これだと素体の「足首の可動」も生きているんで接地性が格段に向上します。
 実際この写真も、絨毯という安定の悪い場所に立たせてあるんですが、支え無しで自立してます。
 プロポーションが崩れてしまうかなあ? と不安だったんですが、それほど崩れてませんね。

 んで、頭部の取り付け方法も、素体そのもののジョイント部分形状をいじることなく中に2mmの真鍮棒を通して固定・取り外しが簡単に出来るようにしたんで、この素体専用の頭部も付けられます。



 おお!なんかカッコイイぞ、これ!(^^)

 全体的に可動範囲が広がったんで、前作の可動範囲を仮に「100」とすると「140」くらいにはなっています。

 困った点としては、どうやらこの素体、ウェスト周りがちょっと太いようで、「胴部分の装甲」の装着位置がちょっと下になってしまったんですな。
 これは今後の改修課題ですな。


【了】


※これを後に改修した完成型がこちらです。



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