『R.O.D -THE TV-』打ち切り
2004/03/13


 BBSでも書いたフジテレビ深夜枠で放送のアニメ『R.O.D -THE TV-』の打ち切りですが。
 ちょっと今回、僕の中でまだ漠然としているし、釈然としないまま書いている部分も多々あります。

 知らない人のためにかいつまんで説明を書いておくと、フジテレビでの『R.O.D -THE TV-』が20話で打ち切りに。んで、「スカパー フジ721で全26話放送」ということが突然発表されたわけです。
 あー、大前提を書いておくとフジ地上波での放送も「全26話」という発表で始まっています。


ちなみに
『R.O.D -THE TV-』公式サイト
http://www.sonymusic.co.jp/Animation/ROD/

 これがいかに「突然の発表」…というか、僕的には「発表」というスタイルにすらなり得ていないやり方なのだけど…寝耳に水だったのかというと、当たり前だけどこのようなことは全く告知されていなかったわけで。
 大荒れになったようで公式サイトのBBSは急遽閉じてます。

 んで、上記の公式サイトでは3月13日現在、「終了通知」が発表されています。

 読んでいただくとわかりますが理由も何も書いてないですな。
 一方的に「終わります」。
 ちなみにCSフジ721は月700円の有料チャンネルです。

 んで、これに対して様々な騒動が起き始めている理由というのはあるんですが、『R.O.D -THE TV-』のファンにしてみれば「ふざけんな!」。
 んで、『R.O.D -THE TV-』だけではなくもう少し視野を広げたときに、これと同じコト(地上波は途中で終了。残りはフジ721で…の形式)は昨年の『ガドガード』でも起きているために「“また”かよ!!」みたいな怒りも出ているわけです。

 で、僕も楽しんで見ていた作品だったので感情的な部分は多々あるんですけど、「なんで終わりだ、ゴルァッ!」とかだけ書いても意味がないので、もう少し別の角度でも考えてみます。
 コレって結構大きな問題であると思うのですよ。
 少なくとも、テレビ屋という稼業である僕は、この件の意味している事って諸々考えさせられてしまったわけです。

 今回のやり方をあえて「問題のある放送の仕方」と言いますけど、一視聴者としても、一放送人としても『ガドガード』に続くこの放送の仕方は、明らかに視聴者をバカにしているし、疑問も禁じ得ません。


 まず、以下を書くにあたって諸々のポジションを説明しておきます。

 視聴者には「放送を見る自由」はあるわけですが「権利」は無いのね。もちろん「義務」なんかではありません。
 あ、視聴者からの視聴料金で制作運営が行われる公共放送であるNHKに関しては「権利」が発生していると言ってもいいと思います。また、WOWOWやCSの有料チャンネルに関してもコレは発生していますな。ただ、この場合の権利は「見る権利」であって「番組内容に口を出す権利」ではありません。番組に文句たれる権利を有しているのはスポンサーであるとか出資者になります。

 放送局には「番組を送り出す責任」があります。
 さらに正しく書けば「番組という物を最良の状態で視聴者に送り出すことと、そこで描写される事への責任」ですな。
 で、これは大事なことであるながら時々勘違いしている人もいるので補足しますが、視聴者への「責任」はありますが「義務」はありません。
 例えば民放放送局は放送事業者であると同時に企業ですから、彼らが持ち得ている義務は、株主とクライアントに対して発生するわけです。
 で、株主やクライアントの利益を発生させるために、「テレビ局は、見る番組の自由選択権を持っている視聴者に対して、番組を見てもらわなければならない」わけです。


 力関係においてどちらが上か? は微妙に難しいところですが、視聴者は番組への権利は無いのだけど「見る番組を選べる」というパワーカードを持っています。
 また「送り手は見てもらわなければならない」という条件がある以上、見る側が「見てやっている」と考えて間違いはないでしょう。
 映画『男はつらいよ』に「テキ屋殺すにゃ刃物はいらぬ。雨の3日も降ればいい」というセリフがありますが、これと似たような物で「テレビ屋を殺すには番組を見なけりゃいい」わけです。
 テレビ屋の逆ギレが「もう見せてやらない!」ではなく「もう見てもらわなくて結構!」なのもこのためですな。(笑)


 んで、この視聴者と放送局の両者間では「ドラマなどのシリーズ物なら、それを最後まで放送する」だとかそういう「暗黙の了解」があり、それがあるからこそ見る側は「月9のドラマを見よう」とかの選択肢をとるわけであって、その結果テレビ局(民放)には「視聴率や、そこから裏付けされる広告収益」が発生しちょるわけです。番組単位では「予算」にも影響しますな。
 簡単に書けば、「見る人が多く人気のある月曜9時の時間帯でCMを流すには○○円の料金が必要」だとか、それゆえにその営業収益が予算にも反映される…と。
(これはドラマなどに限ったことではなく他の番組も同様。ニュース番組だって予算はあります。)

 しかしこの「暗黙の了解」はあくまで「暗黙」である以上明文化された物ではないし、放送法が定めた物でもありません。
 見る側にしてみれば「シリーズドラマなのだから、最後までやるのは当たり前」だと信用している(というより「疑っていない」)ことから生まれている関係性です。
 そもそもはじめから「全11話なんだけど、8話までしか放送しません」だったら見ないですわね。
 送り手にしても、打ち切りなどのシビアなことが発生しない限り、シリーズ物であれば「最後までやりたい」というのが、物を作ることを職業として選んだ人間なら多くが思うところだし、責任です。
 ある意味「性善説」みたいな漠然とした関係性ですな。


 んで、ここまで書けばすでにおわかりかと思いますが、昨年の『ガドガード』と今回の『R.O.D -THE TV-』の放送中断って、こういった「“信用”という漠然とした物の中で築かれていた視聴者と放送側の関係性」を根本から壊しているわけです。
 「壊している」じゃないな。
 「だってそんなの決めた約束じゃないだろ?」と、「無視した」に近い。
 まあ、地上波という視聴者に対して義務が発生していない無料放送だからこそ出来る暴挙です。(で、この裏返しとして「作品を見たければ金を払う」という有料チャンネルが存在し得るのだけど。)


 騒いでいる多くの人にとってとにかく釈然としていないのは、この明確ではなかった信用がナゼ壊れたのか? つまり「なんで終わるの?!」に対して全く理由が明らかになっていない部分につきるんですが、これが全く明らかになっていないゆえに、以下は推測で書くしかない部分もあることを了解していただきたいんですけど。


 今回のようなことが起きた理由は様々考えられるのですが、「制作が間に合わなくなった」に関しては、CSペイパービューでの先行放送などが行われていることを考えればあり得ないので、今回は除外します。

 現状考えられる理由としては
・フジテレビの都合
・制作をしており、かつあの時間枠のスポンサーであるアニプレックスの都合
 の2つになります。

 んで、いかなる理由なのかがわからないんですけど、「可能性もある」としたように現状でこの理由が全く説明もなく、一方的に「今後は、スカイパーフェクTV!フジテレビ721におきまして、全26話の一挙放送も予定しておりますのでそちらの方もよろしくお願いいたします。」というのは、前述した「放送する側の責任」ってのを放棄しているのも同然。これも放棄じゃないな。「無視」に近い。
(でまあ、何の説明もないにもかかわらず一方的にこう言ってのける厚顔さにファンは怒りまくっているわけですが。)

 「・フジテレビの都合」である場合、「フジ721への契約者を誘導したい」という理由が考えられる中ではおそらく最大でしょう。
 ただ、これは「もはや論外」としか言いようがないのだけど、このやり方がOKなら「月9ドラマを8話まで放送して打ち切り。残りはCSやDVDで…」とかいくらでもOKになる。
 でもそれはやはり前述した「視聴者と放送側の関係性」を壊している。
 簡単に書くと「信用を無くすやりかた」以外何者でもないって事です。
 加えて書けば、この「地上波はお試し版。本商品はCS」の場合に気に入らないのは「本商品の方が画質が悪くなるってのはどういうコトだ?」ってのもありますな。
 いや、実際にCS環境になったときに僕が一番驚いたのはCSの画質の悪さだったんだけど。(BSレベルだと思っていたので。)

 編成サイドの問題である場合、あらかじめ全26話がわかっていながらこういうコトになるのはもはやこれまた論外。
(このケースにおいても昨年『テクノライズ』が製作途中の変更不可能地点でいきなり放送回数が削られたためにエピソードが飛ぶ…という珍事があったわけですが。ただこれはプロ野球シーズンの「放送時間のズレなどで枠が変更になる」場合などは発生しやすいですが、『R.O.D』が流されている現在はそのシーズンでもないので…)


 「・制作をしており、かつあの時間枠のスポンサーであるアニプレックスの都合」の場合、それが例えば商業的な理由であるならそれを言えばいい。

 「途中まで無料放送して放送は終了。あとはCSやDVDで有料。始めに告知しちゃったら見ない人もいるんで、「次も見たい!」と思わせるためにタイミングが大事です。」

 …とか、『日経キャラクターズ』かなんかで自慢しいしい語ってくれりゃいい。
 でも、言えない…やったことに対して責任背負う気もないなら「はじめからやるんじゃねえよ」とか思うわけです。

 もしかしたら、深夜枠をスポンサードすることが難しくなった別の理由があるからなのかもしれないわけだしね。

(あ、誤解を生じるといけないので補足しておきますが、アニプレックスのサイトを見る限り、同じような経緯をたどった『ガドガード』に同社は関係していないし、また『ガドガード』の諸々クレジットを見てもアニプレックスの名前は入っていません。
 ゆえに、両件共通の放送媒体であったフジテレビが怪しい…か、『ガド』『R.O.D』でそれぞれのソフトメーカーが同じコトをやった…かになるわけですが。)


 でもこれらが結局わからんのね。

 また、「だけどあれは番販枠で放送されたアニメだから、仕方ない…」という意見も見かけるんですが、これも微妙に問題があります。
 「番販枠」というのは(少し前の日経キャラクターズなどでも詳しく書かれていますが)、スポンサーが時間枠を買い取って放送している放送枠のことで、深夜帯アニメなどは基本的にスポンサーであるソフト会社が放送枠を買って放送している、このケースが多いです。
 が、補足をしておくと、実際に番販枠での番組制作をしたことがありますが、枠は買っていても納品時の局のチェックなどはあるわけです。
 アニメファンの人にも昨年の「『ガドガード』、納品間に合わず放送できなかった事件」を思い返してもらえばわかりやすいと思いますが。アレも納品後の番組内容チェックをする時間がないために起きたわけです。
 決定的な違いをものすごく大雑把に書くと、通常のスポンサー料だけで番組を制作して放送する場合は、このチェックで「つまらない内容」だった場合には直しの要求が入ったりするわけですけど、枠を買った場合にはそれがつまらない内容でも「買った側の自由」ですから、放送局的に問題のない(公序良俗に反する物が入っていない・放送法に反しない・局のガイドラインに抵触しない)中身であればそのまま放送できます。
 このように、この場合でも「時間帯を買ったからといって何をやってもイイ」というわけではななく、放送のルールやマナーや自主規制は放送局の物が適用されます。
 街中の広告スペースの使用権を買っても、公序良俗に反するものは貼れないのと同じですな。
 番販の場合でも「テレビ放送する」場合には前述のポジショニングで書いた「視聴者への責任」というものは存在しているわけで、この部分でも激しくグレーゾーンギリギリ。
 「権利はスポンサーにあるんだから、見る側は泣き寝入りするのが当然」的な意見に、僕が釈然としないのはこのためです。
 グレーはグレーであって白でも黒でもないから。
 ただ、そのグレーは何故にグレーなのか? というと、この「放送する側の責任」ってのがこれまた漠然とした概念に近く、「誰が、誰に、どの範囲で」のことまでなのか? が明確ではないためなんだけど。



 んで、こういう諸々や可能性を踏まえた上でも、今回の『R.O.D -THE TV-』を巡る現状で、視聴者・放送事業者・スポンサーの権利やら責任ってのの曖昧なままでの変動ってのがものすごく気になったし、疑問がものすごくあるわけです。
 それは『R.O.D -THE TV-』だけのことではなくて。

 で、その曖昧なままでの送り手のスタンスってのに「放送人として腹が立っている」んだけど、それは何か? というと、

「視聴者に番組を“見せてやっている”」

 というリリースサイドのスタンスがアリアリだということ。
 責任を無視してまでそのスタンスを築き上げている。
 それは局サイドも、枠を買っているスポンサーも含めて。
 だからここまで見る側を舐めきったマネが出来てしまう。
 前述したように視聴者が持っているポジションのカードが「放送を見る自由」である以上、番組なんてのは「見てもらう」ものであって「見せてやっている」ものじゃないんですよ。
 枠の買い取りだろうが局製作だろうが何だろうが、そんなこと見る側には関係ないわけです。

 さらに、どこまでその“覚悟”があってやったことかわからないけど、コレって後発にとっても非常に困ったことで、少なくともオレ的にはすでに
「今後フジ深夜アニメは、どうせまた最後までやらないんだから見るだけ時間の無駄」
 ジャッジを前提の選択肢をすることになるわけです。
 僕だけじゃないよな。こう思ってるのは。『ガドガード』に続いて2回目だもの。
 フジ深夜枠アニメは4月期からの新番組というのは告知されていませんが、例えば他のスポンサーがあの枠でアニメをやろうとしても、ハナから放送形態を信用されていない部分でスタートを切ることになる。
 前述のように「枠の買い取りだろうが何だろうが、そんなこと見る側には関係ない」ですから。
 そんな枠に今後どんな価値があるのか? と。
 「信用を無くす」ってのはそういうことだと思うんですけどね。
 局が考えたことなら自滅に近い。
 ソフト会社が考えたことなら、言い方悪いけど「時間帯枠の信用を荒らすだけ荒らしてやり逃げた」というか、そんな感じ。

 いや、本気でその方法論がアリで、見る側に“許してもらえる”と思ってるなら、『白い巨塔』でも是非やってもらいたいものです。


 とかなんとか、諸々感じてしまった事件ですよ。

 実はさらにここから「もしかしてテレビを巡る概念が壊れてきてるんじゃないか?」とも考えてしまったんだけど、考えがまとまらないなあ…


【了】



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