食玩という「パンドラの箱」
第1回

text : 岡野勇

2003/09/12


■はじめに

 以下は8月に当サイトBBSで岡田斗司夫さんをはじめとして幾人かの方を交えて行われた「食玩を巡る数々の書き込み」の中で、僕がBBSおよびBBS用のおまけページに書いた長文をベースに加筆修正した物です。


 元々BBS用のおまけページというのは、長くなりすぎてしまってBBSだけでは書ききれないことなどをフォローしているだけの物で、基本的に保存などは考えていなかったんですが、この食玩テキストは幾人かの方からの要望とかがあったりしたこともあり、今回再掲載することにしました。

 まあ、ブームが進んできた中で、たまたまココに流れ着いた人とかが「ちょっとこういうことを考えるキッカケ」にでもなってくれればと。


 でも、ただ再掲載しただけでは「なんでそのような話が出たのか」とかわかりませんし、BBSで書いたその他のこともフォローしていません。
 さらに、まだ書き切れていなかったことなんかも結構あったりしたので、この気に「BBSで書かれた情報」も含めてリライトをしました。


 実は僕のこの「食玩」を巡る諸々の考え(主に「受け手側の問題」)というのは、アップが完全に中断してしまっていた「ガチャポンおまけテキスト」の“結論”とでもいうべき部分が多々含まれていて、そもそもあのテキストを書き始めた最大の理由も同じような動機からだったりします。

 なので、「完全に独立した物」で読んで頂いても結構ですし、「ガチャポンおまけテキスト」の続きとして読んで頂いても。


 ただ、「ガチャポンおまけテキスト」で書かれている「価格」などについての記述はまだ完全に勉強が足りていない状態で書いたものだったり、またアレを書き始めてから現在までの間にかなり考え方や評価が僕の中で変化しているので、そのへんは踏まえていただけると。
(つまり知識が増えていけば以下への考え方はさらに変わる可能性もあるわけですが、「今現時点で」ということで。)


 ちなみに、スゲー長いです。(^^;;
 すんませんね。
 短くまとめる能力に先天的欠陥があるのかもしれん…




■ここで取り上げる食玩。

 さすがに今更「まずそもそも食玩とは…」とかはいらんですね。
 (と、書きつつも先日友人から「そんなに売れているのか? 俺は売っているのを見たことがない」と、オマエはコンビニに行ったときにどの棚しか見ていないのか? と疑問を持つ発言があったので不安だが… ^^;;)

 違和感を持つ人もいるかもしれませんが、以下のテキストではいわゆる普通の食玩の他に「ガチャポン」と「500円くらいで売られているブラインド形式のフィギュア」も、基本的に同じラインの物として扱います。
 後述しますが、これらは全てその「本質」と「ブームの中での出処」が同じなので。

 これらの中で「お菓子を入れることによって、コンビニという一大マーケットで売ることも可能にした物」が食玩ですな。
 「玩菓」とも言いますが、このテキストでは「食玩」と表記します。


 商品ジャンルとしては多様化していますが、商品コンセプトの基本ターゲットは2つに分けられます。

 1つは一般層。
 「お茶犬」とかああいうものをはじめ、『仮面ライダー』『ウルトラマン』『ナージャ』などの「子供狙いの商品」もこっちですね。

 もう1つはマニア層。
 『仮面ライダー』などでもちょっと凝った内容の物や、買う人が限定される「格闘ゲーム系の物」、戦車や『うる星やつら』とか『攻殻機動隊』とか、新しい物では『王立科学博物館』とか。

 個人的な趣味でどうしてもオタ系狙いのマニア向けアイテム(商品)ばかりに目が行きがちですが、オタ系の人だけではなく、市場調査の会社が行った調査ではマスコットの入った食玩・ガチャは女子中高生にも広く売れています。
 1週間から3ヶ月単位で携帯電話やカバンのマスコットを付け替える彼女たちにとって200円前後で手に入るマスコットはリーズナブル…というのが理由だそうです。




■そもそもは…

 7月の『リカヴィネ』発売。そして8月の『王立科学博物館』発売に合わせて、「アソートやクオリティの“受け止め方”」などについて、前々から思っていた(ガチャポンおまけテキストで書いたような)「?」が大きくなってきたことがキッカケでした。

 具体的に書くと、発売と同時に「世紀のロリフィギュア出現!!」としてアッという間に完売した海洋堂の『リカヴィネ』(原型・大嶋優木 定価300円)は、

●ボックスアソートが数種類(確認されているだけで4種以上)
●さらに、ボックスによっては「全5種類しかないのに、12個入りワンボックス買って1コンプしかしない」

 というアソートでした。

 僕的には「現段階でのガチャフィギュアの最高峰」という評価をしている『ちょびっツ2』の大嶋原型作品だったので、迷うことなくバラでドカ買い(合計18個)したんですが、でも「できれば『ちょびっツ2』のボックス版のような、1ボックスで2コンプ(もちろんクリアーとか無し)」して欲しかったと。

 さらに時同じくして、最近いくつか出たブラインドボックスフィギュアや食玩の新製品に、「アソートの仕方がとにかく納得できない」ものが多数あったことも原因でした。

 しかし、僕が一番気になっていたのは「アソート」についてネットなどで購買者がさらしている「アイテムのボックス内配置」情報でした。


 書くことにした“動機”は別の所にあり、それについては後述しますが、この2点が主なキッカケであったわけです。




★☆本テキストまでの補足テキスト☆★
■アソートとはなんぞや?


 アソートとは、ボックス状態の「中に入っているアイテムの混入数・混入率」です。
 そのアイテムの「ボックス内での場所」を配置と言います。
 メーカーや製品によってこれは異なります。

 「フルコンプしたい」と考えている人にとって、アソート情報というのは求めるところです。
 1ボックス買ってフルコンプするなら多少ダブりやハズレが入っても「はじめからボックス買い」という選択がありますし。

 メーカーによっては「この商品は1ボックスで全部揃います」と事前告知している商品もありますが、ほとんどはまだオープンにされていません。
 で、このようなことから「アソートを知りたい」に始まるわけですが、これがさらに「ボックス買いというリスクすら負いたくない」「特定のアイテムだけが欲しい」ヒトタチによって
 「中の配置が知りたい」
 になります。


 僕がこれを気にし始めたのは、最近ネットなどで晒されるこの「配置情報」の酷さがあります。
 アソートも配置もわかっていれば「自分が欲しい物だけ」を抜いていくことが可能です。
 これをやるヤツがあまりにも増えた。
 情報を元にして発売直後の店頭から「彩色版とか、いわゆる当たりアイテム“だけ”をキレイさっぱりゴッソリ抜いていく」バカ(色抜き房)とか転売屋。
 あーあと、あえて店名は書かないけど「入荷品から当たりと彩色版だけ抜いて高値で売り、残りはシレッと店頭売りする某ショップ」とか。
 こういった情報が晒されてバカが買いに走るのは2日目くらいから。
 まだ店頭に「開けたばかりの状態のボックスがある時」なので、「商品回転率が高く、頻繁にボックスが開けられて置かれる」2日目からその週の週末までってのは、バラ買いは凄くリスキー。



 春にリリースされたコトブキヤの箱物フィギュア『うたわれるもの』は、フィギュアの出来自体は良かったのですが

・アソートの非彩色版の割合がかなり高い。
・彩色版と非彩色版の見分け方が簡単。
・ボックス内配置が完全に均一。(どのボックスでも同じ)

 ある意味「抜き買いをさせる要素」すべてが揃っているという配慮のなさで、これへの対策を何らこうじずに販売したために、発売2日目以降は秋葉原など量販店密集地帯では「どの店で買っても店頭バラ売り分は非彩色版がやたらと出る…あるいはそれしか出ない」惨状でした。

 また、同時期に出たYUJINの『リーフコレクション4』も「一番の人気アイテムが、あまりにも重量が違うのでバカでもわかる」「ボックス内配置がどれも同じ」だったため、店頭バラ売り分からはアッという間に抜かれました。
 メガハウスの『攻殻機動隊』も配置情報が晒されて以降「とにかく素子とフチコマが出ない」「メタルカラー版ばかり出る」物に。

 昨年発売されたスプリングの『月姫』も半ば強引にアイテムを増やし(たとしか思えない)、ボックス種を増やしたために「3種のボックスの内、1つにしか入っていないアイテム」があったため、他のボックスを買った人がそのボックスから抜き買いするという事態を招きました。


 さらにこういう事態はこの商品だけでなく他でも似たようなことがあり、正直ここ1年ほどの「一部購買者による抜き買い」のされ方は目に余る状態になってきているのが現状です。

 で、こういうことから「どうにかならないものなの?」とずっと思っていたんですが。

 「抜き被害」はネットとかの報告などから僕が受けた印象なので、明確な数値ではないのが情けないところですが、「大手ショップが集中している場所に対して比例している」と思われます。
 つまり東京なら秋葉原・池袋など。
 大阪なら日本橋で買っている人はよく「抜かれてた!」報告しています。
 その他地方でも、そういう商品を扱っているちょっと大きな店がある「地方都市」レベルなら似たことは起きているようです。
 あまりにも田舎は、そもそも「マニアックな商品でウチの町にこねえ!」という、それ以前の問題なので…
 (あるいは「抜く」も何も「抜く人=その町でその商品買う人」の絶対数だったり。 ^^;;)

 つまり大手都市部の問題のようです。
 また、都市部だと「配置情報を得てからすぐに買いに行ける」とか、最近は転売に使えるレンタルケースがあるところが多かったりするのでこういう抜き買いが発生しやすいようです。


 んじゃ、こういった問題を生み出している「アソート」「ボックス内配置」はどのようにして決定され行われているのか?
 どういう意味があるものなのか? は、ここ1年ほどずっと興味があったんですが、なかなかオープンになっていない情報なのでわからずじまいでした。

 いや、もしかすると、雑誌などがそれを取材すればオープンになるのかもしれないけど、これだけフィギュアや食玩を扱っているメディアが増えているにもかかわらず、少なくともこのことを書いているものが僕には目にとまりませんでした。

 よく、箱物を買っている人の間で(箱詰めは)「海洋堂がやっている」「タカラがやっている」「バンダイがやっている」という意見がさも“事実”のように語られることが多いんですが、結局それらも言っている人の勝手な推測がほとんどだったりするわけで、疑問はつのるばかり。


 これについて、岡田さんが以下のように情報を書き込んでくださったので、転載いたします。


>今回、自分の企画で、この「アソート、どうするよ?」という問題に関していくつか知ることになったので、ここに書きます。
>まず、アソートという作業は、実は印刷屋さんがやってるみたいです。
>大日本や凸版印刷など、パッケージを印刷してる会社が、パッケージ内にフィギュアや解説書やお菓子を入れる。
>この作業をアッセンブルといいますが、これはパッケージの印刷から一貫して印刷屋さんの仕事なんですね。で、原則的にはアソートの確率表みたいのをメーカーやら販売元が協議して、印刷屋さんに連絡する。
>すると、印刷屋さんは「箱詰め屋さん」に外注します。
>この箱詰め屋さんがBOXにアソートするんですが、会社によってやりかたはマチマチ。
>ボックス内の配置まできっちり決める場合もあるし、確率1/n、5/n、2/nとかなってる場合は、まずフィギュアをn個集めて麻雀パイのようにシャッフルして箱詰めしてしまう、という場合もあるそうです。
>前者の場合はパターンが同じになってしまうし、後者の場合はnの数が多ければ、一つのBOXに同じモノが入る可能性も出てきてしまう。
>ただ、たしかに入れるのはこのアソートというのは、あらゆるスケジュールの遅れを一手に受けて、もっとも被害が出やすいパートである可能性が高い、ということ。
>もう一つ、フィギュアがパッケージングされてしまえば、箱詰め屋さんですら中に何が入ってるのかわからない。たいへんクオリティコントロールが難しいパートだ、と言えるでしょう。


 また、アソートへの考え方についても…

>アソート率を変えるのは、メーカーによってさまざまな事情があります。
>純粋にマニア狙いで、カートン買いをさせようともくろんでるメーカーもあるし、
>着色や金型の都合で、とんでもなく原価が高くなってしまったフィギュアは、アソート率を低くする場合もある。
(中略)
>同じメーカーによっても担当者で考え方も違えば、アソートやシークレットのとらえ方も様々。

 というように、様々な理由があったりするわけです。
 中でも「原価の調整」というのは後々にもキーワードになってくるので、以後を読むに当たって憶えておいてください。



【了】

>>第2回につづく


もどる