『ガンダム・センチネル』という「トラウマ」
その2

text : 岡野勇

2002/11/30


★登場するモビルスーツについて。

 物語的には既存のMS(その頃のGM2とかハイザックとか)だけで展開しちゃっても良かったんですが、それだと華がないこともあり、物語中に登場するMSはこの連載のオリジナルが多数…というかほとんどです。

 時代の戦闘の中心はあくまでグリプス戦役とハマーン率いるネオ・ジオンとの戦いにあるため、連邦も主戦力はそちらに回している…という設定。
 (こういう設定にすることで、企画オリジナルのMSを登場させることにしたわけですね。)
 そのためα任務部隊は、コンペティションで正式採用されなかった機体(Sガンダム)、開発途中の実験機(FAZZ)、先行ロールアウトしたテスト機(Z plus)、「GMなどに比べると高価ゆえに大量採用はされていない量産機」(ネロ)という「ありものMSだけで編成された部隊」ということに。

■Sガンダム
 いわゆる「主役メカ」。
 ZZ計画の中、アナハイム内部の「ZZとは違うライン」で作られた機体であり、扱いの複雑さなどからコンペで落とされた機体です。
 開発時のコードネームは「ι(イオタ)ガンダム」。
 ムーバブルフレーム技術を徹底的に追求&規格化したことで、作戦に応じてさまざまな兵装・形態として運用することが可能。
 基本形態であるS。
 増加装甲にIフィールドバリアーなども装備し、大型ジェネレーター装備したEx−S。
 ちなみにEx−Sは、本来Sが「Gクルーザーモード」と呼ばれる高速巡航形態になったものがあり、このモードでのSを「強引にMS形態にした物」というニュアンスが強いです。
 増加装甲もプロペラントタンクも「MS形態ありき」ではなく「Gクルーザーモードありき」なわけですな。
 推力がノーマルSとは比較にならないほど高いため、プロペラントを付けたGクルーザーでは単独での大気圏脱出すら可能です。

 そして両足をブースターに換装した高速航行攻撃用のブースター形態とか。
 固定装備では有線インコムは付いているわ、思考型AI「ALICE」を積んでいるわ、大型ビームカノンを持ってるわ…
 また、ZZ計画の中で作られた…という設定のため、ZZ同様飛行形態に変形及び、3機の飛行形態機に分離可能。
 3機に分けるのは、物語中では「作戦によって、接近戦よりもコアブースターのような物が多く必要な場合」とかに運用されます。
 また、「上半身(Aパーツ)と下半身(Bパーツ)があり、それらを胴部のコアブロックが中心となって成立させている。」
 「そのコアブロック(Gコア)が、機体そのもののシステム上の中心でもある。」
 という点が「ガンダム」という機体の基本理念であるとし、この部分を突き詰めた設定がされています。

 ムーバブルフレーム技術の突き詰め方、設計の取り入れ方はある意味「先進的」というレベルを超えており、同時代はもちろん、後のMSでもここまでに「ムーバブルフレーム」というものを合理的に導入した機体はほぼありません。
 ブースター部もフレーム接続とし、このため簡単な換装作業でこのブースターユニットを脚部に持ってくることが可能であったり、フレームに関しては同じ設計思想が使われているZプラスにも転用することが可能。
 ケースバイケースで戦闘機形態のGコアにも装着することができ、その場合は「簡易戦闘艇」とすることができたり。

 たしかに装備・性能は最強ですが、扱いと複雑さはZZの比じゃありません。
 それを補うために導入されたのが思考型AI「ALICE」です。
 Sガンダムのシステムの中心であるこのコンピュータは、「最終的には無人でのMS戦闘すら可能にする」ことも目的に作られており、使いこなせれば機体・システム共に「その時代のMSでは最強の機体」です。

 機体単独での大気圏突入能力は持っていませんが、システムの中心であるGコアは、このALICEの生還・回収をも目的としていることもあり、「Gコアのみ、大気圏再突入能力」があります。

 ちなみに設定上は「3機が作られた」ことになっており、α任務部隊に回されたのはそのうちの1機です。


■FAZZ (ファッツ)
 
時々コレをTVの『ZZ』に登場した「フルアーマーZZ」と同じだと思っている人がいるんだけど、全く別の機体。
 まあ、『センチネル』などモデラー以外は知らない人がほとんどだろうから、TVの『ZZ』しか見たことがない人にしてみれば当然なんですが。
 どうやら現在では『ZZ』の劇中に登場したフルアーマーは「フルアーマーZZ」。『センチネル』のは「FAZZ」と表記が分けられているようです。
 FAZZは正確には「アナハイムがZZのフルアーマー化に際してのデータを取るために(余っていたZZのパーツで)組み上げた実験機」です。
 作品中ではα任務部隊のペガサスIIIには3機が配備されています。
 ZZとの差異点は以下。

●アーマーが固定式で着脱不可能。(あくまでアーマー装着時のデータを取るためだけ…の機体なので)
●基本フレームはZZと同じ物だけど、合体変形機構はすべて排除されている。(なのでパイロットは1名。)
●同様に、ZZの諸々装備もかなりオミット。
  額のメガキャノンはダミーで発射不可能。
  頭部バルカンもオミットで使用不可能。


 まあ、エンジンとかは同じなので、ZZの超廉価版…って感じですか。
(なので物語中でFAZZ隊は「Sに続く二番手」的な劣等感を持っている…って描写があったり。)

■Z plus (ゼータプラス)
 
元々は『センチネル』の数年前にMG誌が『Z』の別冊製作に際して作ったオリジナル設定のMS。
 ある意味この時点で「センチネルにおけるMS設定の基本(「MSという兵器の扱い・解釈」)」みたいなものは生まれつつあったわけで、そう解釈したときに「S以上に別の『センチネル』を象徴しているMS」だとも言えます。

 設定上は「カラバが作ったZの量産型」。(エゥーゴじゃないのよ)
 大気圏内用として作られたこれが高性能だったので少し量産され、さらにはエゥーゴによって宇宙用に改造したC1型も作られた…と。
 大気圏再突入も可能だけど、細かいセッティングが必要。(このへんが量産機)
 ウェーブライダー形態は、大気圏内用のA1型では「高速飛行」に。宇宙用のC1型では「ブースターの方向性を一律にすることによって高速航行が可能になる」という意味合いのモード。
 高速で敵陣に突っ込んでいって一撃離脱…という用途で、Sのブースター形態も同様のコンセプトです。(なのでこの場合、接近戦用の装備ってのは意味を持たないのだな。)
 『センチネル』物語中では、ペガサスIIIに2機が配備されています。

 ちなみに『Z』別冊表紙の1/20バストアップモデルを製作したのは、『センチネル』の総指揮をとることになるあさのまさひこ。設定はまだ「かときすなお」のペンネームを使って同人活動をしていたカトキハジメ氏でした。

 HJ誌(やストリームベースなど)の「ガンプラ造形」がどちらかというと「陸戦兵器としての解釈」「戦車的文法の導入」がされていたのに対し、『センチネル』ではZ plusを代表とするように「航空機的解釈・アレンジ」がされている物が多いです。

■ネロ
 
いわゆるGM系のMSで、「GMがガンダムの廉価版」と考えるならば、細かい部分から考えるに「Sの廉価型」と言う感じですか。
 これもムーバブルフレーム設計がかなり進んだ作りにはなっているので数多くのオプション兵装に対応していたり、いくつかのバリエーション機が存在します。

 反面「かなり進んだ作り」のために、廉価型の量産機としては高額な機体となってしまっており、大量配備には至っていません。

 考えてみたらネロだけはいまだ立体商品化されて無いなあ。


 んで、対するニューディサイズの主装備はゼク・アイン
 ザク型というかティターンズが使っていたハイザックの発展型。
 カラーリングはティターンズらしくブルー。
 この機体もムーバブルフレームを機能的に取り入れた設計をしているため、作戦に応じた兵装バリエーションが豊富。
 オプションで月面降下なども可能。

 余談だけど、「ジオン残党狩り組織」であるティターンズがハイザックとかさ、ジオンデザインラインのMSを使っている事自体、オレはいまだに納得いってないんだよね。
 ただ『センチネル』では主人公サイドがガンダムなんで、対する側として意図的に「ザク型」にしちゃっているんですけど。

 その他にも物語後半にはゼク・ツヴァイ。(アインの後継機ですがのっぴきならないくらいデカイ。)
 ガンダムMk−V(ファイブ)。(これは説明がメンドいけど、TVに登場した「ドーベンウルフ」って、はじめの雑誌発表では「ガンダムMk5」だったんですよ。だけどその設定が流れてしまったので、『センチネル』ではこれをリデザイン。頭部がガンダムタイプになった物として登場。もちろんカラーはブルー。)
 あと、TVだと時代的文脈を全く考えていないむちゃくちゃなデザインになってしまい、いまだにプラモ化すらされない「バーザム」を「ガンダムMk2ありきの量産機」としてリデザイン。(もっともこの解釈は近藤和久のマンガなどにも登場しましたが。)
 ボディやランドセルの一部がMk2の物が使われていて納得のいく物になっています。
(とか感慨ふけっていたら、『Ex−S』の次にリリースされたGFF『ガンダムMk2』はこのバーザムとのコンパチ仕様になった。もう感涙。)


 …と長くなりましたが、こういう中に「Sガンダム」および「Ex−S」は登場。  これらのMSのデザインのほとんどを担当したのがカトキハジメ氏であり、「MSデザイナーとしてのカトキハジメ」はここから輩出されたわけですな。(一部MSは『ZZ』にも参加していた明貴美加氏が担当。)


 でも、連載当初はカトキ氏の「あからさまな人型のシルエットをあえてハズしたデザイン」に賛否あったことも事実。
 受け入れられない人もいたり。
 反面、その「工業的なデザインライン」にそれまでのキャラクター物には感じられなかった新しい「リアルっぽさ」の魅力を感じた人も多かったわけです。
(しかしそのためアニメでの「大河原邦男氏によるデザイン」のようなハッタリをかましたケレン味が少ないのも事実だったり。
 また、「アニメで動かすのではなく、あくまで模型として立体化すること」がベースであるデザインであることも事実。)



★模型誌企画としての『センチネル』と、読者への挑戦。

 『センチネル』という企画がナゼ立ち上がって、なぜMG誌に載ることになったのか?
 バンダイの扱いはどうだったのか?
 …など、「連載以前」のことについては後述しますが、とにかく連載がスタートした『センチネル』は「模型誌における企画」というコトを前面に押し出した作り方をしました。
 その頃…というかそれまでの模型雑誌におけるガンプラをはじめとしたいわゆる「キャラクター物」の見せ方というのは、例えば「○○のキットは、頭部を2mm幅ツメして、肩をハの字型にして…」とか、読者に対して「こうすればコレが作れますよ」という提示をしていたんですね。

 しかし『センチネル』では、もちろん模型誌の情報として「作例記事」ちゅーのは載ってはいるんですが、基本的に全てがフルスクラッチ。
 そういう「それまでの模型雑誌におけるキャラクター物の提示の仕方」というものとは一線を画すものとなりました。

 それを表していたのが、『センチネル』という企画が模型パートにおいて導入した「ワークス体勢」。

 これは、それまでのキャラクターモデルの作例記事では、例えば「オカノ」というモデラーが1人で「ガンダム」を作る…というのが当たり前であったわけですが、『センチネル』では「頭部は○○が作るのが上手いから彼に。エッジの出し方は△△が上手いから彼に。塗装はあいつが上手いから××に…」というように、モデラーの得意分野ごとに分業化。

 しかも、そこで「総監督」であったあさのまさひこ氏が、当時MG誌のキャラクターモデル作例で活躍していた中でもハイレベルなモデラーを中心として行ったため、その結果どういうことになったのか? というと、「作例記事は載っているけど、読者がそれを読んでも絶対に作れない物」になっちゃったわけです。

 しかしこれは後にあさの氏自身が書いていたことですが、完全に確信犯。
 それまでのモデラー(というか模型雑誌の読者)の基本思想は「プラモは趣味なのだから、自分が満足できる物が作れればそれでいいじゃん」というものだったわけですが(まあ、今でもこういうヤツの方が多いがな)、そこに「雑誌に載るプロモデラーが作るんだから、アマチュアが絶対にマネのできない圧倒的なものを見せつける」という考え方もあることを提示したわけです。

 この「提示」は後に「Sガンダム」がプラモ化されたときに明確化されます。
 MG誌では「こうすれば誰にでも『センチネル』ワークスが作っているSガンにできる!」という改造作例記事を掲載。
 しかし、この作例記事がクセ者で、実際に手を動かしている人(買ってきたプラモを積んでおくんではなく、実際に作る人)はわかりましたが……「誰にでもできない」んですよ。(^^;;)
 そこで求めている技術力がハンパでなく高いわけです。
 あえて「実際に手を動かしている人」と書いているのは、「積んどく派」の人には情報や知識で「これはホントは作れません」ということは言われれば「そうなのか」とわかっても、それの何がどうしてどういう技術を求めているから出来ないのか? まではわかりっこないから、あえて区別しました。
 この「誰にでも作れる〜」という記事そのものが、逆に「手を動かさないクセに口だけはいっぱしな輩へのカウンター」であったわけです。



『センチネル』の見せた作り方と、その影響

 さらに『センチネル』が提示した大きな物はもう1つありました。
 それは「色」。
 それまでのガンプラが「オモチャぽくなるから」ということで拒否し続けていたトリコロールを「こういう彩度にすればカッコイイじゃん!」とみせちゃったんですね。
 中でも後に「センチネルブルー」と言われる「青」とか。
 Mrカラーの「コバルトブルー」がベースなんですけどね。
 「赤紫が少し入ったブルー」というかな。
 この青がカッコイイんですよ。


 で、この「行き詰まり感」の中で突然現れた「新しいガンプラの方法論」ってのは、読んでいた側に強烈なインパクトだったわけです。

 どれくらいのインパクトだったのか? を知ることは簡単です。

 最近はやっとこさ「MAX塗り」とか新しい塗り方も流行してますけど、それでもホントに最近まで、ガンプラの塗装はMG誌でもHJ誌でも『センチネル』風で表現され続けてきたわけです。
 『センチネル』の連載が終わってからすでに12年以上の歳月が経っているにも関わらず、その間、他の誰も「新しい(カッコイイ)ガンプラの作り方の方法論」を提示できずにきたわけです。
 その間は、悪い言い方をすれば「『センチネル』が見せた造形における方法論の消化を繰り返しているだけ」の状況とも言えるわけで、新製品は出るけど作例的には面白味に欠ける…そんな感じがずーっと。
 『センチネル』ワークスで作例を作っていたモデラーの多くが、『センチネル』の連載終了と同時にプロモデラーを辞めてしまったというのは、そのへんにも理由があったのかも知れませんが。


 こんな感じで、ガンプラモデラーにとって(しかもリアルタイムで連載を読んでいたヤツほど強烈に)『センチネル』は完全に「トラウマ」になってしまっていたわけですな。
 「ガンプラが好きなオレ」の中でも、この『ガンダム・センチネル』というのは確実にトラウマというか、12年以上引っかかり続けている小骨として確実にあるわけです。


 まだまだ続くぞ。(^^;;)
 以下、次回。

【つづく】

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