『ガンダム・センチネル』という「トラウマ」
その1
text : 岡野勇
2002/11/29
★GFF『Ex−Sガンダム』発売!!
バンダイが出しているGFF(GUNDAM FIX FIGURATION)というブリスターパック入りのモビルスーツオモチャシリーズで『Ex−Sガンダム』が出ました。
数ヶ月前。「出るのか!」と騒ぎはじめ、ショップで速攻予約。
発売を今か今かと待ちわびつつ(ホント。こんなに発売を楽しみにしたオモチャは久しぶりだ)、何度かBBSにも書いてきた物でしたが、今日やっとこさ入荷。 予約はしてありましたが、待ちきれなかったんで開店と同時にホビーショップに突入してゲット(しかも2個)してきた次第です。
コレ。
と、ゆーワケで、今回はコレについて少し書いてみます。
あ、なんで「オモチャ」ページの方ではなく「オカノ通信」の方に書くのか? というと、オモチャではなく『センチネル』そのものについて考えたのと、なんかネット見まわしていても『センチネル』についてオレが満足できるテキストが見つからなかったから。
メンドクサイので、はじめは他のサイトに「センチネルってのはこういうものです」ってリンク張って終わりにしようと思ったんだけど、
「センチネルの設定(主にMSについて)」
を書いているサイトは結構あるんだけど、
「センチネルってのはこういうものだった」
について書いているサイトが全然見あたらなかったので。
まず、以下は「『ガンダム・センチネル』をほとんどの人が知らない」という前提の元に書いていきます。
★『ガンダム・センチネル』とは?
「Ex−S」は「イクスェス」と読みます。
『ガンダム・センチネル』というモデルグラフィックス誌で連載されていたフォトストーリーに登場する「Sガンダム」の強化型のことです。
ちなみに「Sガンダム」の「S」は「スペリオル」の略。(って設定なんだけど、商標登録が通らなかったので、たいがいは普通に「エス」と呼ばれてます。)
そもそもはこの『センチネル』関係のMSがそういうメジャー商品の中に登場するようになったこと自体が『センチネル』をリアルタイムを読んでいた人には驚きだったりするんですが。
それがナンデカ? は後述します。
最近ではこのSガンダムもゲームの『スーパーロボット大戦』とかに出るようになり、そういう周辺情報から「『センチネル』の名前自体は耳にしたことがある」とか「モビルスーツ(以下MS)の名前と設定だけは知っている」とかいう人は結構いるんではないかと思いますけど、実際に「『ガンダム・センチネル』が何だったのか?」を知っている人ってのは意外と少ないんじゃないかと。
少ないって言うか、結局コレを知っているのってほとんどが「リアルタイムでモデルグラフィックス読んでました」な人や世代だけなんじゃないかと。
★「トラウマ」になっちゃっている世代。
現在、おそらくはアンダーでも20歳代末以上のある程度の年齢の「ガンプラ歴が最低でも14年選手」というような「ガンプラファン」(「ガンダムファン」ではなく、あくまで「ガンプラファン」)にとっては、この『センチネル』をどう受け止めていたか? ってのは、例えば今『スパロボ』であるとかオモチャであるとか、その他の情報から「知識として知っている」というレベルの人や、ガンプラそのものに興味がない人には、想像できないくらい大きな事であり、実際にそれくらいの年齢の人でないと「正しい認識」は持ってないと思います。
20歳代中盤くらいまでだと「ガンプラの中におけるセンチネル」を「知識としては知っている」ことがあっても(で、よしんば当時モデルグラフィック誌を読んでいたとしても)、あの「圧倒的な情報量」とか「意図」をその年齢で当時に「受け止めることが出来た」というコトはほとんどあり得ないわけで、「『センチネル』がトラウマにまでなっちゃっている」ことはないでしょう。
TVアニメの1作目『ガンダム』を最近になって見た人が「面白い」と思うことはあっても、当時リアルタイムで見ていた世代が受けた「ショック」ってのは、すでに「リアルロボット物」と言われるような「『ガンダム』的なスタイル」が標準化してしまった今では全く同じショックを疑似体験できるということはまずあり得ないし、おそらくは理解する事が不可能なわけで、そういう意味では(こういうこと書くと若い世代から反発買うのわかった上であえて書くけど)「正しい伝え方が出来るか?」つったらそれはムリ。
まあ、それは否定的なことではなくて「ムリで当然」なんですが。出来る方がオカシイか。
あまりにもショックが大きかったからオレらとかオレらの上の世代の多くはまだ『ガンダム』とか「ガンプラ」とか、そういうものを冷静に語れないんですよ。たぶん。
冷静じゃないから、例えばいまだに「ガンダムだけで書籍1冊書けてしまう」とか出来ちゃうんだけど。
むしろ、下の「リアルタイマーじゃなかった世代」の方が冷静に簡潔に語ったりしているのかも。(^^)
そういう意味ではこれからオレがこれから書く『センチネル』への思い入れってのも、おそらくは「冷静ではない」んだと思いますが。(おい)
★『センチネル』以前。その時期。
『ガンダム・センチネル』は模型雑誌・モデルグラフィックス誌で87年9月号から90年7月号まで連載されていました。
(1冊にまとめた別冊の発売は89年。その後は読者コーナーなどを継続の形で連載。)
この、80年代後半というのはガンプラにとってある種の「行き詰まり感」があった時期です。
それは「ガンプラ」という商品そのものについても、受け手であるモデラーにとっても。
商品そのものに関してはTVシリーズの『ZZ』も終わってしまい、新たな商品展開が無くなってしまった時期。
これはわかりやすいことなので割愛したいんですが、実はこのことが後に『センチネル』の企画展開に大きな問題となっていくので、一応ふまえておきます。
また、受け手であるモデラーにとっては、これが後の「トラウマ」を生み出して行くわけですが「ガンプラを作る方法論」というものが完全に行き詰まりを見せてしまっていたわけです。
モデラーにとっての「方法論の行き詰まり」というのは、これは実際に手を動かす(買ってきたプラモを「積んでおく」んではなく、「実際に作る」)人にとっては、誰もがどこかしら感じていた部分です。
ガンプラの「カッコイイ作り方」の方法論というのは、それまでに大きく分けて2つのムーブメントがありました。
1つ目はいわずもがなですが81年からの「ガンプラブーム」。
それまでミリタリーモデルなどが主流であったホビージャパン誌が、ガンプラを取り上げ、そこで「ストリームベース」などのモデラー集団が「どうしたらロボットをオモチャ・子供の遊ぶ物っぽくない、カッコイイ物に出来るか?」を見せていったわけですな。
例えばそれは「表面塗装が部分的に剥げている」とか、「細かいパイプが付いている」とか「戦闘機のようなマーキングがされている」とか。
数年前の『スターウォーズ』に登場するメカの塗装などからの影響なんかもあり、「兵器として実在したらどうか?」「どうしたら“らしく”見せられるか?」という表現が生み出されたわけです。
こういった作例を取り上げたHJ別冊『How to Build GUNDAM』は、その頃のガンプラ少年にとってはバイブルみたいなもんでした。
(この時に、まだ「オモチャ」の扱いであったロボットのプラモ・ガンプラをHJ誌が取り上げたことに、それまでの読者からは今の誌面からは想像もできないくらい大きな反発があったんですが、それはここではカンケー無いので割愛します。)
その次のムーブメントは、『Z』の頃すかね。
これはまあムーブメントって程でもないんですが。
小林誠とか近藤和久が、(わざと)ものすごくダサくした感じにリデザインしたMSってのを作っていって、その「ダサい感じがリアル」という流れが生まれます。
ただこれは、プロポーションはもちろん、デザインそのものを「ストレンジな物」に変えてしまうことで「リアル感」を成立させていたため、既存の「ガンプラ」を使って(改造して)どうこうできる物ではなく、正確には「ガレージキットによるリリース」が主流。そのためにスグに廃れます。
(オレはこのラインはヘドが出るほど大ッッッッッッッッッッ嫌いだったんで1つも買ってませんが。)
かと言って、ストリームベースが生み出した方法論もすでに過去の物となりつつあり、新しい「カッコイイ見せ方」ってのが完全に無くなってしまった時期がしばらく続きます。
あえて言えば、その方法論の延長線上として「さらに細かいモールドの作り込みがされている」とか、そういう方向性になっていました。
(この間に『ドラグナー』とかが「大張版」とかしょーもない方向性にその道を模索するんですが、それも関係ないので割愛。)
で、「リアル感」を求めるデザインラインとか、表現の仕方そのものは全く違うんですが、ここまでの流れの中で共通している部分が1つだけ存在しました。
それは「ガンダムを作るときにトリコロール(青・赤・黄の3色)塗装をしない」というコトです。
ナンデカ?
理由は簡単で「トリコロールにするとオモチャっぽくてカッコ悪いから」。
まあ、そもそもの『ガンダム』が劇中でトリコロールなのもオモチャ商品用のカラーリングであったため、この考え方は当時は「当然」でした。
「ガンダム表面は白なんじゃなくて銀色」とかいう解釈もありましたしね。
(で、それに対応するために「ガンプラ」に生み出された設定が、『リアルバージョン』と呼ばれる塗装版だったりするわけです。)
で、87年。
アニメでは新作もなく、ガンプラでは新商品も、新たな方法論も無くなったときに、モデルグラフィックス誌(以下MG誌))上で『ガンダム・センチネル』の連載がスタートします。
『ガンダム・センチネル』は、当時MG誌のライター編集者であったあさのまさひこ氏が総指揮の元に、同誌でガンプラ関係を手がけていたモデラー陣をフル動員。
かつてガンプラブームの中心にいたモデラー集団「ストリームベース」のメンバーで、作家の高橋昌也氏が小説パートを担当するという企画でした。
連載の基本スタイルは高橋氏の小説があり、その劇中シーンをモデルを使って見せていくという「フォトストーリー形式」。
★簡単な物語解説と、『センチネル』の「小説パート」。
『センチネル』の名称は知っていても、どういう物語かは知らないという人が多いんではないか? と思うので大雑把に書いておきます。
時代設定はTVの『Z』後期から『ZZ』前期の間。(UC,0088)
グリプス戦役の中で実質的に「組織解体」に追いやられていったティターンズの一部が武装解除を拒否。
小惑星ペズンの基地に籠城し、新組織「ニューディサイズ」として徹底抗戦を宣言。
その「ティターンズ残党」の討伐のために、連邦軍はα任務部隊を派遣。
この両者の戦いと、そこに新勢力ネオジオンが絡んでくる…というものです。
これはまあ、読めば大体の人が想像が付くことでもありますが、実際に先日高橋昌也さんにお会いする機会があったので確認したところ、やはり物語のイメージモチーフは「幕末物」だそうで、「ニューディサイズ」は時代の中で消えていく「新選組」なわけです。
(なので、当初はニューディサイズが使用するMSの肩に、階級識別用という設定で「△の白マークを入れる」というアイデアもあったそうな。カックイイ!)
ちなみに小説パートは、ムック本では「レイアウト優先」で文字級数が異常に小さく読みづらい上に大幅カットされているんで、小説単独の単行本で読むことをオススメ。
あんまり正当な評価を読んだことがないんだけど、男しか出てこない男くさい物語でオイラは大好きです。
また、歴代ガンダム作品の中でも珍しい「思考型AI」をSガンダムが搭載している…ということとか(物語中、この「ALICE」というAIが大きなキーワードになっていくんですが)、システムの設定で描かれている「視線入力」とかの細かいところも好きですね。
ただ、『センチネル』というものの全体像の中で、この「小説パート」はお世辞にもメイン要素ではなく、むしろ「企画を進めていくためのライン」というか「理由」扱いにしかなっていなかった…としか受け取れなかったのも事実で、高橋昌也氏が過去にあまり『センチネル』に対して思い入れのある発言をしていないのはそういう部分に理由があるんではないか? と思えてしまいます。(これはオレの邪推ですけどね。)
また、これについては後述しますが、『センチネル』を構成した数々の「テキスト」及び「サブテキスト」が、ほぼ全てあさのまさひこ氏によって構成・コントロールされていることによって「『センチネル』というものが成立していた」と考えるなら、高橋氏の小説パートというのは「『センチネル』の中で、唯一あさの氏以外によって成立されているテキスト」であるわけで、そういう意味でも何らかしらの「溝」の様な物はあったのかも知れません。(最もコレも100%、オレの邪推でしかないんですケド。 ^^;;)
この項、またムダに長いぞ。(^^;;)
【つづく】