男子から見た「リアル」と「デフォルメ」と
「萌え」のボーダーレス
その1

text : 岡野勇

2002/06/14


 あー。 前回・前々回と『全日本妹選手権!』について書いたんですが、最近、あちこちネット見ていたら、なんでも今、一部オタク男女の間で「『全日本妹選手権!』の是非を考える」のがちょっと流行なんですって。

 なんですって…と言いますか、流行みたいですよ。

 「どのへんで?!」と思われる方は以下を。

J-oの日記跡地
全日本妹選手権に関してもにょもにょ語るリンク集



 なんかウチも最近1日のアクセス数がちょっと多いなあ…と思っていたんですが、そういうことだったのかと気づかされた次第です。(^^;;)

 なんか「論争になっている」って勘違いされている方もいるみたいなんですが、別に論争ってワケではないですよねえ。
 各人(オレも含)がそれぞれ好き勝手に『全日本妹選手権!』について好き勝手書いているだけですから。
 人によっては「ホントにどーでもいい話題」って感じですね。
 ある意味「今の日本は平和だ!!」ということがわかります。いいことです。


 まあ、オレも『ちゆ12歳』で紹介されていたテキストを読んで興味を持ち、んで読んで、たまたまその時期に「オカノ通信」で書いちゃったわけですが、「なんかオレも流行に乗って書いちゃったみたいでイヤだなあ…」とか思ってしまった昨今です。(^^;;)

 まあ、流行に乗ることが悪いことだとは思いませんけどね。
 つか、放送作家という稼業やっていて、流行にアンテナ張らなくなったら終わりだと思ってますけど。


 とにかくまあ「是非を考える」というのが流行っているらしい中で起きている状況…というかわかってきたことがありまして、それは以前書いた「押井守」と同じようなもので、その中には「穏健派」と「強硬派」がいるようです。
(御本人達は「強硬派」と比喩されることに疑問やら異論があろうかと思いますが、「文中の区分け」としてあえてそう表記させて貰います)


 「強硬派」女子の中には、「あんな嘘臭い表現で自分たちを理解されたように思われるのは心外である!」と、「反『全日本妹選手権』」(ってほどでもないが…)を掲げた同人女性まで現れてしまって、もう何がナニヤラで、オタク男女間はどうなってしまうんだろう? と心配ただしきりです。
 このまま印パのようなことにならなければいいのですが…


 ま、「どうなったっていいよ」ってのが99%の人の意見だと思いますが。


 でで、「まさかあんなものについて2回も書くとは思わなかった」と友人に言われたり、オレ自身も思ったりしたんですが、今回はさらに3回目だったり。
 そんなにヒマなんですかね? >オレ
 他に考えることあるような気もするんですが。
 といっても『全日本妹選手権!』ではなく、主に「この状況」の中で思ったことについてなど。
 なんか、ボーっといろんなところ見ていたらつらつら考えてしまったので。


 まず以下を書くに当たって、オレのスタンスを書いておきますが、『全日本妹選手権!』(以下『妹!』)に対する評価は前回・前々回に書いたとおりです。

 あと、別にオレ「やおいに理解を示すオタ男子」を気取る気はないです。ワカランものはワカランです。
 ついでに「同人女性に媚びようとするヴァカ」でも「オタク女萌え〜」とか言っている阿呆になるつもりもないんですケド。

 あと今回、ちょっとオタク女子に対してキツい書き方になっているかも知れませんが、『妹!』しかり、比較対照にしている作品しかりが「やおい同人女子」を主人公に据えているのと、「これを書いているオレが男子である」ため、どうしてもテキストの方向がそうなってしまうので、ご容赦ください。
 別に悪意あるわけではないです。ハイ。



 んじゃ本題。

 前述したように、「反『全日本妹選手権』」というか、そこまで大げさではなくとも、とにかくあのマンガに「拒否反応を示した」オタク女性の方々がいるわけですが、彼女達の意見というのはどうやらおおむね次のことのようです。

1) 自分たちに対してあんな嘘臭い表現で理解されたように思われたり、描かれているのは心外で、誤解を招いている。
2) あんな「画に描いたような同人腐女子」は今どきいない。
3) あそこで描かれているのは「オタク女萌え〜」とか言っている男にとっての理想像でしかない。

 だいたいこんな感じですかね。


 まず1)と2)について。
 この2つは似たようなことですが、1)は「精神・心理・思考面」。2)は「行動面」と思ってください。

 でまあ「嘘臭い」もヘッタクレも、それは前回・前々回も書いたようにデフォルメというのが成されているわけであって、それに対して「嘘臭い」「自分たちの真実を描いていない。誤解を与えている」ってのはどうよ? と思うんですけどね。
 「あんな画に描いたようなのはいない!」とか言われてもね…。

 それ言い出したら、あれに描かれているオタ男子像だって「嘘臭い」ですよ。
 今どきあそこまで露骨なのなんか滅多にいませんもん。

 例えば2巻22ページで書かれている「オタ男子の問題点」。
 これなんか「リアルさ」で言ってしまったら半分くらいじゃないですか。
 「オタ男子が全員こうだと思われては困る!」とか言いたいくらいの。(だってオレ、等身大枕カバーにはまだ手ぇ出してねえぞ…)

 ついでに書けば、「その1」「その3」「その4」「その5」「その10」「その11」「その12」「その14」は女子にもあてはまる人が多いと思うんですが…。
 「自分の考えた(認めた)カップリング以外は認めない」…とかさ。


 なんかね「嘘臭い」→「だから嫌い」ってのは言っても意味がないと思うんですよ。

 別の言い方すれば、「んじゃ、あなたがたは、あなた方が同人なり商業誌で描いているモノ(舞台設定・職業…等々)に対して、本業の人から見て「ああリアルだ!」と思われるような描写をキチンとしているのか? と。そういうことにだってなってしまう。

 それは「たまたま自分たちの立場」が主人公に据えられていたから「嘘臭い部分」が見えてしまうだけであって、他の作品もそうなんじゃないですか? と。


 例えば、だいぶん昔にサイトに書いたのでご存じの方もいると思いますが、オレは一時期、あるTV局の報道局に常駐していました。
 約2年半ですか。
 イヤな想い出と共に去った2年半ですが。
 ま、そんなことはどーでもいいんですが。

 で、その経験(知っている側)で書いてしまいますが、既存の小説・TVドラマ・映画に出てくる「報道描写」って、ほぼ99%が「んなワケねーだろ!」なんですよ。
 嘘臭さ爆発なんです。
 「事件だ! 取材に行ってきます!」みたいにディレクターがカメラさんと飛び出していく描写って良くありますよね。
 中には、ナゼかレポーターが主導権持っていたりする「なんじゃそりゃ」な描き方しているものまであったりします。
 あんなこと、まず「ありません」。

 具体例を出せば、TV局の報道を舞台にし、さらにそこの編集者が編集技術の映像トリック(専門的に言えば「モンタージュ」)によって犯罪に巻き込まれてしまう…という設定で第43回江戸川乱歩賞を受賞した野沢尚先生の『破線のマリス』というミステリー小説があります。
 まあ、これはこれでアイデアなどは面白かったんですが(で、野沢先生なのでラストが相変わらず「…」なんですが)、これなんかもTV局の報道をちゃんと取材したそうですが、そのへんの「嘘臭いか?リアルか?」で語ってしまえば、「バカ言え」な感じなんですよ。
 例えば、いくら優秀とはいえ報道編集者があんな権限やポジション持ってるわけないし、「報道フロアーは○階」って設定なのに編集フロアーが地下だとかね。
 なんでそんな距離離れてるんだよ?! と。

 その中で、「デフォルメ」「ウソ」を含めつつも、報道にいた人間が納得できる描写をしていたのって、00年に放送していた日本テレビのドラマ『ストレートニュース』くらいでしょうか。


 でまあ、「嘘臭いからダメだ!」と熱弁を振るっている方がいる中で、オレの所には「あれを「リアルじゃない」と言っている人がいるのがわからない。」「的確なデフォルメはされていると思う。」という数人の同人女性からのメールをいただきました。
 そういう意見の女性もいるわけです。


 で、そういうことをつらつら考えていたりしたんですが、ふと思ったのが…
「んじゃあのマンガに拒否反応を示しちゃう「やおい同人女性」って、「やおい」っていうファンタジーはOKで受け入れられるけど、『妹!』というファンタジーはなんで受け入れられないの? それってただのワガママとか、心が狭いとかそういうことなんじゃないの?」
 …と。
(なんか強気なこと書いてるなあ…)

 だって、ファンタジーじゃないですか。あのマンガ。
 「リアルか? そうでないか?」で語ったって仕方ないんじゃないのかなあ?
 それは再三書くけど「デフォルメ」がされているんだから。

 何でそこまで激しく拒否反応があるんだろう? というのが興味深いところでもあったんですが、これはもしかして、「オタク男子を小馬鹿にしたマンガとかは山ほどあったけど、女子を小馬鹿にしたものはあまりなかったから」なのかなー? とか思ったり。



 同人女子サイドが、この『全日本妹選手権!』と比較として取り上げて語ることが多いマンガに『C!!』(反島津小太郎・著 徳間書店)という作品があります。

 特に、『妹!』を「リアルじゃない」と評している方のほとんどが、この作品を比較として持ち出しておられ、「『C!!』はリアルだけど『妹!』は違う」と。

 不勉強ながらオレ、このマンガ、書店で表紙を見たことしかなかったんですが。(「表紙を見たことしかなかった」と書きましたが、時々誤解している人がいるんですが、オレ、マンガそのものをあまり読まないんですよ。実は。)

 まあ、『全日本妹選手権!』を複数の同人女性に「女性サイドからはどう思うの?」と読ませてしまった手前もありますし、自分だけ金使わないってのもズルイですしね。
 そこで今回、思い切って買ってみました。
 なかなか見つからなくて、近所の女子高密集地帯真っ直中の書店でやっとこさ見つけて買いました。

 買うときに、レジの姉ちゃんが不審な目つきでオレを見ていまして「?」だったんですが、まあ、「温かい目で見られることには不慣れなロンリーボーイ」なんですが、「白い目で見られることには人生すでに慣れっこなロンリーオヤジ」としては「まあ、いつものコトさ」って感じで問題ナッシングです。
(んで、仕事場に来て本を開いて「なんで白い目で見られていたか」納得できたんですが、まあ、それもまたヨシです。一般書店でノンケ男子が興味本位で『薔薇族』を手にしたときに起きる恐怖に比べたら楽勝ッスよ。)

 いちおーレシート貰ったんですが、こんな金銭も収入も発生していない個人サイトの資料用書籍が、税金の「資料代・必要経費」として認められるのかどうかは疑問が残るところです。(つか、ムリだろ。)


 で、読んだんですが。
 読後の感想としては面白かったですよ。うん。

 笑っちゃったりしてですね、『妹!』同様、笑っている自分にツッコミ入れたくなる感じです。
 キャラの描き分けがあまりされていないので、読んでいて途中でどれが誰だかわかりづらくなったのが困りものでしたが、まあ、そんな『BSマンガ夜話』のいしかわじゅんみたいな事は書かなくてもいいですか。


 もっとも「同人女性」という当事者ではないオレがこれを読むというのは、「女性サイドが『妹!』を読むのと同じ様な物」という、立場による受け取り方の違いはあるのだろうな…と。
 だから女性からよく聞かれる「イタい」って感じまではおこらなかったんですけどね。
 だけどそれは「(性別も含めた)立場の違いといういかんともしがたいもの」と踏まえた上で、以下を書いて行きます。


 読後に冷静に考えていたんですが、どうにもわからないことがありました。
 それはものすごく単純なことなんですが、オレには「『妹!』で描かれている同人女子と『C!!』で描かれている同人女子の何が違うのか?」がサッパリわからなかったんですよ。
 オレには「表現手法として異なっているだけで、その本質は同じじゃない?」と思えてならなかったんです。

 なので、「『妹!』はダメだけど『C!!』はリアル」と言っている人たちの意見がサッパリわからなかったんです。
 いや、サッパリというわけではないですね。細かい部分ではわかります。

 もうちょっと正確に細かく書くと…
 『C!!』が「リアルだ」と彼女たちに評されているのは、オタク同人女子の「思考」というものについて「そのまま描いている」からなのではないかと思うんです。
(これはもちろん、オレは男子ですから推測の域を出ないんですが…)

 で、『妹!』って、オレはそれは「オタク同人女のイメージ」とか「言っていること」をデフォルメで誇張した物だと思うんです。

 こういうことを考えたときに「それがそのまま描かれている」「誇張されている」という表現の違いだけで、掘り下がったところにある部分は同じに見えたんですな。(オレには)

 例えば「カップリング妄想」というヤオイ女子の基本アビリティについても、『C!!』でも日常の光景として描かれているけど、「リアルじゃない」という『妹!』で「教師と留学生に受け攻めを設定する」エピソードは、これをデフォルメしているのと同じではないか? と。
 表現が違うだけでその基本「行動」については同じ事描いてるんじゃないの? と。


 オレが両作を共に「読んで笑えちゃう」のは、それは簡単なことで「オレが同人女子ではないから」だとも思うんです。
 完全に「当事者になり得ない存在」だから、客観視しちゃう。
 ゆえにオレには「両作とも本質が同じなんじゃないか?」とも思えてしまったんですが。

 それを考えると「『C!!』はリアルすぎてイタい」「『妹!』はイタいわけじゃない」というのは「当事者達」の反応としてわからなくはないんですが…


 とか書いていたら、えらく長くなってしまったので、今回はココまで。

【以下、次回につづく】
(つづくんですよ…。さらに何を書く気なんでしょう…。>オレ)


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