02年第1半期のTV表・2
2002/02/12


 前回の続きです。


■水曜日

★『ロングラブレター・漂流教室』

脚本:大森美香
出演:窪塚洋介、常磐貴子、山田孝之、大村彩子 ほか。

 楳図かずおによる「あのマンガ」のドラマ化です。
 『漂流教室』に関しては、過去に何度もドラマ化の話はあったんですが、そのたびに「映像化がムリ」「予算が大変なことになる」などの理由から立ち消えていました。
 20年ほど前にもドラマ化の話があったようで、これはその後紆余迂曲説を経て「学校ではなく生徒そのものが全国を旅(漂流)する」コメディタッチのドラマ『ピーマン白書』(脚本:佐々木守)になったり。(このドラマ、かなり好きなんですがね。オレ。本放送で打ち切りだったけど。)

 大林によって映画化もされましたな。
 監督が全く原作を理解していない自分解釈にも程がある改変ぶりで、大林信者だった友人すら眉をしかめた一品でした。
 印象深いシーンとしては、ゴキブリのような怪虫が先生のピアノを聞くとおとなしくなるとか、ファーストシーンで主人公少年が母親(三田佳子)の乳を揉みしだきながら首筋を舐め回すというショッキングな親子スキンシップシーンとか、外国人少年がクラスの女子の靴ヒモを結わえて上げるために騎士のようなポーズをするヴァカ丸出しなシーンとか…っていうか、ヒドすぎたせいで逆にどれもこれも印象深くなってしまっているのが困りものです。
 これについては、観てしまった人はとっとと記憶からデリートしてしまいましょう。憶えていても何の得もありません。
 ちなみに楳図先生はこの映画版について、以前ある雑誌のインタビューで「大林監督と初めてあって話をしたとき、「ああ、この人は全くあのマンガをわかってくれていない」と思った。仕事の関係で観なくちゃならなかったので1回だけ観たけど、その後は2度と観ていないし、観る気もない」と語っておられました。
 心温まりますね。


 んで(主にこの映画版のせいで)不安とモノスゴイ不安と耐えられないくらいの不安が入り交じる中、「できれば製作中止して欲しい!」という願いも空しく放送が開始されてしまったわけですが…

 大前提として「原作マンガを読んでいない人」をターゲットにしていますね。
 これは間違いないでしょう。宣伝などでの売り方を見ても。
 つまり「楳図かずおの『漂流教室』のドラマ化」じゃなくて、「『漂流教室』をベースにしたドラマ」なのですな。
 こう考えるとタイトルを変えていることも合点がいきます。

 なので、早々に結論を書いてしまいますが、「マンガ『漂流教室』のドラマ」を期待して見てしまうと「ざけんなゴルァ!!!」ということになります。
 原作イメージを大事にしたい人は見ない方が良いでしょう。(早くてスッキリした結論だ)

 でも、これまでにも書いてきたようにオレは「なるべく原作と映像化された作品は別物と思うようにしている」ので、今回もそう考えてみました。
 「ドラマとして」感想を書くと、TVドラマとしては展開は惹きつけられる物があります。
 それはまあ単純に、「こういうタイプのドラマが日本には少ないから」というのも大きいのでしょうが。

 でも、惹きつけられる物はあるんだけど…

 この「…」がくせものです。
 まず、「展開がたるい」。
 もうちょっとスピーディーでもいいんじゃないの?
 1回あたりのストーリー進行速度は、オレ脳内比で『渡る世間は鬼ばかり』と1:1って感じです。

 あと、セリフが軽い。あんまり心に来ないんですよ。あんな極限下で発せられる言葉なのに。
 つか、脳天気なセリフが時々出てくるので「君ら、すっかり修学旅行気分だネ」って感じです。

 それと(まだあるのか)、起きた問題がスグに都合良く解決しちゃう。
 「水が無くなった!どうしよう!! → プールにまだ水があった」とか。
 「そのプールを関谷が占拠している!どうしよう! → 突然不良が現れて関谷をアッサリ撃退」とか。
 それをハードルとして引っ張る…ってことがないんです。

 あとねえ…これは原作と比較しちゃうことになるのかなあ…。
 「恋愛要素を柱に展開」って聞いたときから不安ではあったんだけど、やっぱ、あの展開の中で「ラブ要素」ってのが浮いてるんだよね。
 オマケ程度ならイイと思うんですが…。


 反面、「TVドラマとしては展開は惹きつけられる部分」としては、随所に上手い部分も若干あります。
 例えばカーナビを使って、「自分たちが2020年、もしくはそれ以降の時代に来てしまった」ことがわかるシークエンスとか。
(なんで「もしくはそれ以降」という可能性があるかというと、「戦争か何かが起きたのなら、もしかしたらGPSの衛星がすでに死んでいて、古いデータを送っているだけ」かもしれないからです。このへんの可能性についてさりげに触れるのは上手いと思いました。)

 また、過去の企画がことごとくブチ当たってきた「あの世界の再現」に関しては、いやー…CG技術のおかげもありますが、よく作ってると思いますよ、ホントに。
 マンガでは「辺り一面砂漠」ってことになっていましたが、ドラマでは「辺り一面荒野」になっています。
 これはこれで「一瞬、希望を感じられる」分だけ、ある意味砂漠よりもタチが悪いですね。
 しかし、あの荒野のシーンは一体何処で撮影してるんでしょ。中国? 富士山あたりか?


 ただねえ…一番の不満はああいう状況下なのに、子どもたちがわりと冷静というかのんびりというか、状況を受け入れちゃっているというか、狂気に取り憑かれることもないと言うか…。
 「プチ家出気分」というか「修学旅行気分」というか…

 例えば2月6日の回ではオレ的に理解できない事態が起きました。
 開始冒頭、一人の「真面目そうで陰気そうな少女」がこう言います。
「こんな所にいたら(男子達に)犯されちゃう…」
 彼女はそれが不安になり、ベースキャンプとなっている教室から1人出ていこうとします。
 「こんな極限下では、人は必ず理性を失って凶行に走る」と彼女は不安がります。
 まあその不安は当然でしょう。
 『蝿の王』も『無限のリヴァイアス』もそうでしたし。

 ところが、彼らの学校に「生き残りの人間」3人組が侵入してきました。(このドラマ版では「怪虫」は出てこないようです。その代わり、生き残りの野生化した人間が出てきました。)
 彼らの目的は、食料と水と女です。
 勝手にメシや水を奪われ、挙げ句に寝ていた少女が犯されそうになりますが、相手が武闘派の不良少女(しかも寝ぼけている)だったためにボッコボコにされて返り討ちに会ってしまいます。

 彼らの1人をなんとか捕まえ、主人公らはこの世界の情報を聞き出そうとしますが上手くいきません。
 ところが、あろうことか陰気っ娘が彼を逃がし、さらには「行ってきます」という書き置きを残して自ら彼らの元へと行ってしまいます。


 …………?
 どういうこと?
 「犯されたくなかった」んじゃないの?
 そんな3人組の所に行ったらどうなるかは、余程のヴァカでもない限り想像が出来ます。
 30分後には凌辱の限りを尽くされていると思われます。

 シナリオを書いているのは女性作家さんですから、何らかしら「女性心理を描いた理由」があるのかもしれませんが、ココロに「女人禁制」の札が貼ってあるオレには全く理解が出来ません。(そういうものなんですか? それともただ「実は彼女は歯止めが利かないほどの猛烈なレイプ願望の持ち主だった」ってだけなんでしょうか?)
 まさか敵と理解し合って「最後にゴキブリと意志疎通を図った映画版」の二のテツを踏む気じゃ…


 今後の展開をどうする気なのかはわかりませんが、マンガでは小学生だった子ども達を「高校生」という年齢設定に変更したんなら、個人的には『無限のリヴァイアス』くらいのことをやってくれなければ納得できないですね。それはホントに。
 あれくらい「狂気に取り憑かれていく」様を描いて欲しいです。
 それが出来ないのだったら、ハッキリ言って「失敗作」って言い切っていいんじゃないかと思っていますが。

 うん。『リヴァイアス』を越えられるかどうか? がオレ的なこのドラマの判断基準ですね。


 ただまあ、TV屋としては「(視聴率的にも内容的にも)成功作で終わって欲しい」という願望が大きいことも事実です。

 「こういうタイプのドラマが日本には少ない」と前述しましたが、もしこれが成功すれば、今後「月9でSFドラマ」とかが作られるようになるかも知れませんし。

 オレ的出演者のポイントとしては、『ちゅらさん』でヒロインの弟を演じていた山田孝之が原作の主人公である高松翔役で出ていることと、大村彩子が出ていることでしょうか。
 あ、あと頭脳優秀なメガネっ娘で出ているコがちょっといいです。


 ぜんぜん関係ないけど、昔からこの『漂流教室』ってタイトル、変だなーと思う。
 流れ着いた未来からは動かないのだから、正確には『漂着教室』なんじゃ?


■木曜日

★『七人のナナ』

 『ミスター味っ子』やOVA『ジャイアント・ロボ』、『Gガンダム』を手がけた今川泰宏が原作・脚本・絵コンテ・演出を手がける意欲作。
 …らしいですが、そもそもオイラ、今川作品って好きじゃないんで。(ミもフタもないなあ…)
 過去作品で好きなのは『味っ子』だけですね。実際、それ以降の作品は全て、本人は「味っ子はこれらをやるための実験作品にすぎなかった」とかナントカ言ってましたが、『味っ子』を越えたのはないと思ってますし。
 『Gロボ』も2話までは面白かったけど、後は…。
 最終話に至っては「何コレ? アンタ一体ナニがしたかったの? LD買っちゃっていなくてヨカッタよ。」としか言いようがない。
 『Gガン』? (苦笑)

 この人の作風って本当に単純で、ストレートに書くと「勢いだけ」。
 とにかく「勢いだけ」で、中身が全くもってスッカラカン。
 『味っ子』はそのスッカラカンが上手く作品とマッチしていたと思うんですよ。だけど『Gロボ』みたいに「ちょっと難しいことも考えてます」みたいな気取り方したときに、その中身の無さが一気に噴出しちゃう。

 で、この『七人のナナ』ですが…
 第1話を見た時に思ったのは、「ここまで魅力も面白味もない第1話は、ある意味『見事!』としか言いようがない」という印象ですね。
 『フルメタル・パニック!』の第1話を「第1話の在り方」としては点数高いと書きましたが、その対極です。
 視聴者に「第2話を見させよう」としているとは思えなかったです。
 「勢い」しかウリがない監督なのに、その「勢い」すら無い。
 少なくともオレは、第1話のエンドクレジットを見ながら「どーでもいーや」と思ってました。

 なんか、おじいちゃんの発明のせいで、ナナちゃんという女の子がスペクトル分離して7人になってしまう…という設定。
 で、その7人はそれぞれ微妙に性格が違うらしいんだけど、「ただメガネがついている」とか「目つきが悪いのがいる」程度の「描き分け」以上の物になっていません。(第2話以降だと少し差別化が出ていますが、それでも「とってつけたような差別化」の感は拭えません。)
 簡単に書けば「『おそ松くん』が女の子になった」だけです。(だけです…っていうか『おそ松くん』の方が600万倍くらい面白いですが。)

 で、彼女たちは分離したときに得たミラクルパワーで、空を飛んだり、怪力で街を壊しちゃいながらドタバタをやったり。(んで、4話くらいから、物語の世界の中で、かつて人気番組だった「ナナレンジャー」という特撮物のコスプレ衣装を手に入れ、ソレを着てドタバタします。)

 この部分が「画的な面白さ」の部分を狙っているらしいんですが…

 なんというか…うまく伝わるか難しいですが、「ウソ100%」の作品でも「説得力」ってのは必要だと思うのですよ。オレは。
 その「説得力」っていうのは、その中に「感情移入」だとか「必然性」だとかいろいろな要素を含んでいるんですが、その部分がね、この作品は全く欠如してます。
 だから見ていて、それらのドタバタも見ていて全然楽しくないんですよ。
 ハッキリ書けば「寒い」。
 いやもー、ほんとにつまらなかったです。「30分ってこんなに長いの?!」とすら思いましたよ。
 体感時間としては、あんだけマッタリしている『旋風の用心棒』の方が短く感じます。

 もっとハッキリ書きます。
 とてもプロが作っている作品に見えませんでした。
 ちょっと出来のいいアマチュアアニメ見ているような気分になりました。(こう書くとアマアニメ制作者に失礼だなーと思う。)

 設定やネタなどを考えると『十兵衛ちゃん 〜ラブリー眼帯の秘密〜』の大地丙太郎や、『飛べ!イサミ』『ナデシコ』の佐藤竜雄が監督なら上手く料理できたのではないかと思いますが。

 んで、第3話だったか。見ていたら、スペクトル分離してしまった7人は「1年後に元の1人に戻る」そうです。
 別の言い方すると「1年間はそのまんま」なわけですが…
 まさか……こんなつまんない作品を1年放送するっての?!

 ……とかボロカス書いていたらもっとヒデェ作品があったーよ…(-_-;;)


 てなところで今回はここまで。


【了】

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