***ウマでもわかる指名馬の選び方***

はじめに

POGの指名対象となるのは今年、中央競馬でデビューを予定している競走馬です。日本では年に約1万頭の競走馬が生産されており、そのうち2千頭くらいが中央競馬の厩舎に入ります。それに加えて、海外のセリ市で購買された外国産馬(通称マル外)という馬たちもおり、指名対象となる馬の数は膨大です。そのなかから、来年ダービーなど大レースを征する馬を探し出すのは大変なことです。そうはいっても、現在行われている第一回のPOGではフサイチゼノン(神条)やマヤノメイビー(BOSS)のように重賞を勝ったりG1レースで好勝負をする馬が多数出ました。何千頭もの中から、たった15頭しか選べないのに、どうしてそういう活躍する馬が選べるのでしょうか?

 その馬が競走馬としてどれだけ活躍できるのかを見極める際、その手がかりは大きく分けて2つあります。まず1つ目は「血統」です。純粋な血という意味をもつ“サラブレッド”はその名のとおり先祖代々の血筋が非常に重視されます。父親や母親、祖父、曾祖父から始まり、何代も前の先祖の能力が現在の競走馬に脈々と受け継がれています。適正なレースの距離、成長の早さ、走り方、しぐさや毛の色などさまざまなことが親から仔へと受け継がれます。ふつう、種牡馬になる馬というのは大変よい競走成績を修めた馬ばかりですから、その素晴らしい能力が仔に伝われば、たいへん優秀な競走馬になりますが、全てがそうとは限りません。親の能力が完全に伝わることはまずありませんし、気の悪さや体質の弱さなど親の悪い面も伝わります。さらに、親馬の能力以上に血統背景が重要になります。父親と母親それぞれの血筋の組み合わせで、その能力の伝わり方がさまざまに変化するのです。その組み合わせ方は配合理論として奥深いものとなっています。指名対象となるのはサラブレッドとしての血統登録をおこなっている馬ですので、それらにはすべて血統を記した血統表があります。実際に馬を見ることが出来ない以上、この血統表が指名馬を判断するもっとも重要な材料となります。

 もう1つのファクターは「環境」です。つまり、その馬自身の育ってきた環境、そしてこれから成長していく過程で身を置く環境のことです。具体的には、その馬がどこの国、どこの地方、どこの牧場で生まれ、育ったのか?また、実際に馬を持っている馬主や入厩する厩舎はどこかなどです。「血統」は馬が生まれる前の情報であり、「環境」は馬が生まれてからの情報です。どんなによい血統の馬でもその能力を十分に発揮できるように成長させる環境がなければ意味がありません。その点で環境はたいへん重要な意味を持つものですが、部外者である我々には情報も限られています。ただ、馬名登録を済ませた馬は生産牧場、馬主、厩舎といった基本的な事項が分かりますし、それ以外の馬でもPOG関連本や競馬雑誌などからさまざまな情報が出回っていますので、大体のことは判断できます。

これら2つの要素から、これは期待できる! という馬がPOGの人気馬として数百等程度ピックアップされます。そういう前評判の高い馬は重賞やG1レースに出走する確率がかなり高いですし、実際のG1馬も大概がそういったPOGで人気になった馬です。その中から自分の好みや戦略に合わせて指名馬を選んでいくわけです。それでもかなりの数になるので、初めて選ぶ場合や競馬の知識の少ない人にとってはなかなか判断しづらいことでしょう。そこで、以下にそれぞれの要素でどういったところを見ればいいのか、何がいいのかを記します。ただし、それに従えば必ず活躍するというものでもないですので、大体の目安として考えてください。馬名や誕生日などまったく別の要素で選んだ馬が活躍するということもありますし、そういった面があるのもPOGの魅力です。

その1:血統で選ぶ

・オヤジで選ぶ

 血統の中でも父馬というのは最も重要な要素です。1年に1頭しか仔を産めない繁殖牝馬と違って、種牡馬は人気がある場合年間100頭以上に種付けすることもあります。そのため、種牡馬ごとの優劣がはっきりしやすく、特色もよくあらわれます。日本にいる種牡馬だけで何百頭といますが、そのなかでも人気種牡馬となると限られてきます。毎年トップレベルの産駒を多数輩出する種牡馬となるとほんの数頭で、POGで指名する馬もそういった人気種牡馬の産駒が人気になります。また、POGでは3歳から4歳春までという競走生活の早い時期が対象になりますので、産駒がそういった早い時期に活躍できることも重要なポイントになります。ここでは、そういった人気種牡馬の中でもトップに位置する馬を中心に今年デビューする世代が最初の産駒となる新種牡馬も含めて紹介します。

サンデーサイレンス:現在日本における最強の種牡馬です。競走馬はサンデーサイレンス産駒とそれ以外の二種類に分けられるというわれるほど影響力のある馬です。毎年G1を勝つ馬が出ますし、産駒全体としても非常に質が高いです。3年連続して3歳リーディングサイアー(その年の3歳の産駒がもっとも賞金を獲得した種牡馬)の座についています。この馬を父に持つ馬は他の種牡馬の産駒とは一段レベルが違うと考えてください。すべての能力が高いので特徴を挙げにくいのですが、牡馬のほうがよく活躍する傾向にあります。この馬の産駒は現在まで6世代いますがそのうち3世代のダービー馬を出し、6世代目の現4歳馬でも産駒のエアシャカールが皐月賞を制覇。勢いはとどまるところを知りません。これまでの主な産駒:スペシャルウイーク(ダービーなど)、アドマイヤベガ(ダービー)、サイレンススズカ(宝塚記念)

トニービン:産駒は1800mから2400mの中距離に強く、そういった距離で行われるクラシックでも活躍しています。サンデーサイレンスのように比べると大物が出る確率は下がりますが、安定して高いレベルの産駒を送り出しています。どちらかというと牝馬に活躍馬が多く、東京競馬場のように坂がなく最後の直線が長いコースで実績があります。これまでの主な産駒:ウイニングチケット(ダービー)、エアグルーヴ(オークスなど)、ベガ(桜花賞、オークス)

ブライアンズタイム:大舞台での勝負強さが目立ちます。ナリタブライアンに代表される大物感のある産駒が多く、1997年のクラシックでは牡馬の皐月賞、ダービーで1、2着を独占し、一大旋風を巻き起こしました。その頃にくらべると一息という感はありますが、クラシックレースに出走すれば実力以上の成績が期待できます。これまでの主な産駒:ナリタブライアン(皐月賞、ダービー、菊花賞の三冠、有馬記念)、マヤノトップガン(菊花賞など)、サニーブライアン(皐月賞、ダービー)、シルクジャスティス(有馬記念)

その他の有力種牡馬オペラハウス(初年度産駒で皐月賞馬のテイエムオペラオーを出し、今が旬の種牡馬)、アフリート(輸入されて日本初年度産駒から桜花賞馬プリモディーネを出す。1600mくらい短距離とダートが得意)

内国産(日本で競走馬だった)の種牡馬フジキセキ(自身がサンデーサイレンスの産駒で、その産駒はサンデーサイレンスの孫となる。4歳で引退し種牡馬となった。今年の皐月賞2着馬ダイタクリーヴァなど活躍馬が出てきている)、メジロライアン(初年度産駒で天皇賞馬メジロブライト、オークスなどG1四勝のメジロドーベルを出し内国産種牡馬のエース。最近は大物がでない)

新種牡馬ラムタラ(無敗でヨーロッパの三冠を征した奇跡の馬。高額で日本に招かれ、日本競馬の今後を担う種牡馬として期待されている)、ナリタブライアン(日本史上5頭目の三冠馬。配合相手の牝馬のレベルが高く、二世代しか産駒がいないため初年度から活躍を期待されている)

・オカンで選ぶ

 母馬というのは馬自身の競走成績よりも血統を重視されます。特に母の父馬はブルードメアサイアーと呼ばれて、父馬の次に産駒に能力を伝える存在とされます。その場合、父馬との相性も重要になり、例えば父馬がサンデーサイレンスの場合、母の父はノーザンテーストがいいなどといわれます。世代の関係で母の父は一昔前の一流種牡馬という場合が多いです。母馬自身としては競走成績が高いほうが良いに越した事はありませんが、競走成績と母としての資質は異なることも多いですので、それ以前の産駒(指名馬にとっては兄姉馬)に活躍馬がいることが評価されます。

・ブラザー&シスターで選ぶ

上の世代で母馬が同じ馬を兄馬、姉馬といいます(父馬だけが同じ場合は同一種牡馬産駒で兄姉ではありません)。兄姉馬には父も同じ全兄、全姉と父が異なる半兄、半姉の二通りがあります。兄姉が活躍していれば血統が同じ(父馬が違う場合は半分だけ)その馬も活躍する可能性が高いというわけです。ただ、兄や姉と馬主や厩舎など環境が異なる場合はそれだけ兄姉と生育過程が変化するので注意が必要です。有名な兄弟馬としては母パシフィカスのビワハヤヒデ、ナリタブライアン兄弟、母ダンシングキィのダンスパートナー、ダンスインザダーク姉弟がいます。

・ご先祖で選ぶ

血統をさかのぼって馬の能力を判断するのはけっこうな知識が入ります。血統表の中に同じ馬が含まれているインブリードや父方、母方の祖先の組み合わせで決まるニックスなどさまざまな配合理論がありますが、自分で理解する必要はありません。POG本の解説などで触れられていても、そういうものなのかという程度にみておけばいいです。現在の主流としては先祖(主に父の父)にミスタープロスペクターという馬がいる血統が活躍しています。

 

その2:環境で選ぶ

・牧場で選ぶ

日本最大の牧場グループである社台ファーム系列の牧場で生まれた馬が活躍する傾向にあります。社台ファームはサンデーサイレンスをはじめとした多くの大種牡馬を所有しており、配合の質がよく、さらに雪が積もってもトレーニングできる屋内馬場など育成環境も整っているためデビュー前の仕上がりは他の群を抜いています。系列牧場としてはノーザンファーム白老ファームなどになります。その他では牧場が馬主を兼ねるオーナーブリーダである生産牧場が特徴的です。独自の血統を育てるメジロ牧場西山牧場がそれに当たります。近年レベルの高い生産馬を出しているマエコウファーム早田牧場新冠支場、アメリカで生産しアイルランドで育成するタイキファームがあります。

・馬主で選ぶ

これも社台グループが中心です。社台グループの中でもさまざまな名義があり、代表的なものとしては吉田照哉氏吉田勝巳氏社台レースホース日本ダナースクラブなどです。その他では馬名の一部の文字を統一する冠名をつける馬主で、ナリタの冠名の山路秀則氏、スズカの永井啓弐氏、アドマイヤの近藤利一氏、フサイチの関口房朗氏、エイシンの平井豊光氏などが有名です。また、一口馬主クラブという法人馬主があります。会員が所有馬に出資するというシステムで組織的な経営から勢力を広げています。タイキの大樹ファーム、シルクの有限会社シルク、マイネルのサラブレッドクラブ・ラフィアンなどです。とくにマイネルのサラブレッドクラブ・ラフィアンは3歳戦に非常に強く、地味な血統でも活躍馬が出ます。

・厩舎で選ぶ

中央競馬では関東の美浦、関西の栗東と二つのトレーニングセンターがあり、厩舎もその二ヶ所に分散しています。ここ十年ほど関西の栗東のほうが活躍しており、栗東のほうに素質の高い馬が入厩する傾向にあります。ただし、栗東、美浦ともに100以上の厩舎があり、成績も様々です。一般的には競馬雑誌に掲載されている厩舎リーディングの上位が実績のある厩舎ということになりますが、とくに3歳戦に強い厩舎というものも存在します。栗東の山内厩舎橋口厩舎などです。逆に、美浦の藤沢和雄厩舎のように入厩馬のデビューが遅く、3歳戦をあまり使わない厩舎もあります。

・外国産馬を選ぶ

海外で産まれ日本に輸入した馬を外国産(マル外)といいます。マル外は(混)と表記される混合レースにしか出走できない制限がありますが、国際化の流れでその混合レースが増え現在では全レースの半分以上になっています。また、今回POGの対象となる世代からダービー、菊花賞にもマル外が出走できるようになります。マル外を選ぶ時の基準としてはアメリカで行われたセリ市(トレーニングセールともいう)での落札価格がもっとも分かりやすい基準です。ただし、オークション形式での価格ですので高い程いい馬であるとは一概に言えません。セリ市で購買するのは大半がアメリカの馬主のため、日本向きの血統とみられて購買された場合は価格が安くなります。アメリカの種牡馬としてはWoodman(日本での主な産駒:ヒシアケボノ)、Seeking the Gold(日本での主な産駒:シーキングザパール)、Silver Hawk(日本での主な産駒:グラスワンダー)、A.P.Indy(日本での主な産駒:シンボリインディ)などがいます。

 

***Q&Aコーナー***

Q1:競馬を知らないで参加してカモにされないですか?

A1:大丈夫です。第一回では一番競馬を知ってるはずの人がカモになってます。

 

Q2:POGではお金を賭けることもあると聞きました、あとで取り立てに来ることはないですか?

A2:ないです。お金を賭けると賭博法違反になりますので、登録料その他、金銭の授受はありません。ただし、お金を伴わない罰ゲームはあります。終了後の飲み会の負担費用が成績によって異なりますが、それはその分だけ自分で飲んで食べてしまえばいいだけのことです。

 

Q3:どうやって指名馬の情報を仕入れればいいでしょうか?

A3:POGのガイド本が毎年出ていますので、それを参照してください。発売されればお知らせします。また、最近は競馬関係雑誌やスポーツ紙にPOG関連の記事も豊富に出ています。ただし、情報があれば勝てるというものではありません。第一回の参加者神条くんはドラフト当日に選んだ馬でトップ争いをしています。本人の名誉のために名前は出せませんが、同じく第一回の参加者の一人は種牡馬辞典まで購入しながら散々な成績です。

 

Q4:指名馬を選ぶコツはなんでしょう?

A4:丈夫で長持ち。これにつきます。たとえ素質のある良血馬でもレースに出なければポイントは貯まりません。逆に、血統はいまいちでも前半から積極的に出る馬は高いポイントを稼いでいます。具体的には函館開催デビュー予定の馬や3歳戦に実績のある厩舎、馬主を狙えばいいです。そのあたりの情報も提供します。ただし、そういうデータ面以外の思い入れやフィーリングで選んだ馬の方が活躍しやすいのというのもPOGの面白いところです。

 

Q5:来年(2001年)から馬の年齢の数え方が変わると聞きました。POGに影響はないのでしょうか?

A5:これまで日本ではその年に生まれた馬を当歳、年が明けると二歳と数え年で表記していました。しかし、海外では生まれた年がゼロ歳、次が1歳というふうに、人間と同じ満年齢で数えるのが主流です。近年は日本の馬が外国でレースをすることが多くなり、このままでは混乱が生じるため、日本の馬も来年から海外と同じ満年齢で数えます。そのため、POGの対象である今年の3歳馬は来年も3歳馬といわれることになりますが、あくまで表記の違いなので特に影響はありません。集計をコンピュータで行っていればバグが出るかもしれませんが、当POGでは全て手作業なのでその心配はありません。

 

Q6:注目される新種牡馬を教えてください。

A6:ナリタブライアンとラムタラです。95年の三冠馬ナリタブライアンは種牡馬になってから二世代しか子供を残さず他界したため、産駒は非常に貴重です。その分、馬主や調教師の期待も高いので、大事に育てられており、いろいろな面で優遇される可能性があります。無敗でヨーロッパ三冠を征した奇跡の馬ラムタラも日本のサラブレッド産業の今後を左右する存在として注目を集めています。ヨーロッパで種付けをした初年度はすでにデビューしており、日本でも何頭か走っています。残念ながら、G1に手の届く馬はまだ現れていませんが、日本ではトップレベルの繁殖牝馬と交配されているため、大ブレイクの可能性もあります。ツインターボ産駒も今年デビューしますが、たぶん二、三頭しかいないので中央競馬でデビューするかどうかも危ぶまれます。