BBCの報じるところによると、作家のディック・フランシスが2010年2月14日に死去した。
享年89。カリブ海の英領ケイマン諸島の自宅で亡くなったという。家族が明らかにした。
ディック・フランシスは、1920年、ウェールズ生まれ。
女王の持ち馬の騎手を務めたこともある、イギリス競馬界のチャンピオンジョッキーであった。
57年に引退した後は、競馬新聞の記者を経て小説家に転向。
妻が綿密な取材を行い、それらの資料を元に夫が書くという夫婦作業のスタイルで、62年に長編冒険小説「本命」で作家デビューを果たした。
以後、ベストセラーを連発し、騎手時代の経験を生かした作風は、日本でも「競馬シリーズ」などと呼ばれ多くのファンを獲得。
CWA賞やMWA賞、エドガー賞長編賞を受賞し、英国推理作家協会の会長を勤めた「巨匠」のひとりだった。
2000年に妻メアリ・フランシスと死別してからは、事実上の断筆状態が長く続いていた。
しかし、2006年に息子・フェリックスを協力者として”Under Orders”(邦題「再起」)を発表。
文字通り、85歳にして奇跡的な再起を果たした。
今年1月にはフェリックスとの共著「拮抗」が日本でも刊行されている。
AP通信によると、計42冊の作品を残した。
彼は、私がこの世で唯一、尊敬する作家であった。