かなり長いこと使っていたシーリングライト(天井の蛍光灯)が、このほど遂に寿命を迎えた。
実際のところは1~2年前から4本ある蛍光灯の内、実に3本までが新品に交換しても点灯しないという不具合に見舞われていた。
そのまま長いこと放置されていたのは、ひとえに私の不精ゆえである。
今回思い腰をあげて購入したのは、文字通り天井に設置する巨大な扇風機と照明が一体化したもの。
価格は本体が4980円、電球型蛍光灯(省エネ電球)が4つで980円。総額約6000円の買い物だった。
以下ではシーリングファンというアイテムの詳細と利点・欠点について紹介したい。
シーリングファンは、どちらかというとファン(扇風機)がメイン、ライトが添え物といった存在だ。
インテリアとしても充分機能するが、何よりファンがもたらす機能的な恩恵が大きい。
購入を検討する者も、いわゆる「サーキュレーション効果」を期待してシーリングファンに目をつけているケースがほとんどだろう。
このサーキュレーション(circulation)とは「 循環」のこと。
風呂などでお湯を沸かしたとき、上だけがあたたまり下の方は冷たい……という現象が起こる。
これはあたたかいものは軽くなり上へ、冷たいものは下へ向かうという自然科学的な原則があるからだ。
当然、これは我々の生活空間でも発生していることであり、たとえば冬にヒーターを入れた場合、足元は室温が低く、天井付近ばかりがあたたかくなってしまう。
これを解消するのが、空気の循環。サーキュレーションだ。
巨大なプロペラで室内の空気をかき回し、風呂のお湯の温度を一定にするのと同じように、ムラをなくす。
特に女性には、エアコンが苦手というひとが多い。子どもにも良く見られる。
これは前述した室内の温度ムラが原因していることも多い。
エアコンで人工的に室温を調整すると、下半分が寒く、上半分が暑いという状況ができやすく、これを敏感に察知してしまうタイプには辛く感じられるのだ。
実際、暑くてクーラーを入れているのに、寒くてブランケット(防寒用のひざかけ)をしている女性を見かけることは珍しくない。
シーリングファンはそれを解消してくれる上、エアコンの効き目を高くしてくれるため、最大限の効力を発揮した場合は夏だと設定温度を1~2度高く、冬だと1~2度低くできることがある。
その分、電気代は安くなり、エコロジーの面からみてもクリーンだ。
シーリングファンがもたらす最大の恩恵がこれである。
ただし、シーリングファンの設置には幾つかのリスクが伴う。
ひとつは重量だ。私が購入したシーリングファンはかなり軽量の部類だが、それでもランプを除いた総重量は5.6kgもある。
重いものだと10kgに及ぶこともあり、さらにファンが回転することによる遠心力その他の負荷も加わるため、かなりの重量を支えられる天井(の下地)が必要となるのだった。
取り付け自体は少々力がいるものの無理をすれば女性にも可能なくらい簡単で、複雑は一切無い。
が、重さに関して言えば、慎重な者などは30kgを支えられる天井であるべきだと唱えることもあり、むしろ取り付け作業そのものよりも取り付けに必要な条件を揃えることの方が難しいという状況を作っている。
私は天井にかかる負荷を減らすため、ガラス製の付属ランプシェード(電球にかける傘状のカバー)を設置しないことにした。
購入したシーリングファンに標準でついてきたものだが、これが4つで1.7kgもある。
しかもデザインが酷い。これなら電球を裸のままむき出しにしていた方がまだマシに思われた。
仮により軽量なものに替えれば、シーリングファンの重量は約4kgに――
ここまでくると、そう神経質になることもない数値といえることもある。
そこで用意したのが、PPシートだった。
PP(ポリプロピレン)シートとは、100円ショップなどで売られている工作用のプラスティック板のこと。
そこそこは熱に強く、一方でカッターで切れたり曲げて筒状にできたりと、柔軟に加工できる代物だ。
これで大雑把に弄って、総重量が付属品の10分の1以下という超軽量ランプシェードを自作した。
作り方は単純で、シーリングファンに合わせて大体の寸法を決定。
紙コップを展開したような形の型紙を作り、それを利用して同じものをPPシートから四つ作る。
あとは、これを丸めて筒状にしてしまえば良い。
私はネジ穴を開けて、同じく100円で購入してきたネジで固定したが、PPシート用の接着剤などもあるため、こちらを使うこともできる。
あとはシーリングファン本体に嵌め込むだけ。
ほとんど重量を無視できる、天井に優しいランプシェードの完成だ。
やっつけ仕事であったため工作精度はかなり荒いが、個人的にはそれでも付属のそれよりマシなような気がしている。
■導入後の雑感
しばらく使ってみた感想だが、シーリングファンの効果はかなり大きい。
冬場でも使えて、私は主に加湿器の拡散のために利用している。
私の加湿器は超音波式なので電気代は非常に安いのだが、出てくる蒸気が冷たく、そのまま床に向かって落ちていくという欠点を抱えている。
床が湿っぽくなるだけで、室内の湿度はなかなか均一に上がってくれない……
そういった悩みがあったわけだ。
だがシーリングファンを中速で回すと、白い蒸気がファンに吸い上げられていくのが視覚的に確認できる。
そして蒸気は以前より格段に、周辺へ拡散されるようになった。
ただし、これは6畳という狭い寝室で、240cmの天井に取り付けているためだ。
12畳を超えるブルジョワな大空間や、高さ5mの吹き抜けがある犯罪的な部屋に住んでいる輩は、ファンを複数台設置したり、適度な高さまで吊り下げたりしないと充分な効果が得られないことがある。
逆に天井が低すぎる場合も、頭上近くのファンに圧迫感を感じることに繋がるため気をつけたい。
身長が180cmを超えるようなひとにも注意を促すべきだろう。
あと、機種によっては照明に照らされたファン(扇風機の羽)の影が天井に映り、これが鬱陶しく感じられることがあるかもしれない。これは使ってみないと分からない難点だ。
圧迫感や影の見え方などには、個人の感じ方や機種ごとの特性が絡んでくるため気をつけたい。
それから、私が購入したような安物にはリモコンが付属していないことが多い。
この場合、ファンの回転方向や速度、電球の点灯数などはプルスイッチ(ヒモのスイッチを引くタイプ)で調整することになる。
背が低い人などは、回転方向のスイッチに背伸びしても届かない可能性があるので、少しミドルクラス以上のリモコン式を選んでおいたほうが何かと便利だろう。
それにプルスイッチは操作するたび、シーリングファンに引っ張る力を加えることになる。
ただでさえ重いものにそんな圧力を加えるのは怖い――と思うような心配性もリモコン式を使った方が良さそうだ。
最後にファンの回転音だが、これもグレードや使用しているモーター、羽の形状・枚数などに依存してくるため何ともいえない。
総じて、ミドルクラス以上のシーリングファンは「弱・中・強」の三段階のうち、中速くらいまでならほぼ無音に近い静粛性を確保できることが多いようである。
今だと3万円もだせばそこそこ良いのが来るため、長く使うものは良い物を――と考えて少し高めのを買って置くのも良いだろう。
天井の強度が足りない場合は、リフォーム業者ではなく電気屋か電気工務店に補強を依頼した方が安く済む。
一軒家なら普通は大丈夫。アパートやマンションの場合でも、埋込み式のローゼットがついていれば十中八九は取り付けが可能だ。
不安な時は管理組合や不動産屋に問い合わせを。但し、彼らは理論上取り付けが可能でも、万が一の責任問題を回避するため「お勧めしない」「やめておいたほうが良い」ということがほとんど。
最終的な判断は自分で下すことをお勧めする。