愛用していたイヤフォンが故障したため、私は新調することにした。
しかしオーディオ関係のアイテムには選択肢が多岐にわたって用意されている。
高価で高性能なものは五万円近くするし、音質にこだわらなければ100円もしない。
ただ、高い金をだせば良いものが来る、というのは当たり前のことだ。
そこを曲げて、安く素晴らしいものを入手したい。知人に値段を当てさせた時、少なくとも倍は高値と予想させる音のイヤフォンが欲しい。
私はそのように考えたのだった。
そこで向かった先は100円ショップの全国チェーンで知られる「ダイソー」である。
正確にはちょっとしたDIY(工作・日曜大工)のためにPPクラフトシートという製品を見繕いにいったついでであったのだが――
ともあれオーディオ関係のコーナーを覗いてみると、確かに105円のイヤフォンが何種類か並んでいる。
当初は「複数あった場合、第一印象で気に入ったものを」などと考えていたのだが、問題は300円や400円、500円、上は千円近い価格のついた製品まで陳列されていたことだ。
100円ショップになぜ10倍もの値札をつけた製品をぶらさげているのか理解に苦しむところであるが、ともあれ想定外の選択の幅には戸惑った。
こういう時は情報を集めた方が良い。
店は比較的近い場所にあるため、再来店をおっくうがることもないのだ。
結局、その日、私は第一目標であるPPシートだけを購入して店を出たのだった。
■「奇跡の旧型」
帰宅して調べたところ、面白い事実が分かった。
ネット上の各所で、「ダイソーの525円イヤフォン」が絶賛されていたのである。
2008年も頭ごろから話題になりはじめ、最終的にはオーディオ関連の雑誌記事に載ったというから、その注目の度合いは相当のものがあったのだろう。
とにかく500円という価格からは考えられない音が出るらしい。
総合すると「2000~3000円台の製品とも比肩し得る」という意見が平均的な評価として落ち着くのだろうか。
より慎重な者は、単に「1000円台の下手なイヤフォンを買うなら、まずダイソーの525にしておくと間違いない」という程度に留めているが、絶賛する者の中からは「4000~5000円のイヤフォンとも場合によっては張り合うことができる」、とする声さえあがっていた。
とにかく、辛口の評価者を含め、一致しているのは「少なくともiPodなどに付属しているイヤフォンよりかは間違いなくワンランク上」という部分。
となれば、次にダイソーに向かった時、何を購入するべきかは自ずと決まってくる。
そして翌日、私はその通りに行動した。
■製品詳細・仕様
ウェブ検索をかければ写真つきのデータが幾らでも引っかかるが、一応、今回話題にした製品についての詳細を以下に記しておく。
今のところ500円(税込み525円)で販売されているイヤフォンはこれを含め二種類しかないようで、片方はあまり店頭に並べられることもなく、巻き取り式であるので違うとすぐに分かるらしい。
ダイソーは製品に型番を設けていないので正確な指定は難しいのだが、発注用の正式名称としては「500円サウンド-ヘッドホン」という記述がある。
また2009年4月現在、白・銀・黒からなる三種類のカラーヴァリエーションが存在し、それぞれにナンバー1~3が割り振られているようだ。
パッケージには「高音質再生」「高音質インナーイナーヘッドフォン」などという謳い文句が。
仕様としては、型式/ダイナミック型、ドライバー/Φ14.8mm、ネオジウムマグネット、6μダイアフラム、出力音圧レベル/102dB、インピーダンス/16Ω、再生周波帯域 10~23.000Hz、最大許容量/40mW、コード長/80cm(U型)、フラグ/キンメッキステレオミニ、重量(コード含まず)/5g――という記載がある。
私個人としては、コードの造りに価格なりの安っぽさが見られるものの、音質は噂どおりという感想を得た。
これが500円だというのは、確かに安い。
1980円くらいで売られても違和感はまったく抱かないだろう。
バランスがやや高音よりで面白いという旧型(現在販売されているのは微調整された新型)にも興味があるが、いずれにしても再びイヤーフォンが必要になった時、また誰かが安価で音質の良い製品を求めていた場合、第一の選択肢として私はこれを持ち出すことになりそうだった。