リアライズ・ミー ミンク ゲームのシナリオライターを目指して専門学校に通うアダルトゲームマニアの織本一輝は同じ専門学校に通う門倉紗夜に好意を持っているものの勇気がなく、まともに告白できずにもんもんとゲームに浸る毎日を送っていた。そんなある日、発売間近のアダルトゲーム「夜行探偵2」の体験版をプレイしていると、突然モニタからゲームのヒロインである芝原和歌那が飛び出してきた。なんと一輝は架空世界と現実世界をつなぐ「ゲート」を開く能力に突然目覚めたのだ。お気に入りのヒロインが実体化したと浮かれる一輝だが、その先に辛い運命があることをまだ知らなかった。 ゲームシステムは選択肢というものがないゲームというにはちと問題がありそうなノベルタイプアドベンチャーで、クリアするとごとに分岐が出来て新しいシナリオ、エンディングへの道ができるというもの。10〜15分程度の短い章立てになっており、各エンディングまでは1時間〜1時間半でちょっと短め。プレイヤーはただクリックしてテキストを送るだけですが、オートモードにすると本当に見てるだけ。しかも主人公も含めてフルボイスなので、なんかTVを見ているような気分。ですが、シナリオプロットが良く練られており、ただ見ているだけでも没入してしまう物語としての魅力があります。 ノベルということでテキスト全画面表示なわけですが、アトラク=ナクアと同様にキャラCGに被さらないようにテキストが表示されるタイプ。イベントCGの場面ではCGの邪魔にならないように普通のADVのように下の方にテキストが表示されるところもアトラク=ナクアと同じ。ただ静的で小説的なアトラク=ナクアとは違って、表情豊かで動きのあるバストアップの大きなキャラCGとフルボイスによる長い台詞やアニメエフェクトといった動的演出は映画というかTVドラマ的。ただし、ミンクの伝統で、イメージソングを作っておきながらゲームのOPやEDに使わないのがもったいない。音楽面での演出がちょっと弱いんですよねぇ、ミンクって。 主人公はちょっと中性っぽいメガネくんで小市民的性格。そしてアダルトゲームファンという親近感のある嫌みのないもの。選択肢がなく、さらにフルボイスであるため、シナリオの主導権は持っているものの、主人公=プレイヤーキャラという印象なし。なので、主人公の名前をフルボイスで省いてプレイヤーが名前を変更できる仕様にしているのはあまり意味無し。「一輝」という名前に固定してフルボイスにした方が良かったと思います。 一時期よりも癖が弱まったINO氏描くところのヒロインは、最近流行の癒し系巨乳から微乳まで全方位的に魅力的。大きめの立ちCGは表情豊かで良いのですが、イベントCGについてはほとんどが9個しかないHシーンに集中投入されています。そのためHシーンの内容は充実していますが、その分、他の見せ場やヒロイン以外のサブキャラにほとんどCGがなく残念。やはりEDくらいにはCGが欲しいですし、各女性サブキャラにイベントCGの1枚くらいはあっても良いのでは? さて、ノベルとして肝心なシナリオですが、テーマは「勇気を出して自ら踏み出すこと」といったところかな。好きな人に告白できず、才能を否定されることを恐れてシナリオの持ち込みも出来ない主人公が、ヒロインと共に辛い運命に立ち向かうことにより成長してゆく様がシナリオの中にうまくまとめられています。 ただしメインルートと絡まないルートはともかく、メインルートから派生するシナリオは、本筋とは関係ない日常部分のいわゆる枝葉がなくまとまりすぎた感があってもの足りず。Kanon以降主流となった、ヒロインと主人公の掛け合い山盛りのゲームは、プレイ時間が必要以上に長大になる傾向があるものの、ヒロインと主人公の関係の深まりをよりプレイヤーに感じさせることが出来ます(あと同人ネタに事欠かないという利点も)。しかし本作ではそういう遊びの部分がほとんどないため、ヒロインと主人公が惹かれあうまでの展開がちょっと早すぎると感じるところもありました。他にも説明不足というか御都合主義的ところも若干見受けられたのが残念。そういう意味でテレビシリーズを再編集したダイジェスト版劇場映画というような印象があります。 評価:80 |