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腐り姫 〜euthanasia〜 Liar Soft

 半年前に記憶喪失となった主人公・簸川五樹は、故郷に療養のため家族と共に帰ってくる。家族は義理の母と義理の妹。実母はとうに亡く、実夫と実妹は半年前に心中していた。消えた記憶の中にある故郷である寂れた廃鉱の町とうかんもり。そこで蔵女という深紅の着物の少女と出会う。妹に瓜二つだという蔵女、家族、友人達。彼らと逢い、ゆっくりと浮き上がってくる記憶。五樹はそこに隠された真実を求めはじめるが、世界は赤い雪につつまれて静寂を迎える。繰り返されるとうかんもりでの4日間の物語。


 行殺、ブルマー、サフィズムなどの人を食ったような不条理ギャグパロディ作品を出してきたライアーのシリアスっぽいインモラルホラーというジャンルの作品。記憶を失った主人公、人を腐らせる腐り姫の伝承、腐り姫と同じ名を持つ蔵女、心のどこかに罪悪感を持って主人公に接する家族や知人たち、寂れた町とうかんもり、繰り返される時間、と伝奇ホラーの材料は揃っており、さらに趣のある独特なCGと画面構成がいやがおうにもシリアスな雰囲気を盛り立てます。ライアーらしからぬ芸風。

 ぱっぱぱぱぱぱぱ ぱっぱっ パプっ

 でも「盲点」。とつぜん話の合間に出現する、謎のデフォルメキャラたちによる不条理ギャグパロディな状況説明みたいなコーナー。いやぁ〜〜やっぱりライアーなんだなぁ〜と一安心。エンディング後のメニューでおまけコーナーというのはよくありますが(腐り姫でもコンプ後におまけがあります・・・)、こういうギャグコーナーをシナリオ中に突然はさむというのは凄い。他のゲームならシリアスな雰囲気ぶちこわしなんでしょうが、なぜか違和感なし。これはシナリオ中でもところどころでサフィズムの登場人物によるラジオ放送があったり、Web小説の全裸刑事が出てきたり、コミカルな場面が多数あったりしていたためでしょう。イメージとしては「」のシリアスな伝奇部分と柏木家の日常部分のコントラストを最大限に引き延ばした感じでしょうか。そういえば、設定とかに「痕」っぽいところもなきにしもあらず・・・意識はしていないでしょうが。しかし、これでちゃんと話はシリアスに進行しているのは、根本的シナリオと声優と独特なCGワークが優秀だからか。

 ギャグ部分はプレイしてのお楽しみとしておいて本編部分ですが、ゲームシステムはノベル系で選択肢によりシナリオが変化していくタイプで、4日間を一つのループとして何度も繰り返し、エンディングに達するというスタイルとなっています。つまり、4日間を終えると一旦ゲームは終了してトップメニューに戻りますが、実際にはエンディングまで何度も繰り返される4日間をまとめてプレイ時間10時間くらいのひとつのシナリオなのです。初回プレイでは何度繰り返してもなかなかエンディングに辿り着かないのでちょっと不安になりますが、1つのループのプレイ時間が40分程度と短く、結構さくさくと進むのでついつい後を引きます。私がエンディングを迎えるまでに十数回ループを繰り返しましたが、選択肢が実際にシナリオ進行にどう影響しているかは不明。エンディングを全てコンプした感じでは、1つのエンディングを見ると別のエンディングへのフラグが立つシステムのようです。 

 物語の舞台となる「とうかんもり」(漢字で書くと「稲荷杜」)は、寂れた元鉱山の町ということで、流行の田舎ゲーっぽいところもありますが、雨の多い錆の多い情景や役場などの設定、ゲームマニュアルの観光ガイドなど、単なる「田舎よいとこ」ではないリアリティのある地方の町が物語にも存在感を与えています。
 この舞台とシナリオをうまく表現しているのが独特なCGワークで、ペン画に水彩着色された高低と奥行きのある背景CGの中にキャラクターCGを背景CGと一体になるように配置するというのが斬新。遠景CGの中に小さくキャラが存在している。しかもシナリオの進行に従い立ち位置や動作を変える。Leafの誰彼のチップアニメによる表現に似てないこともないが、こっちの方がより表現力は高い。他にも立ちキャラCGの大きさを変えてキャラの位置関係を表現するというものもありましたが、こういう方法は無かったと思います。やはり美少女ゲーとしてキャラCGを前面に出したいという気持ちはあるのでしょう。腐り姫でも表情豊かな立ちキャラCGが前面に出てくることはありますが、それは演出の一つとしてであり、キャラCGを目立たせるというものとは違うと思います。まぁ、こういってはなんですが、キャラ萌え系とはちょっと違う絵柄ですし・・・・・
 でも、シナリオを進めていくと蔵女、かなり「萌え」です。いわゆる毒系キャラというか、冷めたロリという萌えキャラのタイプとなるかと思います。さらにお兄ちゃん属性も持っているわけで、Hシーンも「おにいちゃん、おにいちゃん」でインモラル感もばっちり(^^)

 声優さんもがんばっております。フルタイムボイスというわけではありませんが、要所要所でボイス仕様となっており、そのレベルも高い。最近では一番かな。どうせならフルボイスで聞いてみたかったです・・・・。Hシーンもがんばってますが、テキストのある台詞以外に、効果音としてあえぎ声や台詞を背景に流しているのが印象的。最近こういうタイプも出てきていますが、Hで効果的なのでこれから増えていくかも。ただしかなり騒々しくなるので他人に聞かれないように注意。

 とまぁ、かなりいい感じだったのですが、2回、3回とプレイしていくと難点が浮かんできます。まず、最初と最後のエンディング以外は手間がかかる割に補足説明的なものということ。もっと大きく途中の展開を変えるとか、全く新しい選択肢が発生するなど、前のシナリオとの違いを明らかにしないと飽きてしまいます。最後の最後でぴたっと決まるだけに、途中のダレが残念なり。
 そして最大の難点はテキストスキップ。これは最悪でコントロールキーによる高速テキスト送りはあるのですが、未読テキストまで飛ばします。「次の選択肢まで飛ばす」では途中のテキストは全く表示されずに一瞬でとびます。ここでは未読テキストを飛ばさない選択が出来るのですが、実際にはエンディングを迎える毎に未読フラグを含めたセーブデータを消されるので次のプレイでは全てのテキストが未読となり、この選択が意味をなさなくなります。確かにシナリオは良くできていますが、同じ様な展開を何度も読むことになることが前提のシステムなのですから、一度読んだテキストを手早く進められる機能は必須だと思うのですが・・・・。今後、この部分がパッチにより改善されることを祈ります。(02.2.10/02.2.16改訂)


 その後、パッチで未読フラグが残り既読判定がされるようになりました。

評価:86

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